松尾潔 ウォルター・ベッカーを追悼する

松尾潔 ウォルター・ベッカーを追悼する 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中で亡くなったスティーリー・ダンのウォルター・ベッカーさんを追悼していました。

So sad. #RIPWalterBecker. Big fan of Steely Dan.

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(松尾潔)さて、ちょっとここで悲しいお知らせ。みなさん、ご存知の方も多いと思いますけども。ロックバンド……まあ、ユニットですね。バンドとして出てきて、最終的にデュオ構成。ドナルド・フェイゲン、ウォルター・ベッカーという2トップでやっておりましたスティーリー・ダン。そのウォルターさんが3日、亡くなりました。67才だそうです。僕もティーン・エイジャーの頃にはスティーリー・ダン、大変に影響を受けました。で、いま50才前後の方々はスティーリー・ダンというか、ドナルド・フェイゲンのソロ作『The Nightfly』。これにやられたっていう方は大変に多いんじゃないかと思います。1982年のアルバム。

少なくとも、僕にとっては82年は『Thriller』よりは『The Nightfly』、そしてマーヴィン・ゲイの『Midnight Love』ですね。

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あとはジョー・ジャクソンの『Night and Day』とかですかね。まあまあ、1982年の話をするとキリがないんですけども。そのスティーリー・ダンはね、特にオリジナルアルバムが多かったわけじゃなくて、7枚のうちの後半の『Aja』と『Gaucho』っていうこの2枚のアルバム。もう2人組の体制になって作った作品ですが。特にこの最後の2枚っていうのはちょっと神格化されていますからね。僕がこの音楽業界に入ってはじめの頃。1980年代の終わりから90年代前半……半ばぐらいまでかな? レコーディング・スタジオなんかに入ってエンジニアの方がサウンドチェックをする時とかっていうのはだいたい『The Nightfly』っていうのはその1枚でしたよ。

それぐらいの本当、黄金比のようなロック、ポップスを作ったドナルド・フェイゲン。そしてスティーリー・ダン。ドナルド・フェイゲンはやっぱりウォルター・ベッカーあってのものだし、スティーリー・ダンを語る上でドナルド・フェイゲンしか語らないというのは所詮不可能なことで。で、そうなんですよね。ウォルター・ベッカーが亡くなったということで、ドナルド・フェイゲンがすぐにね、フェイスブックで声明を出したんですよね。追悼文と言えばいいんでしょうか。

ドナルド・フェイゲンの追悼文

「Walter Becker was my friend, my writing partner and my bandmate since we met as students at Bard College in 1967. (1967年にバード・カレッジで出会った)」と言っておりますけども、ここで泣けてくるのはスティーリー・ダンの『Hey Nineteen』っていう曲で。スティーリー・ダンの代表曲のひとつですけども、ここの歌い出しで1967年を回顧するところから始まるんですよね。

Steely Dan『Hey Nineteen』

で、曲の中でね、「アレサ・フランクリン、知ってる?」とかそういうことを女の子に呼びかけたりするところもあったりして。僕もアレサ・フランクリン、スティーリー・ダンがそんなにいいっていうんなら、しっかり聞いてみようと思ったりなんかして。いろいろと影響を受けましたよ。で、まあ僕の個人的な話はこれぐらいにしておきまして、スティーリー・ダン。ヒップホップ、R&Bシーンにも大変に大きな影響を残しております。その中でも、やっぱりヒップホップシーンでスティーリー・ダンのグルーヴっていうのは肌の色を問わず最強だなと思わせてくれたのが1998年にリリースされたこの曲でした。

スティーリー・ダンのアルバム『Aja』冒頭に収められていた『Black Cow』をほぼ丸々サンプリングしております。

ロード・タリク&ピーター・ガンズで『Deja Vu (Uptown Baby)』。

Lord Tariq, Peter Gunz『Deja Vu』

9月3日に67才で亡くなりましたスティーリー・ダンのウォルター・ベッカーを追悼する、そんな意味合いでご紹介しましたスティーリー・ダンのアルバム『Aja』のオープニングナンバー『Black Cow』をサンプリングしておりますロード・タリク&ピーター・ガンズで『Deja Vu (Uptown Baby)』。1998年の作品でした。この『Deja Vu』というのは、いまではヒップホップの世界ではクラシックと呼んで差し支えがない位置づけにある曲です。割ともうすぐに名曲認定をされたという印象があります。

それからもう10年もたたず、2004年にはビヨンセが『Me, Myself and I』というソロヒットのリミックスでこの孫請けのような形でこの『Black Cow』のビートを引用いたしました。

まあこれなんか、ヒップホップ、R&Bの文脈で言うと、「スティーリー・ダンをサンプリングした」というよりも、「ロード・タリク&ピーター・ガンズの『Deja Vu』ネタを使ったね」っていう、そういうコンテクストが成り立ったわけなんですが。それを証明するかのように、さらにその2年後、2006年にはビヨンセはその名も『Deja Vu』という曲を大ヒットさせます。その時にフィーチャーしていたのが、後に結婚するジェイ・Zでありました。

<書き起こしおわり>

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