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松尾潔 ジェームズ・ブラウンを語る

松尾潔 ジェームズ・ブラウンを語る NHK FM
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松尾潔さんがNHK FM『今日は一日ジェームズ・ブラウン&ファンク三昧』の中でお気に入りのファンク楽曲を1曲、紹介。ジェームズ・ブラウンにインタビューした際のエピソードを交えつつ、お話されていました。

ザ・ペイバック

(松尾潔)『今日は一日ジェームズ・ブラウン&ファンク三昧』をお聞きのみなさん、こんにちは。音楽プロデューサーの松尾潔です。僕の仕事場には、ちょっと大きめの絵が飾ってあるんですけど。それは本当、ジェームズ・ブラウン(James Brown)のポートレートなんですね。本当に神棚代わりにジェームズ・ブラウンの絵をね、毎日拝んでいるような、そんな日常をすごしております。

そんな僕が20代前半の時……具体的に言いますと92年の10月下旬ですね。に、ジェームズ・ブラウンに対面インタビューをする機会があって。これは、某民放テレビ局の番組の取材で、サンフランシスコに行きました。で、ジェームズ・ブラウンはその時59才ですね。公私ともに大変慌ただしい時期だったという風に記憶しております。その時にね、僕はジェームズ・ブラウンに聞きたいことがたくさんあったんですよ。

で、ジェームズ・ブラウン、別名がいくつかありますよね。「Godfather of Soul」とか、「ショウビズ界のいちばんの働き者(The Hardest-Working Man in Show Business)」とか。その中のひとつで、「ファンキー・プレジデント(Funky President)」っていう言葉があります。これ、僕大好きな言葉で。というのは、いまね、民主党政権でオバマが大統領で、本当にその任期が終わろうとしているぐらいなんですけども。

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ファンキー・プレジデント

で、ジェシー・ジャクソン(Jesse Jackson)っていう牧師で政治家・社会活動家がいますけど、ジェシー・ジャクソンが84年に民主党の予備選に出て、大統領予備選の有力候補になったのが84年の時点ではびっくりするようなニュースで。「おお、だいぶ時代は変わってきたな」っていう感じだったんえすけども。それから8年後のことです。で、バラク・オバマがアフリカ系として初めての大統領に選ばれる16年前のお話です。そういう時代のお話なんですけども。

その時点でファンキー・プレジデントという言葉は本当にファンキーな言葉だったんですよ。つまりアフリカン・アメリカンが大統領なんていう存在が冗談でしか出てこないような時代にファンキー・プレジデントを自ら名乗っていたんですね。まあファンキー・プレジデントってJBが言い出したのはもっと前からですけども。で、そのことから僕は聞きました。「ファンキー大統領って呼ばれることがありますよね?」って言ったら、JBはこういう風に言いました。

「ファンキー大統領っていうフレーズは15年前……いや、18年前でした。その頃の苦い時代に大統領から届くのは悪いニュースばかりでした。『落ちこんでばかりではいけない。現状から逃げるわけにはいかないが、前向きで行こう!』と言ったのがそのファンキー・プレジデントという言葉の本意だ。困難を克服して人々を先導していくというのがファンキー大統領の役割である」と。これを明快に言い切ってくれたんですね。

ならば、ということで僕は「じゃあ”ファンキー”という言葉。これはどう定義すればいいんですか?」と聞いたら、こう言いました。「ファンキーとは、幸せであるということを別の表現に置き換えたものです。『Loose』。解き放つこと、ゆったりすること、つまりは、自由であること。仕事や学校に行く時は、ファンキーじゃいけませんけどね」っていう風にオチをつけてくれたっていう感じだったんですが、まあこの時、もちろんジェームズ・ブラウン、これ以外にもいろんな話をしてくださったんですけども。

個人的な話になりますけども、その後僕の人生の指針となった言葉っていうのは次のようなものでした。「成功の秘訣っていうのは何ですか?」って聞いたんですよ。特に、アフリカン・アメリカンがショウビズで成功をおさめることが難しい時代に、破格の成功をおさめたということを踏まえて聞いたんですね。「成功の秘訣は何ですか?」と。そしたらJBはこういう風に言いました。「成功とはつまり、分かち合うことです。あなたがやっとの思いで沼から陸に這い上がることができても、それはまだ成功とは呼べません。陸に上がったら後ろを振り向いて、まだ沼であえいでいる者に手を差し伸べて御覧なさい。その人を陸に引き上げた時、はじめてそれを成功と呼ぶのです」という話でしたね。

まあこれは、うーん。20代前半の僕が不埒な気分で音楽に向かい合っていたところっていうのは多々あったんですけどもね。ピシッと音楽に向き合って、仕事にするんだったらこれを正面からとらえて、かつ、後ろを振り向くだけの余裕がなければこの仕事を続けれることはないんだなという、そういうことを学んだ瞬間でもありました。ということで、僕のファンク一曲入魂なんですけども、ジェームズ・ブラウンで『The Payback』です。

僕はこの『The Payback』の地を這うようなクールな感じっていうのが大好きなんですね。そして、あと個人的には音楽ライターを始めてまだ日が浅い頃、アン・ヴォーグ(En Vogue)という女性4人組のボーカルグループがいたんですけども。彼女たちのデビューシングルの『Hold On』という曲が、それはもうイカしたグルーヴの曲だったんですが。それはまさにこの『The Payback』を下敷きにしていたということもあって。

当時、90年代頭に入ったところだったんですが、ディケードを超えて愛されるジェームズ・ブラウンのかっこよさというか。僕、ここであえて「美しさ」って言いたいんですけども。本当に贅肉を削ぎ落としたような、それでいて絶えることがない。いつまでも、この素敵な音が続いていくんじゃないかって思わせるような、そういうグルーヴをこの『The Payback』で強く感じた、そんな記憶があります。それでは、お送りしましょう。ジェームズ・ブラウンで『The Payback』。松尾潔でした。

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James Brown『The Payback』

<書き起こしおわり>

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