渡辺志保 トランプ勝利後のSNL デイブ・シャペルとATCQを語る

渡辺志保 トランプ勝利後のSNL デイブ・シャペルとATCQを語る INSIDE OUT

渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』でドナルド・トランプの勝利で終わった2016年のアメリカ大統領選挙直後に放送された『サタデー・ナイト・ライブ』についてトーク。番組冒頭のホスト、デイブ・シャペルのスピーチや、ア・トライブ・コールド・クエストによるゲストライブについて話していました。

?? #ChappelleOnSNL

Saturday Night Live – SNLさん(@nbcsnl)が投稿した写真 –

(渡辺志保)ちょっとここでオープニングチューンをお届けしたいんですけども。なにはともあれ、block.fmの5周年パーティーもありました。そして先週は、みなさん注目されていた方も多いでしょう。アメリカの大統領選挙が行われまして、ドナルド・トランプが勝利を果たしたと。で、世論は結構最後の最後までヒラリー・クリントンが有力と報じておりましたから、ドナルド・トランプ勝利のニュースに、日本でもその結果に驚いた人も少なくないのではないでしょうか? というような感じがします。ヒラリー・クリントンに関しては、ケイティー・ペリーとかレディ・ガガ、ビヨンセ。あと、ラッパーではジェイ・Z、YGとかそうそうたるメンツがヒラリー派を宣言しておりましたから。非常にちょっと失望する方もさぞかし多いのではないかと思って入ります。

なんせ、政治経験もゼロ。外交のセンスもあんまりなさそうだな、みたいな。かつ、選挙活動期間中には差別的、扇動的な発言でよくも悪くも人々の注目を集めていたトランプがなんとアメリカの大統領になることが決まってしまったと。で、それを受けまして、先週のアメリカ時間の土曜深夜、老舗コメディー番組の『サタデー・ナイト・ライブ』という番組があるんですけども。そこがスタジオから生放送されまして。毎週土曜日深夜に生放送されているテレビ番組ではあるんですけども、毎回、この『サタデー・ナイト・ライブ』には司会をつとめるホストの方とミュージックゲストというのが週替りで登場するんですね。固定の司会者がいるわけではなくて、その司会者が毎週毎週ゲストで替わっていくと。

老舗コメディー番組サタデー・ナイト・ライブの豪華なホストたち

で、いま42シーズン目をやっているんですけども、前のシーズンもたとえばドレイクとかね、フューチャー。あとは『The Life of Pablo』を出す1、2時間前の、直前のカニエ・ウェストが出たりして話題になりまして。いまの42シーズン目もいきなりザ・ウィークエンドとかレディ・ガガ、ブルーノ・マーズとか、がっつりアメリカのメインストリームを盛り上げるアーティストが出演したというような番組なんですけども。そこに、その番組は結構激しい、厳しい政治ネタもバンバン果敢に突っ込むような番組でございまして。かつ、今回の大統領選がスタートしてから如実にヒラリー・クリントンを支持しますという意思を表明してきた番組でもあるんですね。だからね、そんな番組ですから大統領選挙が終わって一発目の放送でかなり気合の入ったラインナップで勝負しようと思っていたと思うんですけども。

そんなSNLが声をかけたホストがなんと、デイブ・シャペルという黒人のスタンダップコメディアンでして。本当にアメリカではすごく人気のあるコメディアンなんですけども。日本のリスナーの方だと、2006年に上映された映画『ブロック・パーティー』でおなじみかもしれませんが、ヒップホップアーティストからの支持も非常にあつい、そんなアフリカン・アメリカンのコメディアンがホストを務めたと。で、毎回ホストがスピートというか、ネタを披露してオープニングを始めるんですけども。そこでデイブ・シャペル自身も10分間の長いスピーチを、ネタを交えながら披露してくれたっていう感じなんですけども。まずね、そのスピーチの内容がバッと話題になりまして……

デイブ・シャペルのスピーチが話題に

Welcome back, Dave Chappelle! Watch his #ChappelleOnSNL monologue on the SNL App. Link in bio.

Saturday Night Live – SNLさん(@nbcsnl)が投稿した写真 –

まず冒頭で、「We’ve Actually Elected an Internet Troll as Our President(俺たちはネット上の荒らし野郎を自分の国の大統領に選んじまった!)」っていう。「Internet Trollをプレジデントにしちゃった」って言ってるんですけども。「Troll」はね、「荒らし」とか「釣り」。「ネット上の釣り野郎」みたいな意味がありまして。で、レミー・マーティンとかもね、「ネット上のネタだと思っていたことが現実になっちゃって、すごい悲しい」というようなコメントをInstagramで発表していましたけども。まあ、そんな話でスタートしまして。

で、その他にも「最近は銃撃事件が多くて、数え切れないくらい。だって、動物園でさえ銃殺事件が起こっているんだぜ」と。これは以前、『INSIDE OUT』でも触れましたけども、ハランベというゴリラが銃殺されてしまったというニュースがありましたが。それを受けて、ハランベのネタを盛り込みまして。「……その時に『ゴリラを射殺するという判断は我々にとっても最も辛い、タフな決断だった』ってあいつらは言っていたけど、(事件が起こった)シンシナティではゴリラの着ぐるみを着た黒人男性が街にあふれるだろうね」っていうような皮肉のジョークも言っていまして。「黒人男性を撃つことには胸が痛まないのに、ゴリラを撃つことは苦渋の決断なのかよ?」っていう意味で喋っていたりとか。

あとは、「俺はいま、トランプホテルに泊まっているんだけど、掃除係が毎日来るんだよね。そしたら僕は『おはよう』と言って彼女のプッシーをつかむのさ。なぜなら、君のボスが『いい』って言ったらからね」っていう発言もありまして。これもトランプがめちゃめちゃアメリカでは問題になっていましたけども。「Grab ‘em by the Pussy」っていう……「俺はスターだから女なんてプッシーをつかんで好き放題だぜ!」っていうような発言が話題になっちゃいましたけども。まあ、それを引用したネタですね。

で、今日、トランプさんがテレビに出ていろいろ質疑応答などしたらしいんですけども。そこでも、「トランプ政権を怖がっている人が多いから怖がらないでほしい」なんていう風に言っていたんですけど、さんざんいままで移民の人であるとか女性差別的な発言とかを言ってきて、そんだけさんざん焚き付けておいて、いまさら「怖がらないで」というのは非常に虫がいい話だなと私も怒り心頭に思ってしまいまして。で、この「Grab ‘em by the Pussy」の話ではないですけど、「大統領がこうやって『いい』って言ってるんだから、常識に反することや人を痛めつけるようなことをしたっていいだろ?」っていうのがまかり通りかねない世界になってしまいそうだというのをすごく恐ろしく感じております。

あとは、「Black Lives Matter」の話も出しまして。「Blue Lives Matter」というスローガンも同じくあるということで。この「Blue」は何のブルーかというと、警察の制服の色なんですけども。で、Blue Lives MatterっていうのはBlack Lives Matterなどのデモ運動なんかが過激化してしまい、かつ、そこで警官の方が命を落としたことにかけて、「警察の命だって大切なんだぞ」っていうので「Blue Lives Matter」というスローガンができたんですが……まあでも、「お前、生まれた時から警官なわけじゃないんだから、そのブルーの制服が嫌ならいますぐ脱いで転職すればいいじゃん? 俺なんて生まれた時から黒人で、やめることなんてできないんだからさ」みたいなことを言っていたりとかしまして。非常にデイブ・シャペルなりにユーモアも交えてこの反トランプというか、そこに対する失望なんかを10分間のスピーチに込めていたわけなんですけども。

最後はすごく前向きというか。数週間前にホワイトハウスに招かれたというエピソードを話していまして。そのパーティーというのがホワイトハウスでオバマさんが「アフリカン・アメリカンの我々のルーツに根ざした音楽にフォーカスしたパーティーをしよう」ということで、ホストを務めたのがヒップホップアワードなんかでもおなじみのBETということで。アッシャーとか、ジャネル・モネイとかも出てきて。かつ、アフターパーティーではオバマさんが『Hotline Bling』でドレイクのダンスを真似する動画なんかもInstagramで上がっていたんですけども。その時の話をして。デイブ・シャペルもワシントンDCの出身ということで、「そのパーティーに向かう途中で本当に自分が子供の頃に使っていたバス停を発見して、子供の頃の自分に思いを馳せて。あのパーティーの夜は歴史に残るいい夜だった。素晴らしかった。とても希望に満ちた思いをしていたのに、大統領が変わってこれか……?」というようなことも言っていまして。そういうスピーチがすごく胸を打つということだったんですけども……

で、その日の音楽ゲスト。呼ばれたのがなんと18年ぶりにアルバムをリリースしたア・トライブ・コールド・クエストということで。最初にも言いましたけど、大統領選挙の後の一発目のSNLだからたぶん相当ゲストを選んでいたと思うんですけども。で、言ったらもっと国民に広く愛されているポップス歌手なんかも呼べたと思うんだけど、そこをあえて、このア・トライブ・コールド・クエスト(ATCQ)を呼ぶっていうところにSNLの心意気というか、そういうものを感じました。で、トライブ。18年ぶりに出したアルバムも非常にポリティカルな内容で、いかにもドナルド・トランプに向けたアンチ・トランプの曲なんかもたくさん盛り込まれたようなアルバムになっているんですけども。そんなアルバムを引っさげて、Qティップとジャロビとアリ・シャヒードさんがパフォーマンスをすると。

So awesome having @atcq in 8H last night. #ChappelleOnSNL

Saturday Night Live – SNLさん(@nbcsnl)が投稿した写真 –

かつ、パフォーマンスの中には昨年なくなったファイフ・ドーグへのトリビュートも盛り込まれていて。本当にね、日本時間だと日本の昼の2時半とか3時ぐらいだったんですけども。インターネットを見ながら私も涙を抑えきれず。で、Qティップも曲が始まる前に「いまからみんな、拳を上げてくれ。俺たちはひとつ。俺たちはこの国民なんだ」ということで、この曲をパフォームしました。ということで、前置きが非常に長くなってしまいましたが、この曲を聞いてみなさんも、「今後この世界、どうなっちゃうの?」っていうことに1ミリでも思いを馳せていただければと思います。では、オープニングチューンを聞いてください。ア・トライブ・コールド・クエストで『We The People』。

A Tribe Called Quest『We The People….(Live on SNL)』

はい。というわけでいまお送りしておりますのはオープニングチューンでございます。ア・トライブ・コールド・クエスト18年ぶりのスタジオ・アルバム『We Got It From Here… Thank You 4 Your Service』から『We The People』をお届けしております。そのね、私がさんざん話したSNL(サタデー・ナイト・ライブ)でのパフォーマンス動画もネットに上がっておりますので、ぜひぜひチェックしていただきたいと思います。

<書き起こしおわり>

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