町山智浩 望月三起也を追悼する

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で『ワイルド7』などで知られる漫画家の望月三起也先生を追悼。おすすめ作品などを紹介していました。



(町山智浩)あの、最近なんか誰々が亡くなったっていう話が本当に多くて。本当、申し訳無いんですが。僕が本当に大好きで大好きで大好きだった漫画家の先生がお亡くなりになったんで、ちょっとまずその話をさせてください。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。はい。

(町山智浩)4月3日、望月三起也先生が77才で亡くなったんですね。望月三起也先生の漫画ってなにか、ご存じですか?

(赤江珠緒)いやー、ちょっと拝見してなかったかな?

(町山智浩)この人、70年代に『ワイルド7』っていう漫画が大ヒットしまして。僕はもうそれが本当に好きだったんですね。僕の世代はみんな好きだったんですけど。これはどういう話かって言いますと、刑務所に入っているものすごい凶悪犯たちを警察官が集めて。彼らを警察の特別捜査官に任命するんですよ。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)それで、凶悪犯によって凶悪犯を退治させるというですね、毒には毒、悪には悪っていう話なんですね。その7人の凶悪犯で警察官になったやつらをワイルド7っていうんですよ。

(赤江珠緒)絵がありますけど、劇画な。

(町山智浩)これ、僕が本当に大好きでね。小学校6年生ぐらいの時にものすごくハマってですね。『ワルイド7』っていう漫画を書いてましたよ。僕。

(山里亮太)あ、ちょっとパロディーで?

(赤江珠緒)そうですか。

(町山智浩)授業中に。はい。

(赤江珠緒)これ、72年にテレビドラマ化って、ドラマにもなったんですね。

(町山智浩)テレビドラマ化もすごかったですよ。これ。まあ、強烈で。夜のゴールデンタイムの7時にやっていたんですけど。その頃、テレビって何でもありだったんで。毎回毎回、マシンガンで人が蜂の巣になるんですよ。

(赤江珠緒)はー。ええ、ええ。

(町山智浩)すごい内容でしたよ。これはいまでもDVDで見れるんで。画質が非常に悪いんですが。何本か見ると、いちばんすごい回はですね、いちばん初めに結婚式のシーンから始まって。ウェディングケーキを切るんですよ。花婿が。すると中からマシンガンを取り出して、列席している人を花嫁も含めて全部蜂の巣にするっていうシーンから始まるんですよ。

(赤江珠緒)えっ、ええーっ?

(町山智浩)花嫁衣装が血に染まるんですよ。それで。それがオープニングですよ。

(山里亮太)町山さん、青春を作った漫画を語る時って、だいたいそういうやつですよね?(笑)。

(町山智浩)(笑)。僕、でもそれ子供の時、小学校の時に見て、もうびっくりしましたよ。本当に。

(赤江珠緒)過激、過激!

(町山智浩)すごい内容なんで。望月三起也先生っていうのはね、絵が本当にかっこよかったんですよ。

(山里亮太)手元にあるけど、たしかにかっこいいです。

本当にかっこよかった望月三起也先生の絵

(町山智浩)この絵って、日本のいわゆる漫画のほとんど9割ぐらいと全然違う絵なんですよね。望月先生の絵は。日本の漫画家さんのほとんどがですね、手塚治虫さんから始まっている絵を書いているんですよ。っていうのは、だいたい目が大きいでしょ? で、頭が大きいじゃないですか。日本の漫画のキャラクターって。で、いまのアニメもそうですよね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、どんなにリアルなアニメでも、たいてい頭はある程度大きいですよ。目も大きいし。あれ、全部手塚治虫さんの絵から始まっている流れなんですね。

(赤江珠緒)はー、そっか。

(町山智浩)それこそ、いまのロリコン漫画とかの、まあ手塚治虫さんが植えつけたロリコン菌がずっと伝染している状態なんですね。

(赤江珠緒)だって『リボンの騎士』のさ、サファイアとかも目、ぱっちりですもんね。

(町山智浩)そう。頭はデカくて首は細いんですけど。望月三起也先生は全く違うんですね。絵の系統が。

(赤江珠緒)本当だ。

(町山智浩)この人はね、横浜とかあのへんの人なんですね。出身が。で、その頃、アメリカの進駐軍の兵隊さんが置いていったアメリカの男性向け雑誌がいっぱいあったんですよ。そのへんに。要するに、捨てていくわけですけど、それを売っているわけですね。古本屋で。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)その絵を元にして書いたのが、望月三起也先生の世界なんですよ。

(山里亮太)言われてみれば、タッチがね、たしかに。

(赤江珠緒)なんかね、いま、本当にそういうのはあまり見ない感じのタッチですもんね。

(町山智浩)そう。すごいアメリカンなんですよ。で、セクシーなんですけど。僕が特に『ワイルド7』でですね、ゲリラハンターのユキっていうヒロインがいてですね。その人、映画版だと深田恭子さんが演じていましたけども。

(山里亮太)あ、そんな最近に映画化されてるんだ。

(町山智浩)最近、映画化されてるんですけどもね。下着の上に直接ね、黒い革ツナギを着てるんですよ。

(赤江珠緒)うんうん……うん?

(町山智浩)エロいでしょ?

(赤江珠緒)直接? うん。

(町山智浩)僕、小学校の時にそれでガーンと来ましたけどね。はい。

(赤江珠緒)下着をつけずに革はちょっと……

(山里亮太)いやいや、そこのね、ムレるとかそういう話はいいんですよ。

(町山智浩)ムレるからとか、そういう話じゃないんですよ(笑)。リアルに考えない方がいいですけど。

(赤江珠緒)そうですか(笑)。

(町山智浩)いや、AVでね、女捜査官ものっていうジャンルがあるんですけど。それはみんな、『ワイルド7』から来ていると思いますけどね。まあ、それはいいんですが。はい。

(山里亮太)なぜ、いまAVの話が?

(町山智浩)ええとね、おすすめの望月三起也先生の漫画がひとつあるんで。それで、1冊しかないんで。『ワイルド7』だと何十巻もあるんで読むのが大変なんですけど。1冊だけ読んでほしい漫画があるんですよ。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)それはですね、『ジャパッシュ』っていうタイトルなんですけど。これはね、ジャパッシュっていうのはね、自警団組織なんですね。日向光っていう天才的なカリスマの美少年が自警団組織を作って。それで、治安維持とかをし始める話なんですね。

おすすめ作品『ジャパッシュ』



(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)で、非常にハンサムな人ばっかり集めて。しかも、制服をすごくおしゃれにして。で、人気が出てくるんですよ。実際に治安維持にも役に立って。で、政府から最終的には公式に警察や軍隊のようなものとして承認されるんです。そのジャパッシュっていう自警団が。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)でも、そこからそのリーダーの日向っていうのは、日本の政権の奪取の一歩だったっていう話なんですね。

(赤江珠緒)大人な話ですね!

(町山智浩)ものすごい政治的な話なんですよ。

(赤江珠緒)これ、週刊少年ジャンプに連載されていたんですね。

(町山智浩)少年ジャンプなんですけどね。で、すごい内容で。最終的に、日本を乗っ取るところまで行くんですけど、これはおそらく、村上龍先生の小説の『愛と幻想のファシズム』にものすごく影響を与えていると思いますね。

(赤江珠緒)読んだ読んだ! まさに。そのストーリーが本当に一緒です。

(町山智浩)はい。村上龍先生はね、『コインロッカー・ベイビーズ』も山上たつひこ先生の漫画の『光る風』に影響を受けているし、漫画に相当影響を受けている人ですね。あの人は。

(赤江珠緒)あ、そうなんですか。

(町山智浩)世代的な問題だと思いますが。この『ジャパッシュ』だけは恐ろしい話でね。いわゆるポピュリズムがファシズムに変わっていくものをね、本当に子供にもわかるように描いていて。傑作ですんで、ぜひ読んでいただきたいと思いますが。


(山里亮太)週刊少年ジャンプで。

(赤江珠緒)すごいね。表紙で、だってなんか国会が燃えている感じだもんな。たしかに、すごい。

<書き起こしおわり>

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