松尾潔 90’s R&Bの逆襲特集

松尾潔 1976年アメリカR&Bチャートを振り返る 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中で『90’s R&Bの逆襲』と題し、ベイビーフェイス、R.ケリー、SWVなどの新曲を紹介していました。

(松尾潔)歌手デビュー20周年の平井堅さん。これは懐かしい、2000年のナンバー『LOVE OR LUST』。今日はVIPリミックスでお届けいたしました。改めましてこんばんは。松尾潔です。9月初めてのメロウな夜。以前から再三申し上げておりますように、9月というと秋。秋というとメロウな季節。メロウな音楽がいちばん似合うのは秋ではないか?とかねてからの持論なんですけども。いよいよこの季節到来でございます。

平井堅さんのちょっと懐かしいナンバー。15年前の歌声をまずはお楽しみいただきました。平井堅さんと言えば、当時ベイビーフェイス(Babyface)のプロデュースを初めて、アジア人として仰いだということで、大変話題にもなりました。『Missin’you』という素敵な曲でしたね。そのベイビーフェイス。ここ数年、歌手活動に本格的にやる気を見せております。まあ、プロデューサーとしての仕事もアリアナ・グランデ(Ariana Grande)を始めとして、数は少ないのですが質の高い、そんな楽曲を世に放っているんですが。

まあそのフィードバックというわけじゃないんでしょうけどね。本人のアーティスト活動、歌手活動というのも最近は、そうですね。まあ僕の見立てで言うと、3回目ぐらいのピークを迎えている。そんな気がいたします。先月リリースされたばかりの新曲、ご紹介したいと思います。これはね、もう誤解を恐れずに言いますと、90’s回帰と言っていいんじゃないでしょうかね。みんなが好きだった、あのベイビーフェイスが戻ってきた!そんな感じです。聞いてください。ベイビーフェイス『We’ve Got Love』。

Babyface『We’ve Got Love』

あの懐かしい1992年の大ヒットナンバー、トニ・ブラクストン(Toni Braxton)とのデュエット『Give U My Heart』を彷彿とさせる、そんなベイビーフェイスの『We’ve Got Love』。

ベイビーフェイス、たいへん若々しいイメージがございます。まあ、名前のイメージも強烈ですよね。何しろ、『童顔』っていうニックネームをそのまま芸名にした男。名付け親はブーツィー・コリンズ(Bootsy Collins)というのはこれはもう、R&Bのトリビアとしてはかなり有名な部類に入る、そんなお話なんですが。気がついてみますと、彼はもう56才なんですね。

彼は59年生まれなんですよ。かなりのオールドスクーラーなのですが、まああの、あくまでも印象で語りますと、この25年ぐらい、全く歌声が変わっていないような。まあ、少なくともイメージ上、ずっと美声。そしてちょっとエレガントな雰囲気を保ち続けている。そんな気がいたします。イメージを変えないため、変わらないためには、本人が変わり続けているということかもしれませんね。

さて、90’s R&Bの逆襲。ではもう1人。超大物の新曲、お聞きいただきたいと思います。誰でしょう?R.ケリー(R.KELLY)です。シカゴの帝王、R.ケリー。非常に彼らしい。うん。これも、あえて言いましょう。僕らの好きなR.ケリーが帰ってまいりました。聞いてください。R.ケリーで『Backyard Party』。

R.Kelly『Backyard Party』

SWV『Ain’t No Man』

ベイビーフェイス、R.ケリーと続きまして、SWVの新曲もオンエアーいたしました。R.ケリー『Backyard Party』に続きましては、SWVの新曲『Ain’t No Man』。SWV。まあ90年代に一世を風靡した女性3人組です。ヴォーカルトリオとしては、まあTLCと双璧と言われましたね。そこに次いで人気があったのがブラウンストーン(Brownstone)あたりでしょうかね。

SWVっていうのはこれは『Sisters With Voices』という。『歌えるシスターたち』みたいな、そんな意味合いでしょうか?なんですが。まあ90年代の名家のひとつですね。そんなSWV。かつてクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)のアルバムでベイビーフェイスと一緒に歌ったこともありますし。まあ、客演、共演の類も多い人たちなんですが。一時、ソロ活動が目立っていたんですけどね、数年前からまたちょっとグループとしての活動に軸足を戻しまして。精力的にリリースを重ねております。

『If Only You Knew』というカヴァーを手がけたのがこれ、数年前なんですけども。これ、パティ・ラベル(Patti Labelle)の曲のカヴァーでしたね。

このSWVっていう人たちは、カヴァーですとかサンプリングとかっていうのを自分たちのキャリアの構築に上手く使ってきた人たちで。まあ、さっきの『Ain’t No Man』っていう曲はそもそも1980年から81年にかけてヒットした、知る人ぞ知るZingaraっていうグループの『Love’s Calling』っていう曲をほぼ、オケはそのまま流用している感じですね。Zingaraっていうのはジェームス・イングラム(James Ingram)がヴォーカルをとっていたことも有名なんですけど。そういったマニアックなネタの再構築から『If Only You Knew』みたいな、いわゆるソウルクラシックスの1曲として数えられるような有名曲のカヴァーまで手広くチャレンジして、それをずっと自分の血や肉としているというね、たくましい、したたかな、そんなイメージがございます。

『If Only You Knew』。いまバックに流れております曲。これは本当にSWVのいろんなカヴァーのレパートリーの中でも屈指の出来栄えかと思いますが。オリジナルを歌っておりましたのはパティ・ラベルですね。パティ・ラベルのバージョンはこちらは1983年から84年にかけて大ヒットいたしました。当時のR&Bチャート、ソウルチャートでナンバーワンを獲得いたしました。

この頃のパティ・ラベルっていうのはボビー・ウーマック(Bobby Womack)と一緒に歌ったりですとかね。あとは、ライブ・エイドという世界的な音楽フェスがございましたけども。その時も、本当に大きなステージで、この『If Only You Knew』を歌ったんですが。これ、日本でもテレビで中継されたんですけどもね。その時の日本側のスタジオの寒いこと、寒いことという。もうなんか見ていて、気まずいものを見たような。でもその中で、快哉を叫たくなるような、そんな記憶がございます。

はい。いまのお話、もう本当に80年代の思い出に浸ってばかりでしたけれども。なんでこんなにこのパティ・ラベルの『If Only You Knew』の話をとうとうと語っているかと申しますと、この曲を換骨奪胎した新曲というのが意外な男によって最近、世に出たからなんですね。タンク(Tank)でございます。タンク。もうファンは彼のことを愛情を込めて、『兄貴』って言いますね。もう本当にあの、快進撃を続けるタンクなんですけども。

まあいままで、SWVですとか、ソウル・フォー・リアル(Soul for Real)とか、いろんな人たちがカヴァーにトライしてきたパティ・ラベルの『If Only You Knew』をカヴァーとも違う。といって、サンプリングとも違う。まあ、曲の中の一部引用っていうんでしょうかね?局所的な引用ですが、非常に印象深く取り込んで、落としこんで新曲を作り上げました。聞いてください。タンク feat.ワーレイで『You Don’t Know』。

Tank『You Don’t Know (feat. Wale)』

Surface『Happy』

90’s R&Bの逆襲というフレーズを今週も使ってしまいましたね。あの、まあR.ケリーやベイビーフェイスの曲、ご紹介したんですけども。続きましては、1980年代の方へとさかのぼっております。タンク feat.ワーレイ『You Don’t Know』。これは83年に世に出ましたパティ・ラベルの『If Only You Knew』のまあ、それから30年以上たってのアンサーソングと言っても差し支えないでしょう。

あの、タンク技ありなのは、パティ・ラベルの曲を引用している部分はゆったりとした譜割りで歌って。で、自分が新しく作ったメロディーのところは細かい譜割りで歌っているんですよね。この抑揚の付け方っていうのは本当にタンク、曲作りの名手という感じがいたします。『この気持ちに気づいてくれさえくれたらな。いやいや、絶対に気づかないんだよ』みたいな。こういう逡巡みたいなのをね、見事に表しておりますね。

そして87年の懐かしいナンバーをお聞きいただきました。サーフィスで『Happy』。サーフィスというのは男性3人組の、まあそうですね。80年代から90年代にかけて著しく活躍した、そんなグループでございました。この曲、なぜいまご紹介したかと言いますと、今月、東京と大阪で開催されます、もはや日本のR&Bシーンの名物イベントとなりましたね。ソウル・サミット。鈴木雅之さん、ゴスペラーズ、そしてSkoop On Somebodyの3組が中心になって開催されるイベント。今年でもう10年目です。早いですね。

そのメンバーたちが選曲したコンピレーションアルバムが今年も出ました。合計3枚目なのか。『ソウル・サミット3』の中から、これはゴスペラーズの、いまいちばんおめでたい人ですね。北山くんの選曲だそうです。サーフィスの『Happy』、お聞きいただきました。本当に、北山くんにも幸多かれと。

<書き起こしおわり>

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