町山智浩 ブラッド・ピット主演戦争映画『フューリー』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』でブラッド・ピットが制作・主演した戦争映画『フューリー』を紹介。いままでのアメリカの第二次大戦映画とはひと味違う戦争映画であることを話しています。


(赤江珠緒)町山さん、お願いします。なんか町山さん、テンションが上がっているって聞きましたけど?

(町山智浩)今日の話でいいですか?今日はですね、ブラッド・ピット制作・主演のですね、戦争映画『フューリー』を紹介します。これ、フューリー(FURY)っていうのはっていうのは英語で『怒り・激怒』っていう意味なんですけど。そういう名前の戦車に乗るアメリカ兵たちの話なんですよ。で、これ第二次世界大戦が舞台なんですけど、僕、この取材でイギリスに行ってきたんですよ。この間。

(赤江珠緒)イギリス行くっておっしゃってましたね。はい。

(町山智浩)そうそう。あれは実はね、イギリスのロンドンから車で3時間ぐらい行ったところにね、ボービントン戦車博物館っていうのがあるんですよ。そこに行くためだったんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)で、その戦車博物館っていうのはね、世界の戦車が300台収められているんですね。で、そこはね、世界最初の戦車の訓練とか実験をした場所なんですよ。もともと。

(赤江珠緒)え、じゃあ実際に使われていたものが置いてある?

(町山智浩)実際に使われたものです。全て。で、世界中で戦争が終わると戦車がいらなくなるじゃないですか。それを回収して集めてるんですよ。そこに。で、なんでフューリーっていう映画をそこで撮影したか?っていうと、このへんからね、あの・・・僕の世代で田宮模型とかを作っていた人以外はだんだんついていけなくなると思いますが。ただ、ラジオをお聞きになっている方で、タクシーを運転されていたり、お仕事をされている方で40代、50代の男性だったらほとんど全員わかる話ですから。赤江さんとか山里さんはわからなくても、これ、世間にわかる話なのか心配しないでいいです。わかります!

(山里亮太)了解です!

(町山智浩)40代、50代の男性はこれから話すこと、全部わかりますから。大丈夫ですよ。

(赤江珠緒)田宮模型さんがね。私も大丈夫ですよ。

(町山智浩)第二次世界大戦の戦争映画っていうのはいままでずっとアメリカとかイギリスで作られていたんですけども。ソ連とかでも作られてきたんですが。ほとんど、本物の、本当に使われた戦車が出てくることってほとんどなかったんですよ。っていうのはどうしてか?っていうと、ドイツ軍の戦車が出てこないんですね。

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)ナチス・ドイツっていうのは徹底的に殲滅されたんで、ほとんど撃破されたから残ってないわけですよ、戦車。だから出てこないんですよ。で、いままではナチス・ドイツの戦車っていうといちばん有名なのはタイガー戦車っていう戦車なんですね。重戦車なんですけど。80トンぐらいあるのかな?なんかそういうすごい戦車があるんですけども。それに関しては、1350台しか作られなかったんで。残ってないわけですよ。ほとんど。だから、偽物のアメリカ軍とかロシアの、ソ連の戦車を改造して、ドイツのタイガー戦車に見せかけてたんですね。いままでの戦争映画、すべて。

(赤江珠緒)ふーん。

本物のタイガー戦車が登場

(町山智浩)ところが今度、フューリーっていう映画では、もうそういうのは止めよう、本物のタイガーを出そうよということになって。ボービントン戦車博物館が所有しているタイガー1型重戦車を本当に映画の中に出して走らせているんですよ。

(赤江珠緒)へー!あ、ちゃんと現存してたんですか?

(町山智浩)現存してたんですよ。これはアフリカ戦線でイギリス軍が捕獲したものを大事に取っておいて、修理して走れるようにしたものなんですよ。70年以上前の戦車が現在も動くんですよ。で、僕触ってきたんですよ。その現物に!

(山里亮太)ほう、タイガーに。

(町山智浩)もう涙出る感じでしたよ。もう全身にビリビリッと電気が走るような感じでしたよ。もう。

(赤江珠緒)あ、そんなものですか。

(山里亮太)やっぱり憧れてたんですか?

(町山智浩)子どもの頃に何台も何台も作ったんですよ。田宮模型で。まあ35分の1なんですけども。その後ね、サンパチとかですね、75分の1とか、いろんなの作りましたけど(笑)。とにかくね、1人で何台も何台もおんなじのを作るんですよ。だんだん上手くなってくるんですよ。作るたびにね。で、すごく複合転輪というですね、もうなにを言ってるかわからない人も多いと思いますが。キャタピラについている車輪がですね、ものすごく複雑なんですよ。タイガーっていうのは。で、それを作るのが大変だったりね。その縁をね、『黒く塗れ』って書いてあるんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)塗り方の指導で。で、なんでここ、タイヤの車輪の外側を黒く塗らなきゃいけないんだろう?って。鉄の車輪なんですけど。戦車だからね。で、わからなかったんですけど、現物見てわかったんですけど。ゴムだったんですよ!

(赤江珠緒)ほー!いま、改めて現物を見てわかったこと。

(山里亮太)すごいテンション高い(笑)。

(町山智浩)そうそうそう。子どもの頃、わからなかったんですけど。っていうのを、実際に触ったりしてね。感動してきたんですけどね。これやっぱりね、ブラッド・ピットが制作をやっているんで、ブラッド・ピットっていうのはものすごいこだわる人なんで、実現したんだと思いますね。あのスティーブン・スピルバーグですら、『プライベート・ライアン』っていう映画ではタイガー戦車が出てくるんですけど、ソ連のT34戦車の改造なんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)この話はね、40代、50代の人はいまね、『うおーっ!』って言いながら聞いていると思うんですけど(笑)。

(山里亮太)タクシーの運転手さんとか。『本物のタイガーが見れるのか!?』と。

(町山智浩)そう。それが、敵の戦車なんですけどね。タイガー戦車っていうのはものすごく強いんで、アメリカ軍の戦車が5台・・・シャーマン戦車っていうのがあるんですけど。5台でやっとタイガー1型を倒せるぐらいだったんですよ。

(赤江珠緒)えっ?そんなに戦闘能力が違ったんですか?

(町山智浩)ものすごい大砲の威力とか、決定的に違うんですね。88ミリ砲っつって、空を飛んでいる航空機を撃ち落とせる高射砲を戦車に向けて撃つんで。弾が当たらなくても、この映画の中で出てくるんですけど、近くをその砲弾がすり抜けていくだけで首が吹っ飛ぶんですよ!人の。当たってないのに。

(山里亮太)衝撃波で?

(町山智浩)衝撃波で。そういうシーンがあるんですけど。この映画の中で。まあ、それと戦うんで。アメリカ軍側は、シャーマンっていうのは小さくて早い戦車で、安く作れるんですね。で、5万台作って1350台に対抗したんですよ。

(赤江珠緒)ずいぶん数の力はすごいですよ。5万台って。

(町山智浩)圧倒的な数の力だから。だから結局戦う時にこっち側は何台かはやられるっていうのを最初から前提として攻撃をかけるんですよ。だからこれ、25人ぐらい・・・1つの戦車に5人乗るんですね。シャーマン戦車っていうのは。それで5台でタイガー1台に対抗するんで、25人のうち10人ぐらいは最初から死ぬ前提で攻撃させるんですよ。

(赤江珠緒)えー・・・

(町山智浩)これ、芸人だったら大変ですよね?

(山里亮太)いや、大変ですよ。

(町山智浩)25人芸人デビューさせるけども、10人ぐらいは食えなくて野垂れ死にっていうのを前提としてデビューさせるみたいな話ですよね。これね。

(山里亮太)あ、町山さん・・・でもそれ、うちの会社、そうかも。

(町山智浩)あっ、それ普通か!(笑)。

(山里亮太)うちの会社、もっと過酷かも。

(町山智浩)戦争か!?それはって思いますけど(笑)。でね、その戦車博物館に行っていろいろ現物見たりですね、してきたんですけど。とにかくね、いままでの戦争映画で最もリアルにしようとしててですね。俳優さんでですね、シャイア・ラブーフっていう俳優さんがこの映画の中で戦車の砲手を演じてるんですね。大砲を撃つ人。その人は役に入れ込みすぎて、『顔に傷がない兵士なんているはずがない』と言ってナイフで自分の顔を切っちゃったんですよ。

(赤江・山里)ええっ!?

(赤江珠緒)俳優さんなのに?

(町山智浩)それぐらい、それで『歯が折れてたりしないとおかしい』って言って前歯を全部抜いちゃってるんですよ。ものすごいね、これね、俳優たちに会ったらね、異常なテンションでその戦車兵になりきってるんですね。ブラッド・ピットをリーダーとする5人の戦車兵が。

(赤江珠緒)なんか歯を抜いた人はね、日本でもいましたけども。顔に傷をつけちゃうのは・・・

(町山智浩)松田優作さんは抜きましたね。でも、前歯なんですけどね。この映画の中では。でね、『どうしてそんなになっちゃったんですか?』って聞いたら、まずこの映画自体がですね、1945年4月のですね、要するにナチス・ドイツが5月に滅びるんですけども。その1ヶ月前、終戦1ヶ月前にドイツ本土にアメリカ兵が入った時の1日を描いてるんですね。24時間の物語なんですよ。で、そこに行くまでにもう10ヶ月以上ヨーロッパを延々と戦ってきた戦車兵たちなんですよ。

(赤江・山里)うんうん。

(町山智浩)話が始まった時点で。それを撮影初日で、要するに1年ぐらい戦ってきた戦車兵の雰囲気を出すの、いきなりだと無理だから、撮影に入る前に何週間も実際にホテルとかに泊まらないで、野宿をして。戦車と一緒に暮らして、軍服を着たまま、ベッドに寝ないで生活させたんですよ。兵隊役の俳優たちを。

(赤江珠緒)あー、そうか。そうしないとリアルさが出ないか。なるほど。

(町山智浩)まあいきなりその戦闘1年目の兵士になれないから、何週間も要するにブラッド・ピットたちは一緒に生活してたんですよ。戦車と一緒に。で、完全に兵士状態になりきってたんですね。だからおかしくなっていって。それですごくおかしかったのは、これ監督がデビッド・エアーっていう監督で。この人、もともとロスアンゼルスのストリートギャングとかに囲まれて育った、すごくタフな人で。あと、海軍の経験者なんですね。デビッド・エアー監督は。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、ブラッド・ピットたちとか戦争を知らない若者たちに戦車兵をやらせるためにどうするか?要するに戦車っていうのは、5人が全部機械じかけのように連携して動いてはじめて戦車っていうのは動くんですね。

(赤江珠緒)あ、1台が。1台の中に5人ぐらい入って。

(町山智浩)たとえばマリオネットみたいなもの、手や顔や足をそれぞれの5人が動かしているようなものらしいんですよ。戦車って。で、僕も乗ってみたんですけど。ものすごく狭いんですけどね。それで体がみんなくっつく感じなんですよ。で、それで『1年以上暮らしてた感じっていうのを出すためには、本当に家族のようにならなきゃいけないんだ、君たちは』って言って。で、監督がなにをしたか?っていうと、ブラッド・ピットたち5人に殴り合いをさせたんですよ。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)で、毎回毎回、毎日のように殴り合いをさせ続けたらしいんですよ。で、監督も『俺も一体にならなきゃな!』って、監督も一緒に殴り合いしてたらしいんですけど。で、すごいんですよ。これ、ブラッド・ピットって『ファイトクラブ』っていう映画に出てましたよね?

(山里亮太)はいはいはい。

(町山智浩)で、『男は殴り合いをしなければ本当に自分が生きているかどうか実感できない』っていう映画だったんですけど。これはその5人の男が家族になるために、5人の俳優が延々と本当に現場で殴り合いを続けたっていう、とんでもない撮影現場だったらしいんですよ。

(山里亮太)それは、映っているシーンじゃなくてですよね?

(町山智浩)ぜんぜん映ってないですよ。実際にリハーサルとか本番が始まる前に殴り合いをするんですって。で、テンションを高めて行くらしいんですよ。で、この監督もどうかしてるんですけど。だからその殴り合いをすることをずーっと何ヶ月も続けることで、俳優が異常な精神状態で。戦場での殺すか殺されるかっていうような暴力的な精神状態に俳優を追い込むんだ!とか言ってやってるんですよ。

(赤江珠緒)はー!まあ、理屈はわからんでもないですけど。

(町山智浩)どういう現場なのか?と思いますけどね。

(赤江珠緒)現場、恐ろしいですね。

(山里亮太)それがでも、出てる感じでした?その感じが。だからこそ、みたいな。

(町山智浩)だからね、本人たちもだんだんおかしくなっていったらしいんですけど。それで前歯を抜いたりしてたらしいんですね。で、これね、主人公はブラッド・ピットじゃないんですよ。これはすごく、また20才ぐらいの男の子がですね、いきなり、戦争末期なんで兵隊がいなくなっているんで。アメリカ側も。戦場に送られるんですね。で、6週間くらいの訓練でいきなり戦場に送られて、戦車兵のうちの機関銃を撃つ機関銃手がですね、死んでしまったんで。そのかわりに補充されるんですよ。その若い男の子が。ノーマンくんっていうのが。20才ぐらいで。ちなみに、童貞ですが。はい(笑)。

(山里亮太)その情報、大事だったのかしら?

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)それでいきなり戦場に送られて戦闘が始まるんですけども。なんか森の中を自分たちの戦車が進んでいるところ、森の中を子どもたちが動いてるのが見えるんですよ。

(山里亮太)はいはい。

(町山智浩)で、『あっ、子どもたちだ』と思ったら、その子たちっていうのは対戦車擲弾筒っていうのを持っていてですね。パンツァーファウストっていうんですけど。それでこちらの戦車を撃破しちゃうんですよ。

(山里亮太)少年兵が?

(町山智浩)少年兵が。で、その頃ドイツ軍っていうのはほとんど崩壊してて。ドイツ国内にアメリカ軍が入っていったから、ドイツの国民全てを兵隊化してたんですね。

(赤江珠緒)じゃあ最後のあがきみたいになっていたんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。だから日本がそれをやろうとして、沖縄だけで非常に犠牲になりましたけども。あれを本当にドイツはやったんですよ。一億火の玉っていうのを。で、女の人や子どもや老人にまで対戦車擲弾を配ってですね。それでアメリカ軍を迎え撃て!ってやったんですよ。

(赤江珠緒)うわー・・・

(町山智浩)だから子どもだろうと女だろうと、全部自分を狙ってくるかもしれないわけですね。アメリカ軍にとっては。でもその男の子は、いきなり平和なアメリカから来たばっかりだから、その子たちを見ても、なにもできないわけですよ。で、ブラッド・ピットが『お前が殺さなければ、俺たちが殺されるんだ!』ってやるんですよ。で、今度戦闘になると、撃たれた敵の兵隊たちが倒れているじゃないですか。そうすると、『あれを全部撃て!』って言うんですよ。『でも、倒れてますよ!』って言うんだけど、『でも構わない。全部撃て!』って言うんですよ。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、どうしてか?っていうと、倒れて瀕死だったり虫の息だったりする兵隊でも、自爆するかもしれないから近づけないんですよ。だからもう倒れている兵隊でもケガしている兵隊でも、全部殺せ!ってやるんですね。で、『そんな酷いこと、できません!』とか言ってると、『もうお前がいると俺たちは殺されてしまうから、お前にいま、人を殺させる!』って無理やり人を殺させるんですよ。ブラッド・ピットが。ノーマンくんに。

(赤江珠緒)うわー・・・

(町山智浩)っていう、強烈な映画なんですね。これ。で、このブラッド・ピットがやっている役は、戦争あだ名っていうのがあって。戦場では本名で呼ばないらしいんですね。で、ニックネームで『ウォーダディー(War Daddy)』って呼ばれてるんですよ。

(山里亮太)ウォーダディー?

(町山智浩)ウォーダディーっていうのはね、『戦争オヤジ』っていう意味ですね。で、ブラッド・ピットは戦争オヤジって言われてて。で、その下に、要するにサザエさんみたいに、おフネさんにあたるのはシャイア・ラブーフ扮する砲手でね。その下に子どもがいて・・・ってなってるんですよ。その末っ子として、タラちゃんとして入れられるのが、そのノーマンくんなんですよ。

(赤江珠緒)ものすごく平和なものに町山さん、たとえてますけども。

(町山智浩)タラちゃんだから人を殺せないんですよ。『だしょー』とか言ってるから。役に立たないんですよ。

(山里亮太)『イヤですぅ』って言って(笑)。

(赤江珠緒)もう一心同体だから、みんなで。

(町山智浩)『ばぷぅー!』とか言ってっから。だからそれに人を殺させるところから始まるっていう、怖い怖い話なんですよね。

(赤江珠緒)いやー・・・そのなんか、戦争の異常性みたいなのはね、急に日常から来た人だとそうなりますよね。

(町山智浩)そうなんですよ。たった6週間の訓練でいきなり行かされてますからね。タラちゃんみたいなのがね。大変なことになってるんですけど。この監督たちのね、やっていることはすごく面白いんで。まず、僕らは戦車の中で家族だからっていうことで、殴り合いをさせるっていうけど、これはどう考えてもセックスのかわりなんでね(笑)。

(赤江・山里)えっ!?

(町山智浩)そうなんですよ。

(赤江珠緒)えっ?どうなの?

(町山智浩)そうでしょう?男同士で。裸で殴りあって、わかり合うんだ!みたいな。タイマン張ったらダチや!っていう世界ですよ。

(山里亮太)懐かしの世界ですよ。日本古来の。

(町山智浩)『Let’sダチ公』みたいな世界ですよ。古いですけど。マンガのネタが。はい。で、そういうことをやってて。まったく女っ気がない異常な世界なんですけど。でも、いきなり童貞でね、女の子も知らない男の子にいきなり人殺しをさせるんですから。すごい世界ですよ。

(赤江珠緒)そうですね。えっ、じゃあこの映画は町山さん、女性はほとんど出てこないんですか?

(町山智浩)出てくるんです。ただ、すごい悲しいことになるんですけどね。はい。そのへんがね、すごく泣けるポイントの部分なんですけども。で、『なんでこの映画を撮ろうとしたんですか?』とデビッド・エアー監督にインタビューしたら、彼のおじいさん、2人いますよね。おじいさんって。2人とも第二次大戦で従軍してるらしいんですよ。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、そのデビッド・エアー監督自身も海軍に入っていたんで。戦争のことを聞いたらしいんですね。おじいさんに。『第二次世界大戦、どうでした?』と。そしたら、『言いたくない』って言うらしいんですよ。おじいさん、2人とも。でも、第二次世界大戦っていうのは、アメリカでは『グッドウォー(Good War)』、いい戦争って一般的には言われてるんですよ。それはどうしてか?って言うと、非常に悪いナチス・ドイツを倒したからということで。その後のベトナム戦争とかイラク戦争とかは『バッドウォー』っていう。悪い戦争と言われてるんですね。

(赤江・山里)うん。

(町山智浩)要するに倫理的にも悪かったし、失敗したし。悪いこといっぱいしたしと。だけど、その第一次世界大戦と第二次世界大戦は、世界を平和にするための戦争だったんだから、グッドウォーだっていう風に一般的には言われてるんですけども。それなのに、そのおじいさん。監督のおじいさんは2人とも自分がなにをしたか?については語らなかったらしいんですよ。

(山里亮太)なるほど。

(町山智浩)で、なんでだろう?と思っていろいろ調べたらしいんですね。で、いろいろ調べていったら、やっぱり酷いことをいっぱいしてるんですよ。実際は。

(赤江珠緒)そっか。さっきあったみたいに、少年だろうが女性だろうが老人だろうがっていう状態があったわけですよね。

(町山智浩)そうなんですよ。自分たちがやられちゃうから。もう、生きるか死ぬかだから、選択の余地がないんですね。倫理的な。だってそこで躊躇してたら、その子どもは爆弾を持っているかもしれないですから。だから、言えないようなことはやっぱりしてきたんだと。で、それをすごい普通の、田舎町で暮らしていた人とかを戦争に連れだしてそういうことをさせたのが戦争なんだと。だから『いい戦争』なんてものはないんだ!ってことが言いたかったんですね。監督は。

(赤江・山里)うわー・・・なるほど。

(町山智浩)それはいままで、第二次世界大戦の映画っていうのは全て美化されて、全ていい戦争として、英雄的なものとして描かれてきたんですけども。今回は、もうぜんぜん違うんだと。

(赤江珠緒)そういうこう、監督のイメージみたいなのは、アメリカ国内では伝わっていくんでしょうかね?

(町山智浩)いやー・・・でもみんな、ショックを受けているところもありますよね。

(赤江珠緒)やっぱりグッドウォーっていうイメージが?

(町山智浩)ちょっと今回は強烈なんで。かなり。ただやっぱり、戦車のシーンはすごいですよ。これはすごいですよ。5台・4台でですね、タイガー1型と戦うところは本当にもう・・・要するに何台かは死ぬ気なんですよ、もう。何台かは犠牲にならないと勝てないんですよ。

(赤江珠緒)そんなに差があったんですね。

(町山智浩)こんな状況に置かれたらどうだろう?と思いますけどね。

(山里亮太)そうだな。嫌だなー。

(赤江珠緒)町山さん、中にも乗ったんですか?

(町山智浩)あ、中乗りましたよ。戦車、乗りましたよ。すごい狭いからやっぱり、1発くらったら中に高熱のガスが噴き出してきてですね。対戦車擲弾っていうのは。中に乗っている人、全部死んじゃうんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そういうことなんだ。

(町山智浩)だからもう棺桶なんですよ。鉄の。だから、どうせ死ぬ時はみんな一緒だから、家族みたいにするしかないんですよね。

(山里亮太)なるほどー。

(町山智浩)でね、やっぱりね、この映画ポイントを言いますとですね、ブラッド・ピット脱ぎますから!

(赤江珠緒)(笑)。それポイントですか?町山さん。

(山里亮太)毎回ね、裸のシーンを絶対・・・

(町山智浩)ブラッド・ピット、僕より1つ下なだけなんですけど。ものすごい体ですよ。

(山里亮太)もう鍛え上げている。

(町山智浩)もうブリッブリでしたよ。もう。

(赤江・山里)ブリッブリ?

(町山智浩)ブリッブリでしたよ。すごいですよ、ブラッド・ピットは。裸。びっくりしましたけどね。

(赤江珠緒)そうですか。これ、大事な情報ということで。

(町山智浩)がんばろう!と思いましたけどね。

(赤江・山里)(笑)

(山里亮太)ブラピみたいになろうと思ってるんすか?町山さん。

(町山智浩)だって齢、変わんないんですけどね。すごいな!と思った。大したもんだなと思いました。

(山里亮太)次、日本に来る時に町山さんがムッキムキになってたら笑っちゃう(笑)。

(赤江珠緒)ブリッブリになってください。

(町山智浩)張り合ってもしょうがないけどね。はい。ということでね、すごいんですけど。まあ本当に田宮模型を作った世代の、夢にまで見た本物のタイガー戦車が見れる映画、フューリーでしたね。はい。

(赤江珠緒)へー。いろんなポイントがありましたね。

(山里亮太)そう。だからもちろんリアルにこだわっているのもいいし、戦争の悲惨さっていう新しい見せ方をするっていうね。アメリカのね。

(町山智浩)あと、ブラピの裸とね。

(山里亮太)そこ(笑)。毎回かならず1人裸を教えてもらうんだよなー。

(町山智浩)本当のポイントですから。それは。はい。

(赤江珠緒)そうですか。フューリー、ご紹介いただきました。

(山里亮太)ブリンブリンよ!

(赤江珠緒)日本では11月28日公開予定だということです。町山さん、今週もありがとうございました!

(山里亮太)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>