なべおさみが語る 中学生時代に白洲次郎から教えられたこと

なべおさみが語る 中学生時代に白洲次郎から教えられたこと たまむすび

なべおさみさんが2014年6月にTBSラジオ『たまむすび』に出演した際の書き起こし。中学生の時に偶然出会った白洲次郎さんから教えられたことについて話していました。

(玉袋筋太郎)まあ、気になるのがやっぱりその1から行っちゃってもいいと思うんですけど。白洲次郎さんの話なんですよね。

(小林悠)私、大好きなんですよ。奥様も大好きですし。白洲次郎と会ったことが。

(なべおさみ)もういまはね、お孫さんが活躍しているっていう、そういう時代ですからね。で、僕は昭和28年ですから、中学2年生。くりくり坊主ですね。これね、銀座に日本で最初のジャズ喫茶と銘打つものがオープンしたんですよ。

(玉袋筋太郎)ええ。

(なべおさみ)それが昭和28年10月20日かな?で、僕はそれを待っていました。それで、まあ150円のコーヒーって、高いよ。

(玉袋筋太郎)当時ですよね。

(なべおさみ)まだ30円でコーヒーなんて気取っている人間が飲む代物。僕らなんか、飲む代物じゃないですよ。でもまあ、150円でコーヒー。で、席についたの。ジャズが始まりました。だけど、私の隣に座った人間の風情がね、もう半端じゃないんだ。

(玉袋筋太郎)半端じゃない!

(なべおさみ)子ども心に、『何者、これ?こんな人間がいるの!?』。だって、その当時のね、日本人はもうみんな、一億総貧しくて。

(玉袋筋太郎)汚い格好して(笑)。

(なべおさみ)うん、そうそう。そいでね、ほとんど同じような匂いですよ。全く違うんですよ。

(小林悠)えっ?何が違うんですか?

(なべおさみ)漂うオーラが。もちろん服装なんか、カシミアのキャメル着てるんだけど。もうそれだけでも、もうね、子どもはわかんないよね。まだね。

(玉袋筋太郎)うんうん。

(なべおさみ)僕、ずっと後になって、あれはカシミアで、キャメルで、こんなに値段するものなんだってわかったけど。それでも、その違いぐらいは感じるよね。ところが、中身の人間が放つ妖気というかね。もう、漂う、他を圧する・・・子ども心にさ、ひきつけられちゃって。ひきつけられちゃって。

(玉袋筋太郎)色気ですね。

(なべおさみ)で、舞台に集中できなかったの。で、あっという間に、まあ40分ぐらいのショウが終わってしまった。で、『あれ?俺、何のためにここに座っていたのか、わかんねえ。もう1回、聞かなくちゃ。この席でいいや』って、券を買い直せば、その席をキープできるんですよ。

(玉袋筋太郎)ええ、ええ。

(なべおさみ)で、そのお金を払ったら、『あれ?君、1ステージ見るの?』『はい』『ああ、じゃあ僕も見ようか』って。僕に、『ジャズ、好き?』って、こういう話を僕に問いかけてくれたの。これがきっかけで、もう次から次へと僕がカルチャーショックを受けるような話を、身に染み込ませてくれたのが、その人なんですね。

(小林悠)えっ?急にあちらから話しかけてきたんですか?

(なべおさみ)そうそうそう。そいで、『ああ、ちょうどいいから君に、大人になって損しないことをひとつ、教えておいてやろう。世の中には全て、人間も物も、本物、偽物。これがわかりにくいんだが、もうひとつ。似て非なるものと書いて、似非物(えせもの)という。この3つがある。これを見分けられる大人になりなさいね』って、こう言ったの。

(玉袋筋太郎)ほあー!すごいよね!

(なべおさみ)だって僕、それ昭和28年でね。14才ぐらい?13、4ぐらいでしょ?そのぐらいのあれを、克明にインプットしているわけだから。

(玉袋筋太郎)すごいですよね。

(なべおさみ)それで、全部僕の人生指針みたいなものが出来ましたね。人を見る目、物を見る目。本物か、偽物か、似非物か、みたいなね。

(玉袋筋太郎)似非物か、謎の紳士か?(笑)。

(なべおさみ)謎の紳士みたいなのが現れるわけだよ。ね。これ、偽物なんですけどね。

(一同)(笑)

(玉袋筋太郎)すいません、すいません(笑)。

(なべおさみ)こういうのだって、やっぱり白洲次郎さんの影響ですよね。

(小林悠)その彼が白洲次郎さんだってことは、いつわかったんですか?

(なべおさみ)高校生の時ですね。

(玉袋筋太郎)すごいよね!

(小林悠)あ、その時はわからなかったんですね。

(なべおさみ)高校生になって、なんかの読み物の中に丸く吹き出しで、顔写真があって。それで、その、まあ『マッカーサーと戦った吉田茂の・・・』みたいなあれがちょっとあって。興味もなにもないから、フワッつって。『あれ、待てよ?この人・・・うわっ!あの時の人じゃない!』って。

(玉袋筋太郎)すっごい(笑)。

(なべおさみ)これでまた、何十年も私、忘れてましたよ。うん。だけども、僕の骨身に染み付いているのがこの時の教訓ですから。誰を見ても、『うん。すごいな。だけど、偽物』『ああ、こいつはまがい物』みたいなものは、はっきりと自分で区別してね。

(玉袋筋太郎)はい。

(なべおさみ)だから、まだ世の中が騒いでない時に、あなたの師匠のたけしさんは、僕は『あっ、これは江戸漫才の本流だな』って思いましたよ。

(玉袋筋太郎)なべさんの司会の番組に、まだブレイク前のツービートは出てるんですもんね。

(なべおさみ)そうそう。そいで、僕はもう、ツービートと鶴太郎。この2人だけを取っ替え引っ替えね。もうひとつは、ゆーとぴあかなんかがいたんだけど。これ、後々、『大した本物じゃないな』って(笑)。

(玉袋筋太郎)(爆笑)。『よろしくネ!』っていうことで(笑)。ああ、そういったね、でも、本当なべさんって出会いってすごすぎますよね。なんなんですかね?

(なべおさみ)それはやっぱり、わかんないんだけど、僕の持って生まれた運命なんでしょう?で、僕はだから年中、ワクワクドキドキして生きてられるんです。

(玉袋筋太郎)すごいですね。

(なべおさみ)そのかわりね、芸能人になってね、自分が一本立ちして、名前が少し通るようになってもね、もう、無名時代とかデビューする前とか、子どもの頃からとか、それと同じ気持ちなんですよ。だから、共演してて、僕の番組に出てくるあれなのに、僕はボーッとして。サイン貰いたくなっちゃうんですよ(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(なべおさみ)ファンになっちゃったという。

<書き起こしおわり>

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