日比麻音子さんが2024年1月16日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で能登半島地震の現地取材から戻り、現地で見たこと、感じたことについて宇多丸さんと話していました。
(宇多丸)日比さん、先週はねお休みを取っていただいて、(能登半島地震の)現地の取材をされたということで。そちらに関してメールもいただいているので、先にこちらをご紹介させてください。足立区の方です。「宇多丸さん、日比ちゃん、こんばんは。長年のRHYMESTERファンであり、アトロクリスナーです。私は先週、日比ちゃんが中継していた輪島市門前町の出身で、避難所となっている門前中学校は私の母校です」。
(日比麻音子)そうでしたか……。
(宇多丸)「門前町は2007年の能登半島地震でも甚大な被害を受け、3年前には完全復興を宣言したばかりでしたが再び大地震に襲われてしまいました。街全体が壊滅的な被害でありながら、輪島市内と比べ情報が少なく、報道もわずかな中、アトロクファミリーである日比ちゃんが門前町からリポートしてくれたことに心から感謝しています。さらに先週の放課後ポッドキャストを聞いていて驚いたのですが、リスナー代表の……」。これ、1月4日にスペシャルウィーク的なもののプレゼントとして、リスナーをスタジオをお招きして。RHYMESTERのライブ見れますよっていうので来ていただいた後藤さん。
「後藤さんも実は門前町を訪れたことがあり、ゆかりがあって、度重なる地震に胸を痛めていたことを知りました。私自身は上京して29年。今年は帰省しておらず、地震発生の2日後、東京で両親の無事を確認しました」。ご両親、まずはご無事で。それはなによりですが。「宇多丸さんは新年最初の放送から、被災地はもちろん、被災地を案ずる私達にも心を寄せてくれ、悲しみや不安を和らげてくれてくれました。アトロクでのRHYMESTERのライブにも救われました。とりわけ『POP LIFE』には号泣。抑えていただきたい気持ちが一気に溢れました」。
これはだからリスナーの方のね、メールのリクエストに応えて、すぐに変えて。本当によかった。「後藤さんもおっしゃっていましたが、アトロクはリスナーにとってもホームです。誰も取り残さないアトロクに改めて感謝です。お礼を言わずにはいられず、初めてメールした次第です。長文失礼いたしました」。いや、ちょっと待ってくださいよ。お礼はこちらこそというか。
(日比麻音子)本当です。
(宇多丸)そんな、そのねえ。言っていただいて何よりというか、そのぐらいしか……もう今のところはね、ほっとしていただくとかぐらいしかできないのが何とも、もどかしいんだけども。ただ日比さんはその中でもね、報道としてやるべきこととして現地に行って、ちゃんとそれを生の声で伝えるっていうね。とはいえさ、「報道陣として行ってこい」っていうのはありつつ、同時に我らが日比ちゃんとしてはですね、「いや、日比さん、それは大変だろう」って。もちろん現地にはね、大変な思いをされている人はいるんだけれども。でも、実際に現地に行って、いろんな方の話を聞いたり……もっと言うと、先週の時点ではね、まだまだ救助できるのか、できないのかみたいな境目とかね。
(日比麻音子)そうですね。土砂崩れが発生していて、まだ救助の作業すらできない。で、雪も降り始めたタイミングで私は入ったんですね。先週の土曜日の夜に入りまして。日曜日から木曜日にかけて、取材をさせていただいたんですけれども。
(宇多丸)結構長くいたんですね。1月6日……だから、すぐですね。
(日比麻音子)6日の夜から入らせていただきました。そうですね。お話を伺った方の中には「午前中に『また後でね』って言った方がまだ救助されていなくて、あそこに……」っていう方もいらっしゃいました。それは土砂崩れによってということなんですけれども。で、雪が降りますとやっぱりまず、除雪作業から入らなきゃいけない。そうなると、もう本当に至るところに地割れが発生してるんですね。隆起とか、もう道がガバッて亀裂が入っちゃっていて。その上に雪が降りますと、どこに亀裂があるのかもわからないんですね。だからもう本当に容易に前に進むこともできないので、いわゆる救助活動のための車であったりとか、除雪車っていうのもなかなか近づけない。で、ドローンを飛ばしてその地形を検査というか、調査をした上で必要なものを……トラックは何台必要なのかとか、今どれだけの家が壊れてるのかっていう調査に入ってる方も、広島からいらっしゃった方がいて。
(宇多丸)それは個人でいらっしゃっているんですか?
(日比麻音子)それは要請を受けて専門の方が来ていたんですけど。でもやっぱり雨と雪の影響で、ドローンが飛ばせない。だから、調査すらできない。調査ができないと、2次被害の可能性もあるので、救助にも行けないっていう状態でした。私が入った時は。それは8日とか9日の時点なんですけども。今はまた、どうなってるかはちょっとわからないんですが。で、門前町にもお邪魔させていただきまして。その門前中学は250人ぐらいの方がいらっしゃって。で、学校にも50人の生徒さんがいたそうなんですけど。やっぱり情報が行き届かないというか。私たちも本当に多くのところが圏外でした。通信障害っていうのがまだ発生していて。
(宇多丸)電話はもちろんダメ。Wi-Fiももちろんダメ。
(日比麻音子)だから、その生徒たちの無事は確認していても、今どういう状況で、どこにいて、誰と一緒にいるのか?っていうのが確認できないから、学校の再開にも届かないっていう状態だったんですね。やっぱり「情報がない」っていうのは何よりも「何が起きてるのかがわからない」っていうその大きな不安と、どうやって自分の身を守ったらいいのかもわからないという中で、大きな心の負担もあったという風に教えていただきました。
(宇多丸)地震がこれからどのぐらいの頻度で来るとか、どこが危険であるとか、そういうことも入ってこないんだもんな。
(日比麻音子)朝市での大規模な火災のことも数日、経ってようやく知ったという方もいらっしゃったんですね。その中で、避難所とかで唯一、ラジオをひとつ置いて。そこから流れる情報とか音楽を聞いてるので。ようやく、これが通って嬉しかったっていう声を聞きまして。
(宇多丸)やっぱりその電池で動く、独立した電源で動く、電波をキャッチするラジオ。これはだから、いざという時用にはね、この番組でもちょいちょい言ってきましたけども。やっぱりあるに越したことはない感じね。
(日比麻音子)ですから携帯できるラジオ。それから充電できるポータブルのもの。
(宇多丸)グルグルやつやつとか、太陽光のやつでもいいですし。
情報は命を守る重要なツール
(日比麻音子)それがひとつあるだけでも……やっぱり情報というのは命を守る重要なツールになるんだなということ、皆さんからお話を聞いて思いました。あとは、水ですね。もう断水が本当になかなか直らない。見立てもいろんな見立てがあるんですけど。数ヶ月。もしくは数年、かかるやもしれないという。
(宇多丸)数年ですか!?
(日比麻音子)そう見る方もいらっしゃって。
(宇多丸)そうですよね。さっき、ちょっと日比さんから写真を拝見したんだけど。通常、ちょっと揺れて割れちゃったとかじゃなくて、もうその地面の隆起がちょっと……要するにもう土地として意味が変わっちゃうレベルで、ガンッて上に来ちゃってたりとかするんで。
(日比麻音子)その足立区の方からいただいた門前町では鹿磯という場所の港に行ったんですけど。さっき、宇多丸さんにも写真を見ていただきましたけど。本当に海底がガンッて上がってきていて、もう港の形が変わっている。そういうのは海だけではなくて、山も。もう大きな大きな山が、本当に崩れてるんです。もうバコンッて1個、欠けてるという状態。それが大きな山においてということなんですけど。そういうところがあるので、その水道を通すのにも1個1個、どこに亀裂があるんだろうかとか、地形はどうなってるのかっていうのを目視しなきゃいけないので、かなり時間かかると見られてるんですよね。
(宇多丸)そうか。だから元々のデータが役に立たないぐらいの状態ではあるんだな。
(日比麻音子)そうなんです。もしくはデータすらないというところもあるという。
(宇多丸)それはだから、そうね。なるほど、なるほど。
(日比麻音子)で、やっぱり、水が使えないとなるとお風呂やシャワーはもちろん、皆さん本当に入れない中で……そこは自衛隊がかなりサポートもしているようなんですけども。あとは、お手洗いですね。
深刻なトイレの問題
(宇多丸)これは、こっちにも……そういうのが追いついてなくて。そこが現地の方が一番つらい思いをされてるっていうのは伝え聞くところで。サンドウィッチマンの伊達さんとかが(トイレトレーラーを)寄付とかをされて。要するに東日本大震災の時の教訓で「トイレがやっぱり一番困るんだ」っていうことはもう再三言ってきて。なのに、やっぱり追いついてないじゃないかということもおっしゃっていて。
(日比麻音子)いっぱい言っていらっしゃいましたね。
(宇多丸)だからこれがまさに、災害があった時に何が足りてないかっていう教訓をフィードバックするべきなのに、なんか「あれ?」っていうぐらいできていないのが、ちょっともどかしいんですよね。
(日比麻音子)かなりもどかしいです。で、トイレがどういう状況なのかというと、女性トイレは特にですね、下水は通ってるんですけれども。女性トイレはやっぱり便器のものですから、あのですね、とにかく臭いが本当に苦しいです。
(宇多丸)処理しきれてないわけですね。
(日比麻音子)はい。そのままですから。で、もちろん道の駅のトイレを私は見に行ったんですけれども。そういう状況ですと、やっぱり「トイレに行きたくない」って思うわけで。
(宇多丸)我慢をしちゃったり、水を飲まないとか。
(日比麻音子)はい。だから水を飲まない。誤嚥性肺炎も発生しかねない。だから本当にとにかくトイレというのは、生きることなんですよ。生きるためにトイレが必要。でも、トイレの手配であったり、サポートが進まない。どうして……これまで、様々なところで「トイレが必要だ」とわかっていたのにっていうところで。これは本当に悔しいです。
(宇多丸)もちろん、各土地の事情。先ほどもおっしゃったように毎回、事情は異なるんで。「想定外のことが起こる」という想定内であるべきなんだけど。だからやっぱりそれも含めて、災害対応みたいなものをやっぱり日本は……こういう国土ですから。いろんなことが起こりうるわけで。想定をして。今回の出来なかった分をやっぱりフィードバックして、体制を整えるってことを結構真剣にマジで、今すぐに政府はやり始めるべきだって。これはみんな、強く思ってると思う。なんでそれを強く打ち出さないのか、それは僕はすごく「ううっ!」ってなるところで。
(日比麻音子)そうですね。被災地の皆さんは雪解け水を使ったりするなどしてですね、本当に工夫をされて、乗り切ってらっしゃいました。
(宇多丸)だからちょっとね、今まさに大変な思いされてる方、本当に「お見舞い申し上げます」という言葉ではまだ、全然……なにもなっていないんですが。なんていうかな? まずはその、はい。お見舞い申し上げます。そして、今はちょっと大変ですが、何とか整うように我々も……だから、こうやってうるさく言うこととかもあれかもしれませんけども。お金もそうですし。何かしらを……とにかく何かをしていきたいという気持ちは日本全国、皆さんが持ってますんでね。
(日比麻音子)「とにかく能登を忘れないでほしい」というお声もありました。もちろんです。私たちはお伝えし続けます。本当に。
(宇多丸)ということで、まだまだ現在進行形の話でありますが。あとはやっぱり、日比さんご自身もね、とはいえなんというか、いわゆるショックを受けたりとか、お疲れだと思いますんで。そこもご自愛ください。マジでね。ご自愛、大事です。
(日比麻音子)ご自愛ね。本当に現地でサポートされてる皆さんこそが、被災をされた皆さんなのに、それぞれの役割を毎日毎日、やってくださってるっていう状況なんでね。本当にね、それぞれが自分を愛するというのは大事ですね。
(宇多丸)という……まだまだ進行形のことなんで、このぐらいのことしか言えませんが。でも日比さんのレポートいうか、お話も生の言葉で大事でございました。
(日比麻音子)ありがとうございます。
<書き起こしおわり>