宇多丸 西寺郷太『ジャネット・ジャクソンと80’sディーバたち』を語る

宇多丸 西寺郷太『ジャネット・ジャクソンと80'sディーバたち』を語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の中で西寺郷太さんの著書『ジャネット・ジャクソンと80’sディーバたち』や80’s洋楽ポップスの話をしていました。

西寺郷太さんの新刊、今回もすごく面白い!

みやーんZZさん(@miyearnzzlabo)が投稿した写真 –

いまね、ちなみに私、「(『星空のむこうの国』が公開されたのが)1986年」という話をしましたけども。先ほどね、オープニングの生鳴きで「今日は1985年っていうワードがいっぱい出るんじゃないか?」って言いましたけど、それはどういうことなのか? まあ1985年から1986年という、ここが非常に重要であるというお話を、なんと再来週に迫ったスペシャルウィークのお知らせとも絡んでくる。う~ん……謎が謎を呼ぶ。まさにタイムリープ的なと言いますか。なにが「まさに」なのか?(笑)。 これが本当にって言う時の「これが本当」ってなんだ?っていうのとかね、それと近い感じものがありますけどもね。

8月のスペシャルウィークで見事聴取率1位を獲得した我が軍。再来週の10月22日、またまたスペシャルウィークがやってきてしまうということで、ここでまたね、コンスタントに数字を取らないと、この間の数字も結局エラーか?っていうことになってしまいますので、ここはコンスタントに取らないといけない。がんばっていきたいと思っております。10月22日スペシャルウィーク、我が軍はこんな特集でさらに数字を狩りに行きます! 題して、『80’sポップとはいつ始まり、いつ終わったのか? 宇多丸 VS 西寺郷太の80’sポップス源平合戦!』って、なんてタイトルだ~! よいしょ~!

『小沢一郎マイケル・ジャクソンほぼ同一人物説特集』『V6特集』、そして昨年の『プリンス特集』など、出演するたびに数々の名企画というか本当に神企画を披露していただいているNONA REEVES西寺郷太さん。

西寺郷太と宇多丸 『プリンス論』を語る
NONA REEVES西寺郷太さんがTBSラジオ『ウィークエンドシャッフル』に出演。著書『プリンス論』の内容について触れながら、宇多丸さんとプリンスの偉大な足跡について話していました。 (宇多丸)・・・とかもしつつ、さらに本もドサドサ出すと...

タマフルの精神的支柱 西寺郷太

もうね、この番組の、出る頻度とは関係なく精神的支柱ですよね。タマフルの魂を体現する男、西寺郷太。ゴータマさん。そんな西寺郷太さんがですね、今回、80年代洋楽研究本完結編。まあマイケル・ジャクソン、プリンス、そしてウィ・アー・ザ・ワールドの呪いとかね。あとワム! の小説なんかもありましたよね。そんな諸々の80年代洋楽研究本。80年代に関する研究本はこれが最後だという覚悟で書いた本。渾身の新書『ジャネット・ジャクソンと80’sディーバたち』。こちらを先月発売されたということでございます。

で、これはですね、西寺くんの本ですからもちろん毎回毎回面白いし。特に西寺くんとは80’sのことに関してはいつもすごくいろいろ話し合っているので。本当にいつも、我が意を得たり! であったりとか。特にプリンスなんていうのはね、僕も途中のキャリアのこととか、なぜプリンスがそこまですごいのか。この段階でこうなって、何がすごいのか? なんていうのをちゃんとわかってなかったりしたんで、いつも勉強になるんですけど。今回の『ジャネット・ジャクソンと80’sディーバたち』はですね、もちろんすごい勉強になるところもありつつ、「あっ! これは俺たちがいつも話している80’s論の総括だ! 出たな!」っていう風に思ったんですよね。

それはどういうことか?っていうと、まさに明日、10月9日に三宿WEBで西寺郷太くんや高橋芳朗とか、フクタケさんとかとずっと一緒にやっている『80’sナイト』という80’s洋楽ポップ――まあ、アメリカ、イギリスですよね――の80’sの曲だけをかけるというイベントを何度もやっていてですね。明日はちなみに『生活は踊る』でおなじみジェーン・スーさんが80年代ハードロックをかけにきます(笑)。そんなあれになっていますけども。

そこの第一回なのかな? 最初にやった時に、いろんな人の選曲に関してああだこうだ言うのが楽しいわけですよ。で、たまにあるんですよ。「これは90’sだよ!」と。レイザーラモンRGさんとかにDJしてもらうと、「これ、90’s!」とかって。もう西寺くん警察がブーッ!っと飛んでいって。「これ、90’sですけど?」みたいなね(笑)。あるわけですけど。その第一回の時に、たしかにリリースされた年は80年代なんだけど、これはいわゆる80’sポップのくくりで……僕たちがこのイベントでかけたい・聞きたいと思っている80’sップのくくりではないのではないか?っていう。みなさん、ここだけ聞くと完全にクレーマーの言いがかりのように聞こえるあれを私が問題提起いたしまして。

具体的には、テディ・ライリーというプロデューサーが流行らせたニュー・ジャック・スウィングというですね、まあボビー・ブラウンとか、そういうもんだと思ってください。ボビー・ブラウンとかGUYとかいろんなアーティストがいましたけど。

ニュー・ジャック・スウィングは80年代終盤から流行りだしたビートなんで、まあ80’sは80’sなんですけど。僕はニュー・ジャック・スウィングは90’sというか。とにかくヒップホップ・インフルーエンスの下に……「あまりにもヒップホップ・インフルーエンスが強い音楽は80年代であろうと80年代じゃない! 80’sポップではない!」みたいなことを言って、「無茶苦茶ですよ、宇多丸さん!」みたいなことを言われなら。でも、なぜそういうことを言うか? みたいな話をね。要するに、これがまさに85年と86年の断層なわけですけど。まあ、85年を最後に。そして86年になるその瞬間を境に、大きく言えばやっぱりポップミュージックのあり方というのが根本的に変わってしまったのだと。それにはいろいろ理由があって、これがまさに西寺郷太さんの今回の本にも書いてあるんですけど。

だから今回の西寺郷太くんの本は、一応80’sディーバということでジャネット・ジャクソン、マドンナ、ホイットニー・ヒューストン。この3人が三本柱で書かれているんですけど、同時に、たとえば『ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い』で書かれていたようなこととか。この3人の女性アーティストに限らず、80年代とはなんだったのか? そしてそれがなぜ、80年代的なものが85年を通して終わりを迎えたのか? そして86年には、いわゆる80’s的なものが一気に終わってしまう。少なくとも若者のモード的にはそれが音楽のトレンドのモードとしては完全に入れ替わってしまうのはなぜか? という。これが完全に総括されていて。で、まさに僕らがあそこで話していたことなの。

具体的にはやっぱり、いわゆるヒップホップ的な時代になってしまう。これは別にヒップホップの音楽像だけじゃなくて、いろんな意味でそういう「リアル」というものが重んじられるというか。僕が、たとえば日本の文化に対して「ぶっちゃける時代の到来だ」っていうのをアイドル文化の時に言っていたのも、言っていることが全部一致するわけです。80’s洋楽しかり、ヒップホップの話しかり、日本のアイドルの話をしていても同じ。芸能界の話をしていても同じというような。いろんなことが85年、86年というこの断層で説明がつくというようなこと。それが今回の『ジャネット・ジャクソンと80’sディーバたち』。西寺郷太くんの新刊1冊にね、ほとんど集約されているんですよ。

だから、ある意味これまでの本を読まれている方も、読まれていない方も、これは集大成的な1冊なので。こっからガン!って読み始めるのも全然ありなんじゃないかなと思う。たとえばマイケル・ジャクソンの評価の変遷みたいなことも。だからある意味、これまでの総集編からの、まとめ。そして結論みたいな、そんな本になっているので。これ、超必読だったし。と、同時にやっぱり個々のエピソードとしては当時ね、リアルタイムで西寺くんがいろいろと……それこそ小島慶子さんの番組をやっている時とかにもお話をしていたんだけども。

たとえばホイットニー・ヒューストン。非業の死をとげられた。娘さんまで同じように死んでしまったという。そのホイットニー・ヒューストンの悲劇的な人生。ボビー・ブラウンとの関係。でもそこの西寺くんの視点がね、やっぱりね、泣けてくる。やっぱりホイットニー・ヒューストンの項は涙なしには読めないし、それに対する――これは褒めていますけども――もうバケモノとしか言いようがないマドンナ。でも、そのマドンナにもすごく心が……「あ、そんなことで心が折れそうになっていた時もあったんだ!」っていう。逆にね、そのマドンナの人間性が。でも、そこを乗り越えたことで、やっぱりすごく強みを発揮していくマドンナのエピソードとかもね、まあめちゃめちゃ面白い。勉強になるしね、決定版的な1冊になっていると思いますので。

まあぜひみなさん、これを読んでいただきたいんですが。『ジャネット・ジャクソンと80’sディーバたち』。ということで、10月22日のこの番組のスペシャルウィークなんですけども、西寺郷太くんをお招きして、その歌姫3人の話に限らず、僕がいま言ったような、そもそも80’s洋楽、80’sポップスとは一体なんだったのか? どんな魅力があったのか? そして、いつ始まり、いつどう終わってしまったのか? などなど、私と西寺郷太くんが明け方のファミレスで延々と論争し続けた80’sポップス議論を総括する特集となっております。で、80’sポップスをガンガンにかける源平合戦ってどういうことなのか?っていうね。

これは、まあ言っちゃいますけども。要するに85年の前を支配していたのが平家だとするならば、86年以降源氏が勝って支配をするわけじゃないですか。僕は80’sポップを愛して自らDJとかもやっていますけども。

宇多丸 80’s洋楽MIX

まあ、ヒップホップサイド。そっちに乗っかっていったわけじゃん(笑)。官軍に(笑)。乗っかっていった組として、だから僕はどっちかっていうと源氏側っていうことで、お互い曲をかけあいながらですね、様々なトーク、総括を。ためになるけども、ノリノリで楽しめる。そんな特集になるんじゃないかなと思っています。こちらね、音楽は生放送でしか聞けませんので。ぜひぜひ生放送でお聞きください。

ということで、まずは西寺郷太さんの『ジャネット・ジャクソンと80’sディーバたち』にちなんだタイミングということもありますので、一発ジャネット・ジャクソンをかけたいと思います。この本の中でも、要するにいま言った1985年、86年の断層。その断層をつなぐ、ある意味ポップス史上最重要アルバムぐらいの重みがあるんだけど、同時にあまりに影響が強すぎて、あまりに影響が浸透しすぎて、そのすごさをもう誰も覚えていないぐらいの……本当に革命的な作品ってそういう時があったりするんですけどね。ということで、1986年ジャネット・ジャクソンのアルバム『Control』に収録されている曲。

こちら、ビデオを撮っているのが……またPVの話をしだすと長いんだよな。ジュリアン・テンプルというね、当時の人気ミュージックビデオ監督が撮っていて。後に1986年に『ビギナーズ』というデビッド・ボウイとかも出ている、ものすごい鳴り物入りで公開された1960年のロンドンが舞台の映画。映画そのものは、正直あんまりそんなに面白い映画ではございませんが。オープニングでものすごい街全体を建てたようなセットのところをずーっとワンショット、続きのショットで追っていくというその最初のショットのシーンがすごいんですけど。

まさにそれと同じ手法で撮られたミュージックビデオで。結構階段とか坂道が印象的なすごいでっかいセットがあって。その中をジャネット・ジャクソンがずーっとワンカットで歌いながら、ずーっと歩いていくという。まあ、ワンカット風だと思うけど。途中でつながってはいると思うけど、ジュリアン・テンプルらしいビデオも素晴らしかった作品でございます。お聞きください。これ、ちょうどその80’s感とヒップホップ時代以降感のね、最良のミックスでしょうね。ジャム・アンド・ルイス、いい仕事しました。ジャネット・ジャクソンで『When I Think Of You』。

Janet Jackson『When I Think Of You』

はい。ジャネット・ジャクソンの『When I Think Of You』という曲でございます。アルバム『Control』に収録……とにかくこの『Control』がいかに革命的なアルバムか。革命的すぎて、もういまやその革命性を誰も思い出せないぐらい、みたいなね。このたとえも面白かった。「出汁みたいなものだ。出汁のことはみんな、意識しないでしょう?」っていうのがね。西寺くんの時々出るたとえがさ、時々あの人関西弁でなんか真似しだすじゃないですか。あの感じみたいなのが要所要所にポンポン出てくるのが。あと、西寺くん自身の音楽遍歴がここまで自分を導いてくれたみたいなのも入り混じっていて、さすがの筆致でございました。『ジャネット・ジャクソンと80’sディーバたち』、ぜひ、みなさん予習として読んでいただきたいと思います。

1985年が非常に重要だったというような話で言うならば、たとえば今年ムービーウォッチメンでしたばかりですけども。イギリス映画『シング・ストリート(未来へのうた)』。『シング・ストリート』が1985年である意味っていうことですよね。やっぱりね。あれが80’sの終わりなんですよ。だからやっぱり。

だから彼があそこで最後に旅立っていって80’sは終わるんですよね。くぅ~! だから最後の曲がいわゆる80’s風じゃないのも、それも必然があるとかですね。明日、その『80’sナイト』では私、宣言しておりますけども。80年代の曲しか基本、かけちゃいけないんだけど、『シング・ストリート』の曲は混ぜてかける!っていうことになっております(笑)。

後ほど、『ムービーウォッチメン』でも1985という数字、出てくるかもしれませんね。それでは、今夜のメニュー紹介に行ってみましょう!

<書き起こしおわり>

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