町山智浩 成人の58%のワクチン接種が完了したアメリカを語る

町山智浩 成人の58%のワクチン接種が完了したアメリカを語る たまむすび

町山智浩さんが2021年5月11日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で成人の約58%のCOVID-19のワクチン接種が完了したアメリカの状況について話していました。

(赤江珠緒)アメリカはワクチン、12歳の子も打てるようになったって聞きましたよ?

(町山智浩)そうなんですよ。子供も打てるようになったんで。まあ、その下のもっと小さい子たちにも打とうという話もありますしね。

(赤江珠緒)そんなに広がってるんですね。

(町山智浩)今ね、もう飛び込みで。予約なしでいつでも誰でもワクチンを打てます。

(山里亮太)結構アメリカっていろんなところで打ってもらえるんですよね。

(赤江珠緒)薬局とかね。

(町山智浩)そう。薬屋さんとか、そういうところにふらっと行って。「今日、ちょっと寄ったんで。ちょっとワクチン、打ってくれや!」みたいな感じですよ。今。「何発打ちましょうか? 余ってますから」みたいな(笑)。まあ、なんでべらんめえなのかわかりませんけども(笑)。そんな感じですよ。

(赤江珠緒)それは素直に日本としては羨ましいですね。

(山里亮太)なんなんだろう? そのスピード感。

アメリカのワクチン接種のスピード感

(町山智浩)ねえ。まあとにかく僕、ワクチンを打つところをスマホでビデオに撮ってテレビで流したりしたんですけど。それ見てもらうと分かるように、もう早いんですよ。スルスルッて。だからまず、スマホでワクチンの予約をするんですね。で、「どこで打てますよ」みたいになっていて、何箇所も打てるところがあるんですけど。で、そこに車で行くじゃないですか。すると、それをそのままスルスルスルッと抜けて。そのスマホだけ、見せて。コードが送られてくるんで、そのコードをスキャンするんですね。だから、何の手続きも、何の会話もないんですよ。それで車の窓を開けて、そこからプッと打ってもらって。

(山里亮太)ああ、ドライブスルー的な?

(町山智浩)ドライブスルーです。はい。一瞬です。なにもかも。で、そのスマホの予約もせいぜい1分で取れますね。だからもう、とにかく早かったですね。あとはワクチンの注射を打つ人も増やしたんですよ。僕が行った時に打ってくれたのは歯医者さんでした。

(赤江珠緒)それは歯医者さんはだってね、麻酔とかも打っているんだから。打てますよね、それは。

(町山智浩)そうなんですよ。あと、獣医さんとかも打てるようにしたんです。あと、アメリカは正看護師っていう人がいるんですけど。その看護士さんと医者の間ぐらいの人ですね。4年制の医大とか出てる人で、野沢直子さんの旦那さんがそうですよ。

(赤江珠緒)ワクチンってあれ、筋肉注射ですもんね。だから基本的にまあ、医療関係者の人だったら皆さん、打てますよね。

(町山智浩)そうそう。簡単に打てるんですよ。

(赤江珠緒)血管に打つとかよりも楽だって言いますもんね。

(町山智浩)だから、法整備もして。そういう人たちが全員、ワクチンの注射を打つことができるようにして……っていう感じで。それで、みんなボランティアですね。だからもう、ものすごいアメリカ中の打てる人は全員参加するという感じで。日本みたいに何億円も中抜きする企業に出して。それでそういう人たちを調達するという形ではないんですよ。国民が一丸となって注射に参加して、スルスルッと終わっちゃいましたね。

(赤江珠緒)そうか……。

(町山智浩)それで現在ね、アメリカ中の大人。成人でワクチンを打っている人は58パーセントを超えましたね。

(赤江珠緒)うわっ、すごい差がつきましたね。本当にね。

(町山智浩)だからね、すごいいろんなものがオープンになっています。お店とかはもうほとんど通常に近い形で営業しています。でね、結構難しかった劇場。9月にはブロードウェイとかオープンですよ。コンサートホールもオープンです。日本はなんか客数を制限して開けたりしていましたけど、アメリカは完全にシャットダウンしたんですよ。そういう劇場は。だからグズグズグズグズやっていなかったんですよ。アメリカはもう、映画館もそういうのも全部、一瞬でバッと全部、終わりにしたんですよ。それで1年間、びっちりやらなかったんですけども。

(赤江珠緒)ワクチンが今、60パーセントぐらい国民に浸透していると、今の時点の感染者っていうのはやっぱり、ほとんどいないってことですか?

(町山智浩)それは、いますよ。ただ、急激に減っています。だから、今CDC(アメリカ疾病予防管理センター)とかが言っているのは、「もう折り返し地点を越えた」って言ってますね。収束に向かっているということです。で、6月中にはねおそらく、いわゆるその集団免疫と言われてるようなものに近い状態になるだろうと。要するに全人口の70パーセントを超える人がワクチンを打った状態になるだろうと。で、10月にはロックフェスティバルとかも再開するみたいですね。

(山里亮太)へー! でも、これだけ進んでいるシステム、制度が整っているアメリカで、そういうのができるのが10月ぐらいなんですね?

(町山智浩)そうですね。だから日本はズルズルズルズルと、曖昧にいろんなことをやり続けていたじゃないですか。きっちりと閉めないで。メリハリがなかったけども、アメリカは非常にメリハリがあって。しかも、強制的なこととか、非常に政治的な圧力とかがなく、みんなが「やっぱりヤバいからやめようね」って感じでサッとやめたんですよ。それもだから、日本は「そんな強制をするためには、憲法を変えなきゃいけない」とか言ってるんですけど、アメリカは別に憲法を変えたりはしていないですからね。

「これはやっぱり危険だからやめましょう」っていうのでやめたのでね。で、それを支えたのは、やっぱりお金なんですよ。すごいお金を……何度も言ってますけど、ものすごいお金をガンガン給付したりしてますからね。今、失業保険で週にもらえるお金が1人3万円なんですよね。それが毎週毎週、もらえるし。あと、この間、バイデンさんが法案にサインをしたんですけども。それが額なんですが。207兆円のコロナ経済刺激策が動きます。

(赤江珠緒)それはもう、ケタが違うな!

(町山智浩)207兆円ですよ? で、その中には国民全員……子供を含む国民全員への20万円ずつの支給が入ってますね。

(赤江珠緒)ふーん!

207兆円のコロナ経済刺激策と国民全員への給付金

(町山智浩)これはすごいんですよ。本当に4人家族だと88万円ぐらいになるんですよ。1人あたり22万円ぐらいなんでね。だからこれはすごい大きいですよ。だって、年収300万の人に88万円の給付だったら、すごいですよね?

(山里亮太)ですよね。

(町山智浩)だから、これは大きいですし。まあかなり「お金が支えた」と言えると思いますね。トランプ大統領ですら、ワクチン予算に1兆5000億円、出してるんですよ。だからもうケタが違うんで。それはやっぱり、お金の力はすごく大きいと思いますね。だから207兆円ですけども。景気刺激策だけでね。でも、日本もGo To トラベルとかには2.7兆円、出してるんですけどね。

(赤江珠緒)そうでしたね……。

(町山智浩)その出す方向を間違っているっていうことですよね。あと、ワクチン予算、日本は3000億円ぐらいらしいですね。ワクチンの接種の予算がね。全然ケタが違いますよね。

(赤江珠緒)まあ、元々分母が違うとはいえ、そうね。

(町山智浩)まあでも、オリンピックは1兆6000億円も出すんでね。なんかよくわかんないんですよ、日本って。

(赤江珠緒)まあ、それが今、国民全体がよくわかんない状態になっているっていう。

(山里亮太)よくわからない状態のところに、誰もわかる説明をしてくれないっていう、一番つらい状態になってます……。

(町山智浩)わけがわからないですよね。だってオリンピックに1兆6000億円でしょう? Go To トラベルに2兆7000億円でしょう? で、ワクチン接種に3000億円って……わけがわからなくない? これ。

(山里亮太)たしかに! だってこれ、ワクチンがすべてを解決してくれるのに……。

(町山智浩)もうなにがなんだかわからないですよ、これ。ねえ。

(山里亮太)で、どんどんと解決していく海外の国を見て「いいな」って思うという。

(町山智浩)そうなんですよ。なんかワクチン接種、日本は全世界で140位ぐらいなんですか? いろんな発展途上国とかよりもはるかにワクチンの接種率は低いんですけど。ただ、ワクチン自体はもうすでに日本にかなり入ってるんですね。ものすごい数のワクチンが日本にあって、冷凍庫に保存されている状態のまま、「さて、これをどうやって実際に人に打っていこうか?」っていうことを今、考えてる状態ですよね。

(赤江珠緒)そこでみんな待ってるという状況なんですよね。

(町山智浩)だから、それこそいろんなこと……Go To トラベルだったりアベノマスクとかをやっている間になぜ、ワクチンを配布する準備をしていなかったのか?っていうことですよね。

(山里亮太)そうなんですよね。

(赤江珠緒)自国のことだからもう耳が痛いですよ。本当に。

(町山智浩)だからこれでやっぱり国とか政治っていうものがどれだけ、こういう緊急事態に対応できるか?っていう差がはっきりしたと思うんですよ。で、トランプ大統領はたしかにアメリカにコロナウイルスを入れちゃったんで。最初の入国規制が甘くて。それと、その後の対応もよくなかったんで、アメリカははっきり言って58万人の人が亡くなってるんですよね。コロナウイルスでね。ただ、トランプ大統領はその罰を受けて。コロナ対策の失敗が主な理由で11月の大統領選挙で落選しましたよね? だから普通はそういう失敗したら、落選するんですよね。

(赤江珠緒)そうか……。

(町山智浩)なぜ、日本はしないのかがよくわからない。なぜ、日本は政権が維持され続けるのか、本当によくわからないな。

(赤江珠緒)外から見ると、よりそういうところが見えるのかもしれないですね。

(山里亮太)たしかに。不思議なんでしょうね。この状況が。

とても不思議な日本の状況

(町山智浩)すごく不思議で。だから最近、すごく日本のコロナの状況って、ワシントンポストとかニューヨークタイムズでも「これ、どうなってるのか、わけがわからない」っていう感じで記事になってますね。

(赤江珠緒)オリンピックのこととかもね、記事になったりしてますもんね。

(山里亮太)そうだよね。開催国だもんね。

(町山智浩)でもこのままだと……今、Googleがね、ずっと日本の死者数の予測をしてるんですよ。で、おそらく6月ぐらいまでに1万3000人ぐらい亡くなるだろうという風にGoogleが見ているんですね。そうすると、たとえば7月ぐらい、オリンピックが開催される頃にはもう少し増えて1万5000人ぐらい亡くなってしまうだろうと。このままの状況でいくと。だってワクチン接種が進んでいないから、たぶんこのままのカーブで行くことになる。そうすると、オリンピックの最中ぐらいに東日本大震災における警察発表の死者数を抜くということになってしまうんですよね。

(赤江珠緒)そうですよね。

(町山智浩)これは大変なことだと思いますよ。まあ、そんな感じで映画の紹介をしたいんですが……。

(赤江珠緒)ああ、そうですね。

<書き起こしおわり>

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