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町山智浩と武田砂鉄 日本の出版界と『言霊USA XXL』を語る

町山智浩と武田砂鉄 日本の出版界と『言霊USA XXL』を語る ACTION
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町山智浩さんがTBSラジオ『ACTION』に出演。武田砂鉄さんと日本の出版界の過去と現在、そして自身の新刊『アメリカ炎上通信 言霊USA XXL』などについて話していました。

(武田砂鉄)ここからは毎日ゲストをお迎えするゲストアクション。本日のゲストはたまむすび火曜日に出演してらっしゃる映画評論家の町山智浩さんです。よろしくお願いします。

(町山智浩)よろしくお願いします。

(武田砂鉄)今日ははじめてお会いするんですけども。火曜日のたまむすびに出てらして、僕は……。

(町山智浩)いいシャツを着てますね。パンテラを着てますね。

(武田砂鉄)これはパンテラというですね……。

(町山智浩)ロックの黒Tを着ている中年男っていうのはダメ人間ですよ(笑)。ダメ人間認定(笑)。

(幸坂理加)アハハハハハハッ!

(武田砂鉄)ダメ人間ですよ(笑)。でもダメ人間同士で対話できるですよ。これはパンテラという90年代のハードコアバンドですよ。で、だから火曜日のたまむすびの時間、僕は他の番組に隔週で出てるんで。全く同じ時間帯にコーナーをやってるので、こうやってお会いすることもいままでなかったということなんですけども。ちょうどお帰りになってるところなので。本日はちゃんと目も覚めて、お越しいただいて。ありがとうございました。

(町山智浩)いえいえ、お邪魔してすいません。キャンペーン期間中なんですよ。新刊が出まして。

(武田砂鉄)新刊。これは週刊文春で連載している……。

(町山智浩)『言霊USA』っていう連載が1年ちょっと分まとまったもので。『アメリカ炎上通信 言霊USA XXL』という……本がデカいんですよ。いままで単行本サイズでこのぐらいの大きさだったんですが、1.5倍増しになりましたんで。

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町山 智浩
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(武田砂鉄)この連載ってもう何年ぐらいやってらっしゃるんですか?

(町山智浩)10年ですよ。500回。

(武田砂鉄)僕、だから週刊誌で……僕はずっとナンシー関さんとか小田嶋隆さんとか、町山さんももちろんそうですけれども。週刊誌でずっと連載をするっていうのってすごく憧れがあるんですよね。それをいま、なかなか1から積み上げていくことって難しいじゃないですか。週刊誌みんな、町山さんぐらいの年代の人たちが牛耳っていて。

(町山智浩)ああー、ジジイが上で踏ん張っているからね(笑)。早く死なないとならないですね。

(武田砂鉄)退場しないんですよ。で、人によっては「こんなくだらないことを書きやがって!」っていう人がいろんな記録を樹立してたりするんですけども。

(町山智浩)それはね、本当はもう退場した方がいいんだけど、退場すると「あいつは人気がないから退場した」って言われるのが悔しいからやっているだけですから。みんな。

(武田砂鉄)ああ、そうですか? そう言われるのが嫌だから、中身のないあれだったとしてもずっと続けていると?

(町山智浩)言われるまで続けるっていう人が多いですね。

(武田砂鉄)そうですか。だから席が空かないんですよ。

(町山智浩)殺すしかないですね(笑)。

(幸坂理加)やだー(笑)。

(武田砂鉄)だって、僕が中学・高校時代から、それこそ小田嶋さんの文章であり町山さんの文章ってういのを読んできて。でもいま、たまむすびの月曜日と火曜日が小田嶋さんと町山さんが出ていてね。

(町山智浩)いつまでもやっていてね。隠居しやがれって思いますよね。本当にね。

(武田砂鉄)本当に席を譲らない人たちだなって思って(笑)。

(町山智浩)俺が席を譲らない頑固なやつみたいに言わないで?(笑)。「じゃあ、やめようか?」みたいな話になっちゃうよ(笑)。

(武田砂鉄)いや、それを僕たちの世代はどう倒していくのか?っていうことで。

(町山智浩)「どう倒していくのか」。

(武田砂鉄)足を引っ掛けて倒してくかっていうことをしなきゃいけないんですけどね。

(町山智浩)やっぱりこれはバトルしかないのかな? でも、じゃあ僕が誰かとバトルをしたのか?っていうと、全然していないからな。

(武田砂鉄)していないですか? 物書きになった時に目の上のたんこぶみたいな人がバーッと揃っていたっていうことはないんですか?

(町山智浩)ああ、そういうことは……でも椎名誠さんが結構あれでしたよ。大物のコラムニストとしておられたんですけど、週刊文春を自分から降りられて空きができたみたいな、そういうところはありますよ。だから、自主的に退場する人もいますよね。

(武田砂鉄)たしかにな。でも、町山さんと自分のキャリアとして同じところはその最初に編集者をやってからライター、物書きになったというところは一応共通点ではあるかなと思うんですけども。編集者からライターになるっていうのは、利点はありますか?

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編集者からライターになる利点

(町山智浩)利点は、だから締め切りの本当の締め切りを知っている(笑)。ギリギリでどこまで伸ばせるかを知っているという(笑)。

(武田砂鉄)印刷スケジュールから逆算するっていう嫌なやつをね。

(町山智浩)「まだ入るでしょう?」みたいなね。

(武田砂鉄)「月刊誌だったら印刷所おさえているでしょ?」とかって言って。「まだいけるでしょ?」って。

(町山智浩)そうそう。週刊誌だと中綴じになっているから「折り」っていうんですけども、折りの外側の方にページを回してもらえればスクープが入るギリギリまで原稿を伸ばせるでしょ? とか、そういうことを知っているわけですよ。技術的な部分を(笑)。

(武田砂鉄)いちばん嫌なパターンの書き手ですよね。本当にスケジュールを把握しているから。

(町山智浩)そう(笑)。それは編集者ならではですよね。

(武田砂鉄)そうですよね。だから締め切りというのは前にもいいましたけど、三段階あるんですよね。最初に編集者が言ってくる締め切りと、「まあこれぐらいに出しとけばいいだろう」っていう締め切りと、本当にヤバい締め切りっていうのがあるので。

(町山智浩)でも、あんまりそこまで伸ばすのを何回も続けると、編集者を全員敵に回すことになるから。それこそ連載を切られますからね(笑)。

(武田砂鉄)だから僕もその三段階あるうちの二番目ぐらいで出しておくのがいちばんいいかな?って……。

(町山智浩)一番目にしろよ!(笑)。

(武田砂鉄)いやいやいや、二番目ぐらいにしておくのがいいのかな?って(笑)。

(町山智浩)なにをもったいぶって……パーティーにかならず最初から来ない人っているじゃないですか。人が集まってから来るみたいな、もったいぶっているみたいですよ、それは。

(武田砂鉄)嫌ですねー。6時開始でだいたい6時半ぐらいに来て。「ちょっと時間が空いたから来たよ」なんて。本当は最初から来れるのに。

(町山智浩)ちょっと売れているふりして。忙しいふりをして。最初から来ていると仕事がないみたいに見えるから……って。まあ、そういう感じですよ。締め切り通りに出すと忙しくないみたいだから、締め切りギリギリで入れるとか。本当は実は余っているっていう。

(武田砂鉄)そう。本当はそういうタイプですよ。本当はパーティー会場の近くの喫茶店で時間を潰しているっていう、いちばんタチの悪いタイプですよ(笑)。

(町山智浩)すぐに行けよ!っていうね(笑)。本当は原稿書けるんだけど「こんなに早く入れたら俺が暇だと思われるから、ちょっと締め切りを遅らせよう」って、いちばん自意識過剰ですね、それは。よくないですね(笑)。

(幸坂理加)見破られている(笑)。

(武田砂鉄)ご同業の方に会うと見破られるのは嫌なんですよね。だいたい体質がわかっちゃうから。まあでも、本当に自分が物書きになるきっかけになったのは80年代、90年代に出ていたサブカルチャー……やっぱり町山さんがやられていた別冊宝島のシリーズなんていうのは本当によく買っていて。昨日もたまたま本棚を漁ってたら、別冊宝島の『ライターの事情』っていう本が出てきて。これ、厳しい事情しか書かれていないようなところがありましたけども。

(町山智浩)でもいまはこれよりももっと厳しくなってますよね。

(武田砂鉄)そうですよね。いま、これを読み直すと「これだけふんだんに取材費が出ていたんだ」とか「これだけ自由に行動できたんだ」っていうある種、羨ましさもあるんですけど。

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別冊宝島時代の出版界

(町山智浩)これは1991年ですか。この時、400字で4000円だったんですよ。僕がいた別冊宝島で。いまもあまり変わっていないんじゃないですか?

(武田砂鉄)そうなんですよ。これだけ物価が変動してもライターに払われるギャラっていうのは変わっていないんですよね。変わっていないというか、むしろ……っていうような状況がありますからね。

(町山智浩)それで部数がはっきり言いますけど、この頃の別冊宝島って初版で何部だったでしょうか?

(武田砂鉄)ええと、いまの基準で言うと1万5000部ぐらいだと思うんですよね。

(町山智浩)全然。3万5000スタート。で、10万は普通。

(武田砂鉄)すごいことですよね。

(町山智浩)それで著者全員に印税を払っていましたね。

(武田砂鉄)ああ、印税払いですか? 普通、ライターっていうのは書いたきりでいくらっていう感じなんだけども。著作だと重版っていって売れたらその分、印税が入るんだけど。こういう雑誌形式で印税払いしているっていうのはすごいよな。

(町山智浩)印税払っていたのはうちぐらいだと思いますよ。

(武田砂鉄)それはある種、どんなテーマをやっても「別冊宝島だから」って食らいついてきてくれるっていうイメージがあったんですか?

(町山智浩)あったんですね。その頃は。だから僕はその頃は10万部以上出した別冊宝島が4、5冊ありますけど。そうするとだから、まあ売上で軽く億行くわけですよ。まあ、本当にいい時代でしたね(笑)。

(武田砂鉄)でも本当に先輩たちに会うとね、「いい時代でしたね」って終わるんだけど。でも、「それ、終わらせないでくれよ」って勝手に思ったりもするんですけどね。

(町山智浩)でも、書店数も減っているし。流通させること自体がもうほとんど……最初の初刷でもって書店の数少ないわけですから。もう数に限界が出ていますからね。

(武田砂鉄)でもたぶん、この当時のライターの方たちって編集者から言われたテーマについて本当は別に自分で詳しくなかったとしても「やります! 3週間後にあげます!」って言ってたぶん、あげてきたと思うんですよね。

(町山智浩)そういう時代でした。

(武田砂鉄)そういう時代でしたよね。たぶんいまってあんまりそうじゃなくて、「政治についてはこの人に聞こう」とか「サブカルチャーのこの音楽についてはこの人に聞こう」っていう風に、すごく物書きの範囲がミニマムになってるんですよね。それをなんか、自分が読んできた物書きの方たちって何度もやってたから。自分なんかもなんでもやってやろうって思っているんですけど。なんかいま、発注する側がスペシャリストばっかりに発注しようっていう意識が強くて。なんでもやらせてくれるっていう感じは実は薄まってたりするんですよね。

(町山智浩)この頃はまだニュージャーナリズムの影響があったんですよ。だから「自分が知らないところに飛び込んで、それを体験して調べて、それをそのまま書く」というジャーナリズムがアメリカから入ってたものなんですけど。それがそれこそ藤原新也さんであるとか、いろんな方々がやっていて。

たとえば小田実さんとかね。『何でも見てやろう』みたいな。の一環で作られてるんですよ。特に別冊宝島っていうのは根底にそのアメリカン・ジャーナリズムでもローリング・ストーン誌であるとか……それがいろんなライターとかに、ロックライターとかに大統領選挙を取材させるとか、そういうことをやっていたんですよ。その延長線上にあるんですよ。

(武田砂鉄)だからそういう、ニュージャーナリズムの文章もそうだし、こういった文章もそうなんですけど、結構イントロに「葛藤する自分」みたいなのが割と5、6枚書かれてたりするんですよね。いまはたぶん「それ、葛藤しなくていい」って言われちゃうことが多いと思うんですけども。それはたぶんニュージャーナリズムの時の、結構キザに書く人も多かったじゃないですか。「風が俺を呼んでいる」みたいなところから始まって云々……みたいな。でも、ああいうものに対して自分なんかは憧れがあったんだけども。

(町山智浩)沢木耕太郎さんみたいな文章を書くやつがいるんですね。結構ね。そうすると僕はボツを出しますね。「鏡を見て書けよ、バカヤロー!」って(笑)。

(武田砂鉄)沢木耕太郎さんはもちろんいいんだけど、沢木耕太郎的な文章っていうのがいちばん厄介なんですよね。

(町山智浩)もうナルシスティックなのを書いてくるやつがいるんですけども。そういうのは「鏡を見て出直せ」って言ってましたね。

(武田砂鉄)なかなか現場にたどり着かないで、自分の思いをずっと書き連ねているっていう。そういうのが多かったんだよな。

(町山智浩)だからこの頃はね、とにかく「わからない」っていうものに……だからオタクの本っていうのを作った時は、そのオタクの人に書かせるんじゃなくて、オタクの人たちはいろんなことをやっている。たとえばミリタリーマニアとかがやってるようなこととか、いろんなもの、ジャンルがあるんですよ。そこに知らない人を入れて、いろんなことを聞いて。「やおい」っていう……いまはそうは言わなくて「BL」ですけども。そういったものが完全にアンダーグラウンドだった頃に、そこにまったくの素人が入っていっていろんなことを見聞きしてまとめるっていうやり方を取ってたんですよ。

(武田砂鉄)うんうん。だからその別冊宝島のやっていた、たとえば宗教とか新宗教とかスピリチュアルブームみたいなところっていうのも、やっぱり完全にわからないもの、そこに突っ込んでいく体制っていうのが整っていたけども。いまだったらたぶんそっち側からの公式見解みたいなのがすぐ取れちゃうわけじゃないですか。そこがやっぱり面白くないというか。わからないものに突っ込める余地がたくさんあるっていう……。

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わからない人間が書く文章

(町山智浩)いまはどの雑誌もそうなんですけども、おっしゃる通りで。たとえば宗教だったら宗教家であったり、宗教の学者に話を聞いて、それで記事を作っちゃうんですよ。でも、それをそのまま受け止めないで、まったくわからない人が「本当ですか? それはどうなんですか? じゃあ、私にもやらせてください」っていう風にやるのが、その当時のニュージャーナリズムの傾向だったんですね。だからそれをやっていて。自衛隊の本を作る時も自衛隊関係者には基本的に原稿は書かせない。全部ライターや僕自身が入って、自衛隊の訓練に参加して、その自衛官の人たちとお酒を飲んで……っていうことをやって、それで考えたことや彼らからからもらった言葉をまとめて、ひとつの原稿にするっていう、まあルポルタージュでやっていったんですよ。

(武田砂鉄)なんか僕、いまいろんなジャンルの原稿を書くと、やんややんやと言われることが多いんですけども。その言われる中に「お前、別にプロじゃないじゃん。そっちに詳しい人間じゃねえじゃん」っていうことを言われて。それに返すのもめんどくさくなっちゃうんですけども。その風土というか雰囲気ってどこから生まれてきたんですかね?

(町山智浩)あれは、なんなんでしょうね? だから僕、別冊宝島でいちばん最初にやったのは右翼の取材だったんですね。それは「昭和天皇が亡くなったんで、その昭和天皇を神のように尊敬していた右翼の人たちは精神的にどういう状況にあるのか?っていうことを現場に行って見てこい」って言われて。

だからいきなり最初の取材が右翼団体に全部片っ端から会いに行って……っていうやつで。それで相当鍛えられましたよね。で、知らないわけですよ。それで彼らの言っていることは全く意味がわからないとか。「それはどういうことなんですか? それはどういうことなんですか?」って聞いていく。それを書いていくという形なんでね。だからそれは、それこそ右翼の方たちの言葉だけを集めた本とは違うものになりますよね。

(武田砂鉄)そうですよね。

(町山智浩)ちょうど間にいる自分みたいなものがそこに出てくるということになると思います。

(武田砂鉄)そっち側にいる人間と対話したら、実はそこで話が合うこともあるし。むしろ、体が半分そっちに持ってかれちゃう場面も……。

(町山智浩)そう。でも殴られたりもする、みたいなこともそのまま書くわけですよ。殴られましたけどね(笑)。

(武田砂鉄)そうすると、読んでいる側もやっぱり揺さぶられるわけだから、その主義主張っていうよりもそこにある体温みたいなものを読むから。どうしてもいまはその主義主張というものが書かれてるものが多いから、そのゆらぎみたいなところを体感できなくなっているのかもしれないですね。

(町山智浩)それもあるし、たとえばそれこそいろんな政治的に過激な人たちがいて、対立していたりするわけじゃないですか。でも、それは対立をしているだけなんですよ。でも、たとえば別冊宝島の後に宝島30っていう月刊誌……政治的なものを作ったんですね。オピニオン誌みたいなもんで非常に政治的な記事ばかり載せてたんですけども。

それでまあ、右翼の人たちを怒らせて、編集部が銃撃されるっていう事件があったんですよ。弾丸を撃ち込まれるっていう事件があって。でもその時、ずっと僕の師匠としていた人が石井慎二さんという編集長だったんですけども。銃撃された後にまず彼が何を言ったのか?っていうと、「町山、右翼団体を片っ端から回ってこい。どこかに撃った人がいるだろう? そこに『撃たれたんですけど、どう思いますか?」って聞いて回れ」って言われて、行ったんですよ。

会って回って。でも、いまはそういうことをやる人、いないでしょう? 「右翼に撃たれた」ってなったら、右翼と接しないようにするじゃないですか。「あいつらが撃って殺しに来たんだから」って。でも、石井編集長は「行って来い!」って。

(武田砂鉄)「チャンス!」って思っちゃうんですね。

(町山智浩)「行って来い、全部回って来い。そこにいたらめっけもんじゃないか。彼らがどう思っているのか、聞いてこい。噂だってあるだろう?」って行ったら、「いやー、撃たれて大変だったね。怖かったろう? 寿司でも食うか?」って。寿司をおごってもらったりね(笑)。

(武田砂鉄)フフフ(笑)。

(町山智浩)それで「お前らの雑誌はああいうところが許せねえな」とかって言ってくれたりして、だんだんとわかってくるわけですよ。そういうところから、犯人が見つかるかなって思ったら経済学者で東大教授の松原隆一郎さんが「ああ、町山くんのところを撃った人、俺がこの間ボコボコにしたから」って。「えっ、なに言ってんの、このおっさん?」って思ったら、松原さんはフルコンタクト空手をやってて。そこであるおじさんと戦ってボコボコにのした後、「非常に申し訳なかった」と思って謝りに行って。「すいません、本気でやりすぎました」って謝って。「君はなにをやっているの?」って言われて「僕は大学の教授ですけど、雑誌にも書いてますよ。宝島30っていうんです」「ああ、そこにこの間、カチコミかけたから。ぶち込んどいたから」って言われて。それで意気投合したっていう(笑)。

(武田砂鉄)なに、そのめぐり合わせ?(笑)。

(町山智浩)それで「すごい! 犯人がわかった!」って。それで編集長に「警察に連絡しますか?」なんて言っていたら「犯人、暗殺されました」って。そのおじさん、金銭の絡みで何者かに暗殺をされて、事件は終息しました。ものすごかったですね。すごいことでしたよ。

(武田砂鉄)町山智浩さん、いま結構Twitterでいろんな発信をされてて。僕も今年起きた案件ですごく大きな問題だなと思ったのは百田尚樹さんの『日本国紀』のコピペ問題。そこで結構Twitterで盛んに議論されてましたけれども。町山さんは「本っていうのは著者と編集者、営業と出版社が力を合わせて売るものだ。これは『全く売る気がなかった』って出版社が言ってるようなものだ」という風にTwitterで書かれいて。「なるほど、本当にそうだな」って思ったんですけども。あの件というのは元編集者、物書きとしてどういう風にご覧になっていましたか?

(町山智浩)津原泰水さんという作家の方が「百田さんの本は物書きとして許されるものではない。他所から原稿を取ってきてまとめただけのものを出版するのはおかしい」という風に批判をしていた時に、それに対して版元である幻冬舎の社長、社主である見城さんが「津原という作家は売れないんだ。彼の本をうちで出してやったけど、○部しか売れなかった」というようなことをツイートしたんですよ。で、それに対して僕が「本が売れるか売れないかということは、それは編集者と出版社の責任だ」と。だから出版では刷り部数で印税を払うことになってるんですよ。

(武田砂鉄)そうですね。売れる・売れないじゃなくて。

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本を売ることは出版社と編集者の責任

(町山智浩)売れる・売れないじゃなくて、どのぐらい刷るのかを出版社が決めて。「刷った分のお金は保証する。その刷った分に関しては自分たちは売ります」っていう契約でやってるのにもかかわらず、「実売でこのぐらいしか売れてない。だからあいつの本は売れないんだ」って言うというのは、「じゃあお前はいったいなんなんだよ?」っていう。そういう契約の中でやっていて、刷った分を売るということは自分の仕事なのに、それが売れなかったからってその著者について「この作家の本は売れないから、他の出版社もその人の本は出しちゃダメだよ」みたいな形で非常にネガティブなパブリシティをしたという。これ、許されることじゃないですよ?

(武田砂鉄)だから本当に「ひどいな」っていうよりもむしろ「恥ずかしくないのかな?」っていう気持ちが強かったですけどね。

(町山智浩)でも、この見城という男はなにも恥ずかしくないんだよ。AbemaPrimeのビデオで安倍総理をヨイショしまくっていて。「素晴らしいお顔ですね」とかって言っていて。顔とかを褒めてどうするんだよ? 政策とか、どうなっているんだよ?っていうね。

(武田砂鉄)そう思っちゃいますよね(笑)。

(町山智浩)でも本当に安倍政権とか、どうなるかはわからないですけども。本当にこうやってね、政権のケツをなめてる人たちがオリンピックの後に経済崩壊が始まったりして、それまでの検証をされた時に、それまでケツをなめてたことをどういう風に総括するんだろう?って思いますよ。

(武田砂鉄)それは本当に自分もこういう性格なので、くまなくチェックしてやろうと思いますね。

(町山智浩)そう。全部覚えておこうと思いますよ。とんでもない……でも、シレッとして「そんなこと、あったっけ?」っていう感じでしょうけどね。たぶんね。それが見城っていう男だし、そういうやつらが出版とかをやっているからどうかしているんですよ。

(武田砂鉄)そうなんですよ。だからそこが、出版社の昔のよかった話ばっかりするのも嫌だけど、そこの体制がガラッと変わってしまっているんですよね。権力があった時にそことどう距離を取るのか?っていうのがある種、出版のジャーナリズムのスタート地点だったんだけども。

(町山智浩)出版に限らないよ。いま、メディアは全部そうですから。放送だって出版だって、みんなヨイショしなきゃならないんですよ。これからオリンピックだしさ、政権と仲良くしていないとオリンピック報道ができないわけだから。そこが握られているから、もうどうしようもないんですよ。ただ、絶対にこのままそういうことをしていると、本当の問題とかが表に出てこないからどんどんと蓄積していって、崩壊に向かいますよ。

(武田砂鉄)で、たぶんこういう町山さんの放送とかを聞いていると、みんな「うわっ、過激なことを言う人だな」っていう風に思うかもしれないけど。別に基本姿勢だと思うんですよね。こういう風にある種、権力に対して「これはおかしいぞ」っていう風に言うのは。でも、それを言う人がどんどん少なくなっていくと「なんか町山さん、ヤバくない?」っていう雰囲気が強くなっていく。それ自体がおかしな話なんだと思いますけどね。

(町山智浩)まあ、ヤバくてもいいですけどね。

(武田砂鉄)ヤバくてもいいんですけどね。こういう風に開き直る人が少なくなってきたんですよ(笑)。

(町山智浩)命までは取られないでしょう?

(武田砂鉄)フフフ。まあ、今回の新しい本もアメリカのいまの実情についてたくさん書かれてますけれども。来年、アメリカの大統領選挙がありますけれども。いまのアメリカの空気感……一概には言えないと思いますけれども。間近で感じられててどういう感じですか?

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2020年・アメリカ大統領選挙

(町山智浩)いまね、株価があんまりよくないんですよ。それは、やっぱり中国との貿易摩擦の問題がかなり強く出てますね。トランプがそれを収拾できないと、まあ落選するだろうなという風には思いますね。ただ、トランプを支持している人たちって経済がどうなってもあまり関係ない人たちで。いま現在のアメリカの経済のいい状況っていうのは2008年に金融崩壊があって以降、ずっといいんですけども。

その恩恵に預かってないような人たちがトランプを支持しているので、「経済の落ち込みはトランプ支持に関係ない」という調査結果も出ていますね。非常にその彼らは「忘れられた白人たち」ということで、もう政治家とか経済界から無視されている人たち。その人たちに声をかけたのがトランプだったということで、彼らはトランプを支持しているので。それは景気が良くなろうと悪くなろうと関係ないのかなっていう風にも思いますね。

(武田砂鉄)この間、トランプの大統領選の時には音楽界とかエンターテイメント界がかなり露骨に反トランプっていうことを言って。「曲を使うな」とか直接的に反トランプっていうことを言ってましたけれども。それがある種、ちょっとムーブメントになりすぎたというか。とにかくそういう風に反トランプって言っておけばいいんだっていうところもあったと思うんですけども。いまはどういうようなスタンスで彼に向き合うエンターテイメントが多いんですかね?

(町山智浩)いま、たとえばキャプテン・アメリカをやっていたクリス・エヴァンスみたいに徹底的にTwitterでトランプを叩き続けているっていう人もいますから。まあ、それぞれの信念に従って戦ってる人は多いですけどもね。ただ、トランプ政権っていうのは非常に特殊な政権で。いま、世界は核戦争の危機からいちばん遠いところにあるんですよ。

(武田砂鉄)と、言うと?

(町山智浩)だってロシアとも北朝鮮とも仲良くて。いままで歴史上、こんなことははじめてですよ。

(武田砂鉄)両者と握手しているわけですからね。

(町山智浩)いま、世界は核戦争の危険から最も遠いところにいるんですよ。意外なことに。独裁者同士がみんな仲いいから。

(武田砂鉄)「俺たち、独裁者!」って肩を組んでいるような状況があるわけですよね。

(町山智浩)そう。トランプのあの北朝鮮との仲の良さとか異常でしょう? ミサイルを飛ばしたとしても「あれはミサイルじゃない」とか。「俺は気にしない。あれは国連の協定には違反していない」とかって言って。「なんでこんなにかばっているの?」って思ってね。

(武田砂鉄)「日本の近くに飛ばすぐらいなら大丈夫だ!」っていうことをトランプは言っているわけだから。

(町山智浩)すごいでしょう? プーチンがいくら選挙に介入したからって「俺はプーチンを信じているよ。好きだから」みたいな。どういうことなのか?って。これは独裁者同士の一種のネットワークで地球を支配しているような異常な状態になっていますよ。核戦争の危機から最も遠い、実は非常に安全な時代になっているという。皮肉だなと思いますね。でも、貧乏な人たちとかはかえって苦しいですよね。だからむしろ、国同士で対立するというよりは、その社会の階層の上と下の対立になってきているんですね。

(武田砂鉄)町山さんの文春の連載を見てると、やっぱりアメリカの権力を持ってる人たちがとにかくそのスキャンダルがあった時に、ある種ちゃんと倒れるというか。ちゃんとその役職でいられなくなるっていうことが多いと思うんですけれども……。

(町山智浩)そんなことはないですよ。

(武田砂鉄)でも、日本に比べるとそれはかなり多いような気がするんですけどもね。

(町山智浩)だってトランプがあれだけスキャンダルが多くて。奥さんがいるにもかかわらずポルノ女優とセックスしたことを全然事実として認めていて。それでそれを金で口封じしたっていうことも事実として認定されているにもかかわらず、トランプを支持してる人たちは全然関係ないですからね。いままで、世界の政治家でポルノ女優……それも2人と婚外セックスをしたことが事実として認定されて、それを金を口封じしていたにもかかわらず、それでも支持率が下がらないっていう人は初めてじゃないですか?

(武田砂鉄)ああー。でもそのスキャンダルを追求する力、パワーは何か強いような気がするんですけど。そんなこともないんですかね?

(町山智浩)うーん。いくらやっても効かない。全く効かない。なにをしても効かない。

(武田砂鉄)それはだから日本の云々とも似ているんですかね? 日本は割とスキャンダルがあったとしても……最近だと「そんな事実はない」とか「そういうことはあったかもしれないけど、なかったかもしれないですね。さようなら」みたいなことが割と多かったりするんですけども。そのあたりの比較というのかな? 温度差っていうのは感じますか?

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開き直っていると追求している方が疲れる

(町山智浩)やっぱりね、「だからどうした?」って開き直っていると、追求している方が疲れるっていうのは日本とアメリカ、似てるんじゃないかなって思いますね。

(武田砂鉄)ああ、その疲労感、徒労感ってあるんですか?

(町山智浩)ありますね。だって何を言ってもトランプには効かないんだもん。次々と出てきて、スキャンダルが事実として認定されても何も状況は変わらない。これってすごいなと思いますね。

(武田砂鉄)それが積もっていくことでなにか倒せるという感じでもなく?

(町山智浩)だって、レイプやセクハラで何十人もの女性たちから訴えられている大統領って初めてじゃないですか? でも、何も起こらないんですよ。

(武田砂鉄)何も起こりそうにない?

(町山智浩)それについては何も起こりそうにない。これ、すごいですよ。

(武田砂鉄)そうですね。じゃあ、日本社会もトランプさんを見習ってらっしゃるのかしら?

(町山智浩)そうじゃないですか? みんな開き直っている。だからプーチンさんにしてもそうじゃないですか。ジャーナリストが次々と謎の死を遂げていくけど、何も起こらないじゃないですか。

(武田砂鉄)まあ北朝鮮もね、元からそういう国だけども。中で何があろうと、それが覆されるわけじゃない。

(町山智浩)日本だって次々と不正が起こったり、今回の千葉の台風被害に関しても、全く政府は動かなくて。それで「問題はない」って官房長官が言っても記者団も誰も突っ込まないじゃないですか。疲労感がすごく多いんだと思うんですよ。

(武田砂鉄)どうすればその疲労感を抑えて、また物申す体制にできるんですかね?

(町山智浩)でも香港とかアメリカの若い人たちを見ると、すごくデモとかやっているんで。戦おうという人たちはいるんですけどもね。でも、戦っているうちにだんだんと疲れていくんですね。そのへんでね。これはもう戦いですよね。本当にね。

(幸坂理加)そろそろお時間になってしまいました。今日、お話にも出ていました町山さんの新刊『アメリカ炎上通信 言霊USA XXL』をリスナーのプレゼント用に持ってきてくださいました。ありがとうございます。

(町山智浩)はい。一生懸命やっていますよ!

(幸坂理加)5名様分いただいたので、ご希望の方はメールかLINEで送ってください。

(町山智浩)いろんな凶悪な似顔絵がいっぱい載っている面白い本ですからね!

(武田砂鉄)凶悪な似顔絵ばっかりですね(笑)。

(町山智浩)『アメリカ炎上通信 言霊USA XXL』、よろしくお願いします。

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(幸坂理加)今日はありがとうございました。本日のゲストアクションは映画評論家の町山智浩さんでした。ありがとうございました。

(町山智浩)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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