吉田豪 百田尚樹『殉愛』差し止め提訴問題を語る

吉田豪 百田尚樹『殉愛』差し止め提訴問題を語る モーニングCROSS

吉田豪さんがMXテレビ『モーニングCROSS』内のコーナー、オピニオンクロスで百田尚樹さんの著書『殉愛』が出版差し止め提訴されている問題について語り合っていました。

(堀潤)さあ、続いて最後に豪さん、お願いします。

(吉田豪)はい。百田尚樹さんの『殉愛』出版差し止め提訴問題。

(堀潤)こちらも法律にも関連する問題ですね。

(脊山麻理子)やしきたかじんさんの晩年をつづった百田尚樹さんの『殉愛』をめぐり、たかじんさんの長女が名誉毀損・プライバシーの侵害とし、出版元の幻冬舎に出版差し止めと損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしました。

(堀潤)これ、ご存知の方はよくご存知だと思うんですけど。この問題。殉愛ではやしきたかじんさんの闘病生活につきっきりで看護した妻のさくらさんを絶賛する内容。『誰も知らなかったやしきたかじん最後の741日』と帯に書いてありますけれども。一方で親族はですね、『一度も見舞いに来なかった』と、まあ冷淡な人々として描かれている。親族のことについてね。だからさくらさんがすごく、いかにたかじんさんを大切にしてたか、一方で家族が冷たかったかっていうようなことが書かれている内容に対して、訴状では『百田氏は原告をはじめとした親族に取材をして事実確認をしようとしなかった。原告の私生活に関して誤った認識を与える』と主張しているということです。さあ、豪さん。

(吉田豪)はいはい。ええとですね、ちょっとスタイルは僕に近い部分もあるなっていうのはあるんですよ。百田さんって。今回の件に関しては、マスコミで叩かれてて、でも発言の機会がない人の話を聞きに行くっていうのは僕が結構基本的にやっていることではあるんですよ。

(堀潤)うーん。だからみんながそっちに振れてね。そればっかりが取り上げられるのはアンフェアですからね。

(吉田豪)ただそれがここまでの騒動になったのは、まあ売れている数が違うっていうのもそうですけど。僕がやっているのはインタビューだから、相手の発言じゃないですか。僕はそこに乗って誰かを叩くようなこともないし、っていう。だから大丈夫だけど、まあノンフィクションっていうと、平等性を求められがち。だからこうなったんだろうなとは思ったんですけど。ただちょっと僕が思うのが、ノンフィクションは別に平等である必要もないっていうのは実はあって。

(堀潤)おお、なるほど。

ノンフィクションは別に平等である必要もない

(吉田豪)片っ方に偏っているノンフィクションの方が面白いんですよ。

(堀潤)うーん。いまちょっと批評の話、パロディーの話にも近い部分はあるかもしれませんね。

(吉田豪)そうなんですよ。そこまでフェアじゃなくてもいいっていうか。最近売れた本で、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』っていう本があって。それは作者の人が完全に木村政彦派なんですよ。

(堀潤)どんな話ですか?

(吉田豪)ええと、まあ力道山にちょっと卑怯なやり方で潰されちゃった柔道家の人の名誉を回復するための本なんで、完全に思い入れはそっちなんですけど。思い入れがそっちな人がなんとかフェアであろうとして、敵対するような側の取材もして、だんだん不都合な事実がでてくる中で葛藤していく様が面白いんですよ。

(堀潤)ああー。

(吉田豪)だからこの本が正直間違っていると思うのは、反対側の取材をしなかったって出てますけど。そこなんですよ。

(堀潤)そこを取材した方が、作品としてもひょっとしたらもっと面白くなる、深みが出るかもしれなかったということですね。

(吉田豪)報道とかで必ずだから通常、敵対する側も取材して『ノーコメントだった』って載せるのってそういうことじゃないですか。

(堀潤)そう。だから両方を取材はするけれども、軸足はどっちかに置いててもぜんぜんいいよと。

(吉田豪)ぜんぜんいいんです。

(堀潤)でも、それが完全になきものとして扱うのは違うよねという。

(吉田豪)そっちに取材しないで、ただスタッフと娘さんを叩くとそれはトラブルにもなるし。で、プラス、ねえ、さくらさんが結婚してたことを隠してたのは失敗だったっていう風に百田さんは述べています。

(堀潤)イタリア人とね。

(吉田豪)そうです。まあ、それ以外にも結婚の事実があったっていう風に週刊文春にあってちょっと驚いたんですけど。で、そこを、まだ伏せるんだったらいいですけど、嘘をついちゃったんですよね。『恋人未満の相手はいる』みたいな言い方をしちゃっていて。そこはミスですよね。

(堀潤)そうですよね。山口さんはこれ、ご家族のみなさんが訴えていますけども。こういうその、『私たちは取材をされていないんですけど、これは明らかに事実と違う』っていった場合っていうのはやはり、どうなっていくんですか?

(山口真由)これ、名誉毀損の問題ですよね。名誉毀損で訴えてらっしゃると思うんですけど。まあ、過去にはプライバシー権で訴えるものもあるんですよね。

(堀潤)プライバシー権?

(山口真由)あの、これも原作とすごく・・・特定できちゃうじゃないですか。人が。で、あたかもその自分であるかのように、著作の中でもモデルがいて。で、あたかも自分であるかのように特定できちゃって、みたいな話があると・・・

(堀潤)それはフィクション、ノンフィクション問わず?

(山口真由)フィクションでも、『石に泳ぐ魚』の事件って有名ですよね。あれ、プライバシー権。あれは差し止めが認められた例だと思う。出版差し止めが認められた例だったと記憶してるんですけど。あれは、モデルがいて。で、フィクション、ノンフィクション織り交ぜて。そしてでも、彼女のことであるかのように見られるってことが問題になった事例っていうのがあって。でも難しいですよね。名誉毀損と、その自分がどう取られたいか?っていうのと。この本ってものすごく売れているわけじゃないですか。で、一般の人たちに誤解されちゃうかもしれないってすごく難しい。あと、この場合、たぶんおそらく遺産問題とかも絡んでいるので。そこもおそらく難しくしているところだと思うんですけども。

(堀潤)東さんは?

(東国原英夫)僕はね、これ読みました。たぶん事実のままをずーっとありのまま。だから結婚を隠していたっていうのは、さくらさんが言わなかったから、さくらさんの証言を軸に書いたんじゃないかな?と僕は思っていました。でね、これは素晴らしい作品ですわ。素晴らしい作品なんだけども、ひとつだけ気になったのがね、百田さんがね、作者が、たかじんさんが生前、百田さんをものすごい賞賛してたっていうのを書いてるんですよ。

(堀潤)(笑)。なるほど。

(東国原英夫)これ、ちょっと気になったな。たかじんさんが、たかじんさんの証言でね、残っているらしいんだけど。『百田はすごい。面白い。素晴らしい作家だ』って。

(堀潤)それ、自分で書くか?って。

(東国原英夫)自分で書くか?そこはちょっと端折れば、なんか謙虚で面白かったのになって。

(脊山麻理子)なんか死んだ人のことをこう語ることについて、なんか映画で『物語る私たち』っていう映画があって。お母さんのことを、自分のお母さんが過去どういうことをしてたか?っていうのをみなさんが語るのを、ただ編集して。どう思うかは見た人が感じるっていうスタイルだったんですけど。それにしたって、お母さんはそういうことを作られることを望んでいたのか?とかっていう問題。死ぬ時に決めるのか?っていう。なんか、死んだ人には意見が言えないじゃないですか。

(堀潤)そうですね。いま、Twitterでもきててね。『これでいちばん嫌なのは、故人は口を出せないってこと』っていうことで。たかじんさんがね、もし生きてらっしゃってこれを読んだら、『おい!』っていう風にツッコミが入るでしょう。たぶん。いろんなところにね。面白おかしくね。でも・・・

(東国原英夫)最後、ちょっとフォローすると、文章から読み取れるところはね、たかじんさんが『もし俺の本を書くんだったら、百田に書かせてくれ』と言ってたの。そこでも百田さんがすごいっていう話が出てくる(笑)。

(一同)(笑)

(堀潤)って、百田さんがおっしゃってるんですよ。

(吉田豪)まあ、結婚に関してはあれですよね。さくらさんは語ってたんだけど、たかじんさんがそれを出すのをよしとしなかったから伏せたみたいな言い方をしてて。そこがちょっとまたモヤッとするところですよね。

(堀潤)一方で、(ツイートを読む)『たかじんの家族も対抗して本を出せばいいべ』なんていうのもありますけど。まあ、これは法廷で反論していくということですよね。

(山口真由)そうですね。あと、死者にもやっぱり名誉っていうのはある。法律上もそういう風になっていますので。

(堀潤)はい。豪さん、ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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