石山蓮華さんとでか美ちゃんさんが2024年3月5日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『アメリカン・フィクション』について話していました。
(石山蓮華)先週はある黒人男性の小説家がひょんなことからベストセラー作家になる顛末を描いた『アメリカン・フィクション』をご紹介いただきました。石山もでか美ちゃんも見てきました。
(町山智浩)ああ、そうですか。
(石山蓮華)すごく面白かったです。この映画。で、中でも私がグッと来たのが、その物語のために殺される人っていうものが映画の中に出てくるじゃないですか。この作家が物語を考えながら。
(町山智浩)彼がね、ハーバード出ていて、お父さんがお医者さんの主人公なんですけれども。超エリートなんだけども、難しい本ばっかりを書いていて売れないから。「自分は実はギャングスターで、逃亡中の犯罪者で」っていうインチキの自叙伝を書いたら、それがベストセラーになっちゃったっていう話ですね。
(石山蓮華)その中の、このインチキの自叙伝で殺されるキャラクターみたいなのが出てきたりするんですけど。なんかその、物語の中で殺されているところが出てきて。その中で、これはちょっとネタバレに近くなるんですけれど。その物語のためにうまくくっつけられない人。最終的に成就しきらない相手みたいのが出てきたりとかして。なんか「これ、いいな」って……ちょっと言葉にしずらいんですけど。そのご都合主義だけじゃない物語ってなんだろう?っていうのを考える時に「なんか、いいな」と思って見ました。
(町山智浩)最後の方でめちゃくちゃご都合主義のことを片っ端から思いついてやったりするところもめちゃくちゃですよね(笑)。
(石山蓮華)そうなんですよね(笑)。で、採用される案というか。それもまた、ちょっと面白かったですよね。
(でか美ちゃん)私も見たんですけど。なんだろうな? 主人公が「こうしたらさすがに超最悪の結果にはならないでしょう」と思って提案したものが、ことごとく採用されていくみたいな流れが結構……。
(町山智浩)はいはい(笑)。本のタイトルね(笑)。
(でか美ちゃん)本のタイトルもそうだし。終盤の展開もそうだし。で、なんか私はこの『アメリカン・フィクション』を見た上で、別に当事者じゃなくても創作として何かを描くっていうのはすごく敬意を持って取材とかもきちんとしてたら、いいと思うんですよ。当事者以外が語ること自体も。で、この作品自体がもしかしたら、私も最近知った言葉なんですけど。「バックラッシュ」的な要素があったら嫌だなと思って。なんだろう? 「こういう世界になっていった方がいいよね」っていうののゆり戻しで。なんだろう? それこそ逆に「えっ、それって女尊男卑じゃないですか?」みたいなのとかが代表的だと思うんですけど。「そうなったら嫌だな」とかも全部込み込みで最後に「ああ、全部が皮肉だったんだ」っていう結末というか。それを思わせるような。全部が箱みたいだったという展開なのが私はすごく好きだったのと。あと、面白いですね。単純にコメディとして。小説家とギャングって。
(町山智浩)これね、原作はそんなにコメディじゃないんですよ。これね、実は原作者自身の話です。原作者って、本当にこういう人なんです。
(でか美ちゃん)ああ、こうやってエリートで?
原作はそんなにコメディではない
(町山智浩)ギリシャ神話を現代のことに変えたりして書いていたんですけども、それが高尚すぎて売れなかったんで。「自分がギャングスターだっていうことで、嘘で自伝を書いた売れた」っていう話を彼が書いたんですよ。そうなると、どこまでが本当なのかがよくわからないんですよ(笑)。すごい世界なんですけどね。
(でか美ちゃん)吹替版で私は見たんですけど。吹き替えじゃない字幕版もそういう演出だったってさっき、蓮華ちゃんから聞いたんですけど。小説家である自分と、偽のギャングスターとして取材を受けなきゃいけないみたいなシーンが本当に面白くって。
(石山蓮華)面白かったですね。
(でか美ちゃん)ブワーッて理詰めで、「こうでこうだから、読者はそんなバカじゃないんだ! どうのこうの……YO! 俺は!」って。あのシーンが本当に好きすぎて(笑)。
インタビュー後にギャング設定を思い出して口調を変える
(町山智浩)そう。普通にインタビューをした後に「ああ、しまった。俺はギャングだったんだ!」っていう設定を思い出して。「YO!」ってつけるっていう(笑)。まあ、日本でもね、ラッパーの人たちは「リアル」って言われてるような。その、不良経験がないとラップとしてはリアルじゃないって言われたりするんで、一生懸命みんな不良ぶったりすることもあるんですけども。日本で不良ぶっても限界ってあるのになと俺は思ってるんですよね。アメリカみたいに本当に殺されたりする世界じゃないんでね。まあ、なんていうかいろんなことを考えさせられる映画でしたね。『アメリカン・フィクション』。
(石山蓮華)『アメリカン・フィクション』はAmazon Prime Videoで配信中です。
<書き起こしおわり>