町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でNetflixなどによる日本の映画・アニメのクリエイター支援とそれがもたらすであろうパラダイムシフトについて話していました。
(海保知里)町山さん、『ウエストワールド』見たんですよ。私。1話目だけなんですけど。
(町山智浩)どうでした?
(海保知里)超面白かったです。本当に面白かった。
(町山智浩)1話? 第1話ですよね。90分の。
(海保知里)そうです。
(町山智浩)もう、これをネット配信で見れるんだったら、映画館に行かないよっていう気分になりますよね。
(海保知里)もう本当に潤沢な……セットも全てがお金がかかっているなと感じました。
(町山智浩)そう。だから普通の日本の映画の5倍とかかかっているんで。1話でね。だからもう、これはすごいですけど。いま、Netflixが日本の乗り込んでいって、日本の映画監督とかアニメの製作プロにアニメを作らせようとしているんですね。もう動いているんですけど。世界で同時配信する規模で予算を与えるんで。日本のアニメ製作現場って世界最低なんですけど。
(山里亮太)そうなんですか?
(町山智浩)その何十倍とか(の予算)をいきなり提示されているんで、もう完全に日本のアニメは変わりますよ。
通常の日本アニメの数十倍もの予算を提示するNetflix
「世界中にアニメファンを作る」Netflixがアニメ注力宣言。湯浅監督らも参加 – AV Watch https://t.co/efeLdp3s7d
— みやーんZZ (@miyearnzz) 2017年8月8日
(山里亮太)へー!
(町山智浩)映画も変わるでしょう。
(山里亮太)たしかにな。もうだって、Netflixオリジナルっていってすごい有名な役者さんとか、金額もとんでもなく費やされているの、いっぱいありますもん。
(町山智浩)そう。とんでもない。いま、ものすごい映画とかエンターテイメントの大きなパラダイムシフトが起きていると思うんですよ。で、いままで映画とかアニメとかを作ってきた人たちって本当にみんな貧乏で。日本はね。それこそ、豪邸に住んでいないわけですよ。
町山智浩 イタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』を語る https://t.co/IgniHQWQZw
永井豪先生は『マジンガーZ』『デビルマン』とかで世界中で人気だから。海外の人は「大金持ちなんでしょ? 豪邸に住んでいるんでしょ?」って言うんですけど全然住んでないんですよ。— みやーんZZ (@miyearnzz) 2017年8月8日
(海保知里)はい。
(町山智浩)でも、そこにいきなり10倍、20倍の予算を持ったものが飛び込んできて、いくら使ってもいいような世界になっているんで。大変なことになりますよ。たぶん。
(山里亮太)レベル的に上がっていくっていうことですか?
(町山智浩)いや、レベルはわからないんですけど、うるさく言わないんですよ。
Netflixは。
(山里亮太)ああ、あんまり規制、ないですもんね。
(町山智浩)今度、話をしますけど。『オクジャ』っていう韓国で(ポン・ジュノ監督に)作らせた映画があるんですけど。普通だったら絶対にこんな映画にOKを出さないですよ。どこの映画会社も。テレビ局も。
(海保知里)あ、山ちゃんがニヤニヤしてる。
(山里亮太)町山さん、これいま私、見ているんですよ。『オクジャ』。ちょうど見はじめて、移動で。
(町山智浩)これ、最初の方はかわいい女の子とオクジャっていう巨大な動物のなんか子供向けの話かと思って見ていると……あ、まだ見ていないんですよね。全部。
(山里亮太)ええとですね、でもストーリーがやっぱり、いろいろと問題に絡んでくるから……。
(町山智浩)そうなんです。最後の部分が、つまりテレビでは絶対に放送できないし、映画会社も作りたくないものを見せちゃうんですよ。『オクジャ』って。
(山里亮太)ほー!
(町山智浩)Netflixは「監督が作りたいものは何でも作らせる」っていうことになっているんで。つまり、劇場とかスポンサーの縛りがないから。
(山里亮太)そうですね。スポンサーは関係ないから。
(町山智浩)これ、大変なことなんでいま、日本のメディア関係者はこれから戦争が始まりますから。
(山里亮太)ええっ!
(町山智浩)アメリカ軍の侵略ですから。これ。考えた方がいいですよ。
(山里亮太)ああ、エンターテイメント業界への。
(町山智浩)考えた方がいいですよ。これは本当に真面目に。フランスとかはもう国を挙げて戦う方向に行っているんですよね。Netflixが入ってこないようにしようと。Netflixに入られたら、侵略されちゃうわけですから。
(山里亮太)はー!
(町山智浩)ただ、監督たちは好きなものを作らせてくれるんだし、いくらでも出してくれるんだから何でもやるってなるんで、持っていかれちゃいますからね。アニメも何もかも。日本のアニメってこれだけ世界的に素晴らしかったのに、誰もお金を出そうとしなかったじゃないですか。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)全部持っていかれますよ。
(山里亮太)だっていま、すごい日本のアニメって海外で評価されているって言いますもんね。
(町山智浩)評価されているけど、お金が入ってこないわけでしょう? ねえ。『この世界の片隅に』だってほとんど(片渕須直)監督が飢え死にする寸前でやっていたものですからね。
(山里亮太)そうなんですか!
(町山智浩)奥さんも監督もひとつのスタッフですから。全く収入がない状態で5年、6年製作をやっていたわけですよね。もうここまで、映画とかアニメを作っている人たちを踏みにじってバカにしてきた日本はこれから大変なしっぺ返しを食うだろうと思いますけどね。
(海保知里)うーん。なるほどね……。
<書き起こしおわり>
失礼しました。アニメの利益構造は、さっきの図 https://t.co/tTtB5rppPd
は古くて、アニメの利益構造はこちらの図が正しいという指摘をもらいました。DVDの売り上げから小売店が4割、DVD会社が3割引いて、残りを分配する形ですね。 pic.twitter.com/llAtAaRP5J— 町山智浩 (@TomoMachi) 2017年8月9日
ハウス・オブ・カード、アメリカン・ゴッズ、ウェストワールド、侍女の物語、オレンジ・イズ・ザ・ニュー・ブラック、ブレイキング・バッドなどをご覧の方ならわかるでしょう。反宗教も反道徳も何でもアリです。そのドアが日本の作り手にも……。https://t.co/29mgrt19nI
— 町山智浩 (@TomoMachi) 2017年8月8日
Netflixの実写ドラマの製作費は「デアデヴィル」13話44億円、「ハウス・オブ・カード」66億円という記事。日本のアニメに対していくら製作費を出すのか知りませんが、日本の深夜アニメの製作費は13話約2億円からだそうです。https://t.co/Pvbk7A8zz7
— 町山智浩 (@TomoMachi) 2017年8月9日
いえ、Netflix やアマゾンによって大きな打撃を受けるのは映画館やテレビです。フランスでは規制する法律ができたり、カンヌ映画祭から排除したり、国内業者を保護する動きがあり、難しい問題になっています。https://t.co/dftA4Jb34l
— 町山智浩 (@TomoMachi) 2017年8月9日
http://jp.ign.com/netflix/16193/feature/netflix
http://www.webdice.jp/dice/detail/5400/