宇多丸が語る サイド・バイ・サイド 映画と音楽のデジタル化の類似性

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宇多丸さんがTBSラジオ『ウィークエンド・シャッフル』の中で、映画『サイド・バイ・サイド: フィルムからデジタルシネマへ』について語りました。


今週はね、シネマハスラーが『アルマジロ』ってことで、僕は最寄りのあたりで渋谷のアップリンク・・・例のアレですよ。a.k.a 友達の家っぽい映画館というね、あそこくらい整理券早め貰わないといい席座れなくてキツイっていう・・・前の方に良さげな席が集中してるんですよね。『アルマジロ』、それで見てきて、同じアップリンクでやっている、去年の暮れくらいからずっとやってて、これ見なきゃなと思ってた同じドキュメンタリーの『サイド・バイ・サイド』っての、御存知ですかね?『サイド・バイ・サイド: フィルムからデジタルシネマへ』。

あの、俳優のキアヌ・リーブスが発起人かつナビゲーターになって、早い話が今、映画全体が要はデジタル撮影、上映も含めてデジタル化の波がバーッと来ていて、要は映画が生まれてちょうど100年、そんぐらいの歴史の中で一大転換期を迎えているという時に記録しておかなくちゃなっていうんで、キアヌ・リーブスが言い出して撮ったというドキュメンタリー。いろんな映画監督とか撮影監督、編集マンとかカメラ自体の開発メーカーの人とかの、いろんなインタビューを撮ったやつがあって。

シネマハスラーの中でちょいちょい言及するようにはしてますけど、「これ、デジタルのナントカってカメラで撮ってますよ。」とか、いつの間にか「あ、これもデジタルで撮ってるんだ。」みたいのが。もうほぼ、結構フィルムで撮っているのがむしろ少数派になりつつある勢い。日本のたとえばインディー映画なんかはもう、デジタルばっかり。そのデジタルの技術の進歩も、シネマランキング2012でちょっと言いましたけど、たとえば日本映画インディーズとかでサイタマノラッパー。1・2と3、この1・2と3の間のパッと見の質的さ、ルックの違いってさ、やっぱデジタル技術の差というか、進歩したから良かったねと。

要は、「ああ、ビデオね。」っていう感じがどんどん無くなっているというね。でまあ、たとえばアメリカとかハリウッド映画で使っているデジタルカメラも、どんどんどんどん進化・・・もう日進月歩です。たぶん、この『サイド・バイ・サイド』で語られている話とかも、ちょっと今の観点から・・・たとえば今だったら例の『ホビット(思いがけない冒険)』で使われたハイフレームレートはどうなの?とかさ、いろんな話聞いてみたいんだけど、これでさえ古くなっちゃうくらい日進月歩で進んでいるというね。

なので、ちょっと前で言うような、たとえばその「デジタルじゃダメだよ。」とか、フィルムかデジタルか、二者択一でナントカとかそういう話じゃもうないっていうかね。もうデジタル化は避けられない。ただ保存の問題とはいろいろ不安はあるし、うるさ方に言わせればまだフィルムのほうがいい。クリストファー・ノーランとかはもう絶対言い張っている。

一方でたとえばスティーブン・ソダーバーグとかは、結構「もう、そりゃデジタルでしょ。(フィルムにこだわる)メリットないでしょ!」って。多分フィルムの時に撮影監督主導だから、それで嫌な思いしたと思うんだよね。「アイツらエバりやがって、俺の言うこと聞かないで。バカにされた!」っていうね。「お父さんにもぶたれたことないのに!」ってね。そういう感じ、なのか?まあ、推進派ともちろんフィルム、どっちがいいとか悪いとかじゃない。もちろん作家性の問題なんだけど、デジタル化の波。これね、映画、特に結構本数観るような人は今後、映画観る基礎知識として観ておくといいんじゃないですかね。

音楽業界でのデジタル化議論と通じるもの

でね、観ててすごい思ったのは、音楽界で何年遅れかなぁ?10年とは言わないけど、7-8年かな。音楽界では7-8年前にしてた議論にちょっと通じるものがある。全く同じとは言いませんけど、通じるものがあるなと思ったんですね。今、音楽のレコーディングの現場ってのは、いわゆるデジタルレコーディング、ほぼ99.999%たぶんデジタルレコーディングですよ。いわゆるPro Toolsというね、コンピュータ内にデジタルデータで音の素材を取り込んで、加工がもう自由に出来るというそのアレが、だいたい初期だと90年代後半ギリくらいから導入されはじめて、完全に入れ替わったのが2005・6(年)くらいかな?僕らはちなみに、2004年のアルバム『グレイゾーン』ぐらいから完全移行したぐらいの感じで。

で、その前までどうだったかというと、特に導入したての頃はどうだったかというと、やっぱり昔ながらのエンジニアの人とかは、極論言うとね、アナログの音・・・もちろんアナログの音の素晴らしさ、それはあるんです。そっちの方がいいってのは全員・・・これはフィルムとかもそうですけど、あるんです。あるんだけど、たとえばその強硬なアナログ音派の人は、「あれは音じゃない!」とか。要するに「デジタル化された音なんてのは音じゃねえ!」みたいな、それくらいのうるさ方の人もいた。

でも、いろんなエンジニアの人同士が、それこそサイドバイサイドですよ。横に並べて聴き比べとかをして、いろいろやり方とかを探っていくうちに、全然Pro Toolsで行けるし、実際僕らみたいにレコーディングをする側からすると、やっぱりデジタルレコーディングが導入されたことで、やれることの幅が飛躍的に広がったんですね。前だったら、これはもう技術的に難しいとか、もしくは面倒くさい、面倒くさすぎる、あまりにもコストが掛かり過ぎるから出来なかったようなことが、サクッと出来る。しかも、試してダメならすぐ止められる。また元に戻せる。

つまり、表現としては可能性が明らかに広がって、僕ら的にはもう、表現としてはプラス以外の何物でもなくて。で、音質とかもどんどん向上してるんで、今となっては、やっぱり「デジタル、アリかナシか?」とかって(問いには)、「いや、アリかナシかじゃねーから、それは。」っていうね。あの、竹中夏海先生の「タレごはん、知らねーとかじゃねーから。」、あの返しにも通じることに今はなっている。だから、もちろん映画がね、音楽業界と同じように、デジタル化の流れがまったく同じように行くかは、また別問題ですけども、初期はそういうこと言われてたけどなぁ、みたいなのはやっぱりあるなと。

やっぱり当然、そのデジタルの使い方とか技術自体も進歩するし。なので一概にデジタルだからダメだとか、っていう話じゃもちろん・・・もうそんなこと言ってられないし、この『サイド・バイ・サイド』でも出てきますけど、デメリットとメリットで言うと、もうメリットがもう、圧倒的に大きすぎる。もちろん、さっきから言っているように保存の問題だとか、たとえば上映技師の人の技術が途絶えちゃって上映できないものがるとかさ、そういう問題はあるにしてもですよ。大筋としては、そういう音楽業界の7-8年くらいの流れを思い出したりなんかしたなあということでございます。

<書き起こしおわり>