伊集院光さんが2023年6月26日放送のTBSラジオ『伊集院光 深夜の馬鹿力』の中で『水曜日のダウンタウン』でオンエアーされた「昭和はむちゃくちゃだった系の映像、全部ウソでもZ世代は気付かない説」を振り返り。企画の中で自身が取ったポジショニングや、企画が破綻しかけた瞬間などについて話していました。
(伊集院光)なんかコロナ以降、芸能界で変わったことって、割とコロナの時に何が起こるかわかんなかったから。普通はそうね。今日、収録したものって1、2週間後にはもうオンエアーされるんだったのが、撮り貯めるっていうか。少し余裕を持って撮っておけば、誰か、割とメインの人がコロナになっちゃっても、そのストック分を出して。それでまた帰ってきたら撮るみたいなことができるっていう。たぶんそのせいだと思うんだけども。
だから割と撮ってからオンエアーされるまでが……すぐの番組もあるけど。長いのが多くなっていて。で、ついこのあいだオンエアーされた『水曜日のダウンタウン』はまあまあ前に撮っていて。で、もういろいろ言いたくてしょうがなかったんだけど、ずっと言えない状態で。それがやっとオンエアーされて。おおむね好評で、割とネットとかでも「伊集院、すげえ!」みたいな。
で、正直な話をすると……まあ、ざっくり見てない人にネタを説明すると、かなり巧妙に一生懸命作った嘘映像。昭和の白黒の嘘映像をZ世代に見せて、その嘘のことをさも本当のことのように「あの頃はさ……」っていう話をおじさんタレント側がする。で、Z世代を信じさせる。どれぐらい信じるか、みたいな。
「昭和はむちゃくちゃだった系の映像、全部ウソでもZ世代は気付かない説」っていうのの騙す側みたいなのをやったんだけど。まあ、嘘つきますから。もうシレッとデタラメのことを言うっていうのは、ラジオ聞いてる皆さんはご存知ですけど。これ、だって今日のオンエアーを初めて聞く人。テレビの伊集院しか知らない人が今日のラジオのオンエアーを聞いたら、「そのえなこの乳首を吸えるサブスクっていうのはどこなんですか? どこでいくらぐらいなんですか?」っていう話になっちゃうじゃないですか。でも僕はもう全然、そんなことは言えますから。全然言えるんで、そんなもんはもう本領発揮なんですけど。僕の中では。
それこそ、ここで言うところの「老害さんのコーナー」とか、あとは昔あった「ウソチクの泉」っていう、さも本当のことのように嘘のウンチクを言うコーナーとか。そういうのを合わせていけば、そこそこできることで。だから割と多いのは「伊集院、やべえ。あいつ、詐欺師になれる」とか。あとマイナスのは「伊集院の言うことはもう信じられない」とか。いろいろあって。
中でも「あいつの話術はすごい」みたいなことをいっぱい言ってくれてるのは嬉しいんだけど。ただ、もう長く芸能界をやってると、持ち上げられたってことは落とされるってことだから。で、今こういうSNSって特にそうだから。なんかみんなが持ち上げてるってことが気に入らない人っていうのは必ずいるから。そこでまた、どうせ嫌なことを言われるんだろうから。「すごい持ち上げてくれなくてもいい」と思ってるんだけど。
すごい持ち上げられると、その後のなんていうか、落下速度が上がるというか。高さのダメージが大きくなるから、そこはあんまり褒めてもらいたいとは思わないんだけど。ちょっと、おべんちゃらとかを抜きで……なんかちょっとラジオを聞いてる人は「まあ、伊集院ならあれぐらい、やるよね」って言ってくれるような気がして。それは鼻が高い。
それでいて、あと既に『水曜日のダウンタウン』の別の通常回。この後にオンエアーされる別の回も既に撮っているんですけど。その全然関係ない回。その時は僕は別に普通にスタジオにいる人なんだけど。その番組が始まる前に浜田さんが「この間、スタジオ収録分、撮ったで。あの嘘つくやつ。お前、悪いやっちゃなー」って言いながら、「でも、伊集院がおらんかったら成立せん企画やからな」って言ってくれたのとかは、やっぱり素直に、素直に嬉しかったね。それはすごい素直に楽しかったね。
ダウンタウン浜田雅功に褒められる
(伊集院光)あとはテレビを作ってる人が、俺があそこまでどうかしている嘘つきだっていうことを初めて知ったのならば、仕事は減る(笑)。もう、おそらく仕事は減るね。今度たぶん、『ダウンタウンvsZ世代』……だからあの説ができるのの元になった番組。別局の日テレの番組の収録はあるので。今のところは僕は呼ばれてるよ? だけど、わかんないけど。それが直前になって「すいません、ちょっといろいろ事情ありまして伊集院さんじゃなくなりまして」っていうことはなくはないから。あれがこのままあるかどうか、わかんないですけどね。
でもなんか、カミさんに褒められたりとか。あと身内……俺は誰を「身内」って思ってるかはわかんないけど。ラジオを聞いてる人はたぶん感想として、割とTwitterとかでも「伊集院さんがああいう人だって、みんなは知らないんですね」みたいな、そんな感じだから。それはちょっと嬉しいし。あとは後輩とかが褒めてくれたりとか。「見ましたよ!」とか言われるのは、ちょっと嬉しいっちゃ嬉しいかな。
ただ、あそこでふんぞり返ってるとおそらく急にカウンターで……もう今、世の中はそのカウンターのスピードすごい速いからさ。嫌だなと思って。じゃあ、曲。家主『きかいにおまかせ』。
(伊集院光)でもなんか、テレビに出ていて楽しいなって思うその瞬間のひとつなんだけど。ラジオって、個人技というか、個人芸じゃないですか。だけどテレビって団体芸だから。チームスポーツだから。おそらくディレクターが監督として配役を決めた時点で、ある程度試合展開ってできあがると思うんだよね。で、フジモンとケンコバは、それを言われるわけでもなく、「この企画だからギリを攻めた方がいい。まして、伊集院さんがそっちの守備をやるんだったら、俺らはかなり危ういところまで行くとこれは面白くなるんだろう」っていうのを瞬時にあの人たちは体感できるから。
僕がお笑いとするならば、お笑いとしての足りないところは俺、誰にも迷惑かけない個人技だったらいける。個人技のこの番組だったらもう、どうしようもないところまで行けるけど。団体スポーツってなってくると、なかなか行けないってなっちゃうから。そうすると、逆に言うと彼らの才能の「ギリまで行ってやる!」っていうのをドンッ!っていけるのと。
あと、そんなのも外れてもう普通のわがままなおじいちゃんを1人入れるっていう。その中尾彬っていう、もう普通のわがままでお調子乗りで制御のできないおじいちゃんを入れることで、ちゃんとほら、技術を持ってちょっとギリの向こうに行こうとする2人とはまた別のおじいちゃんをキャストしたっていうことで。もう、やばかったもん。中尾さんが(笑)。中尾さん、まさかおじいちゃんのフォローを……ある意味、介護をしなきゃいけないと思わなかったのと。
あと、発見としてめちゃくちゃ面白かったのは、まああんまり見てる人前提じゃいけないけれども。要は、「昭和の日本にはこういう決まりがありましたよ」みたいな。「昭和のコンプラはめちゃくちゃですよ」っていうので。たとえば、昔のインドの映像とか……今のインドかどうかは知らないけど。2、30年前のインドの映像とかでよくある、電車の車両の上に大勢、人が乗ってるやつが日本でもありましたよっていうので。また上手にCGで映像が作ってあったよね。白黒のCGで上手に作ってあって。「これが当時の映像ですよ」みたいなことを言って。
で、それに対してこっち側が「ああ、そうそう。東京オリンピックの前ぐらいまではたぶんあれ、普通でしたよね」みたいな話をしたりとか。こっちがフォローしていくことで、山之内すずちゃんとか、ジャニーズの若い子とかに信じ込ませるみたいなやつで。で、スタッフも「それは無理だろう?」っていうのを……これも阿吽の呼吸で、スタッフも「これは無理」っていうやつを入れてくるんだけど、それを何とかしようとしていくっていう。
何が一番無理って思ったかな? いっぱいあったんだよな。なんか、乗り切るの大変だなっていう……そうだ。「高度経済成長期までは大きな建物とかを建てる時に生贄を必ず捧げてた」っていう(笑)。そんなのが出てくるわけ。で、「これは無理だろう」と思うんだけど、その口からでまかせを言ってくから。「いや、でもこれもだんだんダメだっていうルールになっていって。動物にしたりとか……動物でも今だったら大変なことだけど」って言いながら。
で、その「動物にしたり」っていうところで、予想以上に……あれはゆうちゃみちゃんの妹(ゆいちゃみ)だっけ? ゆうちゃみちゃんの妹あたりが「怖い!」って言ったから。「これ、怖くしちゃえばいいんだ」と思って。「あれはサルって言ってたけど、本当にサルだったのかね?」なんて周りに聞いたりとかして。「なるほど。これは怖がらせちゃえば、むしろ疑う余裕がなくなるからいける!」みたいな。そうしていくじゃん?
そんな中で、ジュニアくんもいて。それでジュニアくんがうまいなと思ったのは、そのめちゃくちゃなそのルールの1項目に「軽犯罪はその犯罪を犯したその日をまたぐと時効になって無罪(万引き、恐喝などの軽犯罪は日をまたぐと時効)」っていうめちゃくちゃなのがあって。で、その時に「すごいな。さすがジュニアくんだな」って思ったのが、「だから夜12時寸前に万引きをしたりする人が多発する」っていう話をして。「ああ、なるほど。それはそうなるわな」って思うじゃない? もし、そんなルールだったらそうなるじゃん?
「11時過ぎたあたりから、みんなが万引きをしたりするようになる」っていう話から、たしかあれはジュニアくんだったと思うんだけど。「だから、ほら。セブンイレブンって昔は営業時間が夜11時までだったっていうのは、このルールがあった時代は24時間営業にしちゃうと11時を過ぎたあたりからすごい万引きが発生するからなんだよ」って言って。「なるほど!」ってなって……こっち側も、みんな騙すのはアドリブでやっているから。「なるほど!」って思ったんだけども、Z世代はほとんどみんなセブンイレブンの営業時間が夜11時までだったっていうことを知らないのよ。だからその時だけ「そんなわけないじゃん」っていう風に急にみんながなって。
「違うんだって。セブンイレブンが夜11時で閉店だったっていうのはバリバリ本当なんだって!」っていう。その瞬間が一番、おそらくあの企画が破綻しかかったというか。Z世代にバレかかったのは「セブンイレブンの営業時間は朝7時から夜11時まで」っていうところがわかっていなくて。そこの説明を始めたあたりが「なんか無理やり変なことを言っている」みたいな空気にちょっとなって。で、ネタをすぐに変えるみたいな。それが……嘘って難しいなっていうか。こっち側は知ってる前提でやってて。あと、他のいろんなエピソードとか、マンガにあることとか、そういうのを組み合わせながら何とかしてるわけ。
セブンイレブンが夜11時までだったことを信じてもらえない
(伊集院光)だから電車のラッシュがすごすぎて、電車の上にも人が乗ってたみたいな話も、中尾さんが言っていた「相撲部の生徒が駆り出されて、バイトでラッシュの時間にお客さんを電車の中に押し込んでいた」っていう話は、本当なんだよ。それは本当なのよ。今も俺よりも年齢のめちゃめちゃ若い、構成三羽ガラスの大矢くんも「嘘でしょう?」って思ってるかもしれないけど。それは、本当なのよ。要するに体育会系の柔道部員とか……ああ、もうダメだ。俺、信じてもらえないみたいだな。もうあれきっかけで(笑)。
いや、本当なんだって! それは、柔道部とか相撲部の人たちの間で代々、受け継がれているバイトで。押し屋っていう……そうか。こういうことか。もう、こんなに近いスタッフまで。「ああ、伊集院さん、また始まりました」みたいな感じになって。まあまあ、適当にみんなの中で選り分けて。だからZ世代っていう言葉もおそらく、Z世代は使ってないと思うんだけど。むしろおっさんが使ってる言葉だと思うんだけど。
<書き起こしおわり>