町山智浩 ジュリアン・ムーア主演映画『アリスのままで』を語る

シェアする

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。アカデミー賞主演女優賞候補作品、ジュリアン・ムーア主演映画『アリスのままで』を紹介していました。


(赤江珠緒)さあさあ、今日は?

(町山智浩)今日はですね、もう来週か。アカデミー賞なんですけども。それで、主演女優賞にノミネートされている2本を紹介します。この2本が戦っているという感じです。トップ争いをしていると。で、1本はですね、絶対本命と言われている映画で、日本語タイトル『アリスのままで』っていう映画がまず先にちょっと紹介しますけども。

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)これは、50才を過ぎた大学教授。女性がですね、若年性アルツハイマーで壊れていくという話なんですね。で、これはジュリアン・ムーアっていう女優さんが演じていて。彼女はもうアカデミー賞主演女優賞は絶対だろうっていう風に言われてるんですよ。

(赤江・山里)へー。

(町山智浩)で、すでにゴールデングローブとかですね、全米批評家協会賞とか俳優協会賞とかを独占してるんですよ、この人が。主演女優賞を。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、この女優さんは名女優で、昔から何度もアカデミー賞にノミネートされているんですけど、いままでとれなかったんですね。で、今度はもう絶対だろうって言われてるんですけど。これ、ストーリーはですね、大学教授で言語学を教えている教授なんですけれども。それがアリスさんっていう人で。まあ、旦那もいて、子どもも3人いて。3人とも成人しててですね、結構お金もあって幸せに暮らしてるんですけども。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)大学の授業中、言語学で言語を教えているのに、言語が出なくなってくるんですよ。言葉が。

(赤江・山里)はー・・・

(町山智浩)『あ、あれっ?』って。最初は『あれっ?』って感じなんですね。ところがどんどんいろんなものを忘れていくんですよ。ジョギングが大好きで家の近所と大学の周りとかを回ってるんですけど、方向感覚が今度わかんなくなるんですよ。どっちに行ったらいいか、わかんなくなるんですよ。

(赤江珠緒)うわー・・・

(町山智浩)で、『なんかおかしいわね?ちょっとボケが来たかしら?』とか言ってるんですけど。今度病院に行ってですね、いろんなことを聞かれるんですね。『どこに住んでいて、生年月日はいつで、子どもの名前は・・・』とか聞かれるんですけど。その合間に関係ない質問を間に入れていって、『いまの言ったことを覚えておいてくださいね』って言われて。で、普通に話していて、『さっき言ったこと、覚えてますか?』って言われると、思い出せないんですよ。

(赤江珠緒)あ、もうそんなさっきのことでも?

(町山智浩)『これはちょっと脳のスキャンを撮りましょう』って言われて、スキャンを撮ったら若年性アルツハイマーだってことがわかるんですね。で、これはまあ、遺伝なんですね。お父さんもそうだったと。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。

(町山智浩)そう。その時にまずお医者さんに言われるのは、『あなたのお子さん全員に連絡してください。全員のDNA検査をしましょう』って言われるんですよ。遺伝性だから。

(山里亮太)じゃあ、DNA検査でわかっちゃう?

(町山智浩)そうなんですよ。それで、長女が妊娠してるんですけども。遺伝子検査を受けたら、アルツハイマーが出ちゃうんですよ。

(山里亮太)うわー・・・じゃあ、いずれはっていう?

アルツハイマーが発症

(町山智浩)そうなんですよ。これはだから、結構厳しい話なんですけど。で、原作は日本でもすでに翻訳が出ているんですが。神経学のですね、大学教授が書いたものなんですね。で、彼女はアルツハイマー協会で研究している人なんですけども。この人自身が、『もし私が大学教授をやっているのにアルツハイマーになったら、どうなるだろう?』っていう想定のもとに書いた小説なんですね。

(赤江珠緒)うーん・・・

(町山智浩)はい。もう、とにかくどんどんいろんなことを忘れていって。これ、すごいのは自分が好きだった食べ物まで忘れちゃうんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)味覚とかって忘れないのかと思ったら、そうじゃないんですね。

(赤江珠緒)そうなんですね、うん。

(町山智浩)で、もう自分がなにをしてたかも覚えてないから、おしっこは漏れちゃうし。もう、だからどんどん人間としての尊厳が傷つけられていくんですよ。で、娘の名前だけは忘れない!とか思っているんですけど、娘に会っても娘を思い出せないんですよ。

(赤江珠緒)病が進行していくとね。ご本人では、もうどうしようもないですもんね。

(町山智浩)そうなんです。それで、医者から宣告されるんですけど、『だいたい2年ぐらいでほとんど自分が誰かもわからなくなるだろう』って言われるんですよ。で、『頭が良くて、すごく頭を使っている仕事の人ほど進行が早い』って言われるんですよ。

(赤江珠緒)えっ・・・

(町山智浩)で、大学教授としても、最初の頃は授業ができなくなって、生徒から・・・アメリカでは大学教授に対して生徒が点数をつけるんですよ。だから、つまらない教授っていうのはどんどん消されていって、いい学校っていうのはいい教授しか残らないんですけどね。

(赤江珠緒)ほうほうほう。

(町山智浩)それで、彼女は要するに生徒からクビにされちゃうんですよ。だからもう、プライドとかもどんどんなくなっていくんですね。削られていって。で、これはすっごい辛い映画ですよね。

(赤江珠緒)えー・・・

(町山智浩)で、いちばん怖いのは、『私はそんなことになったら周りに迷惑をかけるし、恥ずかしいから死にたい』と思うんですけども。本当に死ななきゃならない状態になった時に、自分が死にたいっていう気持ちすらわからなくなるだろうと思うんですよ。

(山里亮太)ああ、なるほど。

(町山智浩)ボケてしまって。だから自分で未来の自分に対して、コンピューターでビデオで手紙を作るんですよ。ビデオレターを。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)『あなたがもし、なにもわからなくなっちゃった時に、このビデオを偶然見たら・・・いま、コンピューターに入れておくから。そしたら、引き出しの奥に入っている薬を飲みなさい』っていう伝言を未来の自分に残すんですよ。

(赤江珠緒)はい・・・

(町山智浩)その薬は、まあどういうのか分かると思うんですけど。

(赤江珠緒)そういうことですか・・・

(町山智浩)そういう怖い怖い話になっていくんですけどもね。

(赤江珠緒)ええー・・・

(町山智浩)で、これはね、結構強烈で。まあ、このジュリアン・ムーアさんのどんどん壊れていく縁起っていうのがまあ、すごいんですけども。中でセリフでね、『もう昨日のことは、まるで覚えていないわ。明日のことは、なにもわからない。もう私はいま、この瞬間を生きるしかないのよ。それすらも、忘れてしまうのよ』って言うんですよ。

(赤江珠緒)うーん・・・

(町山智浩)それじゃあ、人間としての尊厳とか、アリスさんっていう人間としてのアイデンティティーはどうなるのか?っていうことを問うていく映画なんで。そのアルツハイマーにかかる、かからないに関わらず、人間って何なのか?と。記憶だけが人間なのか?名前が人間なのか?とか。社会的地位が人間なのか?っていうことにまで、たどり着いていく話になってますね。

(赤江珠緒)ああー、そうかー。

(町山智浩)だからこれ、原題は『Still Alice』っていうんですよ。

(赤江珠緒)『Still Alice』。はい。

(町山智浩)『Still』っていうのは、『じっとして動かない』っていう意味でもあって。彼女はどんどんボケて行って、最後はもうほとんど動かなくなるってことも意味してるんですけど。『Still』っていうのはもうひとつは、『そのまま』っていう意味がありますよね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)『まだ』っていう意味がありますね。『たとえそうなっても、まだアリスなんだ』っていう意味でもあるんですよ。

(赤江・山里)うーん・・・

(町山智浩)で、これが『アリスのままで』っていう映画なんですけどもね。

(赤江珠緒)これは周りの方もね、ご本人ももちろん辛いだろうけど。ねえ。周囲の人だって、辛いですよね。

(町山智浩)もう自分の娘がわかんなくなったら、相当辛いですよね。でね、そういう映画がこの『アリスのままで』でね。これは日本では春ぐらいに公開される予定ですけども。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、これが本命と言われてるんですよ。ジュリアン・ムーアさんがね。ジュリアン・ムーアさんっていうのはずっとお母さん役ばっかりやってきている人でですね。『美しすぎる母』なんて言う映画にも出てるぐらいのお母さん女優さんで。

(赤江珠緒)ねえ。キレイな人ですよね。

(町山智浩)お母さん役一筋でずっと来たんですけども。まあ、今度アカデミー賞をとるだろうと。

(山里亮太)やっと、念願の。



<書き起こしおわり>
町山智浩 映画『わたしに会うまでの1600キロ』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。アカデミー賞主演女優賞候補作品、リース・ウィザースプーン主演映画『わたしに会うまでの1600キロ(原題 WILD)』を紹介していまし...