堺雅人と安住紳一郎 モンゴルの発酵食品文化を語る

安住紳一郎 堺雅人・星野源をラジオゲストに迎える荷の重さを語る 安住紳一郎の日曜天国

堺雅人さんが2023年9月10日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中でドラマ『VIVANT』のモンゴルロケについてトーク。現地で生活する中で触れたモンゴルの発酵食品文化について、安住紳一郎さんと話していました。

(安住紳一郎)あとモンゴルで2ヶ月間、撮影があった?

(堺雅人)ありました。

(安住紳一郎)どうでしたか? モンゴルは。

(堺雅人)天国ですよ。本当に。毎日が日曜天国。

(安住紳一郎)ありがとうございます(笑)。番組タイトルを。

(堺雅人)お芝居のことだけ考えていれば、褒められるんだもん。ご飯も作らなくていいし、洗濯も自分の洗濯さえしておけばいいし。本当に。何も考えずに。

(安住紳一郎)スケジュールを結構タイトだったんですか?

(堺雅人)タイトでしたね。ほとんど休みがなかったんじゃないのかな? 休みの日……撮影がない日は移動日か、馬の練習をしてたので。はい。なかったですね。

(安住紳一郎)いろいろと、行く先々の歴史とか、地政学とか大好きですけれども。モンゴルはどうでししたか?

(堺雅人)あんまり今回はなかったんですよね。観光もほとんどせずに、ただただ暮らしてましたね。ご飯食べて……だって、地平線でしょう? 日の出が見えるんですよ? 日没も見えるんですよ。

(安住紳一郎)地平線上に?

地平線から太陽が登り、そして沈む

(堺雅人)地平線上に。朝、起きて。「ああ、今日も1日、頑張るぞ」と思ったら地平線から太陽が出てきて。で、日暮れギリギリまで撮影して。日が落ちてからもまだ明るいので。ギリギリまで撮影して、暗くなってから帰って。また次の日の日の出とともに……なんか、地政学とか歴史とかって人間が後から作った文字でしょう? その前の、なんか生きてるとか、生活してるとか、暮らしているとか。なんか、もっとそっちの、なんて言ったらいいんでしょう? 文字になる前の楽しみというか、喜びというか。「ご飯が美味しい」とか。なんか、そっちの方が強かった2ヶ月でした。

(安住紳一郎)ここに住んでいる動物として。

(堺雅人)遊牧ってね、動物の群れに人間が入っていくっていうことだから。夏になるとね、お乳をもらって、チーズにして食べてるだけなので。子馬を育てて、余ったお乳をもらって馬乳酒っていうお酒を作って飲んでるわけだから。なんか、人間が獣の群れに入ってく生活じゃないですか。「自分も生き物なんだな」っていう……『VIVANT』ですから。「生きてる」っていう「VIVID」の「VIVANT」ですから。「生き生きと」って。「ああ、生きてりゃいいんだな」って。だから頭をほとんど……「頭を使ってない」っていうとおかしいですけど。なんかもっと、本当に体とか心とかの方にシフトした作品だった。それは『VIVANT』自体としてもすごく正しいアプローチだったような気がするんですよね。なんか、だってやってることは、モンゴルで撮影したシーンって「逃げる」とか。まあ、ほぼ動詞としては「逃げる」ですよ。

(安住紳一郎)砂漠の中での移動(笑)。

(堺雅人)移動(笑)。だからなんか細かい、出し抜くとかごまかすとかいうのもあるけれども。基本は逃げるとか、戦うとか、立ち向かうとか。なんかすごく生き物として原初的ななにかなので、すごく日本を離れ甲斐があったというか。

(安住紳一郎)そうですね。たしかに。あの砂漠の中で左から右に逃げていく感じはすごくなんかね、伝わるものがありましたよね。

(堺雅人)ラクダと一緒にね。ヤギと一緒に。

(中澤有美子)迫力がありましたね。

(安住紳一郎)私、堺さんとは前に『ぴったんこカン・カン』っていう番組でよくロケをご一緒して、いろんなところに行ったんですけど。本当に街の歴史とか、人文学的なこととか、そういう民俗学的なことが大好きで。本当に行く先々でいろんなことに着目して。で、疑問があると必ずそこの土地の人に話を聞いて、そしてスケジュールが押すっていうね(笑)。

(堺雅人)アハハハハハハハハッ! そうだった。鎌倉とかだったんですよね。で、鎌倉なんてもうね、1週間いても飽きない場所じゃないですか。あ、そういえばあれだ。モンゴル、乳製品がものすごくて。やっぱりその、発酵食品じゃないですか。安住さん、お醤油好きでしょう?

(安住紳一郎)私、お醤油好きです。

(堺雅人)だからモンゴルもモンゴルで発酵文化があるんだなと思って。

(安住紳一郎)発酵文化はお酒だったんですか?

(堺雅人)チーズ。アーロールっていうチーズがあって。生乳があって、脂肪分はバターで食べるのね。で、その残ったやつを発酵させるんですけど、その発酵の度合いによってたしか三つぐらいのチーズにわかれるのかな? で、その中で一番発酵が進んだやつがアーロールっていうやつなんですけど。また土地土地によって全然、味が違うんですよ。だからたぶん酵母っていうか、乳酸菌が違うんでしょうね。

(安住紳一郎)面白い!

(堺雅人)面白いんですよ! で、それぞれ自分たちのアーロールが一番好きで。2ヶ月、いたんですけども。半月、首都近辺で撮影をして、1ヶ月はゴビ砂漠を移動するから、モンゴルスタッフにとっても長旅なわけですよ。そしたら、みんな自分たちのアーロールを隠し持ってるんだよ。

(安住紳一郎)どこに隠し持ってるんですか?

(堺雅人)カバンに。で、僕がアーロールが好きだって噂が広まって、ちょっとずつくれるんですよ。

(安住紳一郎)へー!

(中澤有美子)「うちのが一番でしょう?」って。

(堺雅人)でも、他のモンゴルスタッフにはあげないんです。

(安住紳一郎)へー! これ、実はね、発酵食品あるあるで。それは、あれですよ。手前アーロールなんですよ。

(堺雅人)アハハハハハハハハッ!

手前アーロール

(安住紳一郎)これ、本当なんですよ。日本だと発酵食品だと醤油と味噌が代表的で。とにかく自分の家で作る味噌がうまいっていうのは、本当に譲らないんですよ。日本人でも。で、アフリカに行っても発酵食品があるんですけど。そこでもやっぱり納豆みたいな大豆の発酵食品を食べるんですけど。それも手前大豆発酵なんですよ。もう全世界、民族共通の……。

(堺雅人)手前アーロール!

(安住紳一郎)手前アーロールなんですよ。発酵食品はやっぱりなんか、小さい時から食べているから。それがやっぱり自分のなんか、プライドなんでしょうね。家のプライドで。だからそれはみんな認めないんですよ。「うちのが一番美味い」って。

(堺雅人)そう。あと、馬乳酒もそうだから。「うちの馬乳酒が一番美味い」って言うし。相手に飲ませて「美味いだろう?」っていうところからしか、話が進まないんですよ。だから今回、その遊牧民の家に行って……1話の中で3000頭のヤギとヒツジを集めなきゃいけなかったトムラっていうADがいるんだけど。彼はいろんなところで馬乳酒を飲んで、飲んで……。

(安住紳一郎)「うちのを飲め!」って。

(堺雅人)で、そこで「うまい!」って言わないとヤギを貸す・貸さないの話にならない。うちの乳酸菌っていうか、その手前アーロールっていうか、手前馬乳酒を飲まないと。

(安住紳一郎)そうなんですよ。どう考えても、第三者から見るとこっちの方が美味しいとか、こっちの方が劣ってるってのは評価できるんですけど。それはね、発酵食に限ってはもう認められないんですよ。

(堺雅人)常在菌だから。ここに、手のひらにもあるし、体にもあるし。だから「僕を食べろ」って言ってるようなもんなんだよね。

(安住紳一郎)「自分を評価してくれ」ってことだから。

(中澤有美子)「同じ腸内細菌になりましょう」みたいな。

(堺雅人)「しとねを共に」とは言うけれども。一緒の菌を……。

(安住紳一郎)発酵食品って本当にね、譲らないんですよ(笑)。

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました