町山智浩 ホラー映画『ドント・ブリーズ』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、アメリカで記録的な大ヒットとなったホラー映画『ドント・ブリーズ』を紹介していました。

#Regram @buckienaked ・・・ #DontBreathe will keep you on the edge of your seat and screaming at the screen?? #Detroit

Don't Breatheさん(@dontbreathemovie)が投稿した写真 –



(町山智浩)はい。ということで今日の本題なんですが、今日はアメリカでこの夏に大大大ヒットした映画と、韓国で大大大ヒットした映画を紹介したいんですが。どっちもホラー映画だったんですね。

(山里亮太)うわー、ホラーかー……

(町山智浩)ホラーなんですよ。苦手?

(赤江珠緒)苦手!

(山里亮太)怖いの、苦手なんですよね。

(町山智浩)怖いの、苦手? あの今回、どっちも強烈な映画なんですよ。で、どっちもね、血が出たりとかそういうのじゃなくて、もっと精神的にガツンと来るやつなんですが。1本の方はアメリカで大ヒットした『ドント・ブリーズ(Don’t Breathe)』っていう映画なんですね。これは制作費10億円という、アメリカでは低予算の額で作られて、その12倍の120億をいままでに稼いでいるんです。

(赤江珠緒)おおっ、ヒットしましたね。

低予算ホラー映画が大ヒット

(町山智浩)はい。大大大ヒットなんですけど、これ、『ドント・ブリーズ』っていうのは登場人物が4人ぐらいしかいないんですよ。で、セットはひとつのボロ屋なんですね。だからもうめちゃくちゃ安いっていう映画なんですが、面白いんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)これね、主役は泥棒なんです。若者の泥棒3人組なんですが。デトロイトに住んでいて……デトロイトっていうのは前にも話したんですが、とにかく廃墟になっているんですね。街が広がりすぎて、街が自動車産業とともに崩壊したんで、警察がいなくなっちゃって。要するに、広い街に警察がちょこっとしかいないんで、犯罪し放題なんですよ。で、みんな怖いから出て行っちゃっているんですけども。火事が起きても消しに来ないんでね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)ただ、そこに昔から住んでいるおじいさんがいて。ちょうど、だから『グラン・トリノ』っていう映画に出てくるクリント・イーストウッドがそうでしたね。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)昔からデトロイトに住んでいて、自動車工場で働いている人なんだけど、周りがどんどん引っ越していっても住み続けているじいさんがでてくるんですね。この映画にも。で、そのじいさんが娘さんの交通事故で賠償金をもらって、数千万円を持っているということがわかるんですよ。で、銀行に預けていないらしい。あの家のどこかにある。で、それを3人組が盗みに入るんです。ところが、入ってみたらそのじいさんは……これ、『アバター』っていう映画を覚えていますか?

(山里亮太)ああ、覚えています。

(町山智浩)あの中で、ものすごい悪い軍人がいたでしょう? 異星人の星を侵略しようとする筋肉モリモリのじいさん。ものすごいタカ派の。そのじいさんがこの家に住んでいるおじいさんだったんですよ。

(赤江珠緒)ええっ? あのちょっとプーチンさんみたいな?(笑)。

(町山智浩)そう。彼は全盲。目が全く見えないんですね。だから、大丈夫だろう。泥棒をチャチャッとしてしまえばいいんだって入ってみたんですが、そのじいさんはなんと、元海兵隊員の殺人マシーンだったんですよ。

(赤江珠緒)ああーっ!

(町山智浩)で、その3人の泥棒がその部屋に入るんですけど、そのじいさんは素手で何百人も殺せるようなやつだったんですね。で、しかも部屋の中の電気を消されちゃうんですよ。で、彼は目が見えないから、その方が有利なんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうかそうか。

(町山智浩)逆にそこに入った泥棒たちは全く見えない状態になるんですよ。で、ちょっとした音でも匂いでも嗅ぎつけて、そのじいさんが殺しに来るんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そういう怖さか!

元のアイデアは『暗くなるまで待って』

(町山智浩)そういう怖さなんですよ。で、これですね、元のアイデアっていうのは昔、『暗くなるまで待って』っていう映画があったんですよ。それはオードリー・ヘップバーンが主人公で、目が見えない人妻なんですね。で、1人でいるところに殺し屋が入ってくるっていう話なんですよ。で、どうやって目が見えないオードリー・ヘップバーンはその殺し屋を撃退するか?っていうのが『暗くなるまで待って』だったんですけど、この『ドント・ブリーズ』はオードリー・ヘップバーンが筋肉モリモリの殺人マシーンだったっていう話です。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)主人公が泥棒側だったっていう話なんですね。

(赤江珠緒)よりによってそんなところに入っちゃったと。

(町山智浩)そうそうそう。もう地獄!っていう状況なんですけど。で、これね、監督はフェデ・アルバレスっていう人で。この人は昔ね、YouTubeで自分で自作したCGアニメーションで地球が宇宙人のロボットに侵略されるっていうのを1人で作って。それで注目されてハリウッドに来た人なんですね。



(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)だから、新海誠さんもそうだった。1人で全部CGでアニメーション『ほしのこえ』を作って、それでデビューした人なんですごくよく似ているんですよ。経歴が。ただこのフェデ・アルバレスさんはそれでハリウッドに呼べれて作った一作目が『死霊のはらわた』っていう有名なホラー映画のリメイクだったんですよ。で、それがグッチャングッチャンの血みどろの内容になっちゃったんですね。で、すごい評判が悪かったんですよ。

(山里亮太)へー。なんでなんだろう?

(町山智浩)これ、ただグチャグチャなだけじゃないかと。それで失敗したっていうことで、今回、一切の直接的な残酷描写や血糊の描写なしっていうことで。お化けも出さないと。それでどれぐらい怖がらせるか?っていうのをやってみたっていうのが今回の『ドント・ブリーズ』なんですよ。

(赤江珠緒)はー! そういうのがなしだけど、怖い。

(町山智浩)怖いんです。『ドント・ブリーズ』っていうのは「息をしちゃダメ」っていう意味なんですけど、息をした音を聞かれただけで殺しに来るんですよ。ジジイが。筋肉ジジイが殺しに来るんです(笑)。しかもね、この泥棒たち。「泥棒なんだから、いいじゃねえか」って思って見ていると、実はいい人たちなんですよ。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)これ、女の子は貧しいデトロイトの街から自分の幼い妹を連れて逃げ出すために必死で泥棒をやっているっていうことがわかってくるんです。で、それについて行く男の子もヘナチョコな写真があるんですけど。そちらに。すごく気の弱い、いい人で、この女の子が好きだからなんとか助けてやろうって思って泥棒に入るんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)泥棒の人たち、いい人たちなんです。これ。で、このジジイが実はものすごい凶悪なんですよ。

(赤江珠緒)あ、そうなんだ! 被害者と加害者が実は……

(町山智浩)逆転するんですよ。で、凶悪なだけじゃなくてね、変質者なんですよ、このジジイ。もうこれ以上は言えないですが、こっから先、地獄のようなおぞましいことになっていくんですが(笑)。それは『ドント・ブリーズ』っていうね、「うわっ、キモッ!」みたいなね。「超キモい!」みたいな映画になってくるんですけど。

(山里亮太)ええっ? だって血も使わないで、残酷描写もないっていうので、それが表現できるんですか?

(町山智浩)できるんですよ。想像し得るいちばん嫌なことが出てくるんで。後半は。まあ、気持ち悪いですけど。はい。

(赤江珠緒)でも、もう大ヒットしたわけですもんね。

(町山智浩)大大大ヒットですよ。アメリカの今年最大の、制作費に対する興行収入の率ですよね。儲け率です。それが『ドント・ブリーズ』。これ、年末に日本では公開される予定です。

(赤江珠緒)はい。

<書き起こしおわり>

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