宇多丸『スターウォーズ フォースの覚醒』を絶賛する

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宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の映画評論コーナー中で、『スターウォーズ フォースの覚醒』を評論。絶賛していました。

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(宇多丸)さあ、ここから夜11時までは劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチジャワスことシネマンジャワス宇多丸がウキウキウォッチング。その監視結果を報告するという映画評論コーナーです。自分で言っていて、ちょっと悲しくなってきました。今夜扱う映画は、もちろんこの映画。『スターウォーズ フォースの覚醒』!

スターウォーズのこのテーマばっかりだと飽きるから、ちょっと変化をつけて。たまにはジェダイのテーマとかさ、あとやっぱ、イウォークのテーマとか。そういうのをかけてくださいよね。変化つけていきましょう。SF映画の金字塔。世界中で愛され続ける人気シリーズの新たな三部作。その第一章となる一作。通しではエピソード7となります。ジョン・ボイエガやデイジー・リドリーといった新キャストに加え、旧三部作の主演であるハリソン・フォード、キャリー・フィッシャーらも出演。監督は『スタートレック』シリーズなどのJ・J・エイブラムスということでございます。

リスナーのみなさんからの、『もうフォースの覚醒、見たよ』という。いち早くね。だってまだ公開1日しかたってないわけですからね。『いち早く見たよ』というリスナーのみなさま。日付けが短いのでどうなることかと思いましたが、メールの量、今年最多でございます!ありがとうございます!ドサーッ!ドバーッ!やったー!そりゃそうだー!ありがとう!ありがとう!まあ、そういう意味では、上映回が多くて見やすい状況だったっていうのは僕らにとってはありがたいことかもしれませんね。先ほど文句言って、すいやせーん!

2015年最多のメール量

メールの量、今年最多でございます。昨日の夜、公開されたことを考えると、ペースとしてはぶっちぎり。番組史上最多ということでございます。リスナーの感想は、およそ8割が褒め。1割ちょっとが批判的といった比率でございます。褒めの方は『こういうのが見たかった』『ちゃんと現代版のスターウォーズになっている』『1エンターテイメント作品として普通に面白い』『「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を超えて今年ナンバーワン』などの熱い声が並ぶ。一方、ちょっとダメだったという方。『今までのスターウォーズシリーズのような革新性がない』『ただ旧作ファンを喜ばせるだけ』『ご都合主義的なストーリー』といった批判の声もございます。

特徴として、今年からスターウォーズを見始めたのであろうというような、20代のリスナーからの投稿が多かったということでございます。このタイミングでね、見てハマったという人もちょいちょい聞きますけどね。代表的なところをご紹介しましょう。ねえ。こんだけもらっているからね。ちょっとね、申し訳ないですけどね。

(リスナー投稿メール省略)

はい。ということでみなさん、本当にありがとうございました。まあ、祭りは祭りですね。行ってみましょう。『スターウォーズ フォースの覚醒』、私も3度、見て参りました。字幕2Dと字幕3Dで2回、計3回見てまいりました。明日もIMAX 3D、行きますが。3D、結構いいです。3D、結構おすすめです。すごく効果的な使われ方してる場面が何箇所もあったし。非常に見やすい使い方をしていたと思います。

ということでまあ、ネタバレはできるだけしない感じでこのムービーウォッチメンは行こうと思います。語り口は無数にあるしですね、いろんなことが言いたすぎてどんどんわけがわからなくなっていく可能性がありますので。まずはちょっと、いちばんシンプルな私の、宇多丸の結論から言わせていただければ・・・大満足です!大満足!

宇多丸 大満足

スターウォーズのエピソード7として、ほぼ申し分ないというか。事前の期待値を余裕で上回る出来だったのが僕はもう本当にうれしいし、本当に僕はいま、ホッとしています。はい。という感じですね。あと、スターウォーズの正史。カノンとしてバッチリであるということに比べれば比較的地味な話ですが。間違いなくJ・J・エイブラムス、ぶっちぎり最高傑作でしょうね。これはもう、間違いないと思いますね。

今回の『フォースの覚醒』、何が素晴らしいってですね、これも最初にシンプルに言っておきますけども。ぶっちゃけね、非常にそれはやっぱり難しいのかな?と。特に、我々のようなリアルタイムうるさ型ファンには思われていた、次世代へのバトンタッチっていうのが俺はね、これ以上ないほど見事に成功しているということです。だから、本当に素晴らしいと思いました。

つまり、新たなサーガの始まりとして、果たすべき役割を120%果たしたという風に僕は思っています。とにかくね、新しい主人公キャラクターたちがですね、ことごとく魅力的でした。本当に。いきなり大好きになっちゃう感じです。はい。自分でもまさか、こんな風なことを言うとは予想してなかったんですけど。俺、いまはもうね、これからは彼らの物語こそ見たい!っていう風に心底思っています。本当に。まさかこんなことを言うとは思わなかったんだけど。

で、まあ要は今回の『フォースの覚醒』、既に伝説と化した過去。その空白を若い世代が自力で埋め、受け継いでいく物語と要約できると思うんですが。それはまさしく、この『フォースの覚醒』という作品自体の成り立ち、あり方そのものとも一致しているなという風に思います。まあ、事前の情報からもビンビン伝わってきたのは、ざっくり言ってプリクエル。1、2、3ですね。みたいなことにはなりませんよ!っていうことをしつこく、事前のあれでもガンガンアピールしてきている。

要するに、オリジナル三部作。エピソード4、5、6の精神に立ち返った世界観、作り方にしますよ!ということをアピールしていると。間違いなく、J・J・エイブラムス自身。今回、監督だけでなく、脚本もかかわっていますし。あと、新サーガ。これから始まるスターウォーズのスピンオフとかも含めて、全体の指揮も任されているJ・J・エイブラムス自身が、まあそう思っているんでしょう。『プリクエルはね、ちょっとね・・・やっぱりスターウォーズはオリジナル三部作だよね』っていう風に思っている方なんでしょう。

たとえばCGを使いすぎず。前なんかね、セットも作らないでグリーンバックで演技させられて。ブーたれて。俳優なんかが『もう、やってられっか!』なんてことを言ってましたけど。そうじゃなくて、今回はできるだけセットや、あと特殊メイクとか。そういう造形物とか実際に作って撮りますよとか。あと、脚本にね、『帝国の逆襲』のローレンス・カスダンを呼んできましたよとか。オリジナル・キャストを集めてきましたよとか。とにかく、エピソード4、5、6との直接的なつながりを強調した作りになっていますよというのは事前にビンビン伝わってきたわけです。

でも、そこからさらにですね、今回の『フォースの覚醒』は、要はですね、最初のスターウォーズを作る時にルーカスとかスタッフたちがなにを考え、目指していたのか?っていう最初のビジョン。1作目の『新たなる希望』が出てくる、それを作っている時のビジョンっていうところまで立ち返ってアイデアを練っているというところが、また偉いなという風に僕は思いました。

例えばですね、今回、女の子が主人公なんですけどね。レイという女性が主人公なんだけど。まあ、たとえばルークが初期のある段階では少女キャラだったというのは、メイキングとかにも書いてあることですし。そういうのとかですね、あと、デス・スター。ジョージ・ルーカスが・・・言わずと知れたスターウォーズを創った人ですけども。ジョージ・ルーカスが一作目のデススター攻略シーンの参考にした映画のひとつとしていつも挙げている『暁の出撃』というね、映画があるんですけど。今回はですね、湖の上スレスレをブーン!と飛ぶ攻撃機という。まさに『暁の出撃』そのまんまの絵面っていうのでもう1回引用し直していたりとかですね。

あと、まあ今回、でっかい惑星のね、デス・スターが本当、まるごと惑星になっちゃったみたいな巨大な攻撃基地。スターキラーというのが出てきますけども。まあ、スターキラーっていう名称はご存知の方も多い通り、まあルーク・スカイウォーカー。スカイウォーカーになる前のルークの姓ですよね。ルーク・スターキラーだったりとか。あとですね、いろんな所でも指摘されてますけども、新しいXウィングのデザインであるとか。あと、今度の新しいドロイド。BB-8っていうデザインがラルフ・マクォーリーという、スターウォーズの革新性のかなりの部分になっている貢献者であるラルフ・マクォーリーの初期デザインスケッチに非常に近い感じだとか。

たとえば、今回も中盤に出てくる、シールドとトンファーみたいな打撃系の武器を持ったストーム・トルーパー、出てきますけど。あれも、ストーム・トルーパーの初期デザイン。ライトセーバーとシールドを持っていた初期のイメージを思わせるようなものだったり。などなど、要は最初のスターウォーズができる前に温めていたアイデアっていうところまで立ち返って、アイデアを練りなおしていたりとか。まあ、プラスしてですね、小説版シリーズの要素っていうのもちょいちょいとミックスされつつ・・・というのが今回の『フォースの覚醒』なんですけど。

とにかくですね、その新たなサーガっていうのを始めるにあたって、今回の『フォースの覚醒』の作り手たち、J・J・エイブラムスをはじめ、そのスタッフたちがなんせ偉いなと僕が思うのは、表面的に前の作品にあったあれっていうのを繰り返す。要するに、単に懐古的な面白さ。僕らが『ああ、あれはあれだ、ウヒャヒャヒャヒャ』って。それだって十分面白いんだけど。僕らは喜ぶけど。単にそういう懐古的な面白さっていうところにとどまらずに、その本質としてのスターウォーズらしさ。

スターウォーズの良さの本質みたいなところを継承するためには何をすべきか?っていうところまで立ち返ってちゃんと考えてるな!っていう感じがするから、超偉い!っていう風に思うわけですね。で、その結果、物語的なバランスはまさしく一作目。『エピソード4 新たなる希望』と、その次の『帝国の逆襲』。この2つを合わせたような、物語的なバランスにまさしくなっているんですけど。同時にですね最初に言ったように、要は新しいキャラクターの新しさっていうのが、要は『前で言うとハン・ソロにあたるよね』とか『前で言うとルークにあたるよね』っていうような感じじゃないんですよね。

魅力的な新キャラクターたち

前のキャラとぜんぜん違うんですよ。今回の新しいキャラクター。ぜんぜん新しいキャラクターと新しい物語を創造、クリエイトすることに成功していると。つまり、いや、ものすごく真っ当な、クリエイティブな手順を踏んだ、真っ当なクリエイティブ姿勢の勝利っていう風に僕は今回、思いますけどね。はい。ということだと思います。まずね、今回なにが違うって、ド頭のところ。上映されるところですけども、20世紀フォックスの『♪♪♪♪(20世紀フォックスのファンファーレ)』『デーン!』のこの、最初のファンファーレがないと、いきなり何も無しで始まっちゃう感がこんなに強まっちゃうか!?って。



僕は正直、仕方ないことだと重々承知しつつ、20世紀フォックスのファンファーレがない件が未だにちょっと違和感が拭えないでいたりするのも正直、あるんですけど。で、まあそこから恒例のね、さっき言いましたけど、この間なにがあったか?説明ロールがバーン!って。で、今回本当ね、ちゃんと読んでください。みなさん。この説明ロール、超大事です。なんでか?っていうと、1行目から、『えええーっ!?』っていうことが書いてありますから。はい。まあ具体的には言いませんけど。

まあ、ここまでしないとやっぱり一応完全ハッピーエンドだったはずのエピソード6から仕切りなおすのは無理だったっていうことだと思うんですけどね。えええーっ!?ってことが1行目から出てくる。で、そのロールが終わって。で、さらにまたスターウォーズのお約束。ロールが巻き終わった、上がりきったところでカメラがパンダウン。下におりると、スター・デストロイヤー。巨大な宇宙船が登場するというお約束なんですけど。今回は、まさかに角度から!スター・デストロイヤーが登場する。

これも、たしかに意表はついているんだけど。これ、大事なのは巨大感の表現という本質は外してないから、出方としては意表をつく新しさなんだけど、単に奇をてらったんじゃなくて、『あっ、これもあり!』っていう感じがするという。で、今回ね、ある意味全体がこのバランスだったりします。つまり、『本質を外していないから、新しいことをしても大丈夫』っていうバランスになっているんだと思いますね。はい。

で、続くオープニングシーン。反乱軍。今回で言えばレジスタンスの秘密情報を託されたドロイドが砂漠に逃げる。で、帝国軍。今回だとファースト・オーダーっていう軍団がそれを追うために主人公の1人を拉致して尋問するっていうのは完全に『エピソード4 新たなる希望』そのまんまなお話の構造なんですけど。同時に、さっきも、オープニングでも言いましたけど、ナイトシーンで始まる。結構ハードなナイトシーンで始まるとか。あと、赤い血。これ、たぶんスターウォーズで露骨に赤い血って出たの初めてだと思いますけどね。人間の赤い血。

人間的ストーム・トルーパー。これが後に主人公の1人、フィンになっていくわけですけど。あと、レーザー銃から発射された光線を止めるっていう新しいフォース表現とかですね。やっていることは完全に新しいモード。要するに物語はもう、昔のままの構造を使っているんだけど、表現が新しくなっているっていうことだったりとか。で、その主人公、ポー・ダメロンとフィンのエピソードから、マスクつながりでもう1人の主人公レイのエピソードへシーンがジャンプするその編集のスマートさ、クレバーさとかですね。も、すごいいいなと思いましたし。

で、そこから実際のところですね、今回の『フォースの覚醒』という映画1本では正直、素性というか何者なのか?っていうのは全く明らかにならない女主人公レイっていうのがいるんですけど。なんだけど、そのレイに、たとえば住まいにいろんなものが置いてあるんですけど。ポッと一瞬映る、なんか反乱軍のパイロット風の手作り人形みたいなのがあって。で、おそらく長年孤独に暮らしているだろうなというのを示す、壁を削る、壁にある日数の印。

そして、飛び立つ宇宙船をこう見つめる眼差し。おそらく外の世界への思いがあるんだろうという眼差し。そして、極めつけは反乱軍のヘルメットをかぶってっていう。という、この一連の場面。彼女の登場シーン。セリフなしで、演出だけで、一気にその境遇っていうのにしっかり観客を感情移入させてしまう。これ、しっかりした演出です。上手いな!っていう風に思ったりしましたけどね。で、なにしろこの演じているデイジー・リドリーさん。ほぼ現状で無名だったと思いますけど、非常にいいです!この女優さん。

まあ、凛としてもいるし、かわいいところも見えたりとか。弱さもちょっと見えたりもするし。なによりも、主人公!っていう顔ですよね。主人公の顔をしている。あと、身体能力も素晴らしくて。本当に、デイジー・リドリー力でかなり魅力を増している作品だとは間違いなく思いますね。あと、新ドロイドのBB-8。まあ、非常にきゃわいいわけです。かなり擬人化強めな演技のさせ方をして、ちょっとやりすぎかな?っていうぐらい演技させているんだけど。

でも、要するに構成している要素の少なさからしたら、このぐらいの演出で見せているということ自体がむしろちょうどいいっていうか。かなり上手いんだと思います。だって丸が2つくっついているだけなんだからね。なのに、『あれ?困っているな』とか、『あれ?怒っているな』とかわかるっていうね。で、このいわゆるロボット。ドロイドのBB-8と女主人公レイのやり取り。要は、人間語以外との日常会話。わかります?『ウェンウェンウェン・・・』って。ロボットとか異星人とか。『○※△□※・・・』『ああ、すおね。ナントカカントカね』『※○△□※・・・』『ああ、そうそうそう』みたいな。

この、人間語以外との日常的会話がそこにあって、観客にいろんな情報が伝わっていくっていう感じが、さっき言った、本質としてのスターウォーズらしさのひとつだったなっていうことを改めてここのやり取りで思ったりとかね。あとはですね、ストーム・トルーパーFN2187こと、ジョン・ボイエガ演じるフィンが、最初、予告で見た時は『なんだ、こいつ?お前、誰?』って思いましたけど。いや!これが思いのほか、やっぱり良くてですね。人気キャラになるんじゃないですか?フィンは。

というのは、特にこの番組、聞いてらっしゃるような方だったら大好きなタイプのキャラだと思うんですね。つまり、ボンクラ男なんですよ。で、こんだけボンクラ男っていうかボンクラ青年って、結構スターウォーズサーガの中で初めてじゃないかな?ぐらいに思いますけどね。ジョン・ボイエガ。『アタック・ザ・ブロック』という出世作で演じてるのがそもそもボンクラっていうか、普通のストリートにいる少年が、図らずも英雄になっていくという話なので。まあ、ジョン・ボイエガ、非常にはまり役なんじゃないでしょうかね?

で、彼演じるフィンとですね、オスカー・アイザック演じるポー・ダメロンが出会ってから、そこから2人が、それまで知らない者同士だったんだけど、会話があって、掛け合いがあるわけですね。この2人の掛け合いだけで、もう一発で、『ああ、こいつらはいいやつだ』。また一気に感情移入させられちゃうというですね。このあたりですね、たぶん脚本に読んできたローレンス・カスダン力なのかな?みたいに思いますけどね。全体にやっぱり会話、気の利いた掛け合いのテンポの良さであるとか、笑いのセンスであるとかは非常に上手くはまっていて。会話そのものがすごく心地よくて、登場人物をそれで好きに一気になってしまう。

ただ、その笑いのセンスもですね、今回のフィンのそれは特に、ジョン・ボイエガ。現代の男の子ですよ。現代っ子のそれは、笑い感がちょっとそこは今っぽくて。それも新しいものを足している感じで、僕はすごく好ましく思ったりしましたね。あの、『なんだよ?鼻でこうやってやるの、やめてくんない?』みたいな。あれ、すごいフィンならではっていう感じで。あと、あれですね。ファズマっていうね、ストーム・トルーパーの隊長に向かって、『I’m in charge!』って。要するに彼女の部下だったから。

『I’m in charge!(俺が命令するぞ!)I’m in charge!Phazma, I’m in charge!』。あのくだりの爆笑のくだりとか、もう最高。もう、ここだけでフィンが本当に好きになっちゃうっていう感じだと思います。これもね、要はエピソード4。最初の一作目のスターウォーズの魅力のひとつっていうのはね、無名の若者たちのアンサンブルが生み出すみずみずしさ。要するに、青春映画としての魅力っていうのも、実はそのスターウォーズの魅力の本質のひとつだったわけですよ。エピソード4は、特に。

だからその本質をしっかり継承している。今回のキャストと、掛け合いが織りなすアンサンブルっていうのは。しかもそこからさらにですね、若手でも演技力がすごいある人たちをちゃんと揃えているっていうところが、エピソード4よりさらにちょっと進歩しているところだと思っていて。たとえばですね、主人公レイと今回の悪役というか、シスじゃないんですけど。赤いライトセーバーを持っている、アダム・ドライバー演じる悪役カイロ・レンというのが・・・

まあ、カイロ・レンっていうのこのキャラクターのあまりにも、言います。ここはちょっとネタバレかもしれないですけど、言います。あまりにも中2的な、『中2的』としか言いようのないキャラ造形には、まあ好き嫌い分かれるところはあるかな?とも思いますけどね。あと、僕、正直あのデザインがあんまり好きじゃないんですよね。いまだにちょっと好きになれないところがあるんだけど。ただ、このカイロ・レンというキャラクター、ちょっと話がズレますけど。照明の色の当て方によって彼の中の複雑な心理の揺れみたいなのが表現されていたりして。すごく味わい深いキャラクターなのは間違いないと思うんですけど。

とにかくこのレイとカイロ・レンという悪役キャラクターが対峙するシーンで、要するにお互いが実はフォースの使い手であるっていうことをカイロ・レン側も認識するという、対峙する場面とかですね。レイがいわゆるジェダイトリック。要するに、言葉を・・・『手錠を外せ』『ああ、手錠を外す』ってこう、やってしまうというジェダイトリックを試みるシーン。ちなみにこのジェダイトリックを試みられるストーム・トルーパーはダニエル・クレイグという説がありますけどね。はい。

ここなんかも、要するにVFXとか使ってないわけだから、ただ単に演技力ですよね。演技力だけあってこそということなんで、そういう見せ方がある。つまり、役者の演技で何かを語っていく。そういう演出の仕方っていうのは、ジョージ・ルーカスが少なくともエピソード4から先はぜんぜんできなくなっちゃったことじゃないですか。つまり、ここでもですね、要はルーカスのビジョンの本質っていうのは受け継ぎつつも、さらに、ルーカスができなかったこと。やってなかったことっていうところも目指そうという本作の姿勢がここにも出ているという。役者の使い方っていうのにも出ているっていう風に思います。

ハリソン・フォード史上ベスト

あと、演技と言えばですね、ハリソン・フォード!これ、本当に彼のキャリアの中でも今回、ベストアクトじゃないですか?っていうぐらい、もう、見違えるように活き活きとしてますね。いままでの何十年かの出演作。いままでがいかにやっぱりやる気がなかったか?っていうのがわかるね、本当に素晴らしいベストアクトを見せてくれていると思います。

あとですね、いわゆる画の見せ方。ショットの見せ方っていうのも奇をてらわずに非常にオーソドックスな見せ方。要は、今風のチャカチャカチャカチャカした編集とか、スピードチェンジとか。そういうのをあんまり使わずにですね、ひとつのショットを比較的長めに撮って、その中で最初のアクションから次のアクションへと、ひとつのショットの中でどんどん視点、動きが移行していくという。まあ、非常にキチンとした正統派の見せ方をしているという風に思います。

あと、実際にさっきも言った、CGにはできるだけ頼らず、実際のブツを撮る主義っていうのもちゃんと生きていて。たとえば、大掛かりなドカーン!というあれね。前回の『007』に続き、クリス・コーボールドさん、大活躍だと思いますね。実物大のタイ・ファイターがドーン!って沈むとか。ああいうのとかね、大爆発とかも非常に・・・僕は『スペクター』の大爆発の火薬量がどうだか知らないけど、今回の方がやっぱり見せ方が上手いのか、迫力があるように見えましたけどね。

あとですね、たとえば迫力っていう意味では、スターキラー。惑星ごと兵器にしてしまったスターキラーという惑星の巨大表現の的確さであるとかですね、そっから発射される惑星破壊ビーム。あれのその禍々しさっていうか。『うわっ、怖い!』っていう。これ、なんで『うわっ、怖い!』っていう風に思うか?っていうと、破壊される惑星の人々の視点を。要するに、エピソード4でデス・スターがね、惑星オルデランをドーン!って破壊しますけど。そん時は一瞬で、外側から見た視点でやっているだけでしたけど。破壊される側の人間の視点を入れることで、もう、『うわっ、怖っ!』っていうのがちゃんと増している。こういうあたりもすごく、また良しな感じだと思います。

オリジナル三部作へのオマージュ

まあ、こんなことを言っているときりがないんですが。もちろん、オリジナル三部作のオマージュ要素っていうのも楽しいに決まっています。ただそれも、たしかにその目配せで終わっている、ディテールだけで終わっているところもあるけど。たとえばね、ハン・ソロとレイが初めて出会った時に、『えっ?あのハン・ソロ!?14パーセク?』『12だ』っていう風に返すという。要するに、俺はもっと早く飛んでるんだっていうね。『なに言ってるんだ?14?バカヤロー!』みたいなことをブツブツ言うハンのところ。

これはまあ、エピソード4の最初にモス・アズリーで交渉するところのセリフから来ているわけですけど。まあ要はここって、オマージュっていうか目配せであると同時に、ちゃんとハン・ソロっていうキャラクターの描写になっているじゃないですか。だからぜんぜんこれ、いいなと思ったりとかね。あとはまあ本当に、マニア視点で言えば、アクバー提督がまた出てきたりとか。あと、ナイン・ナン。『ジェダイの帰還』でランドと一緒にミレニアム・ファルコンに乗っていたあいつですよ。まだやってんだ、反乱軍で。がんばるな!っていうね。『ちょっと肌の色が黒くなってんぞ、歳とって』みたいな。

あと、ゴンクっていうドロイドがあちこちにいたりとか。そういうところで喜んだりする。ただ、そういうのはどっちかって言うと、なんて言うのかな?僕ら、旧ファンに対するケジメとしてやってくれているだけで。今回の本筋はやっぱり、全ては新キャラ。新しい物語の方をキチンと立てていればこそというか。それがあればこそ、旧三部作の要素の継承っていうのもグッと来る。そうじゃなければ、さっき言ったようにただの懐古趣味出。やっぱり旧三部作に戻るしかないのか?っていう風になるんだけど。今回は、そうなっていないからむちゃくちゃ偉いという風に思います。

あと、音楽の使い方。これもスタンスは一緒です。旧三部作の美メロな曲、いっぱいあるわけですよ。『愛のテーマ』とか、もちろんご存知の『ジェダイのテーマ』。いろいろあったりしますけど。それを乱用せずに、基本的には今回の新キャラ用に書き下ろされたジョン・ウィリアムズの楽曲を基本的には全編で使って。で、ここぞ!というところだけで、ごくごく短めに流すにとどめているわけです。で、全体にそういう風に旧作のメロを使うのを抑えに抑えているからこそ、大々的に流れる場所が2ヶ所あって。クライマックスの対決と、ラストのラストでドーン!で、『ウワーーーーッ!』ってこう、展開と一緒でものすごい効くわけですよ。『うわーっ!やっと会えたね!!』っていうのが効くわけですね。はい。

その、ラストのラストのラスト。エンドロール直前。空撮なんですよ。カメラが動いたまま、『テッテレッテッテレレッ♪』に終わるっていうのもシリーズで初めてだと思うんだけど。これも、物語がまだ動いている感っていうのが出ていて。今回に関してはぜんぜん有りだという風に思いました。ということでですね、そろそろまとめに行かないといけませんけども。本質っていうのは外さずに、本質を外していないからこそ、だからこそ、新しいことっていうのも大胆に挑戦できると。それに成功もしているという意味で、繰り返しになりますが、新サーガのスタートとして僕は申し分ない。ちゃんと針の穴を通したと思います。

誰からも、何を作ったって文句を言われるに違いない仕事なのに、『あれっ?結構文句ないかも?』ぐらいの。しかも、その文句のなさっていうのは旧三部作の目配せによって文句を言わせないんじゃなくて。新キャラを魅力的に立てる、新しい物語を立てるっていう方向でより良くなっているっていうところで。いや、参りました!っていう感じだと思います。僕、もうJ・J・エイブラムスの悪口を言うのは止めました。わかりませんけどね。これからもありますけどね。

実は今回の『フォースの覚醒』、単体の作品で見ると、事の真相みたいなものは、実はほぼ何も明かされてないんですよね。たとえば、カイロ・レンの、なんでそういうことになっちゃったの?っていう背景であるとか。もちろん、主人公レイの出自であるとかですね。実はなにひとつ明かされてない。ヒント程度しかない。なのに、やっぱりこれだけ新キャラに思い入れがきっちりつけれるような作りになっているというのは、本当に見事な手腕だという風に。参りましたと思います。

で、ですね、ここから初見というか、今回のエピソード7から。新しいキャラクターが魅力的な作品なので、たしかにここから見始めるのでも、新キャラを押すっていう範囲では問題ないと思います。ただ、やっぱりね、あまりにも見てないと。4、5、6を。少なくとも、4、5、6見てないとわからないところは多いと思います。たとえば、キャプテン・ファズマ。さっきも言いましたね。ストーム・トルーパーの大将、キャプテン・ファズマを『こいつ、どうします?』っていう時に、ハン・ソロがある提案をするという場面があるんですけど。それは、エピソード4を見ていないと、その具体的な絵面としても出てこないので。まったくわからないと思いますし。

あとはたとえば、ラストのラストで、ねえ。あれとかはだって、誰?ってことになっちゃったら、元も子もないわけじゃないですか。だからやっぱり、4、5、6ぐらいは見ておいた方がそりゃあもちろん、ぜったいにいいに決まっているとは思いますよ。横着しないで。いい大人なんだから、見てみればどうですか?4、5、6ぐらいは。ということでね、まだまだ本当に語りたいことはいっぱいあるんです。語り口は無限にあります。本当に。

例えば、ルークのライトセーバーっていうのが出てくるわけですけど。それは、『エピソード5 帝国の逆襲』でクラウド・シティで右手と一緒に切り落とされたはずのライトセーバー。出てくるわけですけど。それ、どこで拾ったの?問題。これね、『月刊私のスターウォーズ』でも大変議論になりましたね。『それ、どうしたの?』に対する、驚くべき回答の仕方の件であるとかですね(笑)。

あとは、高橋ヨシキさん。『月刊私のスターウォーズ』の中で予想されていた通り、酒場バンド。また出ましたね。モス・アズリーのね、あのバンドに続いて酒場バンド。あと、ジャバ・ザ・ハットの宮殿もありましたけど。それに続いて、酒場バンド、また出ましたけど。今度はなぜかレゲエだという件だとかですね。あと、『ザ・レイド』。インドネシアの素晴らしいアクション映画『ザ・レイド』のコンビが出てくるわけですよ。まあ、あれの無駄遣いの件であるとかですね。アクション的な美味しさがない。ハゲ散らかしているというキャラクター的な立ちしかないっていう。

あとは、たとえばクライマックスの対決。これ、本当に重箱の隅シリーズですけど。本当に。ちょっとね、カットが変わると、あれっ?っていう、そういうちょっとつなぎ目のところが1ヶ所、私、気づいちゃいましたみたいなところとかですね。まあ、いろいろ語りたいこと、話は尽きないんですが。まあ、あとはこの後ね、高橋ヨシキさん、町山智浩さんをお招きして、さらにいろんな深い話が出てくると思いますので。まずは、ネタバレ、たぶんほぼゼロ。大丈夫ですよね?してないですよね?してないね?してないね?

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『カイロ・レン 中2』とかは大丈夫?中2じゃないですよ。比喩ね。比喩ね。本当に中2だったらおかしいですよ。それは。そりゃおかしいでしょ?あの、まあとりあえず私のムービーウォッチメン。評はこんな感じだと思います。本当に大満足でして。本当に申し分ないあれだと思います。本当にJ・J・エイブラムス、ありがとう!本当に、本当に、本当にありがとう!本当にありがとう!ありがとーっ!ということでぜひこの作品、劇場で、リアルタイムでウォッチしてください!

<書き起こしおわり>