久米宏 スウェーデンの小学校・社会科の教科書を語る

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久米宏さんがTBSラジオ『久米宏ラジオなんですけど』の中でスウェーデンの小学校の社会科の教科書についてトーク。日本の社会科の教科書には絶対に載っていないような内容などを紹介していました。

(久米宏)北半球が冬に入ってきた。で、今日はスカンジナビア半島のスウェーデンのお話です。先週、10年以上もスウェーデンで研究生活を行われて、いまは日本の明治大学の教授になっている鈴木賢志さんという方をお招きして、スウェーデンの若者の国政選挙なり地方議会選挙なりの投票率が80%を超えているという、びっくりするようなお話をおうかがいして。

2017年11月4日(土)放送の「久米宏ラジオなんですけど」は、ゲストコーナー「今週のスポットライト」に明治大学国際日本学科教授で政治社会学者の鈴木賢志さんが登場。日本の若者の投票率は30~40%。スウェーデンだとなんと80%以上。この差はどこからくるのか?

(堀井美香)うんうん。

(久米宏)特に18才、19才の若い人たちの投票率も当然ながら80%を超えている。なんでこんなことになるのか? という話の中で、スウェーデンが使っている小学校の社会科の教科書の話をチラッと触れたんですが。この鈴木先生が書いてらっしゃる『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』という本があまりにも面白いので、今日はこれをしばらく……だいたいね、8才から10才ぐらいの子供たちがスウェーデンでこの社会科の教科書で勉強していると思ってください。つまり、小学生ですね。社会科ってどんなことが書いてあるのか?っていうことなんですが……。

『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』



冒頭、「社会とは何か? ということをあなたは深く考えたことがあるでしょうか? どのように答えるべきか、少し考えてみましょう。それから社会とは何か? また社会がどのように成り立っているかについて、同じような考えを持っているかどうかをクラスの友達とたしかめてみましょう。おそらく、実際に目に見えるものが頭に浮かぶことでしょう。でも、社会には目に見えないものもあります。たとえば法律、男女の役割、男女平等、民主制、そして税金などです。これらは社会にあるものですが、目には見えません。みなさんも思いついたかもしれませんが、目に見えるものの例としては学校、病院、道路、家、車、牢屋などがあります」。これ、牢屋ってすごいでしょう?

(堀井美香)たしかに(笑)。

(久米宏)「……牢屋などがあります。これらはもちろん、社会の重要な一部です。私たち人間もそうです。わずか100年の間に多くのことが起こりました。今日、私たちの大多数が街の中、あるいはその近くに住んでいます。スウェーデンの大都市にはとても多くの人が住んでおり、彼らには毎日新しい出会いがあります」。こういうのを日本の教科書に書いてほしいんですよね。「彼らには毎日新しい出会いがあります」っていうのを社会科の教科書、日本に書いてあるでしょうか?

さらに進んで、ここがひとつのキモでもあるんですけども。先週の話の続きですけど。「全ての社会は変化します。それは社会の中に存在する小さな集団に影響を与える小さな変化かもしれません。規範(ルール)が変わることもあります。いまから100年前まで、年長の人に挨拶する時は女の子は膝を曲げて、男の子はお辞儀をするというのが普通でした」。ヨーロッパの女の子、スッと膝を曲げて挨拶しますけども。あれが100年前まで、スウェーデンでは常識だったんですね。

(堀井美香)はい。

(久米宏)「……また、いまは家の中で帽子をかぶってもよいことになっていますが、あなた方のご両親が生徒だった頃には全く考えられないことでした。たとえば髪型やファッションを変えて規範を打ち破ってやろうとするなら、それを何度も繰り返しているうちに、『それでいいのではないか?』と思われるようになるかもしれません」。これは先週、お話しました。髪の毛を真っ茶色、あるいは真っ赤に染めてね、きゃりーぱみゅぱみゅのような格好で学校に行ったとしたら、最初のうちはみんなから変な目で見られるかもしれませんけど、それをがんばって続けたら、ルールが変わるかもしれない。つまり、社会は変わる、あるいは変えられるというのがこの教科書の――いろんなことを言っているんですが――キモでもあるんです。

(堀井美香)うん。

(久米宏)あのね、いまSNSのことがいろいろと問題になって。大勢殺された事件とかが日本でも問題になっていますが、それについてももちろん触れています。北欧っていうのは日本よりもはるかにパソコンとかスマホ、進歩のスピードが早かった国々ですから。これ、小学生の教科書に書いてあることです。「……あなたはブログを始めたり、フェイスブックのグループを作ったり、Twitterにコメントを書き込んだりすることができます。あなたはこの市の子供たちが体育館で健康向上のためのプログラムに参加できるようになることがどんなに大切であることか、示していくことができるでしょう。

地方の新聞やラジオ、テレビ局がニュースであなたの意見を取り上げてくれれば、あなたは世論の形成に成功したということになります。メディアの助けを借りて、あなたの意見と活動はさらに多くの人々に広まります。いまはおそらく、政治家の耳にも届いています。彼らはスウェーデンや市をより暮らしやすい場所にしていきたいと思っていますが、それだけではなく、次の選挙で再び当選することも彼らの目的となっています」。小学生に教えているんですよね。政治家は次の選挙で当選することが重大だっていうことを教えているわけです。

「……影響を与えたいことについて、あなたが知識を持っていることを世に示すことで、常によい効果が期待できます。そのことを頭に入れておきましょう。とは言え、学校の職員や両親、近所の人々、コーチ、そして最終的に政治家を味方につけるためには、誤字などの誤りがなく、正しく文章を書くことが重要となります。あなたがしっかり準備が整っており、ちゃんとした文章が書け、そして自分の意見を冷静にしっかりと伝えることができるということを示しましょう」。

(堀井美香)うん、うん。

何のために勉強をするのか?

(久米宏)つまり、何のために勉強するかということを社会科は教えているんですが、それは……スウェーデンという国は先週も話しましたけど、算数とか歴史とか、ああいった普通のいわゆる学力テストでは上位の方に行く国じゃあないんですよ。だけど、何のために勉強するか?っていうのはこの社会科の教科書を読むと、「あなたの考えを人に伝えるため、誤字がないよう、きちんとしたスウェーデン語が書けて、きちんとSNSに文章を載せることができるようにするために、あなたの意思表示をするためにしっかり勉強をしましょう」ってなことが書いてあるわけですね。

(堀井美香)ええ。

(久米宏)読みたいところがいっぱいあって困っちゃうんですけど。あのね、ほとんど大人の人に向けているような文章があるんですよ。……付箋、貼りすぎです。

(堀井美香)フフフ、本当たくさん貼っているからわからなくなってる(笑)。

(久米宏)あのね、日本の教科書には信じられないようなことも書いてあるんです。これは8才から10才の子供、小学生に向けた社会科の教科書の一文ですけども。日本の教科書に載せた方がいいというようなことが書いてあるんで、そこも読みたいと思うんですけども。こんなの、日本の社会科の教科書に書いてないですよね。絶対に書いてないと思うんですけど。「昔に比べて離婚が増えましたが……」。

(堀井美香)ああー、書いてないなー!

(久米宏)これ、日本でも(離婚は)増えてますから。

(堀井美香)だって子供の話題にならないですもんね。

(久米宏)社会科の教科書に載せるべきことなんですよ。「昔に比べて離婚が増えましたが、お母さん、お父さん、あるいは兄弟、姉妹とともに家族で暮らす子供はとても多いです」。つまり、いまでも大家族で暮らしているスウェーデンの家族は多いんですが。「……両親は結婚していることもありますが、結婚せずに一緒に暮らすこともできます。それを『サンボ』といいます」。つまり、入籍していない男女が一緒に暮らして子供ができた家庭のことをスウェーデンではサンボと呼ぶんだね。サンボ下がって師の影を踏まず……。

(堀井美香)フフフ(笑)。

(久米宏)「……離婚をすると子供たちの多くは新しい家族で暮らします。その場合にはお父さんやお母さんがいますし、新しい兄弟、姉妹ができるかもしれません。また、多くの子供たちがお父さん、お母さんと交代で暮らしています。1週間をお父さんと暮らし、1週間をお母さんと暮らすという形で暮らしています」。

(堀井美香)へー!

(久米宏)親権が分かれていて。こういうこともちゃんと書いてあるんです。こっから先は絶対に日本の社会科の教科書には載っていない部分に入っていくんですけど。「……2人のお父さん、もしくは2人のお母さんがいる家族で暮らしている子供がいます。2009年から同じ性別の同性愛の人が結婚できるようになりました」。小学校の社会科の教科書にこれ、書いてあるんですよ! 「……2009年から同じ性別の同性愛の人が結婚できるようになりました。こうして結婚した人たちは結婚している他の人々と同じ権利を持っています。昔はお母さんの両親やお父さんの両親が一緒に住んでいたので、大きな家族でした。今日ではお父さんとお母さんが離婚した後に、それぞれ新しい相手に出会うことでやはり、大きな家族になることがあります」。

(堀井美香)うん。

(久米宏)お父さんとお母さんが離婚して、それぞれにまた結婚した場合、お父さんも男で、お母さんも男のケースがある。また、別れたお母さんが再婚した時に、お母さんも女でお父さんも女であるケースがある。そういうことは覚悟しておきましょうということを……。

(堀井美香)はい。「普通のことですよ」と。

(久米宏)法律で認められていて、普通の夫婦と全く同じ権利を持っているんだということを『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』という本には書いてあるんです。これ、子供に教えているんですよ。つまり先週、先生とお話をした結論というのは、日本は「社会人」っていう言い方をしますけども、働いて給料をもらうようになった時に「社会人」っていう言い方をするんですけど。スウェーデンは全く考え方が違って。赤ん坊が生まれたら、すでにその子は「社会人」であるという。

(堀井美香)うん!

(久米宏)社会に生まれでてきたわけだから。その考え方が日本とスウェーデンでは全く違って、それが投票率(の高さ)にも結びついているのではないか? というのが先週のお話でした。

<書き起こしおわり>

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