渡辺志保 Jazmine Sullivan&Bryson Tiller『Insecure』を語る

渡辺志保 Jazmine Sullivan&Bryson Tiller『Insecure』を語る INSIDE OUT

渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でJazmine Sullivan&Bryson Tiller『Insecure』を紹介していました。

(渡辺志保)ちょっと今日はこんな感じでパンパンパンと新譜を紹介していきたいと思うんですけど、次に紹介する曲はちょっと前置き、すげー長くしゃべっていいですか?っていう感じなんですけど。ちょっと6月30日までさかのぼって、ジェイ・Zが『4:44』っていうアルバムを発表しましたけども。この間の金曜日に新しいミュージックビデオがその『4:44』の中から発表されまして。『Moonlight』っていう曲のPVなんだけど。で、これまたやっぱりジェイ・Zさんだから、何も言えねえから。やっぱりPVもね、最初はTIDAL限定。で、1週間以内に、たぶんYouTubeも含めてだと思うんですけど、全てのデバイスなんかで見れるようになりますなんてアナウンスもあるので。

まあ今週の金曜日までにはTIDAL以外のところでもミュージックビデオが見れると思うんですけど。その『Moonlight』のPVっていうのが金曜日に発表されて結構話題になっていて。で、この『Moonlight』っていうジェイ・Zの曲なんですけど、ジェイ・Z本人もラジオのインタビューで今年のアカデミー賞で作品賞を『ムーンライト』という映画が受賞したんですけども、その時にご存知だと思うけど、封筒が入れ違いになっていて「最優秀作品賞は『ラ・ラ・ランド』です!」って言って、『ラ・ラ・ランド』のみんながうわーっ!ってなった後に、「あ、すいません。間違えてました。『ムーンライト』です!」みたいな。こんなこと、あるかい!っていう感じがするんですけども。

まあ、ジェイ・Zは「それにインスパイアされて書いた曲なんだ」って言っていて。リリックの中でも「We stuck in La La Land Even when we win, we gon’ lose(俺たちはラ・ラ・ランドの中で行き詰まっている。勝利の時ですら、俺たちは負けたような敗北感を味わってしまう)」という風にラップしているんですけど。まあ、「La La Land」っていうのは映画の『ラ・ラ・ランド』にもちろんかけているとも思うし、あとは「La La」でね、ハリウッドとかがあるLAの世界。きらびやかなショウビズの世界のことも「La La Land」って揶揄しているのかな? という風に思っております。で、アカデミー賞ってかねてから、「白いオスカー」みたいな感じで、白人の俳優さんだったり監督だったりが優遇されていてなかなかマイノリティーに対しては厳しいんじゃないか? みたいなことが言われておりまして。

で、なんだけど、今年のアカデミー賞に限ってはそういった隔たりが撤廃されたんじゃないか? ということも言っていたのに、すごく大事なところで……『ムーンライト』ってオール黒人キャストで。もちろん監督もバリー・ジェンキンス。黒人の監督ですから。まあ、そういった作品が勝利の瞬間を味わう時ですら、「ああ、ちょっと惜しい。最初に『ラ・ラ・ランド』が呼ばれちゃった……」みたいな感じがありまして。そういうちょっと悔しさなんかももちろんあったかと思うんですけど。で、このビデオがなぜ話題になったか? というと、ある作品のパロディーになっていて。それが、リアルタイムで見ていた方もいるかもしれませんが、90年代を中心にアメリカ並びに全世界で人気を集めた『フレンズ』っていうドラマがあるんですけど。

で、『フレンズ』って主要キャストが全て白人ということで良くも悪くもまあ批判の矢面に立たされることもありまして。まあ、「超白人っぽいドラマだよね!」みたいな感じだったんですけど、それがなんとジェイ・Zの手によってオール黒人キャストの『フレンズ』を作ってしまったんですね。で、すごい笑ったというか、すげーやった!っていう感じなんですけど。ご丁寧に主題歌はフーディーニの『Friends』なんかを使っていて。

Jay-Z『4:44』

「おっ、こういうところまでこだわっている!」みたいな感じで。で、監督はNetflixのドラマでおなじみ、『マスター・オブ・ゼロ』のアラン・ヤン監督が名を連ねておりまして。最後のクレジットにはその『マスター・オブ・ゼロ』のアジズ・アンサリの兄弟のアニズ・アンサリの名前がありまして……というような、海外ドラマ好きにはちょっと美味しいみたいなところなんですけども。

で、本当にキャストも超豪華で、今年日本でも公開されますが『Get Out』にも出ていますリル・リル・ハウリーとか、あと『ザ・カーマイケル・ショー』でもおなじみのジェロッド・カーマイケルとか。あとね、みんなで女の子でエッセンス・フェスに行こう!っていうストーリーで結構興行成績もいいみたいですけど、映画『Girls Trip』にも出ているティファニー・ハディッシュなどなどが出ていまして。その中でも特に話題なのが、オリジナル版でジェニファー・アニストンが演じた主役のレイチェルっていう女の子がいますけど、それを演じているのがイッサ・レイというね。いま話題のホットな女優であり、映像ディレクターである、ちょっと活動家(アクティビスト)みたいな面もあるんですけど。

で、なんでこのイッサ・レイがすごくいま話題か?っていうと、彼女が去年からHBOで手がけているドラマがあって、それが『インセキュア』っていうんですけど。つい先日、先月からシーズン2の放送がアメリカでも始まって。で、なんとシーズン1が今月の11日からだったかな? 日本でもHuluで放送されるそうなんですけども。

その『インセキュア』を私、いますっごいハマっていて。で、シーズン1はなんと音楽をあのラファエル・サディークが手がけていて。で、劇中に結構いろんな話題の新曲とかが登場したりするんだけど、それがなんとソランジュによるキュレーションなんですよ。でもって、映像のエグゼクティブ・プロデューサーはあのビヨンセ『Formation』のミュージックビデオ、ならびに『Lemonade』の映像を担当しましたメリナ・マトソウカス(Melina Matsoukas)がエグゼクティブプロデューサーで参加しているという感じで、めっちゃいい。もうめっちゃ女の子の……基本的にはアフリカン・アメリカンの女性の生き辛さみたいなのを描いているんだけど、それをちょっとコメディータッチに描いているし。まあ全世界の女性なら「わかる!」って言いたくなるようなシーンもたくさんあって。もうめちゃ私、ハマッていて。

で、タイトルの『Insecure』っていうのがまあ、「危なっかしい」とか「たよりにならない」っていう意味なんですけど。まあ、自分の生活ももちろん危なっかしさもあるんだけど『インセキュア』で結構キーになってくるのは自分の長年付き合っているボーイフレンドが全然たよりにならんわい!っていうような感じで。もう本当にダメ男みたいなキャラクターと付き合っているのが主人公のイッサ・レイなんですけど。まあそのね、恋模様も気になるしイッサ・レイもいいんですよ。もともとラッパーだったという設定があって、鏡の前でめちゃめちゃライムをぶつけるようなシーンも毎回出てくるんですけども。それもめっちゃスカッとするような感じで。ぜひぜひみなさまにも見ていただきたいなと思うんだけど。

前置きがめっちゃめっちゃ長くなりましたが、その『インセキュア』にインスパイアされて、かつドラマ『インセキュア』のために書き下ろしたジャズミン・サリヴァンの新曲っていうのがありまして。それがいまからかける私の推しの新譜ということになります。で、うちら恋人同士だって、あんたは私のご主人様じゃないし、私はあんたの奴隷でもないし。「あんたがいまみたいにたよりなかったら新しい男を見つけたくなっちゃうから! そんなあんたがたよりない(Insecure)な男だから。バカバカ!」みたいな曲になっていますから、ぜひぜひ聞いていただければと思います。前置きが大変長くなってしまいました。では、お届けしますのはジャズミン・サリヴァン&ブライソン・ティラーで『Insecure』。

Jazmine Sullivan x Bryson Tiller『Insecure』

はい。いま聞いていただいておりますのはジャズミン・サリヴァン&ブライソン・ティラーで『Insecure』。もうジェイ・Zのビデオね、たぶん間もなく見れると思いますんで、みなさんに見ていただきたいし。あとね、言い忘れた。モニカ役で出ているのがテッサ・トンプソンっていって彼女は映画版『ディア・ホワイト・ピープル』でもサマンサ役を演じていて、かなりいい味を出しておりましたので。みなさんぜひぜひ日本で見れた暁にはチェックしてみてください。

(中略)

(DJ YANATAKE)いまの話でちょっと思い出したんだけどさ。『アニー』っていうミュージカルの黒人版の、あったじゃん?

(渡辺志保)ジェイ・Zが出資していてね。

(DJ YANATAKE)あれで、いまの『フレンズ』がフーディーニのを使ったので思い出したんだけどさ。俺、あの映画『アニー』を見に行った時にさ、最後にジェイ・Zの『Hard Knock Life』。サンプリングしているの。までかかって、きれいなストーリーのエンディングなわけじゃん。

(渡辺志保)そうですよね。『Hard Knock Life』自体が『アニー』の曲をサンプリングしていたジェイ・Zの代表曲ですからね。

(DJ YANATAKE)それでジェイ・Zが『アニー』をやるっていうのはわかったんですけど、日本で見たら全然違う日本のアーティストの……まあ、その日本のアーティストが悪いわけじゃないんだけど。いちばん最後にそれがガーッと流れてきた時に「ええっ?」って。

(渡辺志保)まあまあ、その日本のローカライズ主題歌問題ね。ありますね。はい。

(DJ YANATAKE)ありますね。まあ、そんな感じなんですけど……。

<書き起こしおわり>

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