松尾潔 Calvin Richardson『Can’t Let Go』を語る

松尾潔 Calvin Richardson『Can’t Let Go』を語る 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でエド・シーラン『Thinking Out Loud』の影響を受けたであろう楽曲として、カルヴァン・リチャードソン『Can’t Let Go』を紹介していました。

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(松尾潔)で、そのケヴィン・ロスが仰ぎ見るモータウンレジェンド、マーヴィン・ゲイの『Let’s Get It On』。この『Let’s Get It On』的世界の影響っていうのはケヴィン・ロスの『Cruise』以外の曲でもいろいろと感じることができるんですけども。

Kevin Ross『Cruise』

マーヴィン・ゲイの話、数週間前にもこのマイクに向かって話しましたが。いままた、何度目かのマーヴィン的ムードがぴったりの時期に来ているんじゃないか?って思うんですね。

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ファレルとロビン・シック、こういった人たちからの眼差しというのもありましたし。エド・シーランが『Thinking Out Loud』という曲で歌い上げてみせた……まだ曲が出た時点では20代半ばのエド・シーランが歌い上げた世界というのはまさに、マーヴィン・ゲイの『Let’s Get It On』の蒔いた種がいまごろ、花開いたのかなっていうような。

Ed Sheeran『Thinking Out Loud』

あれは本当にソウル・ミュージック、R&Bファンのみならず、ロックファンをもうならせた1曲でしたけども。そのエド・シーラン経由で「彼がああいうことをやるんだったら、それはマーヴィンと同胞の俺らはもっと上手くできるよ。その路線なら、だって俺たちはお手の物だもの」と言わんばかりの作品が出てきましたので、ちょっと聞いてみたいと思います。

エド・シーランがこのシンガーの存在を意識したことがあるかはわかりませんが、この人はエド・シーランの『Thinking Out Loud』のヒットを横目で見ているんじゃないかと容易に察することができます。カルヴァン・リチャードソンです。カルヴァン・リチャードソンのニューアルバム『All or Nothing』。これがね、プロデューサーが前作のエリック・ベネイから一転してウィリー・クレイトンという本当にブルージーなところに寄った、まあエリックと同じように現役シンガーでもある、歌う人がプロデュースした歌える人のアルバムなんで。もうとにかく、サウンド云々というよりも歌、歌、歌!っていう感じのアルバムになっている『All or Nothing』なんですが。

まあ、エリックのような洗練とは違う、ドロリとした、でもそれゆえに人肌にまとわりつくような、喜怒哀楽の感情に寄り添うような、そんな歌声を楽しむことができます。『Thinking Out Loud』の向こうを張るカルヴァン・リチャードソンの新曲を聞いてください。『Can’t Let Go(Acoustic Version)』。

Calvin Richardson『Can’t Let Go(Acoustic Version)』

Will Downing feat. Phil Perry『Stop To Start』

カルヴァン・リチャードソンで『Can’t Let Go』。これはニューアルバム『All or Nothing』に収録されております。これはカルヴァンにとってもアルバムの中の決め曲ということなんでしょうか。2バージョン、アルバムに収められておりますが今日はアコースティックバージョンの方をお届けいたしました。エド・シーランの『Thinking Out Loud』との類似性をさっきお話しましたけども。エド・シーランの『Thinking Out Loud』のね、このアルバムバージョンじゃなくて、『ブリジット・ジョーンズの日記』という映画のシリーズがございますよね? あれの最新版の、あのサントラの中にエド・シーランの『Campfire Version』っていう、まあ小粋なタイトルが付いてますけども。要はアコースティックバージョンが入っていたんですが。

それと聞き比べたりすると本当、どちらかがどちらかのカバーという気がするぐらい、このカルヴァンの『Can’t Let Go』と『Thinking Out Loud』っていうのは似た曲構成なんですが。まあ、それぞれがマーヴィン・ゲイの『Let’s Get It On』を見ているっていうことですよね。で、続いてご紹介しましたのはそういった70年代的なムードを別の角度から醸し出しておりますウィル・ダウニング feat. フィル・ペリーで『Stop To Start』。これは以前にも一度ご紹介しましたウィル・ダウニングの『Soul Survivor』という新作。なかなかの快作ですね。その中に収められている男同士のデュエットですね。以前はね、エイブリー・サンシャインとのデュエットを「ちょっとマックスウェル気分だ」なんて言ったんですけども、このフィル・ペリーとの熟年男性同士のデュエットはずばり、スタイリスティックスですよね。

そしてこのカルヴァン、ウィル・ダウニングを続けて聞きますと、こういった世界。マーヴィン・ゲイからフィリー・ソウルまで広く、自分のエッセンスとして取り込んで新しい作品として世に出しているのはエリック・ベネイという男なんだなということがよーくわかります。このカルヴァン・リチャードソン、ウィル・ダウニング、フィル・ペリー。この男性3人の歌声を聞きながら……まあ、もっというとカルヴァン・リチャードソンの向こうにウィリー・クレイトンっていう人もいますけども。この4人の、それぞれが魅力的な実力のある男性シンガーの向こうに、エリック・ベネイという男が見えますね。

<書き起こしおわり>

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