石山蓮華『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を語る

町山智浩『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を語る こねくと

石山蓮華さんが2023年10月31日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』について、町山智浩さんと話していました。

(石山蓮華)先週は『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』というスコセッシ監督の3時間半の映画をご紹介いただきました。

(町山智浩)3時間半ですよ?

(石山蓮華)いや、でも面白かったです。私、見てきました。

(町山智浩)見ました? これ、苦行ですよね。

上映時間3時間半

(キニマンス塚本ニキ)映画館で3時間半、ずっとおトイレに行かずに見たんですか?

(石山蓮華)そうですね。結構、始まる前にコーラを小さいサイズですけども。飲んだので。途中、お手洗いに行くかなと思ったんですが……映画が面白くって、集中してたら3時間半、経ってましたね。

(キニマンス塚本ニキ)そうなんだー。なんか、映画館で休憩を挟んだりすると、結構問題になって。怒られてしまうっていうことがあるみたいですね。映画館側がね。

(町山智浩)いや、この『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を作ったマーティン・スコセッシが「休憩入れるな!」って怒ってるというね。「そんなの、長くするなよ」と思いますけどね。

(キニマンス塚本ニキ)私、すごい先週のお話を聞いて「ああ、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』、すごい見たいな!」って思ったんですよ。見たいんだけど……ちょっと覚悟が必要かなって感じもします。

(町山智浩)結構、つらいですよね。内容がね。長さだけじゃなくて。実際にあった事件ですけど。1920年代のアメリカのオクラホマ州で石油が出まして。オセージ族という、いわゆるインディアンって言われている先住民の人たちが大金持ちになっちゃうんですよね。で、その金を横取りしようとして結婚して、その一族を殺そうとする……というか、実際に殺した事件ですね。

(石山蓮華)なんかすごく差別と歴史を扱った映画でつらい映画ではあるんですが。やっぱり家父長制に翻弄される男性の弱さっていうものを描いた映画でもあって。そういう風に私は感じたんですね。

(町山智浩)まさにその通りですよ。というのは、アメリカ先住民は家母長制なんです。

(石山蓮華)ああ、そうか。そうですよね。

家父長制VS家母長制

(町山智浩)だからこの映画は実際は家父長制対家母長制の戦いの間にディカプリオが挟まれて。あんなすごい、ずっと口をへの字に曲げてのたうち回ってるんですよ。

(石山蓮華)への字でしたね。

(町山智浩)でもこの映画がね、ちょっとね、実はすごく僕がね、「あっ!」と思ったところがあって。ディカプリオはああいう形で、自分の奥さんに毒を盛るっていう、すごい状況になっていくわけですけれども。で、彼は終身刑になっちゃうんですよ。奥さんの家族も殺しちゃったしね。で、老人になって、70過ぎぐらいで実際には刑務所を出ているんですよ。映画の中には出てこないですから、これは全然ネタバレじゃないんですけど。実際の話で。その後、奥さんは亡くなっているんですけど、彼は自分の息子に会いに行ってるんですよ。で、その息子は自分のお母さんを殺そうとした自分の父親をどうしたと思いますか?

(キニマンス塚本ニキ)拒絶、したんですか?

(町山智浩)受け入れたんですよ。

(キニマンス塚本ニキ)受け入れたの!?

(町山智浩)許したみたいですね。

(キニマンス塚本ニキ)想像できない……。

(町山智浩)お孫さんがいて。そう証言しているんですよ。お孫さん、なんと僕と同い年の61歳でしたけど。

(キニマンス塚本ニキ)今、アメリカではこういう人種差別問題とか、家父長制の問題っていうことをすごく……まあアメリカに限らずですけれど、いろいろと注目されていて。だから、この『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』。先週、ご紹介してくださった作品も結構、注目度が高いんですかね?

(町山智浩)これはたぶんアカデミー賞に絡んでくると思いますね。

(キニマンス塚本ニキ)じゃあ、見なきゃ。

(町山智浩)3時間半ですけどね。

(キニマンス塚本ニキ)頑張ります(笑)。

(石山蓮華)私はすごい、今年見た映画の中でも数本のうちに入るぐらい好きな映画でした。

(町山智浩)歴史に残る映画だと思います。

<書き起こしおわり>

町山智浩『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を語る
町山智浩さんが2023年10月24日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』について話していました。
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