映画評論家町山智浩 2013年映画ベストテン

町山智浩が語る 切り抜きの帝王 みうらじゅんのスクラップブック たまむすび

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』の中で、2013年に見た映画のベストテンをお話されていました。

(赤江珠緒)さあ、それではですね、今日はたまむすび2013年最後の放送ということなんですけども。それを記念しまして、ベストテンを選んでいただけると。

(町山智浩)はい。2013年の映画ベストテンということで。

(赤江珠緒)たくさんご紹介いただきましたからね。今年も。

(町山智浩)もう紹介したのばっかりですけど。これね、10位からやるってなってますけど、僕順位つけてないんで。ただね、いままでこの番組で紹介したものが、今度、2014年から公開されていくんですけど、タイトル変わってるんですよ。日本語。だからそれをね、説明しないといつの間にか、前番組で紹介された映画あったんだけど、タイトルが違っているから見損なうっていう人がいるとあれなんで。ちょっと紹介していきたいんですけど。

(赤江珠緒)順不同で。はい。

(町山智浩)まずですね、1月14日からですね、日本公開される映画で『ソウル・ガールズ』っていう映画があるんですよ。これね、『ザ・サファイアズ』っていうタイトルで僕が紹介した映画で。オーストラリアの先住民であるアボリジニの人たち、女の子たちが歌手になろうとして、ぜんぜん聞いたことなかったアメリカのソウル・ミュージックを勉強して。営業だ!って営業行ったらベトナムの戦場だったっていう(笑)。営業で戦場なんてこと、あります?

(山里亮太)ぜったいない!これからもないと思いますけどね。銃弾飛び交う中でね、『どーもー!』って(笑)。

(町山智浩)そうそう(笑)。アボリジニの子たち、この頃すごい貧しくて、先住民の人だけ荒野に追いやられてたんです。社会と完全に隔絶されているんで、なにが起こっているかわからないまま、『お前ら、営業だから。行くから飛行機に乗れ!』って行ってみたらベトナムの大激戦の戦場だったっていう(笑)。テレビとかよく見ておかないと大変なことになるよっていう(笑)。

(山里亮太)先に知っておかないと。情報を。

(町山智浩)そう。なにが起こっているかわかっていないうちに、とんでもないところに行かされるっていうね、話ですね。

(山里亮太)僕らの目隠しで行かされる仕事だ。

(町山智浩)無人島とか、そういう(笑)。最悪の営業っていう映画ですけど。

(赤江珠緒)実話をベースにっていう。

(町山智浩)そう。実話ベースに。でもすごく泣かせるのは、アボリジニの人たちが人権を奪われて、やっと人権を取り戻そうとした時にアメリカで人権を取り戻した黒人の人たちの音楽を自分たちが歌って魂がつながれていくっていう話がね、非常に泣かせる実話なんで。ぜひこのソウル・ガールズ、1月14日から。

(赤江珠緒)へー。じゃあ歌も満載なわけですね。

(町山智浩)歌、満載です。特にソウルの魂をコーチのアイルランド人のおっさんが教えるところは、めちゃくちゃ泣かせます。はい。

(赤江珠緒)1月14日公開。ソウル・ガールズでございます。

(町山智浩)その次は・・・次ってことはないですね。順位つけてないですから。このたまむすびでは『ジ・イースト』っていうタイトルで紹介した映画が、『ザ・イースト』という(笑)。

(赤江珠緒)微妙に変わりましたね(笑)。

(町山智浩)これね、英語だと母音の前に来る『THE』は『ズィ』っていう感じになって。『ジ』みたいな感じになるんですよ。それだとわかりにくいのと、『ジ』って語感がよくないんですよね。日本語だと。

(赤江珠緒)そんなことないと思いますけど(笑)。

(山里亮太)いまのは完全にあそこの『ぢ』につなげるためのイメージでしたよ。

(町山智浩)だからね、ザ・イーストっていう風になっちゃったんですけど。これは、エコテロリストって言われる人たち。この人たちは動物実験をしている医薬品外者を爆破したり、排水を垂れ流している工場に行って排水を無理やり工場の経営者に飲ませたりとか、そういう目には目を方式でエコロジーの立場からテロを行っているグループに、そういった企業のテロに専門に請け負う民間スパイ組織の女性スパイが潜入するという話なんですけど。これが1月31日からですね。日本ではシネマカリテ他で公開されるんですけど。これはね、すごい映画なんですよ!

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)これね、民間スパイ組織って実際にあるんですよ。ストラトフォー(STRATFOR)っていう会社で実在して、CIAとかFBIとかがやっていることを肩代わりして民間からお金をもらってやっているんですね。特に、環境破壊をしている会社っていっぱいあるわけじゃないですか。その環境破壊をしている会社の敵っていうのは市民団体とか環境保護団体じゃないですか。その環境保護団体の裏情報っていうのを売っている人たちっていうのがいるんですよ。

(赤江・山里)うん。

(町山智浩)それがモデルになってるんですね。本当に実話なんだけど、もっと恐ろしいことになってきているのは、最近CIAとかFBIが本来は企業のためのスパイ活動を行ってなかったわけですよ。国家と関係ないから。いま、最近行うようになってきてて。最近問題になっているのは、企業に対するハッキングとかを仕掛ける運動家の人たちがいるんですね。その人たちをFBIが捕まえて、非常に厳しい刑。10年とか1億円の賠償金とか、そういうのをどんどん課すようになって。これね、コーポラティズムっていうんですけど、アメリカに限らないんですよ。世界全体の企業と政府が一体化してって、企業の利益のために政府の、FBIみたいなものが動くっていう事態になってきていて。

(赤江・山里)うん。

(町山智浩)この映画はそういう恐ろしい展開を予測しているすごい映画なんですよ。ザ・イーストっていうのは。これはぜひ、ご覧になっていただきたいと思います。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)それまでハッカーは普通の企業をやったとしても、大した刑には問われなかったし、ましてやそれをFBIとか追っかけなかったんですけど。いま、国家と大企業が一丸となってそういう市民団体とかに圧力をかけるという状況になってますんで。アメリカの話ですけどね。

(赤江珠緒)なんかちょっとね、近しいものがあったりしますけど。

(町山智浩)罪がすごく重くなっちゃったから、自殺者も出てるんですよ。ハッカーとかで。

(赤江・山里)へー。

(町山智浩)1億円とか罰金が払えないから。自殺者も出ましたね。いますごいハッカー、苦しいんですけどね。はい。

(赤江珠緒)ザ・イーストね。環境のこと、考えているのに。だんだん、それ正義なの?っていう風に。わけがわからなく・・・

(山里亮太)いるんなメッセージがあるって言ってましたもんね。

(町山智浩)いろいろ考えさせられる映画で。これはもうぜひご覧になっていただきたい。

(赤江珠緒)1月31日から日本で公開です。

(町山智浩)これも、たまたま僕、この映画に興味を持つようになったのは、たまたまアメリカで僕が住んでいたところの近くに動物実験をしている医薬品会社があって。そこが爆破されたからなんですけど(笑)。

(赤江・山里)ええーっ!?

(山里亮太)それもさっき言った団体にですか?

(町山智浩)そうです。カイロン(Chiron)っていう、もうない会社なんですけど。インフルエンザのワクチンを作っている会社で。そこが爆破されて。うちから5分のところにあって。爆破音とかも全部聞こえて。それの犯人をいまFBIがエコテロリストとして指名手配してるんですよ。で、興味を持つようになったんですね。こういうことが起こってます。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、あとですね、次のおすすめが『ワールズ・エンド』。これね、イギリスの酔っぱらいで、まともに社会に入れなかった40代の男たちが、学生の頃達成できなかった12軒のパブをハシゴするというのに挑戦している最中に、地球侵略と戦うハメになるという。

(赤江珠緒)(笑)。だから入り口から・・・

(山里亮太)奇想天外すぎてね(笑)。

(町山智浩)どういう関係になるのか?わかってこないんですけど(笑)。

(山里亮太)早く見たい!って言ってたのが。あれからもう。

(町山智浩)そうなんです。これが4月に日本公開されます。ワールズ・エンド。これ、副題にね、『酔っぱらいが世界を救う!』っていうのがついてるんです。ワールズ・エンドだけじゃわからないから。そしたらこれ、ビールの映画なんでビール会社となんとかタイアップできないかな?っていろいろやってたんですけど。配給会社と。『酔っぱらいが世界を救う!』っていう副題がマズいってことで、ビール会社が敬遠してなかなかタイアップしてくれないんですね。

(赤江珠緒)そうなんですか。ダメですか。

(町山智浩)『酔っぱらい』っていうことは言っちゃいけないんですよ。ビールで。ビール会社は。『これを飲むと酔っぱらいになりますよ』とは言えないんですよ。

(赤江珠緒)へー。なんて言えばいいの?

(山里亮太)ほろ酔いとか?

(町山智浩)健康に楽しく飲みましょう、みたいなことだから。ベロベロになりました!っていうのは、お酒会社としてはマズいんです(笑)。

(山里亮太)ワールズ・エンド 適度に飲みました!じゃ・・・意味がわかんないですもんね。

(町山智浩)(笑)。そう、意味がわかんない。

(赤江珠緒)適正に飲んで(笑)。

(山里亮太)とても美味しくいただきました。何の映画だ?これ?

(町山智浩)何の映画だ?っていうね。なかなか難しいんですけど。ダメ人間の、本当にオタクでロックが好きで怪獣映画が好きでお酒が好きでっていう。結婚も失敗して、っていうような人たちが集まって、世界を救うっていう。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)登場人物が完全に町山さんが好きな人たち。

(町山智浩)そうそう。俺の友達みたいな人たちばっかりで。

(山里亮太)町山さん好きな映画、そのタイプ出てくるなー!

(町山智浩)映画の中だけだったら、地球を救えるっていうね(笑)。中だけです。

(山里亮太)自分に投影しやすいっていう。結構、みんな多いですからね。

(赤江珠緒)2014年の4月から公開。ワールズ・エンド。

(山里亮太)見たいわー、これ。とんでもない結果になっていくって聞いてるから、すげー楽しみ。

(赤江珠緒)すごいですよ。言えないですけど(笑)。スケール、デカいです。その次。次じゃないですけど(笑)。

(山里亮太)みんな、今日は順位つけてませんよ!

(町山智浩)『地獄でなぜ悪い』。園子温監督。

(山里亮太)面白かったー!

(町山智浩)面白かったでしょ?友近さん、すごかったでしょ?

(赤江珠緒)すごかった!あの血のシーンが(笑)。

(町山智浩)すごいでしょ?園子温監督、友近を口説いたりしてるんですけどね。なんでも口説く園子温っていうね。とんでもないですけどね。

(山里亮太)えっ?口説くって、役者さんとしてウチの映画に出て!って口説き落とす・・・?

(町山智浩)彼はたぶんね、映画を演出してるとなんだかわかんなくなっちゃうんだと思う。やっぱり女優に惚れなければ演出できないんだと思いますね。

(赤江珠緒)そこに愛がなければ。

(町山智浩)そうそう。マインドセットしてるんですよ。困ったもんだと思いますけどね。はい(笑)。

(山里亮太)友近に聞いてみよう。今度。口説かれた?って。

(町山智浩)(笑)。でもこの映画はね、ヤクザがヤクザ映画を作ると。そこにどうしようもないダメなアマチュアの映画監督が巻き込まれて夢を果たすというですね、映画なんですけど。これはこの後、僕が春日太一さんっていうのを連れてきて、実は日本映画においてはヤクザがヤクザ映画を作るっていうのは事実であるっていうのを話してくれて(笑)。

(山里亮太)はいはい。

(赤江珠緒)京都太秦の話とかね。

(山里亮太)とんでもない話でした。

(町山智浩)具体的に名前を出せませんが。多くのヤクザ映画が、実際のヤクザの方々が作ってらっしゃるということをね、ちょっとお話しましたけど。

(山里亮太)リアリティーがすごかった理由はそこにあったっていうね。

(町山智浩)そうなんですよ。ぜんぜんこれ見ていまの若い人は、こんなバカな!って言うんですけど、全部事実ですから(笑)。全部事実です。

(赤江珠緒)全部事実(笑)。

(山里亮太)園子温監督は、『何か事実に基いて作る』っておっしゃってましたもんね。

(町山智浩)そうそうそう。だって、◯◯組三代目っていう映画は◯◯組の組長さんの息子さんがプロデューサーですからね。

(赤江・山里)はー!

(町山智浩)そう言う映画です。あの、富司純子さんはご存知ですよね?要するに、緋牡丹お竜で。あの人のお父さんはそういう方で、その方が東映の重役クラスのプロデューサーでしたから。

(山里亮太)はー!また町山さんの蛇口がゆるくなってきたよ。

(町山智浩)もうこのへんで止めておきましょう(笑)。その次は『ゼロ・グラビティ』。

(山里亮太)見ました!

(赤江珠緒)これは日本でもヒットしてるじゃないですか。

(町山智浩)これはすごかったですね。ウチは夫婦ゲンカみたいになりましたね。

(山里亮太)なんでですか?

(町山智浩)カミさん、ダメなんですよ。ジェットコースターとかそういうの。

(山里亮太)あ、たしかに中に入っちゃっている感じで見るから。

(町山智浩)最初の13分の、グルングルン。見ました?

(赤江珠緒)見てないんですよ。まだ。ちゃんと見た方がいいですね。映画館で。

(町山智浩)あれで出た後、『こんなもの連れてきて!』って怒ってましたよ。

(赤江珠緒)(笑)。ああ、そう。

(山里亮太)ちょっとね、酔う人は酔っちゃう。

(赤江珠緒)酔う人は酔う?乗り物が弱い人は。

(山里亮太)ぞっとするのよ。ずっと。こんな状況になったら、どうしよう?って。

(町山智浩)車とか飛行機とか弱い人って、飛行機や車に乗った状態で窓の外を見てて、隣に乗っている電車が後ろに下がったりするだけで気持ち悪くなる。

(赤江珠緒)わかる。私も割とそうなんですよ。だから、車の中でなんか下を向いてものを見ろとか言われてもダメなんですよ。

(町山智浩)風景が動くだけで三半規管がおかしくなって、ウッ!ってなるような人は、絶対この映画はヤバい(笑)。

(山里亮太)赤江さん、ちょっとヤバいかもしれない。

(町山智浩)そういう時は手元を見たりして(笑)。

(赤江珠緒)ちょっと目をつぶったりして。その瞬間。

(山里亮太)でも、本当に同じクルーとしているみたいになりますね。途中で。

(町山智浩)そうなんですよ。

(赤江珠緒)だって宇宙にいる感じなんでしょ?

(山里亮太)そうそうそう。

(町山智浩)これね、面白いのがジョージ・クルーニーが出てて。この人、本当にここに出てくるジョージ・クルーニーって全くトイ・ストーリーに出てくるバズ・ライトイヤーそっくりですね。声も顔も。あれはおかしいですね。こんなアゴでね。宇宙飛行士、いるじゃないですか。トイ・ストーリーの。低い声で話す。

(赤江珠緒)あの、春日さんみたいなね。

(山里亮太)どの春日さん?

(赤江珠緒)お笑いの。

(山里亮太)オードリーの?

(赤江珠緒)ちょっと春日さんっぽくないですか?

(町山智浩)そんなことないでしょう(笑)。

(山里亮太)なに、急にトンチキなこと言ってるの?

(赤江珠緒)あ、いいです。進めてください(笑)。

(町山智浩)いや、あれはでも、いい役ですよ。ジョージ・クルーニーはね。かっこいいんですよ。

(山里亮太)かっこいい。三枚目なところもあって。

(町山智浩)そうそう。で、泣かせるんですけど。まあ、素晴らしい映画でしたね。登場人物がわずか2人しかいない。

(赤江珠緒)そっか。で、ちゃんと1時間半っていう。

(山里亮太)で、町山さんの言っていた、いまの映画事情の中国に対してのメッセージとかもね。メッセージというか、ああ、町山さんの言っていた通りだって。ここで中国が!?みたいなところもありますよね。

(町山智浩)中国が出てきますね。重要な感じでね。これ、中国でも当たっているみたいですね。ゼロ・グラビティは。必ず入れておくというね。はい。あと、次はね、『少女は自転車に乗って』っていう。

(赤江珠緒)これもいま、公開中。

(町山智浩)公開中ですね。岩波ホールで。これはサウジアラビアで10才の少女が自転車に乗りたいと思って。ところが自転車は女の子は乗っちゃいけないと言われて。じゃあ自分で買うわ!と。自転車を買うためにお金を集めるっていう話なんですけど。これ、本放送では僕、話さなかったんですけど、この映画が完成した直後にですね、サウジアラビアで女の子、自転車に乗ってよくなりました。

(山里亮太)ええっ!変えたんだ。映画が。

(町山智浩)突然。映画が変えたんだろうと言われいます。王様がそう言ったと。『女の子、自転車に乗っていいよ』と。まだ自動車はダメなんですけどね。

(赤江珠緒)あ、自動車はダメなんだ。

(町山智浩)まだダメ。

(山里亮太)その監督がね、本当にやりたかったことが叶ったわけですね。

(町山智浩)そう。だから映画を作るってことは、ただ作るだけじゃなくて、なにか世の中を変えることがあるんですね。

(赤江珠緒)ありますね。

(山里亮太)特にドキュメンタリー、いっぱい出てて。伝えたいっていう気持ちで出ているドキュメンタリーは全部、ひょっとしたらこれから変わっていくスタートになってるかもしれないですね。

(町山智浩)ただ、この映画は普通にかわいい女の子の映画として見れるというところで、よく出来てますね。それが、少女は自転車に乗って。

(山里亮太)すごい!

(町山智浩)どんどん行きます。その次はですね、『12年間の奴隷生活』っていうタイトルで僕が紹介した映画が、日本語タイトルが決まりまして。『それでも夜は明ける』っていうタイトルになりました。これ、ちょっとわからないですね。奴隷っていう言葉が入ってないんで。まあ、キツい言葉だから使えないって思ったのかもしれないですけど。

(赤江・山里)ああ・・・

(町山智浩)これ、3月7日に日本公開されるんですけど。奴隷を入れてキツくない感じにするには、壇蜜を使うしかないんじゃないかと僕は思ってるんですけど。

(山里亮太)どういうことでしょうか?

(赤江珠緒)あなたの奴隷にって。ありますけどね。壇蜜さんはたしかに。

(町山智浩)そう。これ、いきなり普通に生活していて、それまで1回も奴隷の経験のない黒人の完全に自由に生まれてきた人がいきなり誘拐されて、南部に送られて『お前は奴隷だ!』って奴隷にされちゃうっていう話なんですよ。これは観客が、やっぱり感情移入しやすいんですよ。なんにも知らないところからいきなり奴隷にされるとこんななのか!っていうショックを受ける。シミュレーションに近い、だからゼロ・グラビティに近い感じなんですよね。『いきなりお前を宇宙の彼方に放り出してやるぞ!』みたいな感じなんで。これはやっぱりね、タイトルは『私は奴隷にされました』とかね。それじゃ、ダメかね?

(赤江珠緒)ちょっと違う響きに感じちゃうね(笑)。たしかにちょっと・・・

(町山智浩)ダメか?大人な感じがする?

(山里亮太)なにかね、女王様が出てきそうな感じ。

(赤江珠緒)そうそうそう。

(町山智浩)これ、難しいな!でも、それでも夜は明けるだとわからないと。

(山里亮太)たしかにわからないですね。

(赤江珠緒)すごく文学的な感じになりますね。

(町山智浩)そうなんです。これはすごい映画でしたよ。とにかく。まあ、言えないんですけど。もう見ている間、息が詰まるシーンがあって。そこがすごいですから。

(赤江珠緒)これも実話ベースですね。

(町山智浩)これも実話ですね。手記ですね。

(赤江珠緒)3月7日公開。

(町山智浩)あとですね、『あなたを抱きしめる日まで』。これもタイトルがわからない!これ、『Philomena』っていう原題なんですけど。これは私生児を産んじゃったアイルランドの女の子が、子どもを修道院で無理やり売られてしまって。自分の子どもはどこに行ったのか?って探したら、なんとアメリカで政治家になっていたという実話を。

(赤江珠緒)現代社会でこんなことが!っていうことですね。

(山里亮太)実話なんですよね。

(町山智浩)だって、産んだお母さんの意思に反してっていうか、チェックも了解も得ないで赤ん坊を売っちゃってたわけですからね。まあとんでもないことが行われて、アイルランドの修道院の実話なんですが、非常に楽しい映画になってるんですよ。こんな酷い話がね、もう見ていてほのぼのする。

(山里亮太)笑っちゃう、コメディー的な要素もたくさんあるって。

(町山智浩)これ、コメディアンの人がプロデューサーをやって、この実話をコメディーにしようとしてやっている話なんで、すごくほのぼのとして、いい映画になってますね。

(赤江珠緒)これが、あなたを抱きしめる日まで。

(山里亮太)なんか素敵な愛の物語な感じ、するけどね。

(町山智浩)でも、本当にいい映画です。これ。

(赤江珠緒)こちらは3月15日から公開です。

(町山智浩)あと、9本目かな?これね、日本公開が決まってないんですが、『物語る私たち』という映画なんですけども。これはサラ・ポーリーというカナダのかわい子ちゃん女優の人がですね、いま映画監督として非常に優秀なんですけど、その人が自分の家族を撮ったドキュメンタリーなんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)これね、兄弟の中で彼女だけ顔がちょっと違うんで、子どもの頃からお兄ちゃんに『お前、お父さんとかお母さん、違うんじゃないの?』とか言われていたらしいんですよ。で、本当に違うんじゃないか?と思って調べ始めるっていう話なんですよ。女優になってから。で、しかもそのお母さんはサラ・ポーリーが生まれて10年後に死んじゃってるんですよ。ほとんどお父さんによって育てられて大きくなっていて。お父さんとすごい親密なんですよ。

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)でも、お父さんは違うかもしれないと。自分をお母さん以上に愛してくれているお父さんは、実は血がつながっていない可能性があると。どうもお母さんは奔放な女優さんだった人で、お父さんじゃない人の子どもを妊娠したかもしれないというのをドキュメンタリーでずっと追いかけて。自分自身を調査していくっていう話なんですよ。

(山里亮太)ドキュメンタリー・・・

(町山智浩)これも、ハードな話のようで、実際ハードな話なんですけど、そういう風に撮ってないですね。

(赤江珠緒)へー!ご自身で撮ってらっしゃるんですか?

(町山智浩)そうなんですよ。自分で出てきますけど。これも素晴らしい、感動的な映画でしたね。はい。で、いままで順位なかったんですけど、ベストワンはあります。

(山里亮太)あら?

(赤江珠緒)ベストワンだけある!2013年。

(町山智浩)ベストワンだけあります。ベストワン、僕今年、いちばんよかった映画は『凶悪』ですね。

(赤江珠緒)あ、凶悪!瀧さんの!

(町山智浩)もう、とにかく凶悪だったですね!もうどこまでが演技で本人なのか、よくわからないっていうね。

(山里亮太)怖いんだよ、瀧さん!

(町山智浩)怖いですよ、あれ。で、ふざけてると思うと急に、『なんだ、おめー!』って来るじゃないですか。

(山里亮太)急に地雷踏んじゃった感じのね。あの。怖かったー。

(町山智浩)それまでふざけているから、えっ!?っと思ってびっくりするじゃないですか。

(赤江珠緒)そう。で、憎めないような、人懐っこい部分を出したりもするんですよ。

(町山智浩)いい人でもあるんですよ。でも、人殺しなんですよ。

(赤江珠緒)やっていることもムチャクチャでね。

(町山智浩)人は殺すんだけど、いい人なんだよ!みたいなね。『あの人、いい人なんだけど、人殺しだけがちょっと玉にキズなんだよね!』っていうね。『10人ぐらい殺すんだよねー。それさえなきゃいい人なんだけど・・・』っていう人ですよ。

(山里亮太)それがあったら絶対ダメなんですから。

(町山智浩)ダメなの?そっか。

(山里亮太)瀧さん、たしかに言われてみれば。

(町山智浩)あと、やっぱりリリー・フランキーが途中でボソッと、『善悪とかさ、関係ないよね』って言うじゃないですか。あれっ?それ、リリー本人として言ってないか!?って思いますよね!お前、いまの素だろ!?って(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)凶悪のあの2人は素でやっているということで。

(町山智浩)そう。素でやっているように見えて、時々怖いんですよ(笑)。

(赤江珠緒)あのキャスティングはすごかったですね。

(町山智浩)すっごい虚実の、本当にどっち?っていうのがよくわからないところが、本当に怖かったですね。個人的にも。

(赤江珠緒)だってね、木曜たまむすびで、曜日で宝くじを買おう!ってピエールさんの発案で。みんなからお金を没収する時にね、瀧さんがもう完全に巻き上げる感じで。凶悪な感じ。

(町山智浩)(笑)。どうせ、オラッ!って言いませんでした?

(赤江珠緒)『参加しません』とか言う選択肢もなく。

(町山智浩)『ぶっこむぞ!』って(笑)。怖い(笑)。

(山里亮太)もちろん役でやっておりますと。私は引き取らせていただきます。

(町山智浩)いや、わからない。その辺がぜんぜんわからない!怖いですね。

(赤江珠緒)あれが梅さんでもありますからね。

(町山智浩)梅さんでもありましたね。お寿司屋さんもいつキレるかわからないと思って、怖かったですね。刃物持ってるし。はい。

(赤江珠緒)すごかったですね。はい。2013年。いろんな面白い映画がありましたね。これから日本で公開というのが多いですから、ぜひチェックしてみてください。

(町山智浩)はい。

(赤江珠緒)今日は町山さんが選ぶ2013年ベスト映画、ご紹介いただきました。町山さん、今年も本当にありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした!

<書き起こしおわり>

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