朝井リョウさんが2018年2月4日放送のニッポン放送『ヨブンのこと』の中で実は1年以上前から結婚していたことを明かし、「お互いに健康的に生きていくために共闘できる相手と結婚した」と話していました。
(高橋みなみ)なんか気になるのがさ、その朝井さんの結婚生活が見えない。どういう風にお過ごしになられてるんですか? それは。
(朝井リョウ)「どういう風に」? どういうことを答えればいいの?
(高橋みなみ)なんかたとえばどれぐらいの頻度で今まで会っていて。夫婦になることでどれぐらい、もっと会うことになるのかとか。
(朝井リョウ)「どれぐらいもっと会うことになる?」。でも私はすごい、今からしゃべることとか全部後々、たぶん小説とかにすると思うんですけど。その時に「ああ、ラジオで言っていたことだ」っていうの、禁止ね? ここで試してるから。
(高橋みなみ)シーッ! みんな、禁止やで?
誰かと一緒に生きるのは自分の人生の主語を「自分」にすること
(朝井リョウ)そう。ここでこの考えがどういうものなのかって、すごい試してるから。私は誰かと一緒に生きていくことっていうのは、すごい逆説的ですけど。自分の人生の主語を「自分」にすることだなっていうのをすごい思ったんですよ。あの、どこから説明すればいいのかな? それは全部、夫婦とか関係なく、人と人との関係に全部言えることだと思うんですけど。何て言うのかな? たとえばアイドルにたとえたら……AKBで総選挙っていうものがあるとして。応援する時に私はその「何々のために」って……「あの子のために」っていう風にして自分を誰かに預ける。自分の考えとか自分の人生を誰かに預けるっていうことをした途端に、人間の関係は不健康なものになると思っていて。
それはなんでか?っていうと「あなたのためにやってます」。で、アイドル側も「ファンのみんなのために活動してます、歌います」。で、ファンは「このアイドルが有名になるために票をいっぱい投票したい」とか「CDをいっぱい買って握手に行きたい」とか思ったりするのとか、よく聞くんですけど。でもそれって続けていくといつか「あなたのためにこれだけしたのに」っていう、「のに」が出てくると思うんですよね。
(高橋みなみ)ああ、たしかに。出てくるね。
(朝井リョウ)「こんなに応援したのに……」って。たとえばスキャンダルが出たりとか。で、「ファンのためにやってたんじゃなかったのか?」とか。アイドル側も逆に卒業したら、ファンがついてきてくれなくなっちゃったりとか。スキャンダルで出て、ついてきてくれなくなっちゃったりしたら、「こんなに私はファンの人のためにいろんなことを我慢してやってたのに」っていう。
(高橋みなみ)ああ、「のに」がつくね!
(朝井リョウ)「のに」が後々、くっついてくるなと思っていて。それは夫婦とか親子とかにも言えるなって思ったんですよね。たとえば奥さん……「奥さん」っていう言葉、私、嫌いなんだった。配偶者。女性が男性に対して料理を作ってあげたとして。「あなたのために料理を作った」っていうことになっちゃうと、やがて「こんなに私は家事をしてきたのに」っていうことになっちゃうわけですよね。で、じゃあすごい典型的なあれですけど。男の方がたとえば家賃を多く出してるとかだった場合、「俺はお前のために働いてお金を稼いできたのに」とか。やっぱり「のに」になっちゃうなと思って。だから人に何かをする時、主語を「自分」にすることがすごい大切だなと思って。料理を作るんだったら「自分があなたのことを大切に思ってる気持ちを表すために料理を作った」ってなると、その後に何か裏切られるようなことがあったとしても……たとえば、浮気されちゃうとか。裏切られるようなことがあったとしても「自分の気持ちを表現するために料理を作ったんだから」っていうので。
(高橋みなみ)ああ、「のに」にはならないね。
(朝井リョウ)そう。「だから」っていう。順接になるっていうか。そこで気持ちがねじれることがないのかなと思っていて。その、子供とかもさ、なんかすごいお金かけてを。たとえば「あなたのためにいろんな習い事させたのにグレちゃった」みたいなになると、なんか親は子供を責めるかもしれないけど。「私はあなたがいろんな世界に触れた方がいいと思ったから。自分のそういう思いを伝えるために、いろんな習い事をさせた。でも、グレちゃったんだとしてもそれは自分がやりたくてやったことだから。あなたがどんな選択をしても」っていう風になんか、健康な人間関係が結べるなと思っていて。で、私はそれをすごいわかってくれる人だったんです。で、私が言わなくてももちろん、配偶者は配偶者で自分の人生の主語は「自分」であるっていうことはすごい感覚的にわかってる人だったんですよね。
なんか私たちはこの今の時代をお互い、健康的に生き抜くために手を組んだって感じなんですよ。もちろん大切だし、「好きで結婚しました」みたいな感じの言葉も当てはまる部分はもちろんあるんですけど。っていうよりも、この世界でお互いに健康的に生きていくために、一番の共に戦う共闘する仲間を見つけて手を組んだっていう感じなので。なんか言葉にするとね、離婚理由みたいになるの。「2人の人生のために」って。でもそれだとさ、絶対に「別れました」ってつくじゃない?
(高橋みなみ)たしかに(笑)。「別れました」だね、それは(笑)。
(朝井リョウ)「それぞれの人生を豊かにするために別れました」ってみんな、言うんだけど。自分たちの場合はそれぞれの人生を豊かにするために入籍したっていう感じなんですよね。
(高橋みなみ)なんか、すごいわ。その考え方。
(朝井リョウ)えっ、好感度上がった?
(高橋みなみ)うん? へっ?
(朝井リョウ)今、私、好感度上がりました?
(高橋みなみ)いや、なんかね、好感度っていう言葉だけじゃ言い表しきれないんだけど。
(朝井リョウ)素晴らしい。でも私、こういうことを本当にびっくりするぐらい言葉を砕いて小説に……恋愛小説じゃないにしても、いろんな小説の中に入れたり、落とし込んで書くんで。その時に「ああ、ラジオで言ってたことだ」だけはやめて! お願いだから。
(高橋みなみ)いや、すごいわ。なんだろう? その考え方を表現できる人がいなかったから。今まで。ちょっとびっくりした。朝井さんから聞くと「ああ、そうね」ってなるわ。
(朝井リョウ)でも思考を、考えたことを言葉にすると私にとって小説になるので。
(高橋みなみ)これ、ちょっといつぐらいに小説になるんですか?
(朝井リョウ)いや、でもそれはなんか……あれです。
(高橋みなみ)だってほら、その時にリスナーみんなでさ、「あっ!」って思いたいじゃん。いつ?
(朝井リョウ)やだ。本当にラジオ不利! 『ヨブンのこと』は不利!
(高橋みなみ)フハハハハハハハハッ! いや、ちょっとおかしくない? さっき「『ヨブンのこと』をやっててよかった」って言っていたのに。
(朝井リョウ)小説家にとって毎週、ラジオやってことは不利です! ここで小説にできるかもしれないことをしゃべっちゃうんだもん。だって。
(高橋みなみ)いや、楽しみだよ、すごく。どうなるんだろう?って。
(朝井リョウ)私、考えたことを言葉にしていく作業はすごい重要だなとは思ってるんですけど。
(高橋みなみ)じゃあ、どっちですか? 『ヨブンのこと』をやっていて、よかったですか? よくないですか?
(朝井リョウ)うーん……。
(高橋みなみ)さあ! さあ!
(朝井リョウ)ううっ、よかった、です……。
(高橋みなみ)はい(笑)。
(朝井リョウ)ニッポン放送の偉い人、聞いてますか? 『ヨブンのこと』をやっていてよかったという話をしています。今、私は(笑)。非常に良かったと思います。
(中略)
(高橋みなみ)『高橋みなみと朝井リョウ ヨブンのこと』、エンディングです。
(朝井リョウ)はい、エンディングでーす。
(高橋みなみ)いや、でもなんかちょっと消化できたわ。
(朝井リョウ)ああ、よかった。たぶん聞いてる人もすっきりしましたよね?(笑)。
(高橋みなみ)言っとくけど私だって去年ぐらいからモヤモヤしてたんだからね?
(朝井リョウ)そうだよね。でも高橋さん、なんか口硬いなって思ってました(笑)。
(高橋みなみ)ムカつく! 悔しい!(笑)。口硬いですけどもね。
(朝井リョウ)そうなんですよね。なんかでも先週、童貞のメールがあったじゃないですか。
(高橋みなみ)ああ、ありましたね。
(朝井リョウ)私、でもあれに実はずっと引っかかっていて。気になっていて。なんか私たちの言いぶりだと童貞であることをに対してマイナスっていうことは大前提としてしゃべっちゃったかなと思ったんですよ。その「捨てなきゃいけないもの」っていうか、なんて言うんですかね? とにかくそういうものを前提としてしゃべっちゃった気がするんですけど。私、改めて聞いてね、そう思ったんですけど。私がもうちょっと、あれでしゃべりたかったのは今回の話、配偶者との話にもつながるところがちょっとあるんですけど。なんかさ、童貞とか処女っていうのはさ、私は「行為」じゃなくて「状態」のことだと思うんですよ。
(高橋みなみ)ほう。
童貞・処女は「行為」ではなく「状態」のこと
(朝井リョウ)たとえばじゃあ、あるカップルが朝からデートしました。で、映画を見に行ったりとか、ご飯を一緒に食べたりとかして。で、2人で手つないで歩いてたりとかしたら、ホテルかなんかがあったりとかして、入りました。で、キスします。なんかいろいろしますってなって、挿入だけしてないっていうカップルと、逆にもう現地集合。挿入だけしました。もう出会って10秒、出会って4秒、よくあるシリーズ。
(高橋みなみ)「よくあるシリーズ」、やめなさいよ!
(朝井リョウ)出会って挿入だけしましたってなったらさ、たぶん私は前者の方が童貞・処女ではないと思うんですよね。その、いわゆる生殖行為は行ってないけど、生殖行為以外のことは全部している。
(高橋みなみ)うん、そうね。
(朝井リョウ)それと生殖行為のみしていて、生殖行為以外の部分は何も共有していないっていうのだったら、前者の方が童貞・処女ではないと私は思っていて。じゃあ、童貞・処女って何だろうと思ったらやっぱりその性欲ってさ、人に隠したいと思われてるものじゃないですか。自分の中では。食欲と睡眠欲に比べたら、やっぱり人前に出しちゃいけないかなって思ってるものだから。それを「この人になら見せていいな」ってなるまで他者と人間関係を築くことができたという時に童貞・処女っていうものが自分からなんか、巣立っていく。
(高橋みなみ)「巣立っていく」(笑)。
(朝井リョウ)霊がふわって成仏していくように巣立っていくのかなっていうことを思っていて。そういう……それが童貞・処女だということだなと私はなんとなく、自分の放送を聞きながら思ったんですけど。だから、あのメールくれた子はその行為がなくてもすごく大切な友達がいたりとか、何でも話せる人がいたりとかすれば、それは状態として童貞・処女じゃないような気がするっていう。
(高橋みなみ)ああ、じゃあその状態はもう天にファーッと。
(朝井リョウ)そうそうそう。あなたは別に生殖行為してないかもしれないけど、童貞・処女という状態ではないんじゃないかなと思って、それを伝えたかったのと。あと、自分はたぶん今の配偶者に会うまで、逆にいうと童貞だったんですよ、ずっと。
(高橋みなみ)なになに、その話!?
(朝井リョウ)その、生殖行為があったかもしれないけれども私は正直、人をそこまでやっぱり……もともと信頼してないから。あまりね。それで、それを隠した状態で人と付き合ってないといけないと思ってたので。っていうことでずっと今まで、20何年間、生きてたんですけど。でも、その一緒になってくれた人はこんな最低な私。こんな問題ばっかりの私の問題点を明かした時に、その上で一緒にいてくれるっていうことを選んでくれた時、「ああ、もうなんか今、童貞を卒業した」と思ったんですよね。私は。
(高橋みなみ)へー、その時に思ったか!
(朝井リョウ)そうそう。「今まで自分、たぶんずっと童貞だったな」と思って。
(高橋みなみ)なんかいい話じゃん。なに?
(朝井リョウ)人間童貞なんですよ。人間童貞だった。でも人間童貞は変わらないから、成仏は完全にしないんで。前、話したように。その上で新たな他者との関わりによってたぶん、いろんなことが今後も積み重なっていって。
(高橋みなみ)やだ、もう。悔しい!
(朝井リョウ)そんな「尊敬する」とか言わないでいいから。
(高橋みなみ)言わねえ!
(朝井リョウ)言わないで? でも高橋さんの考えも今度、聞かせてね? 言葉にしてね? 高橋さんも。


朝井さんの結婚に対する考え方、とても納得感のあるものばかり。特に誰かと一緒に生きていくことで人生の主語を「自分」にしていくというお話が素敵だと思いました!