町山智浩さんが2023年11月28日放送のTBSラジオ『こねくと』の中でApple TV+で配信中のドラマ『レッスン in ケミストリー』を紹介していました。
(町山智浩)今日はね、Apple TV+という配信サービスがあるんですけども。そこでずっとやっていた連続ドラマがありまして。先週、完結したんですね。8話連続なんですけれども。Apple TV+、入ってる人はそんなにいないのかもしれないすけど。これがね、もう実に素晴らしい内容だったんで。『レッスン in ケミストリー』というタイトルのドラマなんですね。で、これは化学、化け学ですね。「化学の教訓・教え」みたいな意味なんですけれども。これ、主人公は女性で、舞台は1950年代のアメリカで。テレビが始まったばかりの頃なんですよ。そのテレビで、夕方の料理番組で料理の紹介をする化学者の話です。
これ、ブリー・ラーソンさんという女優さんがこのドラマ自体の企画・制作もやっているんですけれども。主役のエリザベスさんという化学者を演じてますね。彼女は一番有名なのは『マーベルズ』、キャプテン・マーベルというマーベルのヒーローを演じてる女性なんですけれども。これ、最初にまず50年代の料理番組、その頃のテレビは全部、生放送なんですよ。
(でか美ちゃん)ああ、そうなんですね。へー。
(町山智浩)その頃はドラマも全部、生放送だったんですよ。
(でか美ちゃん)すごい。料理番組で生放送って本当に失敗が許されないというか。
(町山智浩)でも、失敗しちゃうんですよ(笑)。でも、しょうがないですよね。生だから。それで大人気で、カリスマ的な人気になるんですけれども。元々は化学者なんで、料理を説明する時も「こうやると美味しくできますよ」って言うんじゃなくて「どうしてそうなるのか?」って話をするんですよ。「これを入れるとどうしてモチモチするのか?」とか、「こういう風にやると表面がカリッとして、中が柔らかいままになるのはどうしてか?」とか。「こうするとどうして肉が柔らかくなるのか?」とかね。「どうして香ばしいのか?」とか、それを化学的に理論を説明してくんで、ちょっと他の料理番組とは違う番組なんですね。
でね、一番違うのはとにかくこのブリー・ラーソンさんが演じるエリザベスという料理番組の司会者は、笑わないんですよ。
(石山蓮華)えっ? 1950年代から、そんなことを?
(町山智浩)だからもう、「女性なんだから笑わなきゃ」って……なんかもうデフォルトで笑顔になっていなきゃいけないっていうのがあるじゃないですか。女性って。
(でか美ちゃん)はいはい。なんか「にこやかで、華やかでなければいけない」みたいなね。
(町山智浩)そう。だから職場でも、テレビ以外でも言われるんですけども。「口の口角を上げなきゃいけない」っていうので、日本って口角を上げる訓練までさせるでしょう? 出るところに出る人は。
(石山蓮華)そうですね。
(町山智浩)まあ、それをやらされるような世界なんですけど、彼女はそれをしないんですよ。俺なんか、いつもニヤニヤ笑ってるから「やめろ!」って言わて。昔、僕はたけしさんがやっていたTBSのニューステレビに出た時に、「あんちゃん、いつも顔が笑顔だけど、ニュース番組はやばいよ。不幸なニュースとかもあるから、あんちゃん、ちょっと口角を下げろ」って言われて。で、まあそんな僕は別としても、大抵の人は無理に笑っているわけですよね。常に笑顔でいなきゃいけないっていう。でも、彼女は笑わないんですけども。ただ、それでもすごい人気になるんですよ。
(石山蓮華)へー!
(町山智浩)でもなんで、その化学の研究者だった人が料理番組をやらなければならないのか?ってことがこのドラマでは描かれていくんですよ。で、彼女は元々、化学の研究者で、化学の研究所にいたんですけれども……そこですごい差別を受けるんですよ。で、まず「博士号を取ってないから」ってことで、その研究施設の中でね、「君はただの助手なんだ」っていう扱いを受けるんですね。で、彼女がどうして博士号を取れなかったか?ってことはその後、明らかになってくるんですけど。その1950年代っていうのは完全に男尊女卑の時代なんですね。アメリカでも。で、恐ろしいことがあって、彼女は博士を取り損ねるんですよ。成績は優秀だったんですけれども。まあ言ってしまうと、それこそセクハラとかは絶対に訴えることはできない時代でしたから。何をされても。
(でか美ちゃん)ああ、そうか。そもそもね、「笑ってろ」っていう時点でかなりそれがベースにあるから。
(町山智浩)そうなんですよ。しかも、その化学研究所の中でも、ミスコンがあるんですよ。
(でか美ちゃん)ええーっ? 最悪!
(石山蓮華)きーっ!
(でか美ちゃん)あ、「きーっ!」まで出た(笑)。あと「もーっ!」が出るだけ(笑)。
(町山智浩)で、彼女は美人だからってことで、ステージに上げられるんですけど。やっぱり笑わないから、みんなからブーブー言われて。直接「君は笑わないからダメだ」とか言われたりするんですね。そこで差別されていくんですけれども。ただ、彼女はものすごい重要な研究をしていて。それは、DNAなんですよ。DNAの研究っていうのは、DNAというものがあることはわかってたんですけど、それがどういう構造してるかとかが当時はわからなかったんですね。で、その研究をしているんですけれども。その研究を、横取りされちゃうんですよ。男たちに。
(石山蓮華)うわっ、嫌だ……。
研究の成果を横取りされる
(町山智浩)これは、事実です。元々ですね、これはイギリスであったことなんですけれども。ロザリンド・フランクリンさんという女性の化学者がいたんですけども。DNAって今では二重螺旋という構造になってることがわかってますけども。
(でか美ちゃん)もう今や有名というか。
(石山蓮華)中学校とかで、すぐに習いますよね。
(町山智浩)そうなんですよ。ただ、それを決定づけるX線写真を撮った人がロザリンド・フランクリンという研究者なんですね。ところが、それを男たちに盗まれてしまって。で、盗んだ方はノーベル賞を取ります。
(石山蓮華)ええっ? じゃあ、その歴史の中からロザリンド・フランクリンさんは名前ごと消されちゃったんですか?
(町山智浩)そうなんですけど。で、なんでそうなったか?っていうと、彼女の伝記が出てるんですね。それでいろいろ調べて、結局この人が本当は決定的なDNAの偉業を達成した人なんだけれども、なぜこの人が盗まれたかというと「愛想が悪かったから」っていう理由なんですよ。
(でか美ちゃん)うわっ、研究に関係なさすぎる……。
(石山蓮華)ひどい!
(町山智浩)でしょう?
(石山蓮華)でも、男性であれば愛想が悪くとも正当に評価されるんですか?
(町山智浩)別にね、研究者なんだから愛想なんて必要ないですよ。コンパニオンじゃないんだから。
(でか美ちゃん)っていうか、なんなら「威厳がある」ぐらいに思われそうですね。
(町山智浩)でしょう? 会社でも、そうじゃないですか。女性だと愛想がないっていうと、それで否定されちゃうじゃないですか。
(でか美ちゃん)そうですよね。「ニコニコしとけ」みたいな風になるけど。でもなんか昔、学校の授業でDNAのいろいろを発見したって、なんか男性だった気するって。はっきり覚えてないんですけどね。女性の名前は見てないなって。
(石山蓮華)なんか2人の男性が写真がありましたね。
(町山智浩)そうなんですよ。その後、この女性、フランクリンさんも亡くなってだいぶ経ってから、事実関係が全部調査されて。実は彼女の功績だったっていうことが明らかになるんですけど、その名誉が回復されたのは彼女の死後だったんですね。で、とにかくこれね、その「笑顔じゃない」っていうだけじゃなくて、やっぱり「お茶を入れないの?」って話にもなるんですよ。
(でか美ちゃん)でもなんか、そういうのが改善というか、「よくないよね」ってなってきたのも、本当にここ数年ですもんね?
(町山智浩)最近ですよ。それは。
(でか美ちゃん)「花束を渡すの、女性じゃなくてよくない?」とかも含めて。
(町山智浩)そうそう。だからこの彼女もそういう状況だから、一番最初に出社して、まず掃除をして……っていうことを繰り返して。それでなんとか、男ばっかりの研究所の中で居場所を作ろうとするんですけども……結局どんどんどんどん、居場所を狭められていってしまって。最後はもう仕事を全部奪われて。で、彼女は子供がいて、シングルマザーだったんで、料理番組に出ざるを得なくなったってことがだんだんわかってくるんですけど。このドラマの中で。
で、これね、ブリー・ラーソンさんが演じてるっていうのがすごく重要なんですよ。この人、キャプテン・マーベルっていうそのマーベルコミックスのスーパーヒーローをやったんですけど。
(でか美ちゃん)この前、公開されていますよね?
(石山蓮華)11月10日に公開された映画なんですね。
(町山智浩)そうそう。『マーベルズ』っていうのは、2作目なんですけど。キャプテン・マーベルシリーズの。元々、『キャプテン・マーベル』っていう第1作があって。ただその第1作は、ものすごい叩かれたんです。アメリカで。なぜか?っていうと、笑顔じゃないから。
(でか美ちゃん)えっ? だってもうそれって、キャプテン・マーベルって最近の話ですよね?
(町山智浩)現代ですよ? ついこの間ですよ?
(石山蓮華)ええっ? 何年経っても、女性はずっと同じことを言われるんですね? 嫌だ……。
(町山智浩)そう。で、実際にポスターとかでも彼女は笑顔じゃなかったんですけれども。で、映画の中でもほとんど笑わないんですが。それに対して、このブリー・ラーソンさんがやったのは、他のスーパーヒーローたちが口角を上げて戦っている画像をフォトショップで作ったんですよ。みんな、アイアンマンとか、キャプテン・アメリカとかいろいろいるじゃないですか。でも、口角を上げるとみんなバカに見えるわけですよ。だって、戦っているんだもん(笑)。
(でか美ちゃん)「これを求めているっていうことだぞ?」っていうことですよね。
(町山智浩)そう。「あなたたち、男には『笑え』って言わないでしょう?」っていう。
(石山蓮華)そうですよね。
(町山智浩)で、そこでくじけなかったんでますますね、はっきり言うとそういう差別的なね、悪いオタクの人たちから徹底的に叩かれて。で、映画の内容を見たら、映画の中でも彼女に「笑えよ」って言うやつが出てくるんですよ。
(でか美ちゃん)ええっ? じゃあ、もうなんかそうやって叩いてた人たちは見てみたら本当に赤っ恥ですよね。
(町山智浩)赤っ恥だったんですよ。「うわーっ!」っていうね。
(でか美ちゃん)「俺/私のことやんけ!」っていう。
(町山智浩)そうなんですよ。だから、その彼女、ブリー・ラーソンがこの笑わない料理番組の司会者というのをやっているというのはこれ、すごい確信犯でやっていて。彼女自身がプロデュースしてるんで。これは面白いんですよね。
(でか美ちゃん)すごい重ねる部分も本当にたくさんあるだろうな。
確信犯的にやっているブリー・ラーソン
(町山智浩)そうなんですよ。で、全然媚びないんですよ。彼女は。プロデューサーとかからは「もうちょっと笑えない?」とか言われるんですよ。で、最初番組の時にね、局側が用意してきた服っていうのは妙にセクシーだったりするわけですよ。体の線がね。特に50年代だから、体の線がすごく出るような服を着せられるんですよね。ウエストが細くてね。で、「私は化学者だから、そういうのは……」って白衣を着て出たりね。徹底的に戦うんですけれども。ところが、化学の知識を使いながら料理を紹介してくんですが、そのうちに女性たちの中から彼女をカリスマ視するような人たちがどんどん出てくるんですね。
というのは、スタジオにお客さんを呼んでやり取りをして始めるんですけど。当時の番組ってみんな、スタジオにお客さんを呼んでやっていたんで。その中で、料理を通じて会話をするうちに「実は私は本当は医者になりたかったんですけども、子供ができて諦めて」みたいな話が出てくるわけですよ。お客さんの中から。すると「諦めないで! 今からでもやり直せますよ」って。自分がね、化学者として挫折したんですけれども。そうやって、いろんな女性たちを励ましていくので、彼女はものすごい人気になっていっちゃうんですよ。
これもね、実際のモデルの人がいるんですけど。それはジュリア・チャイルドさんっていう人で。60年代の初めに料理番組を始めたんですけど。フレンチ、フランス料理をテレビで教えたんですよ。
(石山蓮華)それ、映画になっていましたよね?
(町山智浩)『ジュリー&ジュリア』っていう。そう。で、その頃はフレンチシェフって男尊女卑っていうか、女人禁制だったんですね。その映画の中でも出てますけど。で、フランスの料理学校に行ったら「女の来るところじゃねえ!」って言われて、すごいいじめを食らうんですけども。
(石山蓮華)結構、ひどい目に遭ってました。
(町山智浩)あれ、ものすごいいじめでしたね。とにかく追い出そうとするんですね。で、それを乗り越えた人がいて。いろんな人をモデルにしてて。その50年代の男尊女卑の世界の中で、料理を使って戦っていく話なんですよ。
(石山蓮華)かっこいい!
(でか美ちゃん)じゃあ、実在の2人のモデルの人がいて……みたいな感じの話なんですね。
(町山智浩)はい。そうなんですけど。これ、もうひとつポイントがあって。彼女は絶対に結婚しない。恋愛もしないって決めてる人なんですよ。自分は化学をやるからっていうことで。ところがそこで、DNAを研究するもう1人の男性が出てくるんですね。で、そっちの男性の方はカルヴィンっていうんですけども。その人も、似たような人なんですよ。「女性とは一緒に暮らさない」みたいな人なんですね。暮らしたいんだけども、暮らせないんですよ。で、この人の方は別の問題があって。たぶん、僕にちょっと似てるんですけど。異常に落ち着きがないんですよ。当時はまだ、病気として認知されてなかった、まあADHDらしいんですね。特性は。で、化学者としては天才なんですけども、落ち着きがなくて、だらしなくて、整理できなくて。で、服を研究所に脱ぎ散らかしている人なんですよ。
(でか美ちゃん)だから本当に、これはすごくできるんだけど、すごく苦手なことがあるという。
(石山蓮華)得意・不得意がはっきりしたタイプですね。
(町山智浩)そうそう。で、パンツとかそこらへんに落ちていて、汚いんですが。で、彼女、エリザベスの方は全く逆で、計算されたようにしか生きたくない人なんですよ。
(でか美ちゃん)それはそれでかなりね、別種の生きづらさがありますもんね。
(石山蓮華)コミュニケーションが苦手だったりとかってこと、ありますよね。
(町山智浩)だから彼女は料理で失敗するってことが、ものすごいダメージを食らうんですよ。
(でか美ちゃん)「生放送だから仕方ないよ」って思うけど。
(町山智浩)でも、思えないんですよ。全部計算通りにしか、物事を把握できないから。不確定なものが入ってくると、エリザベスさんはそれでもう、パニックを起こしちゃうんですね。それでこの全く違う2人の性格がよくわかるのはね、この男性のカルヴィンっていう化学者の方は今、後ろで流れている曲はフリージャズなんですけども。このフリージャズっていうのは、その頃にアメリカで出てきたものなんですよ。それまでのジャズって、ビッグバンドジャズとか、いろんなジャズありますけれども。一応、楽譜通りに弾くんですよ。基本的には。ところが途中からジャズって、アドリブ中心のものになっていったんですよ。で、今流れてるのはチャーリー・パーカーとかマイルス・デイヴィスとかなんですけど。それがいわゆるモダンジャズというもので。各楽器の人が順番にアドリブをやって……っていう、楽譜がない音楽になっていくんですね。
(でか美ちゃん)じゃあ、まるで、ねえ。
(石山蓮華)即興派か、きっちり派か、みたいな。
(町山智浩)そうなんですよ。それで彼、カルヴィンはいつもフリージャズを聞いてるんですけど。すると、この彼女、エリザベスの方はそれに耐えられないんですよ。
(でか美ちゃん)音楽もそうなっちゃうんだ。2人とも。へー!
(町山智浩)「こんなでたらめな……これはノイズよ!」とか言うわけですよ(笑)。
(でか美ちゃん)極端だな。両方が(笑)。
(町山智浩)もう何も方向も決まってないし。「こんなもの、音楽じゃないわ!」って言うんですけど。で、フリージャズってね、その時になにが画期的だったか?っていうと、踊れないんですよ。
(でか美ちゃん)ああ、そうか。拍子とかが決まってないから、乗りづらいのか。
(町山智浩)乗りづらいんですよ。
(石山蓮華)踊る方も、自分で踊らないといけないんですもんね。
(町山智浩)そうなんですよ。スウィング・ジャズっていう、それまでのジャズは男女がいろいろと踊るじゃないですか。だからダンスと結びついていたんですけど、フリージャズって踊るっていうか、体を小刻みに揺らすぐらいしかできないんですよ。
(石山蓮華)乗るに近い感じ?
(町山智浩)そう。乗るに近いんですよ。でも、その後の新しいダンスミュージックのあり方なんですけども。この2人が出てくることで、その当時の音楽の大きな流れも表現していて。
(でか美ちゃん)へー! おしゃれな演出!
(町山智浩)そうなんですよ。あと、この映画はものすごい美術が綺麗。
(石山蓮華)今、手元に場面写真も何枚かありますけど。本当にこの、家具とかの色使いも50年代っぽくて、すごいかわいいですし。衣装も素敵ですね。
(町山智浩)衣装がすごいんですよ。どんどん変わっていくんですけどね。50年代から60年代に移っていくんで。それで音楽とインテリアと衣装がどんどん変わっていく。一番アメリカが大きく変わってくる時の……それこそ、60年になるとごっそり変わるわけで。その直前のね。女性の権利とか、有色人種の人たちの権利がだんだん、大きく動きつつある時代をおさえたものになっていて。それを化学とも重ねて、さらに宗教とも重ねていくんですよ。
(石山蓮華)いろいろなものの夜明けを描く作品なんですね。
(町山智浩)そうなんです。で、この2人がなぜDNAを研究してるか?っていうとDNAっていうのは生物の始まりの研究をしたいから、2人はやっているんですね。どうして、何もない地球から生物が生まれたのか?ってことを研究したいんですよ。それを突き止めたいんですが、それまでは誰もそんなことを考えなかったんですよ。ヨーロッパやアメリカでは。神様が作ったものだと思っていたから。
(でか美ちゃん)ああ、そうか。そういう発想っていうか。
(町山智浩)そうなんですよ。だから、「そうじゃないのかもしれない。本当は一体、どうして生き物が生まれたのか?」ってことを2人が研究してるんですけど。2人はどうして、それを研究してるか?っていうと、この彼女のお父さんは昔、エヴァアンジェリカル・クリスチャンという非常にキリスト教原理主義の運動家だったんですね。この彼、カルヴィンの方はカトリックの教会で育てられた孤児だったんですけども。ところが2人とも、キリスト教によってものすごく傷つくんですよ。それで、本当の神を見つけようとしてるんですよ。実際は。
(でか美ちゃん)なるほど。
アメリカ現代史のありとあらゆる要素をぶち込んだドラマ
(町山智浩)これね、ものすごい複雑なアメリカの現代史のありとあらゆる要素をぶち込んでいて。しかも、おしゃれでかわいい映画になっているんですよ。
(でか美ちゃん)なんかね、見やすさもあるのかなって感じ、しますよね。今のところ、資料とかを見ていると。
(町山智浩)そうなんですよ。この全然合わない2人が、もう要するに地球上で誰も自分と付き合ってくれる人はいないだろうと思ってた2人が、愛し合うようになってくるんですよ。だんだん。
(石山蓮華)あらー! そこでもまたケミストリーが。
(町山智浩)その通りなんですよ。だからこの「ケミストリー」っていう言葉がね、化学の方と、愛と両方を意味していて。ちょっと強烈なシーンもあるんですけれども、感動的な素晴らしいドラマになってましたね。8話で。
(石山蓮華)これは見たいですね。
(町山智浩)これね、この間、『正欲』っていう映画を見たじゃないですか。あれで、新垣結衣さんと磯村勇斗さんの2人が、絶対に自分と一緒に愛し合える人はいないんだと思っていたじゃないですか。2人とも。で、「この世界には誰もいないんだ」っていう。ところが、いたわけですよ。偶然。すごく似てるんですよ。
(石山蓮華)仲間を見つける話でもある?
(でか美ちゃん)ねえ。なんか性欲な部分を超えた、なんかね。
(町山智浩)そう。ソウルメイトを見つける話になっていて。これはね、ちょっとね、Apple TV+だから見る機会がないかもしれないんですけど。ちょっと見る価値のある、素晴らしいドラマでしたね。
(でか美ちゃん)あとApple TV+に入ったら、4月の一番最初にご紹介して見逃していた『テトリス』も見れますからね(笑)。
(町山智浩)ここじゃないと見れないですから。
(石山蓮華)まだ見てない方は合わせて見る機会ということで。今日はApple TV+で配信中の連続ドラマ『レッスン in ケミストリー』をご紹介いただきました。町山さん、ありがとうございました。
(町山智浩)どうもでした。
『レッスン in ケミストリー』予告
<書き起こしおわり>