町山智浩『ザ・フィフティーズ 1950年代アメリカの光と影』を語る

町山智浩『ザ・フィフティーズ 1950年代アメリカの光と影』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、デイヴィッド・ハルバースタムの著書『ザ・フィフティーズ 1950年代アメリカの光と影』を紹介していました。

ザ・フィフティーズ1: 1950年代アメリカの光と影 (ちくま文庫)

(町山智浩)で、あと最後でですね、ちょっと時間がないんですが。ええと、文庫が出まして。ちくま文庫から『ザ・フィフティーズ』っていう文庫が出たんですが。全3巻という、ものすごい分厚い。とんでもない厚さなんですけど。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)これ、僕がですね、解説を書きました。書いたっていうか、語ってるんですけど。明治大学の名誉教授の越智道雄先生と一緒に僕が語ってるんですけども。これは『1950年代のアメリカの光と影』という副題がついてまして。デイヴィッド・ハルバースタムというジャーナリストがアメリカの1950年代っていうのはいまのアメリカだけじゃなくて、全世界の資本主義の基本的な形態を作ったと言われてるんですね。

(赤江珠緒)はー。

全世界の資本主義の基本的な形態は1950年代に作られた

(町山智浩)で、それをまあ、語ってるんですが。たとえばまあ、庭付き一戸建ての住宅っていうのに車があって、電化製品があって・・・っていう生活ってあるじゃないですか。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)それは、この1950年代にアメリカで商品として出されたものだったんですよ。デヴィッドタウンっていう町があって。それが、庭が家の前にあって、ガレージがあって、電気冷蔵庫とかそういうのがあって、テレビがあってっていう、ひとつの形をセットとして作って。それを大量に販売したんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)そこから始まったんです。でもみんな、それが憧れだと思ってるでしょ?世界中の人が。でも、それは商品だったんですよ。ひとつの。パック商品だったんです。

(赤江珠緒)あ、そうなんですか?

(町山智浩)そうなんですよ。あと、マクドナルドっていうのもこの時代に、50年代に作られたんですけども。あれは、マクドナルドっていう本来のマクドナルド兄弟が経営していたハンバーガーストアっていうのは、潰れてるんですよ。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)あれはチェーン店にしたのは、全く別の人物です。

(山里亮太)ええーっ!?

(町山智浩)そう。で、あれを全国チェーンにした、ファストフード店っていうシステムを作ったんですよ。別の人が。で、本来のマクドナルド兄弟がやっていたマクドナルドハンバーガー店は潰れています。

(赤江珠緒)ええっ?

(山里亮太)もうないんですか?

(町山智浩)ないんです。

(山里亮太)出発点は?

(町山智浩)ないんです。

(赤江珠緒)ちょっと不思議な事態じゃないですか。だって、やっぱりママ、パパがいて、ちょっと大きな犬を飼って。朝はミルクをかけてフレーク食べましょうみたいな。

(町山智浩)アメリカ的な生活のイメージ。世界中の人がそれを目指していたんですけども。それは50年代にどれもが商品として作られたものだったということがわかるんですよ。その、『ザ・フィフティーズ』っていう本では。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)で、これを書いた人はですね、デイヴィッド・ハルバースタムっていう人は、この人はなんで有名か?っていうと、ベトナム戦争はインチキだっていうのを暴いた人なんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)ベトナム戦争が起っている最中に現場取材をしまして。ベトナムに行って。これは、みんな知らないけど、完全な泥沼になっていて、アメリカは勝ち目ないよってことを暴いちゃった。それでまあ、アメリカ政府からものすごい嫌われたんですけども。そういう偉大なジャーナリストですね。

(赤江珠緒)事実でしたもんね。

(町山智浩)事実でした。はい。で、あとこの人が書いた本ですごく有名で、日本でもテレビでNHKでやりましたけど、『覇者の驕り』っていうノンフィクションで。それは、どうしてアメリカの自動車産業が日本の自動車産業に負けたのか?っていうことを暴いていく本でした。

(赤江珠緒)ほー!アメリカ人がそれを書いた?

(町山智浩)アメリカ人が書いた。ハルバースタムっていう人が。それでこれ、僕が越智先生と一緒に内容に関して説明しているんですけど。越智道雄先生っていうのは僕の師匠なんですよ。

(赤江珠緒)師匠?はい。

(町山智浩)アメリカ研究について、僕が日本で編集者をやっている時にですね、越智先生と組んで原稿を書いて。その中で、アメリカについて教えてもらって。で、僕自身がアメリカに結局住むことになったきっかけを作ってくれた先生。まあ、素晴らしい先生でね。大師匠なので、最後に僕と越智先生の対談がついてますんで。すいません。プレゼント、ないのか(笑)。

(赤江珠緒)いやー、これは読みたいですね。

(町山智浩)もうぜひ。ちくま文庫の『ザ・フィフティーズ』全3巻。ものすごく分厚いですが、マクドナルドって結局なんなの?とか、そういうことがわかるんで。ぜひ、読んでいただければと。

(山里亮太)結構いろいろと、僕らがいま当たり前だと思っているイメージが、これ1冊で覆されていくことが多いって感じですかね?

(町山智浩)あと、クイズ番組ってあるじゃないですか。やらせってやっちゃいけないことなんですよ。テレビって。やらせって最初、みんなやってたんですよ。アメリカのテレビって。放送が始まった頃。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)それが、あるクイズ番組でやらせをやったことが発覚して、法律的に縛るようになったんですけど。そのきっかけとなった事件とかも書いてあります。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)アメリカってテレビ、放送当初はデタラメだったんですよ。コマーシャルとかもインチキ商品をいっぱい売ってたし。で、映画もそうですけど、アメリカ、ハリウッド映画っていうのは最初はセックスとバイオレンスだらけだったのを、後から規制が入っているんで。なんでもそうだけど、始まりの時はデタラメなんですよ。

(赤江珠緒)うわー!

(町山智浩)なんでもOKなの。だんだんだんだん、厳しくなるんですよ(笑)。

(赤江珠緒)そうかー。

(山里亮太)デタラメなものを作って、そこに法の規制が入って。

(町山智浩)法の規制が後から入ってくる。

(赤江珠緒)ちょっとその、ハリボテっていうか、看板みたいなところにうわー!ってみんなひかれていった部分もあるんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。たとえばアメリカはその頃、一戸建ての住宅に奥さんがそこで専業主婦をして・・・っていう。専業主婦っていうのはそれまでアメリカにはほとんどいなかったんです。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)専業主婦っていうのがひとつの型になったのは、戦争の時は女の人も一緒に働いていたんですよ。職場に。したら、1950年代に入って、女の人は専業主婦がいちばんかっこいい!ってことになって。『男はサラリーマンで働いている間、奥さんは家でもって家をきれいにして、お花を植えたり、庭仕事をしたりね。で、奥様方とお茶飲んでお話をしたりするのがおしゃれなのよ』みたいなことが作られたのが、1950年代からなんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)それまではそういうもの、ないんです。それをやれるのは、貴族だけだったんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうか。

(町山智浩)みんな、共働きだったんですよ。アメリカの庶民、みんな。世界中の庶民は、ほとんど。それを専業主婦っていうものを作って、奥さんが旦那が会社に行っている間、家でずっといるという形っていうのは、戦後作られたものなんですよ。

(山里亮太)理想って、僕らが心から思っているんじゃなくて、勝手にイメージつけられてたんですね。

(町山智浩)で、どうなったか?っていうと、奥さんたちはみんな性的欲求不満になって、大変なことになっていったんですよ。アメリカでは。

(赤江・山里)ええーっ!?

(町山智浩)っていうことが暴かれていくというものですね。

(赤江珠緒)これも知りたいことがたくさん入ってそうですね。『ザ・フィフティーズ』ということで。

(町山智浩)ぜひ。ダラダラと読むだけで、1年ぐらいかかりますけど(笑)。

(赤江珠緒)そうですか。越智道雄先生とね、町山さんの。

(町山智浩)『ザ・フィフティーズ』、ちくま文庫。よろしくお願いします。はい。あっ、ちゃんときっちり、全部、全部。

(赤江珠緒)うわー、すごい。町山さん。今日は情報盛りだくさんなのに。

(町山智浩)全部やりました。はい(笑)。

<書き起こしおわり>

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