久住昌之 ピエール瀧 花のズボラ飯 孤独のグルメを語る

久住昌之 ピエール瀧 花のズボラ飯 孤独のグルメを語る たまむすび

漫画家の久住昌之さんがTBSラジオ 赤江珠緒たまむすびに出演。赤江珠緒さん、ピエール瀧さんとご自身の漫画『花のズボラ飯』『孤独のグルメ』などについて語っていました。

(赤江珠緒)本日の『おもしろい大人』、ゲストは漫画家の久住昌之さんです。ようこそ、いらっしゃいました。

(久住昌之)どうもこんにちは。

(ピエール瀧)こんにちは!よろしくお願いいたします。

(赤江珠緒)素敵なお召し物で。サラリと麦わら帽子もね、かぶられて。おしゃれでございます。『花のズボラ飯』の瀧さんもファンということで、私も読ませていただきましたけども。これはまあ、お腹が空いてくる作品でございますね。もう、『あ、これやらなきゃ!』って感じになるんですけども。

(ピエール瀧)っていうか、この漫画を読んで、どんだけの女子がホッとしてるかと。

(久住昌之)(笑)

(ピエール瀧)こんなんでいいんですよって。

(赤江珠緒)それもあるかもね。

(ピエール瀧)これ、デフォルトですよって(笑)。

(赤江珠緒)今日の食事を振り返って、『大丈夫!』って思ったりね。

(ピエール瀧)家のだらしなさね。片付けないとか。

(赤江珠緒)(笑)えー、久住昌之さんのプロフィール、ご紹介します。久住昌之さんは1958年、東京都のお生まれ。大学在学中から美術や音楽に興味を持ち、芸術美術の専門学校 美学校で学ばれます。1981年に専門学校の同級生 泉晴紀さんとのコンビ 泉昌之として雑誌『ガロ』で漫画家デビュー。デビュー作の『夜行』はトレンチコートの男が夜行列車で駅弁をいかにして上手に食べるか?真面目に悩む姿を描いて話題になりました。90年には弟 久住卓也さんとの漫画家ユニット Q.B.Bとして活動されまして、ちょっとダサくてなんとなくモヤモヤした中学生時代の日常を描いた『中学生日記』で・・・

(ピエール瀧)超面白いですよね、『中学生日記』。

(赤江珠緒)文藝春秋漫画賞を受賞されました。その後も『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』と久住さん原作の漫画大ヒット。両作品ともテレビドラマ化されまして、久住さんご本人も出演されている他、テーマ曲などドラマの音楽も久住さんが担当されているのです!

(久住昌之)なんか偉そうな感じになっちゃってるじゃないですか(笑)。

(赤江珠緒)いえいえ、とんでもない。

(ピエール瀧)まあね、でも、楽しんで仕事なさってるなって感じがしますけども(笑)。

(赤江珠緒)だって原作も書かれて、音楽も。ご自身も出演って。

(久住昌之)でも、どんだけ出たがりなんだって(笑)。ちょっとイヤなんですよ。

(赤江・瀧)(笑)

(久住昌之)出てこなくていいって。裏方でいいんです。

(赤江珠緒)もう学生時代からずっと音楽活動もされてたんですか?

(久住昌之)そうですね。芝居の音楽とかをやってたりしたので。

(赤江珠緒)そっかそっか。さあ、そんな『花のズボラ飯』ですけども、一体どんなお話なのかも・・・

(ピエール瀧)これ、『ハ↑ナのズボラ飯』でいいんですか?『ハ↓ナのズボラ飯』ですか?

(久住昌之)これ、どっちでもいいんですよね。で、みんな困る所が。テレビやラジオで困る所がいい。

(ピエール瀧)あー、それを見てほくそ笑んでいる(笑)。なるほどー。

(赤江珠緒)いま、ほくそ笑まれてましたけど。これはですね、愛する夫が単身赴任となってしまった主婦の花さんがですね、毎日のご飯を簡単でしかも美味しい手抜きメニュー、つまりズボラ飯で乗り切ろうと日々奮闘する姿を描いた作品でございます。画は漫画家の水沢悦子さんが担当されております。2009年6月から連載がスタートして、『このマンガがすごい!2012年版オンナ編』の1位に選ばれている作品なんですね。

(ピエール瀧)うん。

(赤江珠緒)はい。たしかにね、この単身赴任の旦那さん、ゴロさんは出てこないですよね。

(久住昌之)(刑事)コロンボの『ウチのカミさんが・・・』っていうのと近い(笑)。

(ピエール瀧)あ、そうだそうだ。

(赤江珠緒)存在感としてはあるし、出張からたまに帰って来たりもしてるんだなって分かるんですけど、一切姿は出てこない。

(ピエール瀧)電話をしているとこはありますけど、ゴロさんの声は出てこない。

(久住昌之)そうなんですよね。

(赤江珠緒)で、花ちゃんが1人で『今日は、なに食べよう?』っていう感じでね。その時その時でいろいろあるんですけども。スタジオにはこのズボラ飯1巻に登場する『シャケトー』、出てまいりました。こちら、瀧さん、久住さん、スタッフが作ったものなんですけれども。食パンに鮭フレーク、マヨネーズ、以上!という材料で。これを混ぜて塗ってこんがり焼くだけ。

(ピエール瀧)(笑)そうなんです。だいたい入り口は『えー!?』から始まるんですね。で、食ったら『ウマッ!』っていう。

(赤江珠緒)ね。この短い作業でっていうね。どうぞ。私もシャケトー、ちょっといただきます。

(ピエール瀧)この、焼いたトーストに、鮭の香りがふわっと広がる・・・(笑)

(赤江珠緒)うん!うん!本当、柔らかい・・・

(久住昌之)なんか美味しいグルメ番組みたいじゃないですか(笑)。

(ピエール瀧)美味しさの入道雲が・・・口の中の広がりが・・・・

(赤江珠緒)ふわふわふわと。

(ピエール瀧)的なことを言うんですよ。花ちゃんが、バンバン。1人で食べながら。

(赤江珠緒)で、花ちゃんがまた料理をしながら、いりいろ独り言をいってね。

(久住昌之)そうですね。だいたい独り言とモノローグが多いんですね。僕の漫画は。

(赤江珠緒)楽しそうに料理作ってね。

(ピエール瀧)で、だいたいそこでオヤジギャグとかダジャレが入って。それを見ると、『あ、久住さんの漫画だな』って思うと。

(赤江珠緒)あの、『よっこいしょういち』じゃないですけど。そういうことをね、おっしゃるんですよね。

(ピエール瀧)うん!ウマいね。

(久住昌之)結構でも、みんなそういうダジャレ好きですよね。自分はあんまりダジャレって言わないんですよ。だけどこの漫画のこのキャラクター作ってたら言いそうな感じになってきて。それで言ったら、みんな面白い!っていうんで。それから一人歩きして言うんですよね。

(赤江珠緒)あ、もうこの花ちゃんが。

(ピエール瀧)とんでもないことを・・・『ヤルタ会談』とか言うんですよ。だって。『そこ、スッと出てくる!?』っていう。

(久住昌之)知らないようなね(笑)。

(赤江珠緒)勝手な歌とか作ってね。でも、そういう勝手な歌とかあるかもしれないですね。

(ピエール瀧)赤江さんは、こういうズボラ飯的なこととかやんないの?

(赤江珠緒)あのね、ありますね。私はね、うどんですね。『本当に今日は疲れた。でもなんか食べたい』っていう時は、うどんサッと茹でて、そこに生卵パーンと入れて、ちょっと醤油みたいなのかけて、わさびボーン!ですね。

(久住昌之)その、わさびボーン!が料理ですね。

(赤江珠緒)そうですよね!あと、鰹節パッとあれば、もういいですかね。

(久住昌之)そう。ズボラ飯ってそうなんですよ。疲れてどうしようもない時に、仕方なく・・・1人しかいなくて、自分で自分に作るものっていうので。大抵、みんな違うんですね。

(赤江珠緒)あとはですね、トウモロコシを・・・もっと疲れてる時はトウモロコシをね、丸々一本チーン!ってして、以上!

(ピエール瀧)それはね、ズボラ飯じゃないんだと思うな!

(久住昌之)(笑)いや、でもそうですよね。

(赤江珠緒)ね!そうですよね!『食べた!栄養も、ある!』

(ピエール瀧)(笑)ゼロでしょ?

(久住昌之)で、『栄養も』とか言うのね(笑)。

(赤江珠緒)『栄養も』とか言うの。一丁前に。

(久住昌之)なんか言い訳するところがおかしいですよね。

(赤江珠緒)『主食の中でも人気のあるトウモロコシをしっかりと食べた。大丈夫だ!』みたいな(笑)。

(ピエール瀧)なるほど。

(久住昌之)そういう人で、やっぱりズボラ飯ってので、カップ焼きそば作って、それで生卵を他のお皿に溶いて、『すき焼き風』って言って食べる人がいて(笑)。

(赤江・瀧)(笑)

(久住昌之)すき焼きでも何でもないよね!だけどその自分に対してのね・・・

(ピエール瀧)ちょっと美味しそう。でも。

(久住昌之)すき焼き風って(笑)。すき焼きの要素、何もないんだけどね。それは自分に言い聞かせてるんだよね。『栄養』とかね。

(赤江珠緒)分かります!そういうところ、ありますよ。

(ピエール瀧)『私は道は外れていないんだ』っていう。

(久住昌之)そうそう。何かを言い訳するのね。自分に言い訳してるのがおかしいんだよね。誰も聞いてないのに。

(ピエール瀧)その言い訳は、声に出てれば出てるほどいいっていう(笑)。

(赤江珠緒)そう。で、後ろめたさがあるから、余計饒舌になるっていうね。花ちゃんじゃないけど。『トウモロコシの皮、むきむき~』みたいなね。なんかいかにも作業してるみたいなね。『私、いま労働しております』みたいな(笑)。そういう感じかもしれませんね。

(ピエール瀧)たしかに赤江さん、そう考えると『花のズボラ飯』の中に赤江さん出てきてもおかしくはない感じですよね。

(久住昌之)いまの感じでそうですよね。

(赤江珠緒)そうですか?

(ピエール瀧)透明感もないし。

(赤江珠緒)(笑)。久住さん、『透明感』ですよ。ちょっと今、私のキーワードは。

(久住昌之)透明感ですか?いや、透明感、あるんじゃないですか?

(赤江珠緒)おっ!

(ピエール瀧)さすが大人。これが大人です。

(久住昌之)いやいやいや、『トウモロコシをチンするだけ!』みたいなところは透明感、あるんじゃないですか?

(赤江珠緒)本当ですか?久住さんご自身は、ズボラ飯っていうのは、召し上がられるんですか?

(ピエール瀧)どうやって出てくるのかしら?っていう。

(久住昌之)もうこれは、締め切りが来たらしょうがなく・・・ひねり出すっていうか。『困ったなー・・・秋になってきたから・・・鍋でいいんじゃない?とりあえず!』とか(笑)。

(ピエール瀧)それはたとえばスタッフの中で『これ、こうやったら美味しそうじゃないか?キミキミ、そこでちょっと作ってくれたまえ』って助手に作ってもらうのか、それとも・・・

(久住昌之)いや、自分で。

(ピエール瀧)『今日、どうしようかな?じゃあ、うどんとアレがあるから、ちょっとこれ行ってみようか?』って家で実際にやってみてっていう。

(久住昌之)そうですね。

(赤江珠緒)そういう中で優秀な選手っていうのは何ですかね?

(久住昌之)優秀な選手っていうのは、できたもので?

(赤江珠緒)この食材があれば割といいっていう・・・

(久住昌之)ああ、それがだから人によってすごい違うと思うんですね。僕は納豆好きだから、納豆とか豆腐があると結構うれしいんです。ところが、花のズボラ飯には納豆が出てこないんですよ。っていうのは、水沢さんが納豆食べれないんです。

(赤江珠緒)そうなんですか!

(久住昌之)やっぱり美味しいって実感が無いと描かないんで。だから食べれないんで。食べれるようになってくれたら、俺、3本は書けるって。食べれるようになった話とか、嫌いな話とか、納豆に助けられた話。最低3本書けるのに。この頃、電話で『食べれるようになりましたか?』って担当が言うと、もう答えてくれなくなったそうです(笑)。

(赤江・瀧)(笑)

(久住昌之)もう声を出さない。『まだです』って最初は言ってたんですけど。

(赤江珠緒)納豆もね、優秀な選手ですよね。たしかに。

(ピエール瀧)そうでしょう。栄養価もいいですし。

(赤江珠緒)パンに乗せて焼いても、それこそね。

(久住昌之)マヨネーズと醤油と、あれはだいたいそうですね。

(赤江珠緒)あと、卵もね、やっぱりね。卵が冷蔵庫から切れてると、ちょっとドキドキします。

(久住昌之)マヨネーズとそばツユっていうのが、みんななんかやるみたいね。みんなそれでなんとか・・・最後、それをつけてなんとかするみたいなね(笑)。

(ピエール瀧)冷やし中華方面というか(笑)。

(久住昌之)焼きそば方面でもいいし、パンでもいいし。シャケトーにも出てくるし。

(赤江珠緒)そうですよね。ありますよね。そしてですね、久住さんのもう1つの代表作、『孤独のグルメ』。こちらも料理の本なんですけども。こちらはですね、個人で輸入雑貨店を営む主人公 井之頭五郎さんが、仕事で訪れるいろんな街でフラッと立ち寄ったお店で食事をする様子を描いた漫画なんです。

(久住昌之)描いた”だけの”って書いてもいいですね(笑)。

(赤江珠緒)(笑)。そう、料理のうんちくとかをおっしゃるわけではなくて、ひたすら主人公の食事シーンと、食べている時の心理描写を描いているのが特徴の漫画ですよね。こちらは画の方は漫画家の谷口ジローさんが担当されておりまして。ドラマでもね、松重豊さんが召し上がってて。本当に美味しそうなんですよね。

(久住昌之)そうですね。松重さん、美味しそうに食べますよね。こう、ズルズルってすったりして食べてるんだけど、美味しそうですよね。

(赤江珠緒)淡々としてるっちゃ淡々としてる。たしかに、人がものを食べるっていう作業ですから。

(ピエール瀧)でも、久住さんの漫画は、それこそ昔の『豪快さんだっ!』とかあっちの頃から、1人で食べてて、その対食べ物に対して描写していくっていうのが多いんですよね。結構ね。

(久住昌之)考えすぎてるっていうね(笑)。

(ピエール瀧)それ、いつも見るたびに『久住さん、こうやって食ってるのかな?』っていう。

(久住昌之)そうですね。やっぱり最初の『かっこいいスキヤキ』の時に弁当だったんですけど、お弁当の時に昔から心配だったんですよ。ご飯とおかずのバランスが。『ご飯が足りなくなってきちゃう!』とか、『おかずが足りなくなっちゃうぞ!』っていうの、カレーライスでも感じてたんです。

(赤江珠緒)あ、向き合ってますねー。やっぱりね。

(久住昌之)向き合ってるっていうか、心配。『このへんでご飯だけ福神漬で食べておかないと、ご飯ばっかり残っちゃうぞ』とか。

(ピエール瀧)『甘い豆はどうするんだ?』とか。

(久住昌之)そうそうそう。『最初のおかずじゃなくて甘い豆だけ食べちゃって、なかったことにしてやるか?』とか。

(赤江珠緒)でもね、久住さん、人間の欲望の中でも食欲っていうのはやっぱり欠かせない、第一の柱と言っていいかと思いますけど・・・

(久住昌之)いや、だから下ネタをみんな子供が喜ぶのは、みんなするからじゃないですか。隠したいけど。でも、その元は口から入ってるわけですよね?だからみんな下ネタ、誰でもする・・・しなきゃならないことでしょ?で、その元を入れることも誰でもしなきゃいけないじゃないですか。

(赤江珠緒)なるほど。

(久住昌之)だからちょっと食べるのって恥ずかしい感じが僕、するのね。

(赤江珠緒)そうですよね。人前で食べるのも恥ずかしいとかね、ありますよね。

(久住昌之)ものすごいカッコつけててもさ、カッコいい人でもお腹すくと『グー』とかなったりする。イライラしたりするとかね。なんか面白、滑稽なんですよね。なにか食べたいっていうの。

(赤江珠緒)人間である以上、この食欲から逃れるっていのも難しいですもんね。

(ピエール瀧)そうですよね。

(久住昌之)死んじゃうからね。食べないとね(笑)。

(赤江珠緒)そうか。下ネタみたいなものというか・・・

(久住昌之)『上(カミ)ネタ』ですね。だからもう、上ネタだらけでしょ?このごろのテレビとかラジオとか。

(ピエール瀧)まあ、そうですね。

(久住昌之)みんな食ってるのね。あれ、下ネタと考えたら大変なことになるよ。

(ピエール瀧)そうですよね。表裏一体なのにっていう。

(赤江珠緒)生きるための作業を全面に出してますね。

(久住昌之)もう性欲とかと比べたら、あれだって本能と考えればね。あれも恥ずかしいでしょ?食欲だけを恥ずかしくないみたいになってますね。だいたい『欲』って恥ずかしいじゃない?

(赤江珠緒)そうですよ。

(ピエール瀧)なにかを食べて『美味しい!』なんて言った瞬間、もうそんな恥ずかしいっていう(笑)。

(赤江珠緒)たしかに!そうだ!

(久住昌之)いちばん恥ずかしいのは『美味そう!美味そう!』って(笑)。あれが恥ずかしい。

(ピエール瀧)(笑)

(赤江珠緒)そうですねー。『欲』と考えたらそういうことになりますね。

(ピエール瀧)そこは赤裸々に言っちゃうんだね、みんな。

(久住昌之)『食いたい!食いたい!』って言ってるのと『ヤリたい!ヤリたい!』って言ってるの、あんまり変わんないんですよね。要するに『欲』だから。

(ピエール瀧)そうそう。そうだ。だからビフテキのショウウィンドウのやつ見て、『美味そう!』っていうのは、『いい女!』っていうのと同じこと。

(赤江珠緒)ね。グルメ本・エロ本みたいな感じですもんね。

(久住昌之)ものすごい高いステーキなんて、高級娼婦とかと同じようなもんでしょ(笑)。お金で買って食べるんだからね。

(ピエール瀧)(笑)いまは手が出ないけど、いつかは・・・みたいなね。

(久住昌之)そうそう(笑)。ステーキをテレビで見てヨダレが・・・とか(笑)。

(ピエール瀧)ね、そうですよね。たしかに。だから見方を変えればそういうものなんですよねっていう。

(赤江珠緒)そう思ってみると、久住さん、その元々食べることにすごくグルメに走るとか、欲求が強いとかいうわけではないんですか?

(久住昌之)全然ないですね。

(赤江珠緒)こういうの、いろいろ書かれてるけれども。

(久住昌之)はい。もういつも締め切りで困って、『どうしよう?どこの店に行ったらいいんだろう?』って。もうそれで、あてどなく街に出て行って、どっか。それでもう失敗したりするわけですよ(笑)。

(ピエール瀧)でも、その作業ちょっと孤独のグルメも入ってるというか・・・

(久住昌之)モロにそうですね。

(ピエール瀧)締め切りが来てしまう。どうしよう?この角を曲がるべきか?曲がらざるべきか?みたいなやつを。実況中継しながら探してるわけですね。

(久住昌之)で、食べたらお腹いっぱいになっちゃうじゃない。次のお店、入れないじゃないですか。だからもう、結構真剣勝負で。

(ピエール瀧)『ええーい、ままよ!』みたいな。

(久住昌之)そうそうそう。『ええーい、ままよ!』ですよ。

(赤江珠緒)失敗ってどんなのですか?やっぱり、本当に美味しくない・・・?

(久住昌之)美味しくないの、ありますよ。ものすごい人のよさそうなおじいさんとおばあさんがやっている昭和な感じの食堂見つけて、『やった!』って思ったらめちゃくちゃマズいの(笑)。

(ピエール瀧)あー(笑)。

(久住昌之)いい!人のよさそうなおじいさんとおばあさんじゃないか!っていうのに。『いらっしゃい』とか言うんだよ?マズいの。米はベシャベシャだわ、味噌汁のワカメ、溶けてるしね。

(ピエール瀧)そこにすごく味があればいいんですよね。なんとなく味があるものというか、丼の質感にしてもっていうんで。ここはこの工夫があるっていう。

(久住昌之)思ったのと違うんですよね。

(赤江珠緒)そうですよね。まあでも、1軒1軒勝負ですよね、そこはね。

(久住昌之)この間、行ったところでは、『豚汁定食卵入り』って書いてあったんですよ。

(ピエール瀧)『豚汁定食卵入り』?

(久住昌之)すごく迷いません?それ。

(ピエール瀧)迷いますね。

(久住昌之)『卵入り豚汁定食』って書いてあるの。それはどういう状態だと思います?

(ピエール瀧)『卵がどこにかかっているのか?』っていう。

(久住昌之)どこにかかっているのか?ですよね。それで来たら、思ったのと全然違って、まず丼がラーメンの丼に入ってて(笑)。

(赤江・瀧)ええっ!?

(久住昌之)豚汁が、ラーメンの丼になみなみ入ってて。それでそこに生卵がちょっと溶いてある。それとご飯。

(ピエール瀧)違う!

(赤江珠緒)しかも、溶いちゃってるんですか?

(久住昌之)溶いちゃってる。

(赤江珠緒)イヤだ、もう。生でボンと入れてほしいですね。どうせだったらね。

(久住昌之)ところが、思ってるのと違って、食べてみても思ってるのと違って美味しいの。

(ピエール瀧)あ、食べたら美味しかったんですか。

(久住昌之)美味しいんですよ。だからその何度も裏切られていく感じが、『ああ、よかった。ここ、ドラマになるな』っていう(笑)。

(ピエール瀧)なるほど!じゃあ相当食べ歩かれたんじゃないですか?

(久住昌之)いや、食べ歩かない。1回食べたらお腹いっぱいになっちゃうから。もう締め切りは来てるわけだし、相当迷うわけですよ(笑)。

(赤江珠緒)全然久住さんね、太ってらっしゃるとかいうこともないですけど、じゃあそれは食べて、また歩いてっていう作業も同時にあって。

(久住昌之)そうですね。

(ピエール瀧)っていうかもう、本当に言い方悪いですけど、ほぼ風俗の店探しに近いと。

(久住昌之)本当にそうだよね。ここでいいのかどうなのか?っていう。

(ピエール瀧)写真を見て、どうなんだ?って。

(久住昌之)この写真の人が来るのか?

(ピエール瀧)本当に出てくるのかな?っていう。

(久住昌之)この写真が・・・CGが今はあるしね。

(ピエール瀧)そうそう。システムはどうなんだ?とか。

(赤江珠緒)実体験を元に。

(ピエール瀧)風俗街をウロウロして・・・

(久住昌之)でもそういう感じはありますよね。

(ピエール瀧)決めに決めて『ここ!』って。2-3周して『ここ!』みたいな。

(久住昌之)だって吉原とか昔ね、グルグル回ってるわけでね。

(ピエール瀧)そういう感じなんですかね?やっぱり。

(久住昌之)そうじゃないですかね。

(ピエール瀧)そこと直結してるわけですか(笑)。

(久住昌之)でね、その松重さんと話した時に、初めて会った時に『僕、この漫画のこと分かります』って。『僕は、顔は知ってるけど名前知らないっていう役者なんですよ。』って。その孤独のグルメやる前に。で、地方のロケに行くとすごく回っちゃうんだって。グルグル。ここでいいのか?って食べ物屋さん。それで、『いいや、さっきの店で!』って入ると、『やっと入ってくれましたね』って言われるって(笑)。見られてた(笑)。

(ピエール瀧)(笑)なるほど!

(久住昌之)そのことを聞いた時に、『あ、松重さん、出来るな』って思ったんです。もう全然(井之頭)五郎だなって。

(赤江珠緒)ああ、なるほどね。あの食べ方が本当にね、じんわりね。『うん、そうだ、そうだ』みたいな感じですもんね。

(久住昌之)あんまりね、何がどうのこうのって言わないのね。『肉のナントカが融け合って・・・』とかそういうこと言わない。

(赤江珠緒)でも表情なんですもんね。お時間来てしまいましたけども。久住さんは『これだけは!』っていうこだわりの食事とか無いってことですか?

(久住昌之)僕、こだわりは無いんですよね。そんなに。

(赤江珠緒)ちょっともうね、原作として想像してた方と全然違いました。『食は欲望』っていうその・・・

(ピエール瀧)食べ物漫画って、『クッキングパパ』みたいな漫画もあるじゃないですか。あれも食べ物そのものだけども、『食べる』っていう行為をここまで漫画に放り続けて、しかも長いことやってらっしゃるじゃないですか。

(久住昌之)もうずっとおんなじだからね。デビューから。30年だよ。本当に(笑)。ワンパターンなんです。大変なことですよ。

(ピエール瀧)最初だって高校生ですよ、俺。久住さんの漫画(笑)。

(赤江珠緒)どれだけ食いしん坊な方かな?って思って今日、お会いしようと思ったんですけど、本当にルポライターっていう感じですよね。風俗ルポライター(笑)。

(久住昌之)いやいや、止めてくださいよ!

(ピエール瀧)誤解するでしょ!

(久住昌之)まあでも、料理店も風俗っちゃ風俗ですよ。食べる文化ですけど。

(赤江珠緒)そうなんですね。いや、ありがとうございます。

<書き起こしおわり>

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