なべおさみさんが2014年6月にTBSラジオ『たまむすび』に出演した際の書き起こし。水原弘さんの付き人時代、物買い屋として様々な商品を値切った武勇伝を話していました。
(玉袋筋太郎)まあでも、天下のスターのね、水原弘さんの付き人から始まり、あれも、この本で読んだんですけど。お金がね、手を四本出して、4万円だと思ったら4千円だったっていうエピソード。
(小林悠)その、月収がね。『4』って出されたから。
(なべおさみ)4千5百円ですから。アパートの・・・
(小林悠)家賃が。
(玉袋筋太郎)(笑)
(なべおさみ)もうハナから5百円赤字っていう。
(玉袋筋太郎)でも、普通やめちゃうじゃないですか。いまの若い子って、そういうところで。
(小林悠)そうですよね。聞いてない、話が違うって言ってね。
(玉袋筋太郎)そうなんですよ。それでもやっぱりなべさん、そこを続ける!っていう、師匠の気持ちっつーのは、なんなんでしょう?
(なべおさみ)物買い屋だとか、いろんなことを始めるわけですよ。物買い屋。
(玉袋筋太郎)物買い屋!たくましいなー!
(なべおさみ)まあ、ロカビリーの全盛期だから、山下敬二郎さんとか、ミッキー・カーチスさんなんかが、『なべ!おう、福生でな、放出品。いいデスクを見つけたんだけど、お前、行ってな、1万8千円だけど、値切れたら、半分!値切ったぶんをやるよ!俺の車で行って来い!』みたいなね。
(玉袋筋太郎)へー!
(なべおさみ)そうすっと、運転手と仲良しだから、行こう!って、福生に行くと、中古屋さんに出てるわけよ。キレイな放出品が。米軍族の放出した。『ああ、こりゃあ日本にはないセンスだな』って。いわゆる、いまだとあるけども、この机のボード板がギャーッて開いちゃって。中に物を押し込めるとか、そんな風なの、あるじゃないですか。こうやって開けられる。
(玉袋筋太郎)いまだったら、当たり前ですけど。
(なべおさみ)そんなのはない頃だから。なるほど、『これ!』って言うと、オヤジが『腐るもんじゃございやせんから』みたいなことを言うんですよ。『いや、そんなことを言わないでさ。俺だって東京から来たんだからさ』『ここも東京』なんてね。
(玉袋・小林)(笑)
(なべおさみ)『そうは言ってもさ、ここでガソリン代もかかって来てるんだからさ』『これね、何年置いておいたって値が下がるもんでもないし。上がるだけなんだよね。それをまける方がおかしいだろう?』『わかった、わかった!いらねーよ、こんなものは!だけどな、俺は少々乱暴者だから、こんなの、ドン!と叩いて潰したり、そんなことぐらいは平気でしちゃうよ。それを電話でもなんでもしてもらったって、いい。これは元には戻らねえよ。そういう風にしても、いいのか!?』『待った!まけた!』。こんな・・・
(小林悠)恐喝じゃないですか!(笑)。
(なべおさみ)いやいや、気合ですよ。
(玉袋筋太郎)これは交渉ですよ。
(なべおさみ)遊びですから。
(玉袋筋太郎)ネゴシエートですよ、これ(笑)。いや、本当なべさんのそのね、鉄火肌ぶりが。たまりません!
(なべおさみ)面白いんですよ。このオヤジたちもね。もう毎日毎日ね、前掛けしめて、パッパッパッパッてはたきを叩いてるのは飽きてるんですから。このぐらいの面白いやつ来なきゃ、商売・・・これが商売。そうすっともう少し、楽しいんで。『持ってきな。もういいよ、兄ちゃん。1万円で』っていうと、8千円まかっちゃうわけでしょ。で、『ミッキーさん!8千円まかりましたよ!』『よし!半分と言いたいところだが、そっくりくれてやる!』。こうですよ。
(玉袋筋太郎)かぁー!来た来た来た!いよーっ!
(なべおさみ)ミッキーさんが。『えっ!俺、8千円もらえんすか!?ありがとうございます!』。そうすっと、『ところでな、なべ。お前、デパートは値切れねえだろ?』と、こう来るんですよ。
(玉袋筋太郎)(笑)
(小林悠)次の依頼が来ました(笑)。
(なべおさみ)『デパート?』。日劇でウエスタン・カーニバルやっている最中ですから。『今度の休憩の時に行ってみな。このデパートの○階に、丸い絨毯が山積み担っている。いちばん上のグリーンやつだぞ。売れてねえはずだ。あれ、行って来い!まけられたら、お前な・・・』っていうと、もう全部まけた分、くれる人だから。
(玉袋筋太郎)(笑)
(なべおさみ)『行ってきまーす!』って。もう水原弘なんかほっぽらかして。
(小林悠)付き人なのに(笑)。
(玉袋筋太郎)行っちゃう!
(なべおさみ)行っちゃうんですよ。そいで行って。これ、元手は5円でしたね。値切り代の元手が。1階のタバコ売り場のところにい、チューインガムが売っていたの。で、5円で、大きくない方の、半分のようなやつ。1枚買って。クチャクチャクチャ・・・って噛みました。噛んで上がりました。絨毯がありました。周りを見回すと、ヘリにこう、糸がシューッと。ヒラヒラっと出て。
(玉袋筋太郎)出て(笑)。
(なべおさみ)そこを、店員の隙を見て、チューインガムをなすりつけました!
(玉袋筋太郎)(笑)
(小林悠)なんということを!
(なべおさみ)1階上がって、もう一度戻ってきますと、ほどよく乾いております。『おねーさーん!この絨毯、いいなあ。これ、少しまからない?』『いや、お値段の方は・・・』『そうだな。デパートでまけろっていうのが野暮だよな。うん。じゃあ、これをもらおうか。あっ!ちょっと待った。なんだ、これは?こんなものを売ってるのか、お宅は!』。
(玉袋筋太郎)ガムじゃないか!(笑)。
(なべおさみ)うん。ガムがびっちり付いているわけだ。『あらあらあら、すいません』って。山積みになっているわけだから、何百枚もあるわけでしょ?『他のを選んで・・・』『これって言ってるんだよ、俺は。これって。よし、わかった!お宅はここのデパートの直営ですか?それとも、ここで出店で?どうですか?』って言ったら、『いや、うちは神田の・・・』『ああ、そう。出店。じゃあ、本店に電話して、上司に聞いてくれ。俺、かわるから。あのね、ほしいのがあったんだけどね、ヘリにね、とんだ馬鹿者がね、チューインガム、なすりつけてったやつがいるんだよ。これじゃあ、買えねえだろ?ねえ。なんぼ、まける?そしたら俺、これ切っちゃってでも、使うから。どうだろう?』『そうですねー・・・』って。向こうも考えている。
(玉袋筋太郎)はいはいはい。
(なべおさみ)『見切りだろ?戻すよりはさ、売っちゃった方がいいじゃないか。4割?4割5分?半分?』『4割でいかがですか?』『決めた!』。
(玉袋筋太郎)(笑)
(小林悠)ひどい(笑)。
(なべおさみ)それでもうさ、3万6千円とか。それの40%。かけるったって俺、算数に弱いから、すぐいくらって出てこないよ。で、持って帰って。丸めて。『ミッキーさーん!まかった!』『まかったってお前、その仕方があるだろう?それを話して聞かせろ』って。水原弘とかね、平尾昌晃だとか、みんなが集まって来て。『なべが絨毯をいかに安く買ってきたかを、これから話すぞ!』って。楽屋で、俺が1人、ワンマンショーですよ。
(玉袋筋太郎)(笑)
(なべおさみ)俺が『元手5円でチューインガムを買いまして・・・』っていう話をずーっとして。みんなが『ワーッ!なべ、やったな!(拍手)』って。『よーし!お前、今日はな、色をつけて。お前がまけた分にな、銭をやろう!』って。ミッキー・カーチスってそういう人だったの。
(玉袋筋太郎)いやー、いい話だー!
(小林悠)すごい!時間があっという間にすぎちゃった。びっくりなんですけど!
(玉袋筋太郎)もう尺、たりねえ!
(なべおさみ)だって、明日来りゃあいいんでしょ?
(玉袋・小林)(爆笑)
<書き起こしおわり>