町山智浩『バリー・シール/アメリカをはめた男』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でトム・クルーズが実在の麻薬密輸パイロットを演じた『バリー・シール/アメリカをはめた男』を紹介していました。

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(海保知里)今日はご自宅のあるカリフォルニア州バークレーからのお電話です。もしもし、町山さん?

(町山智浩)はい。町山です。よろしくお願いします。

(海保知里)お願いします。

(町山智浩)どもです……。

(山里亮太)あれっ、町山さん、体調でも悪いんですか?

(町山智浩)ちょっとね、右手を骨折しまして……。

(海保知里)ええっ!?

(町山智浩)あと、肋骨もヒビが入っちゃって……(笑)。

(山里亮太)何があったんですか、町山さん?

(町山智浩)言えないんですよ。なんか「言うな」って言われていて、言えないんですよ。

(海保知里)なんかいろいろとあったんですか?

(町山智浩)そう。右手の薬指の付け根っていうか、手のひらの中の骨を折っちゃったんで。縦に割れちゃったんですけども。だから原稿が書けなくて……。そうなんですよ。どうして折ったかは、許されたら言います。はい。

(山里亮太)じゃあ、いつかその時まで我々も待ってます。

(町山智浩)すげー笑える話ですけども。はい。まあいいや(笑)。

(山里亮太)町山さん、ワクワクするよ!(笑)。

(町山智浩)あのね、「55で、それ?」っていう話ですよ(笑)。

(山里亮太)ダメだ、町山さん。そのタイトルだけで俺、クリックしちゃっているよ。心の中で。そのページ、飛びたいよお(笑)。

(町山智浩)でもね、僕思ったんだけど。僕、『サザエさん』の波平父さんよりも1つ上になるのかな? たしか、歳が。

(海保知里)若いんですね。あの髪型の割には。

(町山智浩)ねえ。だから僕、自分が波平よりも上になるなんて信じられないけど。波平よりも上なのにこんなことをしてケガをしていていいんだろうか?って思うんですよね。

(海保知里)ええーっ!

(町山智浩)まあ、わかんないですけどね。波平も夜とかは実はすごいかもしれませんけども。

(海保知里)どうしました?

(町山智浩)いや、俺とは関係ないですけどね(笑)。今回は、僕と同じ55才で誕生日が1日違いのトム・クルーズの映画ですけども。

(山里亮太)町山さん、ほぼ一緒なんだ(笑)。

(町山智浩)そうなんですよ。トム・クルーズもいい歳こいて、波平よりも年上なのにアクションをスタントなしでやって、この間大怪我しましたね。だからお互いね、波平よりも上なのに大怪我コンビですね(笑)。よくわからないですけども。

(海保知里)(笑)

(山里亮太)波平よりも上なのに怪我する世代なんだ(笑)。

(町山智浩)そう(笑)。恥ずかしくて言えないようなことをして怪我しているコンビですけども。で、今回紹介する映画はトム・クルーズ主演の『バリー・シール/アメリカをはめた男』という映画なんですが。はい。ちょっと音楽を聞いてもらいましょう。

『運命’76』



(町山智浩)はい。これ、なんだかわかりますよね。曲自体はね。

(海保知里)はい。ベートーベン。

(町山智浩)ベートーベンの『運命』ですよ。だけどこれね、1976年にそのディスコバージョンが出まして。『運命’76』っていうんですね。で、これは僕が中学・高校ぐらいの時にディスコで流行っていた曲なんですけども。この『バリー・シール』っていう映画はその『運命’76』が流行っていた76年から始まるんですよ。

(海保知里)へー。

(町山智浩)だからまずこの音楽でこの映画は始まるんですね。これ、トム・クルーズが演じるバリー・シールっていうのは実在の人物なんですね。で、この人はそこに写真がありますよね? 実物のバリー・シールの。

(海保知里)はい。

(町山智浩)トム・クルーズに似ても似つかないですね。


(山里亮太)そうですね。恰幅のいい。

(町山智浩)まあ、はっきり言ってハゲでデブですよ。そんなおっさんなんですけど、それをトム・クルーズが演じているんですが。このバリー・シールっていう人はこれ、大変な人で。1976年から86年の約10年間に中米、中央アメリカからアメリカ国内にコカインを大量に密輸し続けて。その間に儲けた金額が50億ドルと言われているとんでもない麻薬王なんですよ。

(海保知里)すごい金額だ。

(山里亮太)実在するんですもんね、それが。

(町山智浩)実在するんですよ。その人を演じているんですけど。彼、バリー・シールっていうのはもともとはパイロットだったんですね。ただね、すごい天才的なパイロットで。16才の時にもうライセンスを取っているんですよ。で、ものすごい技術があるんで、民間航空会社……その頃はTWAっていう航空会社があって、そこの普通のパイロットをやりながら、バイトでこっそりと小型飛行機に乗って中南米に行ってはいけないものを……マリファナとか、その頃はキューバと国交を断絶していたんで葉巻とかですね、そういったものをちょこちょこと密輸して小銭を彼は稼いでいたんですね。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)それが、2つの組織から目をつけられるんですよ。「お前、めちゃくちゃパイロットとして飛行機の操縦が上手いから、ちょっとこれ運んでくれないか?」って言われるんですね。その2つの組織っていうのはひとつはアメリカ政府です。CIA。

(海保知里)おおーっ!

(町山智浩)ひとつはコロンビアのメデジン・カルテルといわれる、コカインの麻薬カルテルですね。麻薬のシンジケートですよ。その2つから、「ちょっと仕事しない?」って言われるんですよ(笑)。

(山里亮太)いやいや、真逆じゃないですか。CIAと麻薬カルテルなんて。

(町山智浩)真逆なんですけど、これが上手く噛み合うんですよ。

(海保知里)なんでだろう? おかしいな(笑)。

(町山智浩)まず、CIAがバリー・シールにたのんだのは、いわゆる「イラン・コントラ疑惑」って覚えています? イラン・コントラ疑惑っていうのがあったんですけど。まず、中米にニカラグアっていう国がありまして、そこが社会主義政権になってしまうんですよ。で、その頃の中央アメリカのいろんな小さい国っていうのはみんな、アメリカの傀儡政権で、地元の人たちを搾取してアメリカに金を送るためのシステムになっていたんですね。キューバも含めて。で、キューバの人たちは怒って、それで革命が起きて、カストロが政権をとったんですけど、ニカラグアでも同じことが起こったんですよ。

(海保知里)ふーん。

(町山智浩)で、「これ以上アメリカには搾取させないぞ!」という政権ができちゃったんですね。それはサンディニスタ政権といいます。で、アメリカ政府はそれを打倒しなければならなくなったんですよ。そこで、地元のニカラグアの人たちを反政府ゲリラに教育して組織化して、なんとかその政府を倒そうとするんですね。CIAとアメリカ政府は密かに。

(海保知里)はい。

(町山智浩)で、本当は軍事介入して軍隊が攻め込んじゃえばいいんですけど、すでにアメリカはベトナムで1回負けているんで。同じような負け戦になるのは嫌なんで。問題になるので、こっそりとそれをやるんですよ。こっそりと反政府軍を育てる。で、その反政府軍にアメリカが武器を支援する仕事をバリー・シールがやらされるんですよ。

(海保知里)ふーん!

ニカラグアへの武器密輸

(町山智浩)で、アメリカ製の武器だとマズいっていうので、ソ連製のライフルとかを小型飛行機、プロペラ機に大量に詰め込まされて、それをニカラグアに運んで地元ゲリラに渡すんですね。それがCIAから頼まれたバリー・シールの仕事で、これは完全に国際法違反です。

(山里亮太)そうですよね。

(町山智浩)で、そのメデジン・カルテルといわれるコロンビアの麻薬組織からたのまれた仕事っていうのは、コカインの密輸ですよ。コカインを大量に小型飛行機に乗せてアメリカに運んでくれと。つまり、武器をニカラグアに持っていって下ろすと、飛行機が空になるじゃないですか。「じゃあ、その空になった飛行機に今度はコカインを詰め込んでアメリカに帰れよ」って言われるんですよ。

(山里亮太)すげーな! 行きも帰りもすげーもんを運んでる(笑)。

(町山智浩)行きも帰りもとんでもないんですけど。で、帰りに運ばされるコカインっていうのはものすごい量で、1.5トンぐらい詰め込まれちゃうんですよ。

(海保知里)飛べるんだ、それ。

(町山智浩)だからね、トム・クルーズ演じるバリー・シールが「飛べないからやめてくれ」って言うんですよ。でも、トム・クルーズっていつも白い歯を見せてなんかニヤニヤ笑っているじゃないですか。いつも口の口角が上がっているじゃないですか。

(海保知里)まあね、うんうん(笑)。

(町山智浩)あれはね、僕もわかるんですけど、歳を取ると口角が下がってくるんで、口角を上げようとして必死になっているがゆえに、笑っている状態がデフォルトになっちゃっているんですよ。彼。だからね、「そんな1.5トンもコカインを詰め込まれたら離陸できないから……」って言ってもね、口元が笑っているからね、OKしているようにしか見えないんで。断っているように見えないんで、ガンガンに詰め込まれちゃうんですよ。

(海保・山里)(笑)

(町山智浩)で、そのメデジン・カルテルのボスっていうのはパブロ・エスコバルっていう非常に有名な、まあ王の中の王みたいな人がいるんですね。『ナルコス』っていうNetflixのドラマでも出ていますけども。この人はすごいですよ。サッカーチームを持っていたり、1人の政治家を殺すために100人以上が乗っている旅客機を撃墜したりしているんですけど。爆破したりしている人ですけども。そういう人がコカインを1.5トンぐらい詰め込んじゃうんですよ。バリー・シールの飛行機にね。で、「大丈夫だあ、大丈夫だあ」って志村けんみたいなことを言ってるんですけど。

(海保知里)(笑)

(町山智浩)ヨタヨタと離陸の滑走を始めると、「あれ、離陸できなくて墜落する方に賭けるやつ?」っていきなり、金を賭けているんですよ。

(海保知里)ええーっ!

(町山智浩)いま、「大丈夫だ」って言ってたくせになんなんだよ?っていうね(笑)。すげー嫌なやつらなんですけども。でもまあ、天才的なパイロットなんでそれでも離陸したりしてアメリカに運び込むんですね。で、これがまたニューオーリンズからアメリカ国内に超低空で入って、もうレーダーに引っかからないぐらいの低い高度で入ってくるんですよ。で、もう地面ギリギリ、海面ギリギリを飛んでいって、それで空からコカインを落として、それを拾わせるというものすごい危険な作業なんですけども。

(海保知里)へー!

(町山智浩)この映画、この飛行機のアクションはCGとかじゃなくて本当に実際にやっていて。ものすごい危険な撮影なんで、スタントマンの方が2人、亡くなっていますね。結構すごい撮影なんですよ。そのぐらいのすごい飛行でガンガンにやっていて。それでこのバリー・シールはアメリカのど田舎、アーカンソーの人口が5000人ぐらいしかいない街に小さい滑走路を手に入れて、そこで武器とコカインの行ったり来たりをやって、ものすごい金を儲けちゃうんですよ。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)で、金がありすぎて、記録が残っているんですけど81年には地元の銀行に毎日5万ドルずつ入金していたんですよ。

(海保知里)ご、5万ドル!?

(町山智浩)500万円以上ですよ。だから当時の金額で5万ドルだから、現在だったら1000万円以上、毎日入金していたんで当然怪しまれるということで。要するに国税庁とかにバレちゃうんで、結局お金を銀行に入れられなくなっちゃうんですよ。で、しょうがないから地元にデタラメな会社を次々と設立して、全然働いていないおじいちゃんとかを全員社員にして金を地元にバラまいちゃうんですよ。

(山里亮太)ほう!

(町山智浩)そうすると、なんの産業もない街なのにポルシェとかが走っている異常な街になっちゃうんですよ。

(山里亮太)だいぶコメディーな感じに(笑)。

(町山智浩)これ、コメディーですよ、この映画!

(山里亮太)コメディーなんですね。

(町山智浩)これ、完全にコメディーです。

(山里亮太)でも、実話なんですよね。

(町山智浩)実話なんです。すっごいデタラメなんですよ。それでお金が余りに余ってしょうがないから、どうしようもないって札束を地面に埋めちゃうんですよ。

(海保知里)(笑)

(町山智浩)で、あとは馬小屋の藁の中に放り投げているから、馬が食っていたりしてめちゃくちゃなんですよ。もう。これ、とんでもないけど、コメディーっていう話なんですが、あの映画に似ているんです。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』っていう映画に。

(海保知里)レオナルド・ディカプリオの。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』と似ている

(町山智浩)そうです。ディカプリオがインチキな投資詐欺の、実在の詐欺師を演じた映画でしたけど、あれもコメディーだったでしょ?

(海保知里)うんうん。

(町山智浩)でも、やっていることはめちゃくちゃだったんですよね(笑)。もうセックスとドラッグとグッチャングッチャンだったですけど、でも見ていると笑うしかないですよね。

(海保知里)うん、そう。

(町山智浩)あれと非常によく似た映画なんですよ。さらには、スピード感もよく似ています。この映画、次から次にバカげたことが起こって、1時間50分ぐらいでとんでもないことがものすごい連続で起きるんですよ。ジェットコースターみたいな映画になっていますね。

(山里亮太)うわっ、見たい!

(町山智浩)『ウルフ・オブ・ウォールストリート』ではレオナルド・ディカプリオがフェラーリの中でフェラーリさせていましたけども、今回トム・クルーズもね、小型機の中でしていますよ。

(海保知里)あらららら。

(町山智浩)操縦しながらしています。

(山里亮太)どこの操縦桿を……。

(町山智浩)そう。操縦桿のようなことをしていますよ(笑)。トム・クルーズ、今回はそれだけじゃなくてね、お尻も見せるんですよ。

(海保知里)ええっ!

(山里亮太)あら、出ました。町山さんのお尻情報。

(町山智浩)なんでお尻を見せるのか全然わからないけど、2回も見せますよ。

(山里亮太)流れ上は別にお尻を出さなくてもいいようなところで?

(町山智浩)ペロッとお尻を出すんです。ペロッ、ペロッと。55才のお尻ですよ。俺もそうですけど。意外とプリッとしているんですよ。

(海保知里)あら、プリッとしてる。やっぱり鍛えているから。トム・クルーズはね。

(町山智浩)鍛えているんですよね。だから涛平はどうか、わからないんですけど……(笑)。トム・クルーズのお尻、やっぱりすごいですよ。ここ、2回。これはトム・クルーズが大好きな戸田奈津子さんも昇天かなと思いましたけどね。

(海保・山里)(笑)

(町山智浩)よくわからないですけど。ペロッ、ペロッと出していましたけど。でもね、この映画ね、タイトルが『アメリカをはめた男』ってなっているんですよ。でもこれ、どう見てもね、話がアメリカにはめられた男なんですよ。これね、このバリー・シールっていう男、なにも考えていないんですよ。要するに、それだけのコカインをアメリカに大量に送り込んで、どれだけの人がそのコカイン中毒で……特にその頃っていうのはコカインから作られたクラックっていう麻薬でアメリカの貧困層の人たちがものすごい中毒になっちゃったんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)でも、そんなことは何も考えてないですよ。白い歯を見せてトム・クルーズは笑っているだけですから。だからそういうね、無責任なチャラ男がアメリカをめちゃくちゃにしちゃうんですけど、その裏にはアメリカ政府が絡んでいるんですよね。

(山里亮太)さっきちょっとFBIから疑われたとか言っているから、そのまま逮捕みたいにならないんですか?

(町山智浩)逮捕されるんです。逮捕されるんだけど、もともと彼はCIAのためにやっていた仕事なんですよ。だから、アメリカ政府の力によって刑務所には送られないんですよ。で、しかもその頃はレーガン政権で、レーガン政権っていうのは表向きにはドラッグとの戦争を宣言していたんですよ。「War on Drugs」って言って。で、彼らは同時にニカラグアの社会主義政権も許せなかったんで、それをなんとか一致させるためにバリー・シールを刑務所に入れない代わりに、彼におとり捜査としてニカラグアとパブロ・エスコバル、メデジン・カルテルとのつながりの証拠を持って来いって言うんですよ。

(海保知里)おおーっ!

(町山智浩)っていう話なんですよ。だからすごいスケールのでかいことになっていくんですけど。でね、この映画ね、中でバリー・シールがやっていたCIAのための武器密輸と麻薬の密輸に関しては、CIAはいまも完全に否認しているんです。「そんなことはしていないよ」って言い続けているんですよ。ただね、この映画の監督はダグ・ライマンっていう監督なんですよ。このダグ・ライマンっていう人はこの前に撮っている映画は『フェア・ゲーム』っていう映画なんですね。それはあのアメリカで2003年にブッシュ大統領が「イラクは核兵器を開発している」と言って、それを理由にイラクに攻撃をしかけて占領しましたよね。

(山里亮太)はいはいはい。

(町山智浩)その時にはCIAはイラクが実際に核兵器を開発しているかどうか、調べたんですよ。CIAのエージェントたちが。そしたら、全くその形跡はなかったんですよ。で、それをブッシュ大統領に報告したら、なぜかブッシュ大統領は年頭の挨拶で「CIAからの報告だとイラクは核兵器を開発しているから、これから戦争を仕掛ける」って言ったんですよ。

(海保知里)はい。

(町山智浩)で、「これはおかしい!」ってCIAの捜査官たちが、報告と違うということを告発したんですね。そしたら、それに対してそのCIAのエージェントの名前を新聞社にリークしたんですよ。ブッシュ政権というか、チェイニー副大統領が。で、CIAの諜報員、工作員っていうのは名前を出されたら、それは敵に殺されるわけですよ。だから、「こいつは殺していいよ」っていうリークを出されちゃったんですよ。

(山里亮太)うわー……。

(町山智浩)で、それを暴いたのが『フェア・ゲーム』っていう映画だったんですけど、それを監督した人なんですね。ダグ・ライマンっていう監督は。だからこの映画の中でもCIAとかレーガン政権がいかにとんでもないことをしていたのかと。要するに、アメリカ国内にコカインを密輸させるのを手伝いながら、それで「コカインを絶滅させる!」とか言っていたんですから。

(山里亮太)矛盾していることを。

(町山智浩)デタラメをやっていたんですよ。で、イラン・コントラ疑惑っていうのはそのいちばん問題なのは、コントラっていうのはニカラグアの反政府勢力で、アメリカがでっち上げた軍隊なんですよ。でも、そこに送る武器を買うお金を(アメリカ)政府からの予算で出せなかったので、アメリカ政府は密かにアメリカの武器をイランに売っていたんですよ。

(山里亮太)イランに?

(町山智浩)イランはその頃、イラン革命を起こしてアメリカと敵対状態にあるにもかかわらず、敵なのに売ったんですよ。その頃、イランはイラクのフセインと戦争していたので武器が必要だったんで、アメリカは密かにイランに武器を売って、そのお金でソ連製のAK-47とかの武器を逆に買って……要するに1回、他の武器に変えなきゃならなかったんですね。それをニカラグアに送っていたんですよ。そういうインチキを影でやっていて、それが86年に発覚するんですよ。で、まあいろいろと公聴会が開かれたりして問題になったんですけど、結局曖昧なまま終わっちゃったんですよ。

(海保知里)うーん……。

(町山智浩)で、それに噛んでいたのがこのバリー・シールなんですよ。そう考えると、このバリー・シールの運命がどうなるか?っていうのはだいたいわかりますよね(笑)。

(海保知里)ああー、そうか。

(町山智浩)で、この映画で彼がCIAとやっていた武器密輸とその交換でのコカインのアメリカ国内への密輸入っていうのに関しては、CIAはいまも完全に否認しているんですが……これ、その後も別のジャーナリストがそれを暴いたんですよ。アメリカで。これはゲイリー・ウェブっていうジャーナリストが1998年に、カリフォルニアにもバリー・シールみたいな男がいて、やっぱり密輸をやっていたんですね。それを暴いた記事を書いたんですけど、その人は2004年に謎の死体で発見をされているんですよ。

(海保・山里)ええーっ!

(町山智浩)そのゲイリー・ウェブは頭に銃弾の穴が2つ開いていたんです。ところが、警察はそれを自殺として処理したんですよ。

(海保知里)怖っ!

(町山智浩)頭に穴が2つ開いていて、一発当たってからもう一発は撃てないですよ。普通、人間は。どう考えても自殺じゃないんですよ。だからね、非常に怖い話ですね。これはね。

(山里亮太)大丈夫なんですかね? この監督たちは。

(海保知里)そう。この映画自体、CIA側はちょっと許せない気持ちでしょうからね。

(町山智浩)まあ、あるでしょうけどね。ただ、CIAも次々と頭が変わっていて、もう関係者とかがどんどん変わっちゃうんで、もう昔のこととかはわからなくなっちゃっているんですけどね。この中でも証拠とかを全部隠滅するシーンがあるんで。どんどんどんどん闇に葬られていって、結局なにもわからなくなってしまうんですね。

(海保知里)これは絶対に面白いですよ!

(町山智浩)これは面白いですよ。笑えるし。『バリー・シール』っていうのはものすごく笑える映画なんですけど。あの……お尻も2回出ます!

(海保・山里)(笑)

(町山智浩)55才のお尻が商品価値を持つってすごいことですよ!

(山里亮太)波平さんよりも年上のお尻がこんだけだぞと。

(町山智浩)そう。波平の尻ですよ! トム・クルーズが波平を演じるかもしれないんですよ。今度は。よくわからないですけど(笑)。お船さんも大変ですよ、本当に。「ああっ、どうしたの、あなた! 波平さん……今日は何か違うわ!?」っていうね。よくわからないですが(笑)。なにを言っているのかよくわからないまま、『バリー・シール/アメリカをはめた男』がこれ、10月21日に日本公開かな?

(海保知里)はい。来週は『ブレードランナー』から30年後の世界を舞台にしたSFアクション『ブレードランナー2049』を紹介していただきます。町山さん、どうもありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした(笑)。

<書き起こしおわり>

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