宇垣美里さんが2023年12月4日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』について宇多丸さんとトーク。水木とゲゲ郎のバディ感の素晴らしさについて話していました。
(宇多丸)宇垣さんはいかがお過ごしでしたか?
(宇垣美里)えっ、あっ、何だろう?
(宇多丸)いっぱいありすぎてね。さっきもさ、森安くんが打ち合わせしようとしてるのにそっちのけで「あれ、見た」「これ、見た」っていうのをね。
(宇垣美里)ああ、そう。鬼太郎ね。
(宇多丸)ああ、私も先週、ムービーウォッチメンでやりました。『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。TBSラジオキャスターの楠葉絵美さんも夢中になって。ゲゲ活に夢中っていう。「20回、見た」なんつってて。宇垣さんも行かれて? 宇垣さんは別ルートということで。
(宇垣美里)そうなんです。宇多丸さんが話されているのも聞いていたんですけども。別ルートから「やばい。死んだ」っていう話を聞いていて。「死んだ?」って思いながらとりあえず、行くことにしたんですよ。そしたら「あっ、死んだ……」ってなって。
「あっ、死んだ……」(宇垣)
(宇多丸)ちょっと待ってください。ちょっと補足しますよ? その、楠葉さんたち的な、そういう女性オタの萌えのポイントになにか、ガツンと来たってことよね?
(宇垣美里)もちろん、お話として素晴らしい。
(宇多丸)作品として素晴らしいよ?
(宇垣美里)日本の功罪じゃないですけど。その「こういう罪があっただろう? こういうところを見ないふりしてきただろう?」っていう。それでも、生きる。あと、命を繋ぐことの大切さとかをすごい素晴らしい形で……。
(宇多丸)水木しげる先生の戦争背景なんかも反映させつつ。
(宇垣美里)これはちょっと大人になった子供に見てほしいなっていう気持ちになる作品なんですね。
(宇多丸)なかなかハードな話ですからね。
(宇垣美里)その、ある種の救いのなさももちろんありますし。
(宇多丸)あと、本当におぞましいまでの家父長制。
(宇垣美里)「あいつだけは許せねえ!」ってずっと言いながら。
(宇多丸)でも、ああいう権力構造みたいなものをすごくうまく構造化してると思うんですよ。
(宇垣美里)いや、素晴らしかった。
(宇多丸)そういう作品としての純粋な素晴らしさもあるが……。
(宇垣美里)あるが……あのバディは、よくないよ! 私、よくないと思う!
(宇多丸)「よくない」っていうのは、つまり「いい」っていうことね? 面倒くさいなー!
(宇垣美里)フフフ(笑)。
(宇多丸)「よくない=いい」。つまり、後の目玉おやじになる……。
(宇垣美里)ゲゲ郎。
(宇多丸)顔つきはゲゲゲの鬼太郎似の、でもスッと、飄々として。
(宇垣美里)白髪の、あのちょっと華奢な、でもバキバキに戦うっていう。
(宇多丸)あのアクションシーン、すごいからね。
(宇垣美里)あの「◯◯とかじゃろう」っていう話し方……「アウト!」って思いながら見て。
(宇多丸)「アウト」っていうのは「いい」のね?
(宇垣美里)いい。めちゃくちゃいい!
(宇多丸)私、全部翻訳してますけども(笑)。それと、水木という……。
(宇垣美里)バディ。そう。水木。
(宇多丸)ちょっとやさぐれたノワール的主人公。
(宇垣美里)いろんな地獄を見てしまった結果、愛も知らず、そしてその世界に対してもそんなにたぶん期待してない。
(宇多丸)まあ、ニヒリストというかね。
(宇垣美里)そんなヘビースモーカー。よい!って思って。
(宇多丸)これは「よい」なんですね(笑)。「よい」っていうのはごめん。ヘビースモーカーなのがいいっていうわけじゃなくて。というキャラクター像がたまらんっていうことね?
(宇垣美里)そう。そんな彼が……ある種、たぶん自分はすごく低く見ていた、悪ぶっていた人が変わっていくところとか、その彼に何かを託そうとするゲゲ郎の感じとかも。
(宇多丸)たしかに。最後に託しますからね。
(宇垣美里)「よい!」ってずっと言ってました。
(宇多丸)ああ、そう。じゃあ、そこの……楠葉さんがあんな風になっちゃう。あんな様になってしまう。またひとつ、当事者性の高い活動が増えてしまう。それも納得の……しかも実際に劇場もさ、大人の女性がすごくやっぱり多くて。
(宇垣美里)私の隣の隣ぐらいに座っていた女性が、もう浴衣を着てらっしゃって。結構白地に、結構経文みたいな、割と不思議な……おしゃれなものを着ていらっしゃった方がもうびっくりするぐらい結構、しょっぱなから泣いていて。「えっ、早ない?」と思ったんですよ。
(宇多丸)でもやっぱり、たぶん何度目かなんでしょうね。
(宇垣美里)そう思っていたのに、最後はわかりみしかなかった! 「理解!」ってなって(笑)。
最後はわかりみしかなかった
(宇多丸)オタク用語が難なく飛び交うことよ……という(笑)。
(宇垣美里)いやー、素晴らしかった! 見てよかったです。ありがとうございます。
(宇多丸)いやいや、私の方はね、なんというか、映画評の方はしていますんで。ぜひそちらの方もね。今、書き起こしもやっておりますんで。
(宇垣美里)そちらもぜひ、読んでいただいて。
<書き起こしおわり>