(宇多丸)今夜のサタデーナイトラボは20世紀で最も偉大な音楽家、JBことジェームズ・ブラウン徹底再入門特集をお送りしております。ゲストは音楽ライターにしてDJ、細田日出男さんです。よろしくお願いします。
(細田日出男)はい。よろしくお願いします。
(宇多丸)細田さん、先ほどの六本木でJBタイム。腕に覚えのあるJBタイム。その六本木に行くのは、敷居が高かったってね、合間の話も面白かったですけど。
(細田日出男)いや、行けないですよ。だってお金もかかったし。ボトルキープしなきゃいけないし(笑)。
(宇多丸)そうなんですか?ディスコなのに、ボトルキープしなきゃいけない。ああ、そうなんですか。へー。
(細田日出男)相当お金がかかるわけですよ。若い子たちに。
(宇多丸)じゃあ、その手前の段階だと、どのへんに行ってるんですか?
(細田日出男)やっぱり新宿、渋谷で勉強するわけですね。
(宇多丸)あ、踊りとかも?
(細田日出男)そうです。なんだっけな?新宿にですね、パークサイドっていうですね、いま三平ストアの上にですね(笑)。そういうディスコがありまして。大衆ディスコがありまして。
(宇多丸)大衆ディスコ(笑)。
(細田日出男)そこでですね、リクエストをして、要は曲をかけてもらって。そこで踊りをみんなで練習して。もう大丈夫!ってなったら六本木に行くんです。
(宇多丸)そんな敷居が。
(細田日出男)高いですよ。当時は。
(宇多丸)やっぱその、ダサいのでいると、もう・・・
(細田日出男)そう。だから六本木、赤坂で遊びたいから、要はダンパをやるんですよ。六本木、赤坂で。
(宇多丸)ああーっ!
(細田日出男)そうすると、お店を借りれるじゃないですか。
(宇多丸)あ、素ではもう、客として行くのは敷居が高すぎる。
(細田日出男)もう本当、高いんですよ。お金もかかるし。だから(笑)。
(宇多丸)へー!あー、なるほど!ちょっと、あれですね。夜遊び歴史特集もちょっと、伺いたいぐらいですね。ひょっとしたらね。はい。その流れで、『ワイルド・スタイル』特集のね、日本に御一行様が来た時の話とかも、改めてご本人から・・・
(細田日出男)ああ、したいですね。結構間違って伝わっているところも(笑)。
(宇多丸)ああ、そうですか。わかりました。じゃあ改めて伺うとして、本日はJB特集でございます。JBの真価が改めて伝わるような曲をどんどんかけていきたいと思います。選曲の基準は、現代的文脈。つまり、ヒップホップ、ダンスミュージック主流時代といいますかね。グルーヴミュージックが主流になったこの21世紀のポップミュージックの文脈から見た重要曲、代表曲ということで。なので、かつて僕が大学の頃もそうだったんですけど。JBの代表曲とかそういうので調べると出てきた曲とはぜんぜん違います。たぶん。
(細田日出男)そこが、いいですね。
(宇多丸)80年代以降、JBの評価というのは、特に日本ではぜんぜん変わったので。そのへん、ご覚悟くださいということでございます。同時に、ジェームズ・ブラウンをサンプリングした代表的な曲なども選んでいただきました。細田さんに。さあ、行きましょう!御託はともかく。なにから行きましょうか?
(細田日出男)『Funky Drummer』っすね。
(宇多丸)『Funky Drummer』ですね!この『Funky Drummer』という曲、ちょっと説明をまず加えておいた方がいいかもしれませんけど。これ、おそらく『Funky Drummer』の途中のブレイク、要するにビートだけに、ドラムだけになる部分というのは、史上最もたぶんサンプリングされたドラムビーツと言って過言ではない・・・
(細田日出男)ドラムビーツとしては、たぶんそうじゃないですか?パッと調べるだけで、1033ありました。
(宇多丸)1033!?
史上最もサンプリングされたドラム・ビート
(細田日出男)1033。これ、たぶんアップデートされていると思うんで、1033で間違いないと思います。
(宇多丸)『Funky Drummer』というぐらいでね。なので、これはたぶん、音楽史上最高のドラム曲という風に言ってもよろしいんじゃないでしょうか。
(細田日出男)たしかに。
(宇多丸)あと、問題のその箇所が出てくるまで、たぶん4分ほどございます。
(細田日出男)5分ぐらいかな?
(宇多丸)5分ぐらいあります。ただ、本日はそのJBの、さっき言った反復によって生まれるグルーヴ感というか。いかに特異な音楽像。要は、歌ってねえじゃん!とか。メロディーがねえじゃん!とか。そういうところも。で、繰り返しじゃん!とか、しつけえな!とか。そういうところも含めて体感していただきたいので、あえて『Funky Drummer』をモロがけしたいと思います。
(細田日出男)画期的ですね、これは。
(宇多丸)通常のヒップホップDJがこういうかけ方をすることはございません。途中のビートのところから、近いところからかけたりするわけですけど。じゃあ、行ってみましょうか。ご紹介いただけると。お願いします。
(細田日出男)ジェームズ・ブラウンで『Funky Drummer』。
※動画5:20からドラムビーツが登場します
(宇多丸)何万回聞いたんだ?っていう感じなんだけど、かっこいい!やったー!
(細田日出男)やった!素晴らしい!画期的ですよ、本当。
(宇多丸)あの、ヒップホップのDJはこの部分をね、繰り返して、ブレイクビーツとして引き伸ばして使ったりとか。いろんな使い方をしております。お聞きいただいているのは、ジェームズ・ブラウンで『Funky Drummer』でございます。まあ、かっこいい!
(細田日出男)かっこいいよね。
(宇多丸)かっこいいですけど、同時に、歌がない、繰り返し・・・
(細田日出男)(笑)
(宇多丸)でも、このまさに繰り返しであるとかっていうところが、たとえばハウスなんて、もはやね、歌がずーっとなくて。一晩中ずーっと歌なしのビートが続いて、朝方に1回だけ、歌のところがポーン!と来て、ワーッ!とか。まさにいまの我慢の一晩中版っていう。
(細田日出男)(笑)
(宇多丸)ダンスミュージックってちょっと我慢っていうの、ありますよね。現代ダンスミュージックは。
(細田日出男)その通りだね。
(宇多丸)はい。さあ、ということで、どうしましょう?これ、『Funky Drummer』を使ったサンプリング例とかも聞いてみますか?ちょろっと。
(細田日出男)じゃあ、これですね。いいですか?紹介しちゃって。非常に有名な曲だと思うんですけども、LLクールJの『Mama Said Knock You Out』。これが全編『Funky Drummer』ですね。
(宇多丸)はい。ちょっとじゃあ、一瞬だけそのビートが入ってくるくだりとかね、聞いてください。
(宇多丸)はい。LLクールJ『Mama Said Knock You Out』。これ、91かな?90?だったと思いますけどね。はい。これ、まあ『Funky Drummer』にさらに、マーリー・マールがちょっとビートをさらに加工したりとか。まんま使う時代じゃないですからね。とかですかね。こんな感じで、LLクールJに限らず、いろんな曲で使われてきたということでございます。
(細田日出男)ものすごい数ですね。
(宇多丸)もう挙げられません。『1、2、3!』とかね。あのへんでもう、わかるんじゃないかと思いますけどね。ということで、細田さん、どんどん曲、他のも行きましょう。
(細田日出男)じゃああの、次ですね、これ、『Funky Drummer』と同じ頃のセッションで。実はずっと未発表だったものが88年に発掘されて出たっていう、有名な『She’s The One』っていう。元々はハンク・バラードの曲をカバーした曲なんですけど。これが『Funky Drummer』っぽいビートっすよね。だからこれも、ちょっと聞いてもらえると面白いかなっていう風に思います。未発表音源なんですけど。
(宇多丸)88年に発掘されてリリースされた曲でございます。
(細田日出男)『She’s The One』ですね。
(宇多丸)うーん!ジェームズ・ブラウン、当時は未発表音源だったが、88年に発掘された・・・70年?71年?曲としては。
(細田日出男)そうですね。70年か。
(宇多丸)『She’s The One』という曲でございます。ちなみにこの曲、細田さんがこれをリストに入れられて僕、『おっ!?』と思ったのが、僕が大学1年生で最初にGALAXYの門を叩いた時に、『君はどういう音楽を聞くんだい?』って言われて、『ヒップホップとかも好きなんですけど、最近はヒップホップの元ネタで使われているレアグルーヴと言われる古いファンクとかが好きになってきて。いまはこれが好きです』って最初に挙げたのがジェームズ・ブラウンの『She’s The One』なんですよ。
(細田日出男)(笑)
(宇多丸)だから、それはあの文脈で挙げたんじゃないんですか?
(細田日出男)違う(笑)。
(宇多丸)なんだ・・・細田さん、さすがそれ、覚えてたんだ!って。んなわきゃなかったっていう。
(細田日出男)(笑)
(宇多丸)でもあの、『Funky Drummer』をブレイクのところまでのっぺり聞いた後では、なんて聞きやすい・・・
(細田日出男)キャッチーだね、これ!
(宇多丸)普通の曲なんだろう!っていうね。
(細田日出男)大衆ファンクになってますね(笑)。
(宇多丸)普通の、大衆ファンク(笑)。初めて聞きました。大衆ファンクって(笑)。はい。『She’s The One』、かっこいいですね。どんどん行きましょう。ガンガン聞いて行きましょう。
(細田日出男)次は・・・行っちゃいますよ。どんどん。次はね、『Funky President』ですね。これもですね、ものすごい数、サンプリングされているはずで・・・
(古川耕)603曲ですね。
(宇多丸)そんな!これはさ、先にこのサンプリングされている代表曲を聞いてから、逆にこっちの元に行くっていうのはどうですか?先に、これ聞いてみましょうよ。
(細田日出男)じゃあ、エリックB&ラキムの・・・
(宇多丸)『Eric B. Is President』。
(宇多丸)あの、先ほどの『Mama Said Knock You Out』、LLクールJに続いてマーリー・マールというね。この曲は1987年?6か?の曲ですかね。80年代の半ばに、要するにサンプリングによるヒップホップ手法でJBが再評価というか。新たな視点で若い世代に受け継がれていた世代の代表曲。エリックB&ラキムで『Eric B. Is President』。まあ、このビートですね。要はね。
(細田日出男)で、これの元が・・・
(宇多丸)元を聞いていただきましょうか。
(細田日出男)『Funky President』。ジェームズ・ブラウンで。
(宇多丸)うーん!かっこいい!JB『Funky President』でございます。あれですね。こうやって並べて聞くと、わかりますよね。構造としてヒップホップに受け継がれているっていうのもすごくよくわかりますし、同時に、やっぱりJBが思いきってグルーヴだけに特化して。メロディーとかじゃなくてっていう方に特化してっていうのを、さらに後のヒップホップとか、ハウスでもなんでもいいですけど。現代的ダンスミュージックが過激化していっていまの音楽像になっているっていうのがすごいよくわかりますよね。
(細田日出男)わかりやすい。それは。
(宇多丸)よくでも、時代がぜんぜん違いますからね。それこそ、横で並べると。1970年代にそんな音楽像をやっている人、いないわけですよね。
(細田日出男)それがだから、ここにばっちりハマッたっていうわけだから、そこがすごいなと思って。
(宇多丸)で、ちゃんと大衆的な支持も得ているわけですもんね。あ、ちなみにこの曲、R&Bチャート4位でございます。だからまあ、普通にヒットもしているということですけども。
(細田日出男)それでなんか、ちょっと調べてさ。JBの曲をいちばん最初にレコードでサンプリングしたのは誰かな?と思って。俺が調べた中では、スプーニー・ジーが『Spoonie Is Back』でこの『Funky President』を使っていて。
(宇多丸)へー!
(細田日出男)ただ、シュガーヒルだから、演奏し直し。っていうのがあって。だから、たぶんブレイクビーツって、当時の若いやつらがラップをする時のバックトラックっていう意味でいけば、当時ヒットしていて、しかもブレイクビーツにしやすい曲。たとえばだから、シュガーヒル・ギャングの『Rapper’s Delight』みたいに、シックの『Good Times』を使うみたいな。
(宇多丸)はいはい。
(細田日出男)それと、あともうひとつ、こういうクラシックなファンクから、こういう風にブレイクビーツにしやすいものっていうのが、もうすでにその頃から当然・・・まあ、『Apache』なんかもそうだけどさ。
(宇多丸)まあ、ビート中心の音楽というかね。それこそヒップホップ黎明期でヒップホップ文化を作ってきた生き証人であるクレイジー・レッグスっていう、ロック・ステディー・クルーというブレイクダンスチームの伝説的な、いまだに活躍されてますけども。クレイジー・レッグスがインタビューとかで答えているのは、『音楽的な面でのルーツは、とにかくJB。他はいない』っつって。
(細田日出男)(笑)。もうそれが本当に基本中の基本だったってことだよね。だからね。
(宇多丸)っていうことでしょうね。
(細田日出男)もうなにも言わなくても、みんな共通してわかっていることみたいなのがあったんじゃないかな?そういう、空気というか、DNAみたいなのっていうのも、おそらくあったんじゃないかな?とは思う。JBに関しては。
(宇多丸)要はね、一部のそれこそ尖った、部族音楽か?っていうようなね、機能をしていた音楽が、実験音楽級なアバンギャルドなことが世界中に散らばっていって、変えていくっていうのがね。
(細田日出男)それは、すごいな。
(宇多丸)いいですよね。やっぱね。さあ、どんどん行きましょうよ。曲をね。
(細田日出男)じゃあまた、ネタ使った曲から先に行きます?じゃあ、次、ジェームズ・ブラウンの『The Payback』を紹介しようと思うんですけど、このサンプリングした非常に有名な曲として、これはR&Bですけど、トータルの『Can’t You See』っていう曲があるんで、まずこれを聞いてもらえると。
(宇多丸)はい。
(宇多丸)はい。お聞きいただいているのはジェームズ・ブラウンの『The Payback』をサンプリングしたトータルの『Can’t You See』。それではもう、間髪入れず、行っちゃいましょう。
(細田日出男)『The Payback』。
(宇多丸)はい。ということで、これは74年の曲ですね。ジェームズ・ブラウン『The Payback』、聞いていただいてますけど。R&Bチャートでもこれは1位に。あの、いままでの曲でいうとまあ、そのループ。繰り返し、反復によって生まれるグルーヴっていうのはもちろん共通してますけど。またちょっとこう、クールなというか。
(細田日出男)超クールっすよね。これ。
(宇多丸)感じがしますよね。
(細田日出男)なんか、発散しないっていうか。全て中に溜め込むっていう。そういう新しいスタイルをこの『The Payback』でたぶんJBは出したんだなっていう風にすごい思うね。で、この後、こういうタイプが続くんですよ。で、こういうのが結構やっぱりJBのサンプリングされた曲の中で多いっていうのが、主張するものがあんまりないんですよね。クールすぎて。だから、邪魔をしない。サンプリング。
(宇多丸)素材として使いやすいし。
(細田日出男)素材として使いやすい。そう。だから、ここでたぶんJBが『ああ、もうここまでやりゃあいいかな?』と思った中の1曲かな?と思うんですよ。これが。『The Payback』って。
(宇多丸)ああー、ある意味、ちょっとミニマルな路線みたいなものを突き詰めた結果。
(細田日出男)結局ここに、最終的にもしかしたら向かったのかもしれない。ぜんぜん、僕が思ったことですよ。
(宇多丸)いやいや、でもそうかも。たとえばだって、こっからさらに削ぎ落とすとしたら、もう俺の歌か?とかさ。ねえ。
(細田日出男)(笑)。もう、ないでしょう。
(宇多丸)ねえ。メロディーなくなってくると、もう、この時点では限界まで削ぎ落としてますもんね。
(細田日出男)そう。ここであれなんですよ。ここで結局ね、『The Payback』を皮切りに3曲連続で1位とってるんですけど。R&Bチャートで。だからここ、またひとつのピークなんですよね。
(宇多丸)なるほど。また新しいね、グルーヴ像というか音楽像を提示して。でもその、弾けきらないというか、熱を溜め込んで、あくまで表面はクールという。クールを保つってこれ、ブラックミュージックのね・・・
(細田日出男)そう。美徳ですよ。これは。
(宇多丸)ロックとは違う。
(細田日出男)ここがわかると、そういうの絶対ないですよ。
(宇多丸)ですもんね。といったあたり。もうバンバン行きましょう。曲、聞きましょう。
(細田日出男)じゃあ次はこの『The Payback』流れっていうか、さっき言ったようにその『The Payback』風な曲として僕が本当に好きな、『Papa Don’t Take No Mess』。
(宇多丸)先ほどね、ちょろっとおっしゃってましたけど。
(細田日出男)これも非常に有名な大ヒット曲ですけど。ジャネット・ジャクソンの『That’s The Way Love Goes』。
(宇多丸)こんなね、素敵な。ジャネット・ジャクソンの素敵なお歌。
(細田日出男)ジャム&ルイスのセンスもすごいなって感じですけど。
(宇多丸)が、あんな・・・さあ、JBがどうサンプリングされているのか?という。元の曲。細田さん一のお気に入りの曲をご紹介してください。
(細田日出男)はい。『Papa Don’t Take No Mess』。
(宇多丸)はい。ジェームズ・ブラウン。これは74年の曲でございます。『Papa Don’t Take No Mess』。これもR&Bチャート1位を獲得した曲です。サンプリングされた例もね、他にもいっぱい。ビズ・マーキーとかもいろいろありますけども。
(細田日出男)結構でも、44。これはそんなに多くなかった。
(宇多丸)あ、そんなに数がなかった。
(細田日出男)もっとあったかな?って思ったけど。
(宇多丸)これをでもね、ああいう風に料理する。ジャネット・ジャクソンの曲に料理する、先ほどおっしゃったジャム&ルイスというプロデューサーのね、センス。
(細田日出男)センス、素晴らしいな!
(宇多丸)だからサンプリングっていうのはそのまま、要は匂いを変えてくるだけじゃなくて、それをベースにさらに新しいものを作っていくというね。いい例になったんじゃないでしょうかね。さあ、ということで、時間もだんだん減ってくる中でどんどんJBの曲を聞いていただきたいんですが。どうしましょう?
(細田日出男)これもちょっと、中期JBの代表的な曲がありまして。行っちゃいますね。『Give It Up Or Turn It a Loose』。
(細田日出男)ちょっと僕、言い忘れてしまったことがあるんですけど。映画でも語られることなんですけど、JBがファンクで重要なのは一拍目。要は、『On the One』っていう考え方。この一拍目に全てを集中させろ!っていう。
(宇多丸)ほう。
(細田日出男)たぶんそこはJBがそれまでの、いわゆるリズム・アンド・ブルースと言われているものを線引きするのに、いちばんこだわった部分なのかな?っていう。
(宇多丸)どういうことなんですか?具体的には。
(細田日出男)いや、溜めですよね。きっとね。一拍目と二拍目に来る、その溜めの部分がファンキーなんだよっていう。
(宇多丸)その、もう最初の、そこの1個目の、ウッ!って来る溜めだけで、最初のグルーヴが生まれるっていうか。波が。
(細田日出男)そこをまず、いちばん力を入れてやれと。
(宇多丸)逆に言えば、そこをたとえば突っ込んじゃったりとかすると、ビートが狂っちゃったりすると、全体が気持ち悪いことに・・・
(細田日出男)そう。そうすると、JBの言うグルーヴっていうのが崩れちゃう。それを持続するためには、常に一拍目を意識しろっていう。
(宇多丸)なるほど。そういうパンチラインも。
(細田日出男)そう。いっぱいある。面白いです。
(宇多丸)ちなみに僕、この『Give It Up Or Turn It a Loose』は、無人島で1曲だけしか曲を聞けないみたいな状況だったら、もうこれでいいです。僕は。
(古川耕)おおー。
(宇多丸)あの、さっきからね、音楽の構造を強調してますけど。やっぱりJBのボーカリストとしての、実はこの人、ものすごい引き出しも広いし。テクニカルだし、かと思えば、このシャウトの楽器力の・・・
(細田日出男)歌の上手さっていうか。そこはもう、筆舌に尽くしがたいところ、あるんじゃないですか。
(宇多丸)あと、この曲、『Give It Up Or Turn It a Loose』に関しては、映画の中でも、ミュージシャン勢の中でも特にクローズアップされてますけども。やっぱりベーシストのブーツィー・コリンズ。
(細田日出男)あ、これブーツィーですね。
(宇多丸)はい。後にね、Pファンク勢となっていきますけども。ブーツィーのこのベース!なに、このベース!?もう、いま、何度聞いてもまったく古びない。
(細田日出男)これ、だからオリジナルから、『In the Jungle Groove』に入った、たぶんオーバーダブ、ちょっとされているのか、それともEQをかけ直しているのか、余計、ベースとかがはっきり前にポーン!と出てきてるから。やっぱりこのバージョンですね。
(宇多丸)これ、86年にレアグルーヴ的にヒップホップのルーツ的に再評価されて以降に出たアルバムに収録されているバージョンでございます。さあ、もう1曲。あ、これが本日最後の曲というか。JBの曲としては最後になりますけども。聞いてみましょう。
(細田日出男)じゃあ、『Get Up, Get Into It, Get Involved』。
(宇多丸)もう、これはみなさん、グルーヴとかかっこよさに関して、もはや説明はいらないんじゃないでしょうか。いまお聞きなのはジェームズ・ブラウン『Get Up, Get Into It, Get Involved』。
(細田日出男)読みにくいね(笑)。
(宇多丸)はい。えー、ということでね、ざっくり、我々の考えるというか、世界的にJBがいまの音楽にどうつながっているか?という評価ポイントを中心としたJBの曲を聞いてくるという特集。聞いてきましたけども。
(細田日出男)『Sex Machine』がなくてすいません。
(宇多丸)『Sex Machine』じゃないんです。でもね。『Sex Machine』もいいんですけど。はい。ということで、細田さん。1枚、ジェームズ・ブラウンでこれからアルバムをなにか聞いてみたい。入門編で聞いてみたいという人におすすめのアルバムはありますでしょうか?
(細田日出男)まあ、今日の選曲からいけば、『In the Jungle Groove』っていう。ヒップホップがJBを再評価して組まれたコンピレーション。これがやっぱりいちばんいいんじゃないでしょうか。
(宇多丸)私もそれだと思います。これは一致してございます。『In the Jungle Groove』、こちらをチェックしていただきたいと思います。そしてもちろん、今月30日から公開される映画、『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』もぜひ、ご覧ください。とにかく、ライブ映像を大音響で聞くというところがすっごい面白い。あと、時間軸の扱い方も大変面白い映画でございます。ということで、駆け足でございましたが、最後ね。20世紀で最も偉大な音楽家、ジェームズ・ブラウン特集でした。細田さん、ありがとうございました。
(細田日出男)どうもありがとうございました。
(CM明け)
(宇多丸)はい。ということで夜10時から生放送でお送りしてきましたライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル、いかがだったでしょうか?本日のエンディングテーマは数あるジェームズ・ブラウンのメガミックスというかね。曲を混ぜたやつの中でも、もうクラシック中のクラシックとして知られておりますコールドカットによるね。これ、Amazon MP3で手にはいりますので。
ヒップホップの文脈でも非常に上手くつなぎ合わされた、最高のメガミックスでございますので。こちらもおすすめ作品でございます。さすが、コールドカット。『VS GODFATHER』という、一応タイトルになっておりますね。『Payback Mix』だとずっと思ってたんだけどな。まあ、それはいいや・・・
<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/19485