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松尾潔 R&B定番曲解説 Soul II Soul『Back To Life』

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松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でR&Bの定番曲、ソウル・II・ソウルの『Back To Life』を紹介。様々なカバーバージョンを聞き比べながら解説していました。



(松尾潔)続いては、いまなら間に合うスタンダードのコーナーです。2010年3月31日に始まった『松尾潔のメロウな夜』。この番組は、メロウをキーワードにして、僕の大好きなR&Bを中心に大人のための音楽をお届けしています。さて、R&Bの世界でも、ジャズやロックと同じように、スタンダードと呼びうる、時代を越えて歌い継がれてきた名曲は少なくありません。そこでこのコーナーでは、R&Bがソウル・ミュージックと呼ばれていた時代から現在に至るまでのタイムレスな名曲を厳選し、様々なバージョンを聞き比べながら、スタンダードナンバーが形成された過程を僕がわかりやすくご説明します。

第24回目……僕、いまサラッと言っていますけども、23回目っていうのは昨年10月3日のこのコーナーの放送で取り上げた曲はオージェイズ、サード・ワールド、そしてヘビー・D&ザ・ボーイズの『Now That We Found Love』だったそうです。

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いまなら間に合うスタンダード『Now That We Found Love』

松尾潔 R&B定番曲解説 The O’Jays『Now That We Found Love』
松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でR&Bの定番曲、The O'Jays『Now That We Found Love』を紹介。様々なカバーバージョンを聞き比べなが...

ねえ。みなさん、もうこのコーナー、消えてしまったんじゃないか? とお思いになったかと思いますが、ずっと気にかけていたんですよ。このコーナーが好きな方がたくさんいらっしゃることも知っていますんで、復活いたしました。第24回目。ソウル・II・ソウルが1989年に発表した名曲『Back To Life』について探っています。まあ、奇しくもヘビー・D&ザ・ボーイズの『Now That We Found Love』あたりと同じ時代の曲となりました。いま、バックで流れておりますのはまさにそのヘビー・Dのこれはソロ名義の曲ですけども、『Big Daddy』という曲ですね。『Big Daddy』のリミックスバージョン。この曲はソウル・II・ソウルの『Back To Life』が全面的に引用された、そんなリミックスとなっておりました。



ヘビー・D&ザ・ボーイズですとか、ボビー・ブラウンですとか、もちろんガイ。こういった人たちはテディー・ライリーという人が当時サウンドを一手に手がけておりまして。まあ、「一手に」ではないか。でもほとんどの有名な曲っていうのはテディー・ライリーの手によるものだったのですが、テディー・ライリーが手がけたサウンドっていうのはね、「ニュージャックスウィング」って言ったんですね。で、さっきワシントンDC発祥のゴーゴーというのがニュージャックスウィングの重要な柱になっているというお話をしましたけども。ニューヨークを中心とするアメリカ東海岸のブラックミュージックがそういう盛り上がりを見せている時に、海を越えてロンドンで盛り上がっていたのがこのソウル・II・ソウル『Back To Life』ですとか、『Keep On Moving』とか。「グラウンド・ビート」と呼ばれていた作品群ですね。

このグラウンド・ビートっていうのはソウル・II・ソウルの中心人物でありますDJジャジー・Bがクリエイターという風に言われているんですが。そうですね。「長年の研究によりますと」って言うと大げさですけども、いろいろ聞き集めてきた話によりますと、ジャジー・Bはそのグラウンド・ビートのアイコンであって。もちろん、ジャジー・Bの脳内で鳴り響くサウンドがそのグラウンド・ビートの元になっていることは間違いないんですが。実際にそのサウンドを世に出すためには、たとえばサイモン・ロウっていう人であったり、屋敷豪太さん。ロンドン在住時代ですよ。シンプリー・レッドに加入する以前の屋敷豪太さん。こういった人たち複数で作り上げていったのがこのグラウンド・ビートのムーブメントだったっていう風に言われています。

で、これ、いま僕はビートの面のお話をしていますけども。プラス、特徴的なストリングス……グラウンド・ビートの音の特徴のひとつでもあります細かい刻みのストリングス。こういったもの、いろいろあってのグラウンド・ビートっていうムーブメントだったんで、旗振り役も必要だったということなんでしょうね。それが、大変人間的な魅力に富んだジャジー・BというDJだったんじゃないかなという風に思いますが。今日、なぜそれをご紹介するかといいますと、元デスティニーズ・チャイルドのラトーヤっていう人がいるんですね。ラトーヤっていうのはデスティニーズ・チャイルドの2枚目のアルバム『Writings On The Wall』っていう。そこまでに参加していた初期のメンバーなんですが。

そのラトーヤ。現在ではソロシンガー、そして女優として活動をしている人です。今年はディオンヌ・ワーウィックの伝記テレビ映画。その主演でディオンヌ役を務めることも決まっていますけども、そのラトーヤ・ラケットの昨年の暮れに出たシングルがまさにこの『Back To Life』を下敷きにしたナンバーなんですね。じゃあまずはこちらからお聞きいただきたいと思います。そして、ソウル・II・ソウルのオリジナルとつなげてみましょう。ラケット・ラケットで『Back 2 Life』。そしてソウル・II・ソウルで『Back To Life』。

LeToya Luckett『Back 2 Life』


Soul II Soul『Back To Life』



いやー、気持ちいいですね。こうやっていま、スタジオで大音量で聞いていますと本当に気持ちいいものでございます。ラトーヤ・ラケットの『Back 2 Life』に続きましては、その元ネタでございます。ソウル・II・ソウル『Back To Life』。もう貫禄の1曲でした。人によってはこの曲を聞くと、かの松田優作さんの怪演で知られます『ブラック・レイン』を思い出すという方もいらっしゃるかもしれませんね。あの映画の中でもこれ、大変印象的なシーンで使われておりました。

これ、「Back To Life, Back To Reality」っていう風にセットでサビになると出てくる文言なので、『Back To Reality』っていうタイトルだと勘違いしてそのまま強く記憶している人もたくさんいるんですよね。いま、バックで流れておりますインテリジェント・フッドラムというラッパーの曲のタイトルが『Back To Reality』っていうんですけども。



これなんかも『Back To Life』っていうタイトルをつけたつもりで『Back To Reality』になっているんじゃないか?っていう疑いが濃厚でございます。で、このインテリジェント・フッドラムのプロデュースを手がけていますのが、ヘビー・Dのプロデュースをすることも多かったマーリー・マールっていう、もう本当にヒップホップの世界でのセレブDJの先駆けのような人で。本人名義の作品もたくさん出している人ですね。で、そのマーリー・マールはこのインテリジェント・フッドラムという自分のプロデュース作の中でソウル・II・ソウルの『Back To Life』を丸ごと引用した『Back To Reality』っていう曲をモノにしているという話なんですが、実はこのマーリー・マールっていう人は87、8年ぐらいからこのビートっていうのは東京でもクラブシーンなんかに入ってきていたわけなんですが。

ほぼ、それと時を同じくして、アメリカのラッパーのビズ・マーキーという人が同じようなビートのものを世に出していたんですね。で、そのプロデュースを手がけていたのがマーリー・マールなんですが。中でも、そのビズ・マーキーの『Goin’ Off』っていうアルバムのオープニングを飾っておりました『Pickin Boogers』っていう、くだらなくも素晴らしいヒップホップビューティーにあふれた曲……回りくどい言い方をしているな。本当にマヌケなヒップホップとして美しい形をしている曲の中でバックに流れていたビートが、ほぼこのロンドン産のグラウンド・ビートと近いビートの譜割りですね。



だからまあ、なんでこんなビートができたのか?っていうのは当時いろんな論争になっていましたけども。「ロンドンという土地が生み出したのだ」というのはひとつの答えかもしれないけれど、さっきもお話しましたように日本人の屋敷豪太さんが深く関わっていたことも知られていますし。それと同じようなものがニューヨークでも生まれていたということで、もっともその中で普遍的な美しいシェイプをしていたのがジャジー・Bが掲げるグラウンド・ビートだったということじゃないでしょうかね。

ちなみに、さっきソウル・II・ソウルの『Back To Life』をかける前に、今回の4ヶ月ぶりにこのコーナーをやるきっかけとなりましたラトーヤのソロシングル『Back 2 Life』。これを聞いて、「ああ、ラトーヤもいい感じに熟してきたな」。あと、「改めてソウル・II・ソウルの『Back To Life』っていい曲だったな」って思って。で、「ラトーヤってこのソウル・II・ソウルが世に出てきた時はいくつぐらいだったんだろう?」って思って、改めてラトーヤのバイオグラフィーを調べてみると、彼女は81年生まれですね。つまり、デスティニーズ・チャイルドのグループの仲間でありますビヨンセとかケリー・ローランド。こういった人たちと同じ81年生まれでございまして。まあ日本風に言うならば、今年酉年の年女でございますね。「年女か。酉年か」って思って。酉年のラトーヤ・ラケットの歌声を聞きながら、1989年に思いを馳せてみたわけですが……。

そんな『Back To Life』。実は、このラトーヤの昨年の暮れのシングルを聞いて、「うーん、いまグラウンド・ビートっていい寝かせ時で聞き頃なのかな? いいビンテージ感が出ているな」なんて思ったんですが。実は去年、この『Back To Life』について思いを馳せることっていうのがもう1回、ありましたね。それは何か? といいますと、ジョージ・マイケルでございますね。ジョージ・マイケル、昨年のクリスマスの時期に亡くなりまして。僕の中では、「ジョージ・マイケル、ジェームズ・ブラウンと同じ時期に亡くなったりするんだな」なんて思いましたが。

もちろん、R&B好きの大半がそうであるように、僕もジョージ・マイケル、ワム!大好きでしたから、彼の曲の中で思い出深いものであるとか。まあR&B的にかっこいいものはこれだななんて曲はいろいろあるんですが、僕の好きなジョージ・マイケルのレパートリーの中では決してど真ん中にあるわけじゃないけれども、ソウル・II・ソウルとの接点と言えば、もちろんこれだよなっていう1曲がございまして。『Freedom』っていう曲ですね。『Freedom』っていう曲はジョージ・マイケルがワム!時代に『Freedom』って歌っていますが、ソロになってからの『Freedom』でございますね。『Freedom! 90』って言われることも多い『Freedom』。そのリミックスでございまして。『Back To Reality Mix』という……またここでも来ましたよ。『Back To Life』ではなく、『Back To Reality Mix』。

それがね、ジョージ・マイケル自身がイギリスの人ですから。当然ソウル・II・ソウルの動きっていうのは気にしていたでしょうし。まあ、彼流にうまく取り込んで作った曲がこちらでございます。聞いてください。ジョージ・マイケル『Freedom Back To Reality Mix』。

George Michael『Freedom 90 (Back To Reality Mix)』



4ヶ月ぶりにお届けしましたいまなら間に合うスタンダード。第24回。今日はソウル・II・ソウルの89年の世界的ヒット『Back To Life』をご紹介いたしました。最後に聞いていただきましたのはジョージ・マイケルの『Freedom Back To Reality Mix』でございました。で、この『Back To Life』っていうのはいまのこの時節ネタにもなりますけども、グラミー賞のベストR&Bグループ部門を受賞いたしました。もうこの1曲でリーダー、DJジャジー・Bはイギリス人として獲得できるおよそ全ての賞賛っていうものを手に入れまして。こういう人がいたから、このムーブメント。この曲だけじゃなくて、このムーブメントが世界に広まったんだなという。音楽と人のあり方を教えてくれる、そんなソウル・II・ソウル、そしてジャジー・Bのお話をいたしました。

<書き起こしおわり>
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