菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中で、亡くなったベン・E・キングさんと、最近人気のGENKINGさんについて話していました。
(菊地成孔)まあこれ、天寿を全うされた感じですからね。その、そんなにいたましい話ではありません。共同通信によりますと、名曲『STAND BY ME』などで知られるアメリカのソウル歌手ベン・E・キング(Ben E.King)さんが亡くなりました。30日に亡くなった・・・つまり、昨日ですね。76才です。アメリカの議会図書館は今年3月、ベン・E・キングさんの『STAND BY ME』の最初の録音を文化的、歴史的に重要な価値があるとして保存すると発表していました。有名なね、ロブ・ライナーの同名の映画の主題歌にも使われたりしましたけどね。
まあ、76才。本当に天寿を全うなさいましたよね。あの体格でアメリカ人で76まで元気に・・・ついこの間までね、ライブをやっていたはずですよね。ご冥福をお祈りいたします。というよりも、あの、これこそ生(放送)の魔法っていうかね。今日、最初に言おうとしていたネタとちょっとかぶるんで。かぶるって、ただ音がかぶるだけなんですけど。困っちゃったなと思ったんですけど。
まあまあ、いま申し上げた通り、本当に陽気な方で。76、天寿を全うされたということで。まあ、不謹慎にはならないだろうということで用意したネタを言いますけど。ぜんぜん関係ないんですけどね。本当に偶然なんですけど。音の音韻の話なんですけど。私、月にいっぺんだけ、普段はタクシーと事務所の車の移動なんですよ。なんですけど、月にいっぺんだけ、電車に乗る機会があって。これはまあ、ヘビー級・・・まあ、そうですね。ミドル級以上のリスナーの方ならご存知だと思うんですけど。それは、なんのために、何線に乗るのか?って言うと、整体を受けるために小田急線に乗るんですね。
小田急線で聞いたJKの話
で、小田急線っていうのはご存知の通り、下北沢から若者がドッと乗ってきますし。いろんな途中の駅でJKが乗ってくるんですね。Japan Koreaですけどね。女子高校生が乗ってくるわけですけども。で、女子高校生・・・まあ、毎月ですよ、この番組が始まった頃の最初期にですね、小田急線の中のJKの会話がヤバかったという話をしたところ、非常にリスナーの方からの受けが良く。まあその後も私は休むことなく、番組開始以来・・・まあ、開始以前からですけどね。
2002年からですから、もうかれこれ13年目になりますけども。月に一度、かならず小田急線に乗っては、整体を受けに行くということを続けておりましたが。ただ、まああの、時代でしょうかね?その、私の耳が加齢によって遠くなったんでしょうか?アンテナが鈍ったんでしょうか?あんまり、これは!という話題に遭遇できなかったんですよね。まあ、月に一回、JKとはそういう形で接しているわけなんですけども。最近の特徴としては、とにかく3人集まったら、まるでそうですね。なんて言ったらいいんですかね?あれ。悪魔が来た時に神父様が掲げる護符みたいにスマートフォンを高く掲げてるんで。
あれは何をやっているのかな?肩を寄せあって何をやってるのかな?と思ったら、自撮りをしていたというような。これ、車中でもですね。遠慮会釈なく。まあまあまあ、別に問題があるとも思いませんけども。よく、電車の中でメイクなんかしていると、よろしくないとかね。カロリーメイトを食ってるだけで下品だ!とか、柳眉を逆立てる御仁もいらっしゃるようですけども。まあまあ、私なんか別に、JKのやることですから。まあまあ、最悪下着ぐらい着替えても、別に電車の中で構わないと思う方ですんで。自撮りぐらい楽勝だと思うんですけどね。
で、この間・・・まあ、会話でですね。彼女たちの会話が、要するに続いていかないっていうね。彼女たちの会話は、いわゆる我々が考えるコール・アンド・レスポンスの意味がですね・・・たとえば、そうですね。『この間、飲みに行ったらもう、ぜんぜんさ、50すぎると、12時すぎると、ぜんぜん飲めなくなるね』『いや、俺もそうなんだよね。いやー、もう目も遠くなるし、酒も飲めなくなるしね』っていうような風に、会話がこういう形のレスポンスで、意味が貫通してパスされていくっていうことがないんですよね。
言いたいことを言っているだけなんで、傍から見ると会話してないように聞こえるんですけど。ただ、会話してないように見えてるんですけど、そこには濃密なコミュニケーションがあって。まあ、友達同士っていう。やっぱりなんて言うんですかね?ハートフルな、キュンとするところはLINEなんかでやるんですかね?そんなにもう、この齢になって・・・そろそろ52ですから。私も。JKの心理が手に取るようにわかったってしょうがないんですけども。まあ、とりあえず彼女たちの会話がつながんないってことはわかってるんですよ。
で、まあベン・E・キングさん、亡くなりましたけども。この間・・・(笑)。本当にごめんなさいね。あの、ベン・E・キングさんのファンの方に顰蹙を買ってはいけないんですが。しつこく繰り返しますが、天寿を全うされたということで申し上げますけどね。これは持っていたネタなんですけども。女子高校生がですね、3人いたんですね。A、B、Cとしましょうか。まあ、アーベーセーでもワントゥースリーでもイーリャンサンでもなんでもいいんですけど(笑)。
まあ、1人の子が、『GENKINGってお金で払うってことでしょ?違うの?』って言ったんですよね。したら、2人目が、『おキャワたんとか、イミフ』って言ったんですよ。したら、3人目が、『いきものがかりってさ、知ってる?10年連続で50曲以上タイアップしてるらしいよ。シングル全部だって』って言ったら、最初の子に戻って、最初の子が『それじゃあもう、いきものがかりじゃなくて、音楽係じゃん』っつって(笑)。ほんで、2人目に戻って、2人目が、『ねえ、ジェットタオルって、本当に乾いたことあるっけ?』って言って電車を降りて行きましたとさというね。
あの、もはや面白いのかどうかもよくわからないんですけど。ただ単に私が思ったのは、自分が思っているよりも事は深刻だなっていうことですよね。やっぱり(笑)。この齢になるとですね、自分より若いものはもう、20代の30代も40代もみんな一緒になっちゃうんで。GENKINGさんっていうのはね、知らないリスナーの方もいるかもしれませんが。いま、Instagramのフォロワーが20万人?ぐらいかなんかいらっしゃる方なんですよね。『おキャワたん』って言うんですよ。
おキャワたんっていうのはその人の口癖なんですけど(笑)。私はJKなんかGENKINGが大好きで、GENKINGのことなら何でも知っているって思っちゃったんですね。この流れも読み間違ってるんですよ。5年分ぐらい。思い出して下さい。若き日のご自分にとってね、5年っていうのがどれだけの大きなジェネレーションギャップであるか?っていうことですよね。1年だって大きいですよね。だから、『JKはみんなGENKINGが大好き』とかいうのはね、ずいぶん雑だと思ったんですよ。『GENKINGってお金で支払うってことでしょ?違う?違う?』とかって。『現金』っていう言葉を『お金で支払う』っていって、なんか若いようで微妙にこっちに戻ってきているような感覚をね。なんとも新しいなと思いましたよ。本当に。
で、『GENKINGの話をするんだ、GENKINGの話をするんだ』って思ったら、ベン・E・キングさんが亡くなったんで。これ、どうしようかな?と思ったんですけど。まあまあ、天国でね、きっと『STAND BY ME』を歌いながら笑って許してくださると思いますんで。まあ、ただGENKINGに関してはね、いくらベン・E・キングさんでもご存知はないと思いますけども。
<書き起こしおわり>