町山智浩『007スペクター』を語る

町山智浩『007スペクター』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。007シリーズの最新作『007スペクター』を紹介していました。

(町山智浩)はい。じゃあ今日の本題に行きます。音楽を聞いてください。『007』です!

(町山智浩)はい。この『デンデケデンデーン♪』っていうのがね、これがかっこいいんですけど。これがもうね、53年続いているテーマミュージックですからね。

(赤江珠緒)そんなになんですね。

(町山智浩)そう。今回、24作目なんですね。『スペクター』っていう新作は。もうすぐ、日本でも公開されますけど。でも、53年間基本的なジェームズ・ボンドのテーマっていうと、この『デンデケデンデーン♪デンデンデン♪デンデケデンデーン♪』なんですよ。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)はい。で、とにかく僕は子供の頃は大変な007ブームでね。僕の子供の頃は『ゼロゼロセブン』って言っていたんですよ。

(山里亮太)あ、『ダブルオーセブン』じゃなく?

(赤江珠緒)『ゼロゼロセブン』って、そうですよね。昔、『ゼロゼロセブン』でした。そういえば。

(町山智浩)『ダブルオーセブン』になったのは最近なんですよ。だから僕が時々『ゼロゼロセブン』って言うと、若い熱心な子たちがね、『それは「ダブルオーセブン」って言うんですよ』ってわざわざ教えてくれたりするんですよ。メールとかで。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)(笑)。まあ、そういうものですよ。若い人は自分たちが何でも知っていると思うものなんでね。僕が小学校の頃はものすごい大人気で。どのぐらいすごいか?っていうと、学校の向かいに、大抵文房具屋があるでしょ?

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)小学校の向かいに、文房具屋さんがあるじゃないですか。文房具屋さんにいっぱい007グッズが置いてあるような時代だったんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)オフィシャルじゃないんで、『スパイ手帳』とかそういうスパイグッズみたいなのが置いてあるんですよ。

(赤江珠緒)ああー!

(山里亮太)あった!溶ける紙のスパイ手帳とか売ってた!

(町山智浩)そうそうそうそう!サンスタースパイ手帳って。あれは要するに007ブームで出てきたものなんですけどね。

(赤江珠緒)ああ、そうなんだ!

53年前に始まったシリーズの第24作目

(町山智浩)そう。だからアニメっていうか漫画で『サイボーグ009』っていうのがありますけど、あれはもう完全に007がヒットしたから作られたものだし。まあ、いろんなものに影響を与えて。とにかく全世界市民的な大ヒット作だったんですけど。それがもう53年ずっとやってきて。俺が生まれたのと同じ年に始まっているんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(山里亮太)1962年。

(町山智浩)62年から始まっているんですよ。で、53年やってきて。自分で何度も言って嫌な気持ちになってきましたけど(笑)。24作目。今回、『007 スペクター』っていう映画なんですね。で、これなにがすごいって、制作費が007史上最大の370億円突破してるんですよ。

(赤江珠緒)うわー!すごい。

(町山智浩)これ、バカげてるなと思いましたよ。これ、全世界での目標興行収入が1000億円を超えているんですよ。

(山里亮太)そうか。そうですね。×3ぐらいの。

(町山智浩)どんなんや!?って思いますよ。本当に(笑)。

(赤江珠緒)ええーっ!?でも、見込みがある。ちゃんと。

(町山智浩)TBSホールディングスの総資産、あれが・・・まあいいや(笑)。とにかく大変な額ですけど(笑)。でね、それがどうしてか?っていうと、この前作の『スカイフォール』っていう23作目が世界中で大ヒットしたんで。もっといけるぞ!ってことで、ほとんど同じスタッフで挑戦しているんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)監督は同じ人で、主演も同じ人で。だからもう、それ以上いくぞ!っていうことで、すごいお金をかけちゃって。大丈夫なのか?って思いましたけど。で、ええととりあえず、このジェームズ・ボンドシリーズ。007について基本的な情報を言っておいた方がいいと思うんですけど。まあ、基本的にイギリスの諜報機関のMI6っていうのに所属する00ナンバーの殺人許可証を持っている秘密諜報員なんですね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)人を殺してもいいって、勝手にイギリスが決めていて、外国に行って人を殺して。どうなっているんだ!?って思いますけども。はい。で、これは原作のイアン・フレミングっていう人が実際に第二次大戦の時にスパイ活動をしていた経験とかが元になった小説が元になっていますね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、一作目が『007 ドクター・ノオ』。1962年から始まってずっと作られているんですけど。何か、ご覧になっています?007シリーズで。

(赤江珠緒)ええとね、再放送とかでね、結構見ているような気がしますけどね。

(山里亮太)がっちり見た記憶があんまりないんですよ。僕、実は。

(町山智浩)特に作品名は思い出せない感じ?

(赤江珠緒)『ロシアより愛をこめて』とか。そのへんは見たと思うな。

(町山智浩)はいはい。ジェームズ・ボンドっていうとどんな人っていうイメージがありますか?

(赤江珠緒)なんか、タキシードを着て、アクションがすごいっていう。

(町山智浩)そうそうそう。あの、どんなに激戦な状態で、ウェットスーツとか着てても、下にはぴっちりタキシードを着てるっていうね。

(赤江珠緒)そうそうそう。

(山里亮太)蝶ネクタイつけて。

(赤江珠緒)で、あとボンド・ガールがいるでしょ?ボンド・ガールが出てくる。

(町山智浩)ボンド・ガール。そうそう。とにかく、かわいい女の子が毎回映画に3人、4人出てきて、全部ヤッちゃうっていう感じですね。はい(笑)。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)あとね、特徴としてはお酒が大好きね。いっつも強いお酒。マティーニのウォッカベースで作ったやつをいつも飲んでいてですね。あと、ギャンブルが大好きで、しょっちゅうバクチとかしてて。賭けゴルフとかですね、そういうのをしている人で。あの、この007っていうのは大当たりした最大の理由っていうのは、そのライフスタイルを売ったんですよ。

(赤江珠緒)ん?

(町山智浩)スパイ云々じゃないんですよ。つまりその、いつもいいスーツを着て、いつも高い酒を飲んで、ギャンブルをして。おしゃれに。でもって、ドレスを着たキレイな女の人をはべらせて。で、世界中を駆けまわって高級車に乗るっていうライフスタイルっていうものが存在するんだよっていうことを初めて、世界中の貧乏な人たちに教えたんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そこが当たった要因?

(町山智浩)特に日本では大橋巨泉さんっていうタレントさんは、その生き方を日本で初めて商品化していった人なんですよ。

(赤江珠緒)あ、そうなの?(笑)。

(山里亮太)えっ、えっ?どういうこと?

(赤江珠緒)ちょっと待って。イメージが、ちょっといまつながらなかったんですけど。

(町山智浩)あの人は、そういう人なんですよ。あの人はずっと、007に出てきたようなイメージっていうものを・・・日本人は当然その頃はテレビで見るだけだったんですけど。テレビでずっと放送してたんですよ。『11PM』っていう番組で。

(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)外国に行って釣りをしたりゴルフをしたり。キレイな女の人がドレス着て出てきてにっこり笑ったり。洋酒を飲んだり。その頃、日本の人たちはそれこそ、まあ商品名は出さないですけど、ものすごく安い洋酒を飲んでいたわけですよ。そこに本物のお酒の味とかを教えてくれるのが大橋巨泉で。大橋巨泉っていうのは見た目はぜんぜん違いますけど、ジェームズ・ボンドを日本に商品化した人だったんですね。

(赤江珠緒)そうかー!まあ、『クイズダービー』も言ったら賭けるみたいなものだしね。

(町山智浩)そう。その頃、日本で洋酒を飲める人っていなかったんですよ。その頃ね、1ドル360円の世界ですから。外国旅行なんて夢の夢だったんですよ。

(赤江珠緒)そうですよね。

(町山智浩)ところが、ジェームズ・ボンドは何か事件があるとパッとベテチアに行って、モスクワに行って、リオデジャネイロに飛んで・・・って、バンバン飛びまくるわけですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、世界各地のかならず高級ホテルに泊まって。スパイのくせになぜか本名ジェームズ・ボンドでチェックインして。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)それで地元の美女をかならずナンパして・・・っていうのを繰り返すわけですよ。だからそれを見て、『うわー!すげーな!ハトヤじゃねーな!』みたいな感じだったんですよ。あ、商品名だしちゃった。

(赤江珠緒)いやいやいや(笑)。

(山里亮太)『伊東に行くなら』(笑)。

007のスパイグッズ

(町山智浩)まあ、そういうすごい世界だったんですよ。で、あともうひとつはスパイグッズですね。いろんな秘密兵器が出てくるんですよ。ちょっとしたペンとか時計とかでも、全部秘密兵器が中に仕込まれていて。それでいちばんすごいのは、ボンドカーっていうね、アストンマーチンDB5っていう超超高級車。何千万円もするような自動車に、もうメカがいっぱい詰め込んであって。しかもそれをカーアクションでめちゃめちゃに壊してしまうっていうね。

(赤江珠緒)うん。

(山里亮太)あー、バブリーな・・・

(町山智浩)だってその頃、みんな360ccの自動車に乗っていた時代ですよ。日本人は。オートバイに毛が生えたようなのに乗っていたんですよ。みんな。その時代に。

(赤江珠緒)そうかー。夢が詰まっているわけだ。なるほど。

(町山智浩)そう。そこでもうすごい車を見せちゃっているから、みんなが憧れて。子供も大人も男の子はみんな憧れて、おもちゃ買ってねっていう時代だったんですよ。いつかはボンド・ガールと・・・って、それはあり得ないけどね。そういう時代だったんですが。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、ところがずっとそれでやっているうちに、もうひとつジェームズ・ボンドの特徴っていうのがあって。ジェームズ・ボンドの特徴っていうのはどんなに深刻な時になっても、敵は要するに世界を破滅させようとする凶悪な秘密組織のボスなんですね。で、核爆弾を爆発させようとか、そういうことをやっていても、ジェームズ・ボンドはいつもそこで冗談を言いながらふざけているんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)決してパニックに陥らないで、『いやー、困ったな』みたいな感じでジョークを言うっていう。それもかっこよかったんですよ。日本の人にとっては特にね。

(山里亮太)肩の力が抜けている感じ。

(町山智浩)そう。ジョークとか、言わないじゃないですか。日本の人は、そういう時にぜったい。

(赤江珠緒)そうですね。そんな深刻な場で。

(町山智浩)深刻な場で。地球が破滅するっていう時でも、なんかふざけたことを言うんですよ。で、そこもすごくよかったんですけど。ジェームズ・ボンドシリーズがどんどん進むにつれて、そこがエスカレートしていって。まず、秘密兵器がどんどんどんどん巨大化していって。SFみたいになっちゃって。宇宙に行ったりしちゃうようになったんですよ。

(赤江珠緒)はー。うんうん。

(町山智浩)それとあと、ふざけるのがどんどんふざけすぎて、ほとんどコメディーみたいになっていったんですね。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、最初はショーン・コネリーっていう俳優さんがジェームズ・ボンド一代目だったんですけど。二代目のロジャー・ムーアさんになってから、ほとんどもうコメディーみたいになっちゃって。いつもジョークを言ってふざけているみたいな感じになっていったんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、まあ秘密兵器がとんでもない秘密兵器で。そのボンドカーも途中でですね、透明になったりとかですね。もう科学的にあり得ないぐらいの超兵器になっちゃって。最強になっちゃうわけですね。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)で、そうなっちゃうともう、ちょっと違うんじゃないか?っていうのがずっと続いていって。それで、いま現在のジェームズ・ボンドはダニエル・クレイグさんっていう俳優さんが演じているんですけど。すごい怖い顔をしている人ですが。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)まあ、ちょっと冗談を言う感じの人じゃないんで、シリアス路線に行ったんですよ。2006年の『カジノ・ロワイヤル』から。で、バカみたいな超兵器も出さない。SFみたいにしない。あと、ふざけない。学校の先生みたいですけど。言ってるの、俺(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)『ふざけちゃダメだぞ、そこ!』みたいな感じですけど(笑)。それであと、あんまりエッチなこともしないっていうね。

(赤江珠緒)ええーっ?そうなんですか?

(町山智浩)そう。だからね、『悲しみの代償』だっけ?忘れちゃった。この間の日本語タイトル。あ、『慰めの報酬』か。ぜんぜん違いました。『慰めの報酬』ではボンド・ガールとエッチしないんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(山里亮太)いままでずっとしてきたのに?

(赤江珠緒)ジェームズ・ボンドともあろう人が。

(町山智浩)そう。いままでしてきたのに。しかも、そのボンド・ガールの名前がオルガ・キュリレンコちゃんっていう、もう名前からしていやらしいエッチな女の子が出てくるのに・・・

(山里亮太)(笑)

(赤江珠緒)いやいやいや、それがいやらしいかどうかはちょっとわからないですけど(笑)。

(町山智浩)そう。オルガちゃんと何もしないんですよ。オルガなことをね。そのぐらい真面目になっちゃって。しかも、この間の『スカイフォール』に至っては、ボンド・ガールがなんとジュディ・デンチっていう上司の60才すぎのおばあさんだったっていう。

(赤江珠緒)そうだそうだ。話題になった!

(町山智浩)どんどんエッチ路線から外れていっちゃったんですよ。で、まあ非常に真面目でシリアスにやって。それで、興行的には『スカイフォール』は大当たりしてるんですね。

(赤江珠緒)ふーん。

(山里亮太)ああ、じゃあそっちなんだ。

(町山智浩)ただこの間の『スカイフォール』では、いちばん最後の最後で、そのショーン・コネリーがいた頃の007の初代の、始まった頃の007のオフィス。事務所を最後に出してですね、『原点に戻るよ』って言って終わったんですよ。

(赤江珠緒)ほー。

(山里亮太)ってことは?

(町山智浩)そうなんですよ。ボンドカーも出して。いままでちょっと真面目路線で、はっきり言うとバットマンの『ダークナイト』に影響されたシリアスヘビー路線に行ったんだけど、『スカイフォール』の最後に『戻すよ』って言って終わったところで今回の『スペクター』なんですよ。

(赤江珠緒)おっ、そうですか。

(町山智浩)そうなんですよ。だから戻しが思いっきりかかっているんですよ。初期の頃のショーン・コネリー時代に。

(赤江珠緒)あ、その方がいいんじゃないですか?

(町山智浩)で、ショーン・コネリー時代っていうのは、ショーン・コネリーっていうのはとにかくセクシーの塊なんですよ。で、なんて言うかね、たぶんね、『サラリーマンNEO』の沢村一樹さんのセクシー部長はたぶんその頃のショーン・コネリーの影響を受けていると思うんですよ。

(赤江珠緒)(笑)。本当!?そうなんですか?

(町山智浩)あれ、なにかトラブルがあるとかならずそのセクシーパワーでもって女性をメロメロにして事件を解決するじゃないですか。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)ショーン・コネリーって初期の頃、全部それで。敵の秘書とか敵の戦闘員とか、とにかく女性がいると全部メロメロにして裏切らせるっていうパターンで事件を解決してたんですよ。

(赤江珠緒)ああー、なるほど。ラブの力ですね。最後はね。

(町山智浩)そう。『ゴールドフィンガー』なんて敵の方がショーン・コネリーに口説き落とされないように敵の戦闘員を全員レズビアンにしたにもかかわらず、メロメロにされちゃうんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)そのぐらいのセクシーパワーがショーン・コネリーだったんですけど。今回、そこに戻しをかけてますから。

(赤江珠緒)でも、ダニエル・クレイグさんで?

原点回帰の『スペクター』

(町山智浩)そう。ジェームズ・ボンドはね、要するに敵の情報を握っている美熟女のモニカ・ベルッチさんっていうイタリアの名女優に近づいていくんですね。ところが近づく場所が、彼女はですね、イタリアの犯罪者の大物の未亡人なんで。しかもその旦那が死んだ葬式の現場に行くんですよ。ジェームズ・ボンドが。

(赤江珠緒)ふんふんふん。

(町山智浩)で、いきなり葬式の棺桶の横で喪服の未亡人を口説いてですね。その場でエッチしちゃうんですよ。

(赤江珠緒)ほー。

(山里亮太)いきなり、エロ路線が復活。

(町山智浩)喪服の未亡人とエッチって、それジジイ向け雑誌に広告が出ているエロビデオかと思いましたよ!

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)そうですね。なんか古き良きエロビデオな感じがしますよね。

(町山智浩)ねえ。まあ着物だけどね。喪服っつっても。なんだろう?と思いましたけどね。しかもこのモニカ・ベルッチさん、51才なんですよね。

(山里亮太)あ、美熟女。

(赤江珠緒)見えないね。たしかに。

(町山智浩)まあ、すごいですけど。でも、娘さんね、もうすぐ高校生なんですよ。娘さんもいろいろ複雑な気持ちだと思いますよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)『母ちゃんね、ボンド・ガールじゃなくてボンド母ちゃんじゃないの!』とか家で言っていると思いますけどね。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)『ダメだよ』とか言われてね(笑)。

(町山智浩)それはぜんぜん違う話ですが(笑)。で、あと原点回帰っていう点でいちばんの原点回帰はこのタイトルになっているスペクターなんですよ。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)このスペクターっていうのはね、日本語のダジャレを連発する変なアメリカ人なんですよ。

(山里亮太)あ、へー!

(赤江珠緒)ああ、でもこの写真を見て、この白い猫。そうそう。悪の張本人みたいな人が・・・

(町山智浩)俺、冗談言ったんですけど、突っ込んでくださいよ(笑)。

(赤江珠緒)えっ?なになに?あ、デーブ・スペクター?

(山里亮太)ちょっと。僕ら、『そうか。ダジャレ言う人なんだ』って思って。

(赤江珠緒)ああ、そうだった(笑)。

(町山智浩)『なんでデーブさんが007に出るんですか?』とか言った方がいいと思うんですけどね(笑)。まあいいや、はい(笑)。

(赤江珠緒)ちょっといま、資料の写真を見込んでました。

(山里亮太)『スペクターってそんなダジャレを言うキャラなんだ』と思って、聞き入っちゃった(笑)。

(町山智浩)あのね、スペクター、つづりが違って。デーブさんのスペクター(Spector)はね、『学校の先生』みたいな意味なんですよ。苗字は。でもこっちのスペクターはね、つづりが違うんで。こっち(Spectre)は、『幽霊』っていう意味なんですね。007の方は。

(赤江珠緒)ほー。

(町山智浩)これはね、世界征服を企む悪の秘密組織の名前で。スペクターっていうのは。これは実はショーン・コネリーの時代の初期の007ではずーっとジェームズ・ボンドの宿敵だったんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、ずーっとこれと戦っていたんですけどね。これがとうとう復活したんですよ。今回の『スペクター』で。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)なんでね、ずっと使えなかったか?っていうと・・・まあまあ、スペクターっていう名前の意味があってですね。これが、国際犯罪組織なんですけど。『SPECTRE』っていうイニシャルになっていて。これは『対敵情報、テロリズム、復讐、恐喝のための組織(SPecial Executive for Counter-intelligence, Terrorism, Revenge and Extortion)』っていうとんでもない名前の組織の略語なんですね。スペクターっていうのは。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、これはどういうことをやっているか?っていうと、世界各国いろんな国があるんですけど、それ同士を裏で操って戦争をさせたりですね。経済危機とか内紛とかをコントロールして操って、世界をめちゃめちゃにすることでもって漁夫の利を得て儲けるっていうですね、国家とか民族とかイデオロギーを超えた犯罪超国家ネットワークなんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、こういうものがあるんだっていう考えが当時、60年代っていうのはすごく思ったのは、アメリカとソ連が核爆弾を持っていて睨み合っていて。いつ戦争するかわからない状態だったんですね。世界が滅びるかもしれないと。で、これは裏で焚きつけているやつがいるんじゃないか?っていう陰謀論があったんですよ。

(赤江珠緒)はー、ええ、ええ。

(町山智浩)両方を操って戦争をさせて儲けようとしているやつらがいるんじゃないか?と。で、それがスペクターというものになって。だからこれが、すごくいろんなものに影響を与えて。仮面ライダーにおけるショッカーの原点ですね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)つまり、共産圏にも資本主義圏にもどこにでもいて、全部裏で政府を操っているっていう。

(赤江珠緒)なんかルパンとかにも出てきそうですね。

(町山智浩)出てきそうだけど。最近だとね、『キャプテン・アメリカ』っていうので『ウィンター・ソルジャー』っていうのに出てきたヒドラ(ハイドラ)っていう組織がまったくスペクターとほとんど同じ組織でしたね。アメリカを操って、アメリカがやろうとしている国民監視システムを裏から乗っ取って、それを悪用しようとするっていう話でしたけど。『キャプテン・アメリカ』は。

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(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)もう、スペクターが原点なんですよ。それは。

(山里亮太)悪と言えば。

(赤江珠緒)この白い猫を抱いているの、なんかちょっと覚えがありますた。

(町山智浩)あ、これがスペクターの首領のブロフェルドっていう悪の天才なんですよ。これがいちばん悪いやつなんですけど。これが首領なんですね。で、このぐらい面白い敵なのに使えなかったのはね、『サンダーボール作戦』っていう小説で初めてスペクターが想像されたんだけど。その時に、共同執筆者だった人が著作権裁判を起こして。映画化権を独占しちゃったんですよ。ずっと。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それでずっと使えなかったんですけど。やっと、その映画化権を買い取ったんで。今回、スペクターが使えるようになったっていう理由なんですね。

(山里亮太)へー!あ、じゃあ待ちに待っていたんですね。みんな。もう。

(町山智浩)そう。まあ、著作権の理由だけで使えなかったんでね。はい。で、まあスペクターっていうのはどういう組織か?っていうとね、世界中の幹部を集めて会議をやっているんですよ。で、いろんな事業報告をさせるんですね。業務成績の。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)たとえば、『マンションの杭打ちで手抜き工事をしまくって、世間を不安に陥れました!』とか言うんですよ。

(赤江珠緒)いや、そんな会議じゃないでしょ?

(町山智浩)『よくやった!』って言うんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)いや、違いますよ。あれ、スペクターなんすか?いま、日本で問題になってんの?

(町山智浩)そう。『フォトショップを使って、AV女優の顔を100倍ぐらい美人に修正したパッケージのDVDを売りまくって、人々をがっかりさせました!』とかね。『よくやった!』っていうね(笑)。

(山里亮太)ちょっと!ジェームズ・ボンド、がんばってもらわないと。

(町山智浩)そういう世界なんですよ。そう。みんなそれでがんばっているんですよ。スペクターが。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)っていう話でね。あと、話ぜんぜん説明できなくなってきましたけどね。まあ、そういう原点回帰をやっているのが今回の『スペクター』ですね。

(赤江珠緒)そうかー。もう町山さん、本当真剣に聞いていたらどこで何を挟んでくるか、わかんないですからね。ちょっと(笑)。

(町山智浩)怖くなっちゃった?大丈夫?ちなみにね、そのスペクターの首領のブロフェルドっていうのは原作者のイアン・フレミングが高校の時に仲が悪かった同級生の名前をつけたらしいんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)さすがだね。そういうことしたいな、俺も(笑)。

(町山智浩)意外と根に持つやつなんですよ。原作者ね。っていう感じで笑っちゃうんですけどね。で、今回、ぜんぜんストーリーの説明してないから全くネタバレしてないんですが。今回のスペクターではね、初めてね、スペクターが悪事を繰り返す本当の理由がシリーズ史上初めて明かされるんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)そこがまあ、売りなんですけど。なんて言うかね、ちょっとだけ言うと、旧約聖書のカインとアベルの話みたいな感じでしたね。

(赤江珠緒)おっ!何か深い感じですよ。兄弟間か?

(町山智浩)深い感じになってますけどね。でもそれ、前にもやっているような気がするな。ジェームズ・ボンドと思いましたけど(笑)。まあ、そんな感じの映画でね。なんで、もうギリギリだから言いますけど、ダニエル・クレイグの裸はありませんでした。今回。あの人、裸が売り物なのに。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)滑り込みで(笑)。

(赤江珠緒)急いで入れなくていいことですけど。はい。

(町山智浩)ただね、彼が若い頃に出たね、『愛の悪魔』っていう映画をDVDで探すとね、ダニエル・クレイグのオールヌードと、しかも彼の黄金銃と・・・

(赤江珠緒)追加情報、いいですよ。町山さん!ありがとうございます。今日は『007 スペクター』、ご紹介いただきました。

(山里亮太)(笑)。なんでヌード情報をこんなに・・・

(赤江珠緒)日本では12月4日公開です。町山さん、ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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