武田冬門 鳥山明が『ドラゴンボール』魔人ブウ編を2年半続けられた理由を語る

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2025年2月22日放送のJ-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』で『ドラゴンボール』歴代担当の鳥嶋和彦さん、近藤裕さん、武田冬門さんが鼎談。鳥山明さんの担当になってすぐに「もうすぐ『ドラゴンボール』連載を終わりにします」と言われた中、魔人ブウ編を2年半続けられた理由について話していました。

(武田冬門)でも、それで言うと僕、鳥嶋さんと近藤さんにお伺いしたいんだけれども。僕は近藤さんから打合せのやり方っていうのを聞いていて。当時はFAXで送られてくるわけですよ。で、いわゆるみんながよく言うネームではなくて、下絵に近いものが10何枚送られてきて。僕の時はもう、それはOKにしていたんですよ。で、「この話の次の話はどうなるんですか?」っていう打合せを常にやっていたんですよ。

(鳥嶋和彦)それはね、武田には悪いけど鳥嶋くんがボソッと「武田さん、細かいんですよ。すごく大変なんですよ」って言っていて(笑)。

(武田冬門)「細かい」っていうか、その先生が作ってきたネームに関して「これはこうですね。ああですね」っていうのは一切、言わなかったんですよ。月刊だとそういうところもね、結構細かく言ったりとかするんだけど。そうではなくて。「この送られてきたのは先週の打ち合わせを鳥山さん自身が考えて送ってきたものだと思うからそれはいいんだけど。これの次の話はどうなんですか?」って常に先生に投げていたんえすよ。

(鳥嶋和彦)だからたぶんね、それが苦痛だったんだと思うよ。

(武田冬門)でもそれがね、さっき言ってたなんだろう? パッと出てくるっていうあれだったんじゃないのかなとは思うんですけどね。

(Naz Chris)我々読者情報で言うと鳥嶋さんと近藤さんについて読者が思ってるのは口癖が「ボツ」「全然ダメ」っていう。でも、武田さんはどっちかっていうとダメ出しをしないっていうイメージがあるというか。「それでいきましょう」の人だっていう。

(武田冬門)でも、それがいいかどうかはまだわからないけど。僕はさっきも言ったけど、先生がここでやめたがっているのはわかっていたから。なるべく気持ちよくやってもらうにはどうすればいいの?っていうことで。だから送られてきたネームにどうのこうのっていうのはなくて。「これの次がどうなるんだ?」っていう話を常にしてたんですね。

(中略)

(鳥嶋和彦)結局、最終回まで武田がやったんだよね? 大変だったでしょう。最終回まで。

(武田冬門)そうですね。どうやってまとめてくるんだろう?って思って。

(鳥嶋和彦)いやいや、そうじゃなくてさ。それはわかるんだけど。その、編集部の中での説得とかさ、了解を取るの。

(武田冬門)それはもう……「これは申し訳ないですけど、鳥山先生がもう辞めるって言ってるんだから無理です」っていう話は常にしました。だから、僕は週刊に呼ばれた時に「こいつだったら言うこと聞くだろう」と思われて呼ばれたんだけど(笑)頑固だと思われたと思いますけどね。「こいつ、言うことを聞かねえや」みたいな。

(Naz Chris)その、いわゆる「説得してもうちょっとやろう」っていうのはなかったんですか? 編集部から。

(武田冬門)いっぱい言われましたよ。「もっと説得して」って。

編集部からの「説得しろ」という声

(鳥嶋和彦)たぶんね、もう山ほど言われたけど。その辺、クロノとかなんとなく脇で見ていて。でも僕も近藤ももう編集部いないから……。

(Naz Chris)その時って、相談したりはしないんですか? 歴代担当のお二人に。「今、こうなんだ」とかっていう。

(武田冬門)それをしなかったのは鳥嶋さんとか近藤さんを信用してる・してないとか、そういうレベルの話ではなくて。もう鳥山さんが辞めるって言ってるんだから、私はもう辞める方向でもう話しますっていう感じだったんで。

(近藤裕)そうだね。もうそういう段階だったんだよね。

(鳥嶋和彦)だから武田が引き継いだ時には本当、いっぱいいっぱいだったよね。

(武田冬門)だから「3、4週で終わろうと思ってるんです」みたいなことを言われて「ええっ?」みたいな感じだったんですけど。

(鳥嶋和彦)で、結局何年やったの?

(武田冬門)2年半ぐらいですかね。

(鳥嶋和彦)よくやったよね。そこから2年半。武田じゃなきゃ無理だったよ。俺と近藤ならたぶん半年だな。

(武田冬門)まあ、そこでスパッと切って次の話に切り替えたっていうこともあるかもしれないし。何がよかったのかもう、わかんないですけど。

(Naz Chris)どう鼓舞していたんですか? 先生のモチベーションを上げたりとか。

(武田冬門)いや、もう最後はなんとなく鳥山さんの中で決まっていたんで。そこに至るまでにどう面白くしますか?っていうのをいろいろ提案したりとかはしてた。「鼓舞する」っていうよりかは、「これ、面白いっすよね」みたいな。

(Naz Chris)たとえばどんなことですか?

ミスター・サタンのセコさを強調

(武田冬門)たとえばそれがサタンですよね。「サタンのこのセコさ、もっと面白く出しましょうよ」とか。「こんなことをしたらセコさ、際立つんじゃないですかね」みたいな話をしたりとか。

(鳥嶋和彦)でもここまでの話をずっと聞いてると、僕と近藤くんがやっている時はさっき、近藤が言ったように悪いキャラを立ててそれとどう戦って、どうぶつかるか?っていうことで。ピーンと糸を張ってきた展開でやってきていて。たぶんもう、その2シリーズで鳥山さん中ではそれはもう書ききったとか。そこに関して疲れている感じがあったから。だからちょうど「まだ書いてない好きなものはなんですか?」っていう風に武田で振り向けたら、やっぱりギャグ的なタッチのそっちの方になったんだね。だからブウ編は必然だね。

(近藤裕)だからちょっと反省を込めて言えば、セル編はつらかったんですよ。お互いに。

(鳥嶋和彦)どの辺が?

(近藤裕)だから……タイムパラドックスがもうどうしようもない。解決の仕方がないんですよ。最初の一手を間違えたらもう、十手先を直しようがないんです。

(鳥嶋和彦)そういうことだな。戻れないもんな。

タイムパラドックスがきつかった

(近藤裕)戻れないんです。タイムパラドックスは。あれはね、やっぱり鳥山さんともそこは割と話した。「これはちょっと、しまった感がありますよね」みたいな。そんなところがちょっとあったの。

(鳥嶋和彦)あれだけ天才的につじつま合わせが上手い人間が音を上げたんだ(笑)。

(近藤裕)だから、その反動じゃないけど。魔人ブウ編っていうのはそのうるさい理屈だとか、こういう風にしないと話がここに行かないよっていうところで本当に苦労しちゃったんで。それがなくなった分、よかったのかなって。思うよね。

『ドラゴンボール』の連載を終えようとしていた鳥山明先生に「これまで書けなかったものを書いてから終えましょう」と話して魔人ブウ編を2年半続けた武田冬門さん。人造人間・セル編のタイムパラドックス設定などで苦労した後だったので、鳥山先生ものびのび作品を書くことができたんでしょうね。そして先生が書きたいものを書けたタイミングでさらに続けさせようと編集部を抑えて連載終了にしたのも素晴らしいと思います。

武田冬門 魔人ブウ編を楽しそうに書いていた鳥山明を語る
2025年2月22日放送のJ-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』で『ドラゴンボール』歴代担当の鳥嶋和彦さん、近藤裕さん、武田冬門さんが鼎談。魔人ブウ編から担当した武田さんは鳥山先生がすごく楽しそうに魔人ブウ編を書いていたと話していました。

TOKYO M.A.A.D SPIN 2025年2月25日放送回

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