吉田豪と菊地成孔『粋な夜電波』を語る

吉田豪と菊地成孔『粋な夜電波』を語る SHOWROOM

菊地成孔さんが『猫舌SHOWROOM 豪の部屋』に出演。吉田豪さんとTBSラジオで8年間続けた番組『菊地成孔の粋な夜電波』について話していました。

(吉田豪)(コメントを読む)「菊地さんからaikoさんの魅力を教えてもらった」。あ、これは僕もそうですよ。

(菊地成孔)ああ、そうですか? aikoのね……ああ、はいはい。

(吉田豪)aikoさんの音楽的な解説を。

(菊地成孔)ああ、「ブルーノートが多い」っていうやつね。めちゃめちゃ多いです。いちばん多いんじゃないかな?

菊地成孔 本物のブルースシンガー・aikoを語る
菊地成孔さんがTBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』でリスナーからの『佐藤博さんへコメントをお願いします』というメールに対して回答。佐藤さんを追悼し、aikoさんの『くちびる』を捧げていました。 (菊地)えー、そうですね・・・コメントというの...

(吉田豪)ものすごい勉強になりました。

(菊地成孔)ああ、本当ですか?(笑)。恐縮です。嬉しいですね。aikoさん、素晴らしいです。

(吉田豪)ですね。(コメントを読む)「TBSラジオの話も」。そうなんですよね。TBSラジオで一時期僕の担当をしていた人がプロデューサーでしたからね。

(菊地成孔)ああ、なるほど。はいはい。長谷川くん?

(吉田豪)そうです。

(菊地成孔)なるほど。もういまや重役ですよ。

(吉田豪)ああ、そうなんですか?

(菊地成孔)うん。あの人、昇進しましたから。

(吉田豪)へー。たまにギターポップ系の来日コンサートに行ったりするとばったり会ったりしますよ。

(菊地成孔)長谷川くんは本当に音楽好きで。しかも、見た目が……音楽って「その見た目でこれを聞きますか?」っていう人、いるじゃないですか。でも長谷川くんは「その見た目だからこれを聞いてるんですね」って。

(吉田豪)そのままですよね(笑)。

(菊地成孔)そのまんまの人。さわやかなギターポップが好きっていう。

(吉田豪)そんな気がしていたら、そうだったっていう。

(菊地成孔)そんなの聞いてる顔だなって思っていたら、その通りだったっていう人ですね。

(吉田豪)僕も番組は結構聞いてました。

(菊地成孔)ありがとうございます。恐縮です(笑)。

(吉田豪)あまり声を大にして言ってなかったですけど、結構なファンですよ。僕、普通に。

(菊地成孔)ああ、本当ですか? 『夜電波』ね。『夜電波』はね、一時期すごい……いまでも宇多丸さんとか。面識はないんですけども。

(吉田豪)ああ、ないんですか?

(菊地成孔)ないです。全然。あの、お互いにヒップホップをやっている……「お互い」って俺がやっているのと宇多丸さんがやっているのを一緒にしたらいけないけども。

(吉田豪)はいはい。

(菊地成孔)まあ、お互いにヒップホップやっているけども、かすっていて会わないんですよね。まあPUNPEEさんとかSIMI LABとかあっち関係とかはね。宇多丸さんだとか、吉田さんもやられていたし、瀧くんもやっていたでしょう? で、結構TBSラジオでひしめいていた時、あるじゃないですか。その時に伊集院さんに「お前の番組はすごい評判がいいから絶対に聞かないんだ」って言われて(笑)。

伊集院さんに「評判がいいから聞かない」と言われる

(吉田豪)フハハハハハハッ! 伊集院さんはね、そういう人ですよ(笑)。人のラジオ、本当に聞かないんですよね。悔しいからって(笑)。

(菊地成孔)「いや、本当に悔しいんだよね。誰に会っても『粋な夜電波って面白いですよね、伊集院さん』って言われるから。絶対に聞かない!」って(笑)。

(吉田豪)菊地さんも意識していたんですね。ちゃんと。

(菊地成孔)というか、周りの側近とか舎弟の多い方じゃないですか。いっぱいいらっしゃるから。みなさんが口を揃えて言ったみたいなことだと思うんですよね。

(吉田豪)「最近、いい番組がありますよ」みたいな?

(菊地成孔)そう。「だから聞かねえんだ」って言われて。「ああ、そうですか。聞いてくださいよ」っていう(笑)。

(吉田豪)菊地さん自身はラジオを聞いている側だったんですか?

(菊地成孔)全く聞いてないですね。そうですね。タモリさんのオールナイトニッポン以来ですね。

(吉田豪)古すぎますよ(笑)。

(菊地成孔)1982、3年ですね。ぐらいかな? 以来なんで、もうAMもFMも全く聞かない。FMはまあ、音楽番組を聞いたりはしますね。

(吉田豪)TBSラジオがサブカル的な方向に力を入れてきたみたいなのも全く知らないまま?

(菊地成孔)そうですね。社是というか、なんていうんですか? それがどっちかにどうなって、なにがどうしてっていうのは全然わからないですね。ただ、戸波くんっていうディレクターに「番組を持て、持て」って言われて。「まあ、半年ぐらいでクビになるだろうから、まあいいか。やってみよう」みたいなので。まあ、クビを切られましたけども。フハハハハハハッ!

(吉田豪)でもまあ、続きましたよ。ああいう形式の番組にしたら。

(菊地成孔)そうですよね。

(吉田豪)放送の時間帯が何度も変わりながらも。

(菊地成孔)ですよね。だって作家が入らないわけなんで。1人で全部やっていたんですよ。そんなに毎週毎週好き放題やっていて、まあクビになるまで待とうとは思っていたんですけども。そしたら8年目でクビになったんで。まあまあ、そんな感じかなっていう。

(吉田豪)複雑な感情があったりするんですか?

(菊地成孔)いや、あのね、僕はさっきも言ったように河野(伸)くんの話に戻りますけども。「俺は絶対に将来、アイドルを書くんだ」とか「俺は絶対に将来、大河ドラマの音楽をやるんだ」とかね。

(吉田豪)将来設計を。

(菊地成孔)そうですね。あるいは逆に「静かに生きるんだ」とかね。あるじゃないですか。そういう将来設計を全くしないんで。だから……。

(吉田豪)「ラジオを続けるぞ!」みたいなのも?

(菊地成孔)別にないし。逆に「辞めてやる!」とか「違う局に行ってやる」とかそういうのも何もなくて。ただその場が楽しければいいタイプなんですよ。本当に。アリとキリギリスのキリギリスなんで。で、まあそうすると、別にがんばらなくても番組がもらえたりするんですよ。営業をかけたりとか……出版もそうなんですけども。原稿を持って出版社を歩いて断られたりね、拾ってもらったりっていう経験、1秒もやったことがなくて。勝手にブログを書いていると「本にしませんか?」って物書きになったし。番組も突如として戸波さんが現れて。「番組やりませんか?」って言うから「じゃあ、やりましょうか」みたいな。で、チャンスをもらう時もラッキーでもらっているから。放される時も別になんとも思わない。もともとラッキーだから。

(吉田豪)そこにそもそも執着がない。

(菊地成孔)そうですね。だから「こんなに私は8年間、御社に尽くし、御社のサブカル的なブランドの一翼を担い、いろんな視聴者にTBSラジオの可能性を広げてきた自負がございますっ!」とかね、全く思わないというか(笑)。「ああ、クビが来たな」っていうだけですけどね。全部そうです。本当に。ソニーさんとね、レーベル。それも突然「やらないか?」って言われて。「おおっ!」って。ソニーの中にレーベルを持たせてくれるっていうから。

(吉田豪)最高ですね。

(菊地成孔)「やったー!」って思って始めて、楽しく好きなようにやっていたんですよ。そしたらある日、クローズさせられて(笑)。それが『夜電波』が終わる時と同じタイミングで。だから去年の暮れっていうのはレイオフっていうか、1回クビになる年なんだなって。だからその流れっていうのはね、博打と同じで。こういう流れだからっていうのは認識しています。

(吉田豪)でも、それはそれでそういうものだから……っていう。

(菊地成孔)流れはしょうがないです。どうしようもないんで。

1回クローズになる流れの年

(吉田豪)よく本当にラジオとかね、結構ファンの人とかに無邪気に言われるじゃないですか。「またラジオ、やってくださいよ!」みたいなのって。

(菊地成孔)言われます。言われます。

(吉田豪)でも、個人でどうこうできる話じゃないんですよっていう……。

(菊地成孔)そうそう(笑)。

(吉田豪)毎回思うんですよ。「局に言ってくださいよ」っていう。

(菊地成孔)いや、本当、本当。僕なんか『夜電波』なんかね、おかげさまでっていうんですかね。好きな方は相当お好きだったみたいで。数もずいぶんと取っていたらしいんですよ。僕、数は気にしたことがないんですけど。通りすがりの人に言われましたからね。こうやって人が歩いてきて。当たり前だけど普通に人が歩いてくるじゃないですか。知らない人ですよ。歩いてきて、「菊地さんですよね? ラジオ、またお願いします!」って言って去っていったという。

(吉田豪)フフフ、立ち止まりもしないで?

(菊地成孔)立ち止まりもしないで。まあ、ちょっと立ち止まりましたけども。コンビニの店員に言われたこともありますよ。「○○円です。次の番組、待っていますね」って。で、「恐縮です」っていうね。「お声さえあれば」って言っているんですけども。まあでも、もうラジオ業はたぶんないと思いますね。

(吉田豪)ああ、そうなんですか? だってね、TBSを辞めた人をね、次々に文化放送が声をかけたりとかね。最近すごいしてますからね。

(菊地成孔)ああ、そんなポリティカルなことが?

(吉田豪)そうそう。わかりやすく(笑)。

(菊地成孔)めちゃめちゃわかりやすいじゃないですか(笑)。

(吉田豪)『デイ・キャッチ!』勢を全部そっちに集めたりとか。で、『ナイトキャッチ』っていうタイトルをつけたりとか。

(菊地成孔)かなりの……すごいですね。ベタベタですね。へー。

(吉田豪)いい戦争をしていますよ(笑)。僕もたまに言われるんですよ。「ラジオ、やってください」って。毎回、困りますからね。「いや、月イチでは出ているんですよ……」っていう。

(菊地成孔)そりゃそうですよね。どんな仕事でもそうですよね。まあでも、吉田さんも言われがちでしょうね。「あれやってくれ、これやってくれ」って。

(吉田豪)そうそう。どうしようもないっていう。(コメントを読む)「戸波さんの話、聞きたいな」「ずっと続くと思ったのに」「韓流最高会議、大好きでした」。

(菊地成孔)ありがとうございます。

(吉田豪)(コメントを読む)「松之丞さんにお会いしたこと、ありますか?」。

(菊地成孔)ないですよ。ええ。面白いね、あの人ね。

(吉田豪)聞いています。もちろん。

(菊地成孔)うん。あの方こそきっと……全然悪い意味じゃないですよ。この一講談師っていうんじゃなくて、なにか講談という世界を突破してマスメディアにも出て。講談という世界を背負って有名人になってやるっていうライフスタイル、たぶんあると思いますよね。そういう健全な……。

(吉田豪)いい野心を持っているっていう。

(菊地成孔)そうそう。健康的で男性的な野心を……「男性的」って言っちゃ、いまはダメか。野心をちゃんと持たれている方だと思いますね。僕なんか「よし、日本のジャズ界を背負って……」とか。フハハハハハハッ!

(吉田豪)「ラジオを通じて啓蒙して……」って。

(菊地成孔)「啓蒙して、ジャズを広めてやる!」とか、鼻くそ一切れも思わなかったよね(笑)。ただやりたい放送をやるだけだっていう。遊んでいるだけなんで。

<書き起こしおわり>

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