ジェーン・スーさんがTBSラジオ『生活は踊る』のお悩み相談コーナーで、31才男性からの相談に回答。「妻子があるにもかかわらず、職場の同僚に恋をしてしまいました」というお悩みに以下のように回答していました。
(小笠原亘)通算1022件目のお悩みは31才男性の方からの相談です。「スーさん、小笠原さん、こんにちは。私は31才。同い年の妻と2才の子供と3人、慎ましく幸せに暮らしているのですが……職場の同僚に恋をしてしまいました。相手は2才年上の後輩です。とてもかわいらしいルックスをしており、誰に対しても優しく聞き上手で、ちょっと天然な性格。典型的な男をお勘違いさせてしまうタイプの女性だと思います。さらにその方と私は同じTBSラジオリスナーだったりと、とても趣味や性格が合う間柄でした。私にとってこれだけ趣味や考え方が近い人に会うのは、男女関係なく生まれてはじめてというくらいだと思います。
数年前、その方が入社した時から私は結婚をしていましたし、好きにならないように気をつけなければと距離を保って冷静に接していたのですが、家庭内の不和や職場内での人間関係の変化などいろいろなタイミングの問題だと思うのですが、今年9月にその方を誘って2人でご飯を食べに行ってしまいました。『これはただの同僚とのご飯。仕事の話をするだけ。何もやましいことはない』と自分に言い聞かせる一方で、とてもムーディーでおしゃれなデート向けのお店を予約している自分がいました。2人きりで話してみると、とても盛り上がり、改めてこの人は自分の人生にとってかけがえのない人だという実感がありました。
結果として、抑えていた何かが外れ、完全に恋をしてしまいました。以来、彼女が他の男性と楽しげに話していると胸がザワザワし、家庭内でも暇があると常にその人のことを考えて上の空。スマホにその人からのLINEの通知が表示されるのを見るやいなや、パッと霧が晴れるように脳が働き出す有様です。自分には守るべき家族があり、かわいい子供もいて、家族の幸せのために生きるべきなんだと理屈ではわかっていてもコントロールが効きませんでした。そのような状態に陥ることははじめてで、私は自分の中に思いを閉じ込めておくことができなくなり、ついにその方本人に告白のようなことをしてしまいました。
その方は独身ですが、婚約者がいます。私の告白を聞いてとても冷静に『気持ちは嬉しい。お互い家族、婚約者がいるから、関係が進展することはないけれど、今後も友達でいたい』と言ってくれました。その方はとても男性にモテるタイプなので、同じような経験を数多くしており、断り慣れているであろうことは丁寧なメールの文面からも推察されました。しかし、その後も話をしていく中で、『私のことは好きだけど、出会うタイミングが遅かった』とも言われました。友達というのもよくある断り文句として表面上の友達ではなく、趣味や性格が合う貴重な仲間として今後とも付き合っていきたいという意味だとお互いに認識をしております。
その後も月に2回ぐらいのペースで食事をしたり、一緒に帰るようになりました。体の関係などはありませんが、酔った時に手を繋いだこともあります。もちろん、家庭を持っている私が異性とこのような関係を持つのは間違っていると思いますが、私は依然としてその方のことを異性として好きな状態です。2人で会っていることは職場の誰にも秘密にしています。その方にとっても、婚約者との関係を考えれば、私とこのような関係を持つのはよくないはずです。正直なところ、恋がこんなに辛いものだとは思いませんでした。思えば、私は思春期からずっとリスクを取らず、自分のことを好きになってくれた相手と付き合ってきたため、このような我を忘れる恋愛、失恋の経験がありません。
スーさん、小笠原さん、私は本当にこの方と友達として付き合っていきたいのです。そして冷静に、家族の幸せをいちばんに考えて生活していきたいです。しかし、一度燃え上がってしまったこの恋愛感情を抑えながら友人になることは可能なんでしょうか? 完全に自業自得。傍から見れば不倫に失敗しただけの男のしょうもない相談かもしれませんが、何卒お知恵をお借りしたく存じます」。
(ジェーン・スー)あ、終わった?
(小笠原亘)はい。31才の独白でした。
(ジェーン・スー)長えな。
(小笠原亘)いやー、これは最長じゃないですか?
(ジェーン・スー)いやー、すごいですね。恋に泥酔中っていう。悪酔い。大トラ。
(小笠原亘)そう?
(ジェーン・スー)相談者さん、悪酔い。大トラで、もう留置所とかに一晩泊まった方がいい感じ。
(小笠原亘)「頭、冷やせ」?
(ジェーン・スー)そう。恋の留置所にお泊り確定よ。あーあ、どうしようか? いろいろあるね。
(小笠原亘)困ったよね、これ。
(ジェーン・スー)まあ、遅れてきた思春期ですよね。よくある話でございます。
(小笠原亘)よくあるかね?
(ジェーン・スー)よく聞く話です。私の周りでも、それで離婚に至った人もおります。
(小笠原亘)えっ? そこまで行っちゃった?
よく聞く話
(ジェーン・スー)おります。でね、私の周りでこういう話を聞く時、だいたい男の方が外で女の人ができて……っていう話なんですけど、面白いことにね、往々にして奥さんのこと、妻のことがそもそも大好きだった人がこれになるのが、私の周りでは多いんですよ。
(小笠原亘)あれ? 逆じゃなくて?
(ジェーン・スー)もともと冷え切った関係で……とかじゃないの。で、子供ができたところでこうなるんですよ。
(小笠原亘)ああー。
(ジェーン・スー)だからつまり、「大好きな僕の彼女が僕のことをもう構ってくれなくなっちゃった」っていう寂しさから始まっているんですよ。もうね、本当に……イメージね。暴力はいけない。イメージだけど、この手のひらの掌底のところで顎をガーン!ってやりたい。やりたい気持ちだけ。
(小笠原亘)掌底でこう、ガーッて(笑)。
(ジェーン・スー)あのね、奥さんの方だってそりゃあ産んでいない子まで育てられないよ! 産んでいる子で精一杯なわけでしょう? でさ、この相談者さん、「いままで自分のことを好きになった人と付き合ってきたため」って言うけど、恋愛が下手! あと、恋愛のことをなにもわかっていない。まあ、私は誰なんだ?っていう話なんだけど、今日は言うよ! 居丈高に言わせていただきます。まず最初。「男を勘違いさせてしまうタイプの典型的な女性」……お前が勘違いしてるだけだろ!(ドンッ!)。失礼しました。机を叩いてしまって。ちょっと驚かれた方。
(小笠原亘)あれっ? 女性の方はそんな思いは一切ないということですか?
「男に勘違いさせてしまう女」ではなく、男が勝手に勘違いしているだけ
(ジェーン・スー)だいたい、よくあるんですよ。「すごく勘違いをさせる女」って言うけど、「お前が勝手に勘違いしてるだけだろ?」っていう話ですよ。
(小笠原亘)だって、勘違いさせるんだもん。
(ジェーン・スー)「させる」じゃない。あなたがしてるの。
(小笠原亘)させるんだもん。
(ジェーン・スー)「させる」んじゃない! あなたがしてるの。「させる」じゃないの!
(小笠原亘)そうなの?
(ジェーン・スー)だって、交通事故に遭った人が「轢かされた」って言う?
(小笠原亘)だいたいさ、ごめんね。作家のニイヤくんも横にいるんだけど、ニイヤくんさ、そういう女の子、いるよね? 「ああ、そうそう。わかる」って、ねえ?
(ジェーン・スー)だからそれは、あなたたちが自惚れて勘違いしているだけなんですよ。
(小笠原亘)ああー……。
(ジェーン・スー)自惚れ、勘違い。それだけです。「勘違いさせてしまうタイプの女性」って、言っていることはわかります。わかりますが、あなたが勘違いしているんです。単純に。
(小笠原亘)ああー、させるよねえ? 「もう、気があるのかな? これ、参ったな」って。
(ジェーン・スー)「参ったな」じゃないの! 要注意、要注意! 「あとね、その方を誘って2人でご飯を食べに行ってしまいました」って。この時に奥さん、妻は子と2人でお家でご飯を食べていたわけですよ。まだ2才でしょう? 「ダーッ、ワーッ!」って言ってさ、いろんなところにこぼしたりっていうのをもう1人、手伝って上げたりとか……いいですか? 相談者さん。考えてください。妻が最後にゆっくりご飯を食べたのはいつですか? 朝食でも昼食でも夕食でもいいですよ。自分のテーブルに箸を持ってお椀を持って、ゆっくりと食べれたのは最後いつですか? ご存知ですか? ねえ。そういうことですよ。
(小笠原亘)うん、うん。
(ジェーン・スー)ねえ。「理屈ではわかっていてもコントロールが効きません」ってよくあるやつね。これね。まあでも、恋は突然始まっちゃうからしょうがないっていうのはあるよ。だから別にリスクを取るんだったら離婚してそっちと付き合えばいいけど、たぶんその相手、婚約者がいるっていう人を奪っちゃえばいい。奪って、その人と結婚して子供ができて、そうなったらこの相談者さん、またやるよ。絶対に同じことを。なぜなら、自分が構われていないと気がすまない、ただの駄々っ子なんだから!
(小笠原亘)(苦笑)
(ジェーン・スー)ちょっと心を強く叩きすぎているかな? 大丈夫かな?
(小笠原亘)めちゃめちゃ書いているね、これ。いただいたメールにね。
(ジェーン・スー)でもさ、よく聞くけど、夫の自覚はあるかもしれないけど、父親の自覚ってどうなんですか?
(小笠原亘)それはあるね。
(ジェーン・スー)どのタイミングで出てくるの?
(小笠原亘)44才、子供1人いるけど、気持ちもわからなくもない。この歳。2才で。これね、もうちょっとたってくると、子供もよくしゃべってくるし、お父さんとも普通に接することができるようになってくると、男はなんとなく子育てに参加しやすくなる。まだちょっと「ワー、ワー、ワーッ」っていう感じで、「ギャーッ」って感情的になるから、ちょっとお父さんは苦手っていう、それもわかる。わかるよ。
(ジェーン・スー)ないがしろにされているところにそれは……「ないがしろにされている」っていうけど、そうじゃないのよ。あなたは子供じゃない。一緒に育てなきゃいけないところに、拗ねていたところで、そりゃ話も合って顔もかわいくて、年上だけど後輩ってそんな漫画の設定みたいな子が出てきたら、そりゃ盛り上がるに決まっているよ。しかし、聞いてくださいよ。いかに相談者さんが恋愛下手か。「ちょっと天然な女の子で」って、天然な性格の女がさ、「気持ちはうれしい。お互いに家族、婚約者がいるから関係が進展することはないけど、今後も友達でいたい」ってしっかり言う?
(小笠原亘)フハハハハッ!
(ジェーン・スー)どこが天然だ? 私はこの女の人を責めているんじゃないよ。あなたが勝手に天然だと思っているだけでしょう? 天然はこんなしっかり言えないよ!
(小笠原亘)そうか……僕は「ああ、いるいる。こういう子、いるよねー。相談者さん、いるよな」って。そうか。
(ジェーン・スー)違いますよ。
(小笠原亘)でもね、考えてみたらね、やっぱりまだ家族の大きな問題を乗り越えていない。31才でだいぶ仕事も安定してきたし、ちょっとお金もあるんだろうし。だからこそ、おしゃれなそういうところにも行っちゃったんだろうし。これから本当にいろんな山を経験していく中で、そういう時にこういう気持ちになっちゃうっていうのは本当に危険だと思う。本当に大きな波が来た時にはダメだよ、相談者さんは。『コウノドリ』を見た方がいいと思うんだよ、これ。
(ジェーン・スー)なるほどね。
(小笠原亘)最近、僕はね、妻と『コウノドリ』を見ています。
(ジェーン・スー)フフフ、辛い気持ちにならない?
(小笠原亘)すごく、すごく女性に感謝するよ。
(ジェーン・スー)それだ。わかった。相談者さん、『コウノドリ』を見よう。オンデマンド的なやつでも見れるんだよね?
(小笠原亘)見れる、見れる。1回1回、見ろ!
(ジェーン・スー)綾野剛になれ!
(中略)
リスナーからの反響
(小笠原亘)さあ、相談に関するメールがたくさん来た。(メールを読む)「私も現在2才半と生後半年の子供を育てていますが、相談者さんに対しての『産んでない子を育てられるか!』という回答に深くうなずきました。『奥さんが最後にゆっくりご飯を食べたのはいつかのか、思い出せるか?』という回答には、いまの自分を重ね合わせて涙が出てきました。そして最後の小笠原さんの『コウノドリを見て』には激しく同感しましたよ」という。ありがとうございます。
(ジェーン・スー)うん。本当にね。鴻巣市の31才女性の方です。女性の方からですよ。(メールを読む)「同じラジオ番組を聞いている人を発見すると、男女を問わずテンションが上がるものです……それだけです」。
(小笠原亘)フハハハハッ!
(ジェーン・スー)2行ぐらい空いて、その下に「それだけです」って。
(小笠原亘)43才男性の方から。(メールを読む)「本日の相談者さんに一言。妻と子供は健康と一緒です。失ってから大切なものに気づくのです。健康は取り戻すことはできるかもしれませんが、妻子を失ってからでは手遅れです。悪いことは言いませんから、早く目をお覚ましなさい」という。
(ジェーン・スー)本当にね、もういろいろと来ていますよ。愛媛県51才男性の方。(メールを読む)「相談者さんより20才以上年上ですが、彼氏のいる女性の言動に勘違いすることはつい最近もありました。スーさんの強烈な顎への掌底で目が覚めました。ありがとうございました」ということで。勘違いさせる女じゃない。勘違いしてる男だ!って言うね(笑)。
(小笠原亘)本当にすいません……。
(ジェーン・スー)どんだけ勘違い好きなんだっていうね。相談の方、引続きどうなったか、知りたいですよね?
(小笠原亘)後日談、よろしく(笑)。
相談者さんからの報告メール
相談から2週間後の放送で、相談者さんからの報告メールが紹介されていました。
(小笠原亘)今日の相談に行く前に、先々週の相談者さんから……これは、31才で妻と2才の子供と3人で暮らしている方。会社にちょっと年上の、入ってきたのは遅いので後輩がいて。
(ジェーン・スー)「年上の後輩」。
(小笠原亘)そう。年上の後輩。ちょっとかわいい。で、同じTBSラジオリスナーであるなど、趣味が合って、すごく仲良くなって……っていう話。
(ジェーン・スー)好きになっちゃったんだよね。しかも、告白したんだよねー。
(小笠原亘)だったんですけども、どうしたらいいもんか? という。
(ジェーン・スー)どうしても好きでい続けちゃうっていうのが一点。まあちょっと、ねえ。人間誰でもいろんな心の迷いはあるけどそれでいいのか?っていう話をした方から。
(小笠原亘)そう。(メールが)来ました。「まず、率直に自分の書いたメールが読まれているのを聞いて、とても気持ち悪いと思いました」。
(ジェーン・スー)アハハハハッ!
(小笠原亘)「……自分はなんて独りよがりで思い込みが激しい人間なんだと知らされました。はじめて放送を聞いた時は、脳天への強い衝撃に膝から崩れ落ちてしまい、全てを受け止めきれませんでしたが、間をおいて何度も聞き返しました。またツイッターでその時間帯のタイムラインをさかのぼり、みなさんの率直な感想をひとつひとつ読みました。(これがいちばんキツかったです)」。
(ジェーン・スー)フフフ(笑)。傷に塩を塗るねえ!
(小笠原亘)まあまあキツかったね、あれね(笑)。「……妻と子供に対して、改めて腹の底から申し訳ない気持ちになりました。夫として、父として、失格だと思いました。いまが目を覚ます時だと思いました。現状の自分はメールを書いた当時の恋に泥酔状態からは脱してきています。2人で会うことはなくなりました。しかし、完全に酔いが覚めているかというと、そうではなく、職場でふとした時にまだクラクラする自分がいます。その人に対してもこの3ヶ月間、私の身勝手な感情に付き合わせてしまい、とても失礼なことをしてしまったと、申し訳ない気持ちです」。
(ジェーン・スー)ああー、素晴らしいね。相談者さん。
(小笠原亘)「……なぜ、こんなノーフューチャーな恋に熱中してしまったのか。スーさんにも『駄々っ子』と指摘していただきましたが、己の人間としての未熟さ、心の弱さが原因にあると思っています。本当に自分が嫌になります。今後、どうこの罪滅ぼしをしていくのか、すぐには答えは出ませんが、まずはコツコツと日々の育児や仕事に取り組んでいくしかないと思っております。いつも長文、乱文で申し訳ございません。相談に乗っていただき、本当にありがとうございました」という。ツイッターやメール、FAXたくさんいただきましたので、みなさんにも感謝、感謝ということでございます。
(ジェーン・スー)いやー、本当にありがとう。でも、よかったね。ちょっとキツく言い過ぎたかな? と私も反省したり。私だって、小笠原さんだって、失敗はたくさんしている。間違ったことはいっぱいしてきたし、人を傷つけたことだってたくさんある。だからなかなか、自分のことを棚に上げて言うのって難しいんですけども。「目を覚ましてくれ!」ってやったら、少し目が覚めたようです。昏睡状態から。よかったわー、本当に。
(小笠原亘)本当、よかった。まあでも、我々に相談してくる時点で「なんとかしなきゃいけない。そういうのはダメなんだ」ってどこかで思っているから送ってきてくれているはずだと思いますから。
(ジェーン・スー)そうね。言われたかったっていうのもあると信じましょう。
(小笠原亘)ただ、メールが長かった。ごめんね、長かった(笑)。
(ジェーン・スー)アハハハハッ!
<書き起こしおわり>