星野源 八月納涼歌舞伎『廓噺山名屋浦里』千秋楽を語る

星野源 八月納涼歌舞伎『廓噺山名屋浦里』千秋楽を語る 星野源のオールナイトニッポン

星野源さんがニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で中村勘九郎さん、中村七之助さんによる歌舞伎『廓噺山名屋浦里』の千秋楽を見に行った際の出来事について話していました。

(星野源)んで、そのシングル『恋』。これ、また4曲収録なんです。なんの曲が入るかはもうちょっと待ってね。で、4曲目。いつものごとくね、ハウスバージョン……僕の家で1人で録る録音があるのね。シングルの4曲目。で、その作業、すっごい楽しいんだけど、その作業を昨日、やりました。昨日録音していて、「終わるかな?」と思って。終わったら行きたいところがあったの。で、もう本当にがんばってやって。見事にいい感じのところまで行けたので、これは行ける! と思ってですね、(中村)七之助くんに前から連絡してあった歌舞伎。ねえ。中村七之助くんにちょっとお願いしまして、歌舞伎座に歌舞伎を見に行ってきました。

で、僕は第三部を見たんですけど。「本当に予定がどうなるかわからなくて。そんな感じなんだけど、ごめん!」みたいな感じでお願いしてて。「目処立った。行ける!」みたいな。「あ、ぜひ来て来て!」みたいな。そんな感じで行かせていただいたんですけど、僕、第三部だけ行かせていただきまして。これはタイトルが『廓噺山名屋浦里(さとのうわさやまなやうらざと)』という新作歌舞伎で。もともとはですね、(笑福亭)鶴瓶師匠のお落語なんですよ。で、僕は前から鶴瓶師匠に(モノマネで)「実はあの、今度新作やんえん……」って言われて。「新作やるんや」「あ、そうですか」って。それが、タモリさんが原案で、それを「落語にしてくれ」って言われて鶴瓶さんが落語にしたという。

タモリ原案の笑福亭鶴瓶の落語を歌舞伎化した演目

で、実はその落語自体を忙しくて見に行けなかったの。それが2015年。去年だったかな。で、それを中村勘九郎さんが見て、「歌舞伎にしたい」ということで歌舞伎になったそうなんです。で、それのたまたま千秋楽。いちばん最後の日だったの。昨日が。それで、ずっと見たくて。「見に行ける!」っつって見に行ったの。で、そしたらですね、たまたま、鶴瓶さんとタモリさんも見に来ていたの。たまたまよ。本当にたまたま。で、僕がトイレに行って出てきたら、本っ当に丸まってちっちゃく歩いてくる鶴瓶さんが前から来て(笑)。

もうすっごく、バレないようにバレないように、周りの人にバレないように鶴瓶さんが歩いてくるんだけど、めちゃくちゃ目立つの。鶴瓶さん。すごいおしゃれだから。あの人。で、すっごい目立つんだけど。でも、すっごくちっちゃく歩いてくるから俺にも気づかなくて。で、トントンって肩を叩いたらもう、「見つかった!」みたいな感じ。「……なんですの?」って言われて。「源です」って言ったら、「ああっ!」って鶴瓶さんがなって。で、俺、マスクしてたんだけどマスク外して、「どうも、お疲れ様です」って言ったら、「お前、マスク上げとき。大変なことになるで」って言われて。「ああ、そうですね」って上げたんだけど、鶴瓶さんはマスクしてなくて。「いや、あんたマスクしろよ!」って思って(笑)。「あんた、そんなちっちゃく歩いてくるんだったら、マスクしろよ!」ってね。

で、そんなこともあって見ていたんですが、もう本当に面白くて。もう本当に素晴らしかったんですよ。もう勘九郎さんのお芝居も最高だったし、七之助くんの女形の芝居も最高で。本当に美しくて。

話もすごく面白かったし、演出も素晴らしかったし、セットもすごかったし。だって、セリから家が1個、ドン!って出てくるんだよ。途中で。で、それが回って違ったセットになったりとか。いや、本当にすごくて。もう演出からなにから、すべて素晴らしくてですね。で、僕のちょうど斜め前にタモリさんと鶴瓶さんが見ていたの。で、2人でたまーにちょっとこう、ちっちゃく話しながら見ていて。本当になんかね、同級生が、友達がニコニコしながら見ているみたいな感じなの。それがなんかすごく、本当に友達同士で来ているみたいな感じで。

タモリさんはグレーのジャケットに白いホワイトジーンズにベージュのハットをかぶってね。上演中はもちろん、帽子は外しているんだけど、すごくかっこいい姿で。鶴瓶さんは半ズボンだったんだけど(笑)。でも、すごいかわいくて。で、その後姿を見ながら見るっていうのもすごく気持ちよくて。本当に感動して。会場の熱気もすごかったの。すっごく面白いものを見ている!っていう感覚がみんな充満しているわけ。客席中に。で、いちばん最後終わって……花魁の話なんですよ。で、花魁道中を最後にするの。花魁がね、すごくきらびやかな服を着て練り歩くところで終わるんだけど。もう見れないので……もう終わっちゃったので最後、言ってもいいかな? と思うんですけど、そういうラストなんです。で、それも本当に美しくて。本当に花魁道中って昔、こんな感じだったんだろうなって。江戸時代の話なんですけど。

で、すっごく感動したところで終わる。もう拍手が鳴り止まなくて。俺もめちゃくちゃ力いっぱい拍手して。したら、歌舞伎って普通カーテンコールないんだけど、幕が最後開いて、カーテンコールがあったのよ。それでもう、みんな自然とスタンディングオベーションで。俺も「やった!」ってずーっと拍手していて。で、目の前で鶴瓶さんもタモリさんも立って拍手しているの。で、普段カーテンコールってしないから、勘九郎さんも七之助くんもあんまりしゃべらなくて。「どうしよう?」みたいな空気の中、係員の方がタモリさんと鶴瓶さんを呼びに来たの。それで、「ええーっ?」とか言いながら、「あ、じゃあ……」って言って、鶴瓶さんとタモリさんが靴を脱いで花道を通って舞台に上がったの。で、もうすっごい拍手で。

で、その中で2人がどういう経緯でこの歌舞伎ができたか?っていう。もともとはタモリさんが『ブラタモリ』で吉原を特集した時に自分で調べ物をしていて。その中で、この話の元となった実話を見つけて、それを鶴瓶さんに落語と講談の間くらいでやってくれってリクエストを『笑っていいとも!』の楽屋でしたんだって。で、それを「ワシ、やるで」つって、新作落語にしたのをたまたま勘九郎さんが見て。それで歌舞伎になったっていう話をしていたの。で、この話の中で花魁の付き人でちっちゃい女の子が付くんですよ。その女の子のことを 禿(かむろ)っていうんだけど。その付き人の禿に「行くよ。ついて来て」って言う時に返事が「あーいー」って言って返事をするっていうシーンがあって。それがそのお話の中でギャグになっていて。男の人たちが「あーいー」って真似をしてワーッて話題になるみたいなくだりがあったの。

で、そのカーテンコールでタモリさんも鶴瓶さんもはじめてこの舞台に上がるし。やっぱりなかなかないでしょう? 役者さん以外が歌舞伎座の舞台に上がれるっていうことがなかなかないと思うんで。それでもすごく、生声でね。もちろんマイクなんてないから生声で「本当にありがとうございました。こういう自分の考えたものとか、タモリさんが言ってくれたことがこんな風に歌舞伎になるなんて思ってなかった」って言って。で、ちょっとだけ一瞬、間が空いて。もちろん誰もしゃべらないから。そしたら、鶴瓶さんが「もう、どうしたらええねん!? なあ?」ってタモリさんに言ったら、タモリさんが「あーいー」って言ったところで幕が閉ったのよ! もうその間! ドカーン!って爆笑した中で。いや、あの間のよさ。素晴らしかった! 本当に一生に1回のものを見ました。ありがとう!

(中略)

いや、そうなのよ。その歌舞伎座のね、本当にその場にいれてよかったなっていうのと、その歌舞伎でスタンディングオベーションっていうのが実は僕、2回目で。その前が勘三郎さんが出ていたコクーン歌舞伎だったんですよ。それもあってね、すごく貴重な場に行けたし。で、楽屋にお邪魔して、初めて勘九郎さんともお話できたし。すごくうれしかったです。

<書き起こしおわり>

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