吉田豪 横浜銀蝿を語る

吉田豪 横浜銀蝿を語る アフター6ジャンクション

吉田豪さんが2022年7月24日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で横浜銀蝿についてトーク。最近、翔さんとtvkでテレビ番組を始めたという吉田さんが横浜銀蝿や銀蝿一家について、話していました。

(宇多丸)後ろでもちろんね『ツッパリHigh School Rock’n Roll (登校編)』。横浜銀蝿の代表曲が流れてますけど。

(宇多丸)今回はtvk・テレビ神奈川で、なんと吉田さんと横浜銀蝿の翔さんによる新番組がスタートしたという謎な情報が……。

(吉田豪)やっているんですよ。謎だらけ。

(宇多丸)まあ、横浜銀蝿について更に伺おうということで。

(吉田豪)まず、番組の説明をしますね。7月5日の火曜日からtvk・テレビ神奈川で毎週火曜日の24時から15分枠のレギュラー番組が始まって。ちょっと前……だから6月かな? ものすごい暑い日に吉田豪の目撃証言があったんですよ。「クソ暑い中、『吉田豪』って書かれたプラカードを持っていた吉田豪が渋谷の駅前にいた」っていう……(笑)。

(宇多丸)うんうん(笑)。

(吉田豪)もっと説明するとこれ、この時に革ジャンを着ていたんですよ。

(宇多丸)ああ、銀蝿スタイルで。

(吉田豪)これが要はオープニングの映像……『ゲバゲバ90分!』のパロディで。僕と翔さんが自分のネームプレートを持って行進してるっていうのを撮ったわけですよ。

(宇多丸)ああー、『ゲバゲバ』パロディーなんだ。俺、なんかこの写真で自分の名前を持って歩いてるから。「冠番組にどんだけ説明がいるんだよ……」みたいに思っていたんだけども。そういうことなのね。

(吉田豪)人違いも何もしないじゃないですか。翔さんだったら「銀蝿の翔」って書いたらわかるけど。「翔」一文字だからいいけど、「吉田豪」ははっきりわかるんで。なので「吉田豪がいたぞ」ってなって。

(宇多丸)なるほど、なるほど。

(吉田豪)それが7月12日と19日の回にはCKBの横山剣さんが来たりしていたんですけども。

(宇多丸)やっぱり横浜のね。

(吉田豪)そうです、そうです。でもそもそも、なぜこんな番組が始まったのか?

(宇多丸)そこですよ、本当に。

(吉田豪)意味がわからないっていう。それが、ちょっと前に僕、銀蝿の翔さんをインタビューしたんですよ。で、その時の裏テーマが、銀蝿解散後の翔さんがバラエティタレントとしてものすごい適性があったと思ってて。

(宇多丸)へー!

翔さんのバラエティタレントとしての適性

(吉田豪)『上海紅鯨団が行く』っていう、これが『ねるとん紅鯨団』の前の番組ですね。紅鯨団シリーズの……。

(宇多丸)はー。「紅鯨団って何なんだ?」って思ってたけど、そういうことなんだ。

(吉田豪)そうですよ。これは有頂天の曲名から来てるような。その由来も何もわかんなくなっちゃうんですけども。その時の翔さんとか、あとTBSで言えば、『土曜深夜族トンガリ編』とか『平成名物TVとんがり編』っていう、これも要するに『平成名物TV』っていうのに一部が『イカ天』だったんですよね。その二部が翔さんとムーンドッグスのIKURAちゃんのでたらめな番組で。

(宇多丸)IKURAさんも当時、すごい出てましたもんね。

(吉田豪)そうですね。要は伝説の番組のニアピンで活動していた時の翔さんのトークスキルというか、そういうものがすごかったと思っていて。インタビューの時に僕がそれを絶賛したんですよ。そしたら、本人はあんまり自信がなかったみたいで。「いや、めちゃくちゃ良かったですよ」っていろいろ話していたら、インタビューの途中からなんかだんだんスイッチが入ってきて。「俺、そんなに良かったのかな?」って(笑)。

(宇多丸)「俺、そうか。良かったのか!」みたいな。

(吉田豪)「あんまり自分で振り返ること、ないからさ。本当に? まだ、できるかな?」って始まって。で、当然こっちも乗っかるじゃないですか。「いけると思いますよ!」って。そしたら「60過ぎても、できるかな? じゃあジョニーに言って番組1本、作ろうかな?」ってなって。これ、説明がいりますけど。ジョニーさんというのは銀蝿のギタリストで、銀蝿をやめた後にキングレコードの偉い人になって。で、ベルウッドレコードの代表にまでなった人なんですよ。背広組として、ちゃんと成功した人で。で、『恋するフォーチュンクッキー』の裏方バージョンの時に踊ってたりとかして。

そんなジョニーさんが背広組で成功した後に、銀蝿のオリジナルメンバーの復活に参加して……みたいな流れがあってからの今なんですけど。で、「ジョニーに言って番組1本、作ろうかな」って、インタビューの締めがそれだったんですよ。で、その時に言っていたのが「そうか、バラエティ番組をやって豪くんを呼べばいいんだな」って言ってて。で、僕も乗っかって「ゲストとしては全然、いつでも呼んでくださいよ!」って(笑)。

(宇多丸)「ゲストとしては」(笑)。

(吉田豪)で、よくあるその場だけの話かと思ったら、本当にジョニーさんが予算を確保して、tvkの15分枠ながらレギュラー番組を作ることが決定。しかも僕もゲストではなく、パートナーっていう。

(宇多丸)「番組、やろうかな」ってできちゃう翔さんもすごいしね。あと、やっぱり吉田豪さんのそういう時の見込まれっぷり? 時々ある……。

(吉田豪)巻き込まれる能力がね(笑)。

(宇多丸)時々あるさ、見込まれすぎる時のやつね。うん。でも、相方として吉田さん、ある種回しを吉田さんがやって……みたいことなんですかね?

(吉田豪)ただ、なんだっけな? 翔さんとしては「俺は理想としては『タモリ倶楽部』のタモさんで。基本はだから、ガダルカナルタカさんとかが『タモリ倶楽部』で回すみたいな感じでやってもらう」みたいな認識だったらしいんですけど……やっぱり翔さん、スイッチが入ってて。もうガンガン自分で回すんですよ。

(宇多丸)ああ、そうか。元々しゃべれる人だから。そりゃあ。

(吉田豪)そうです。で、たまに僕が補足する感じでやってますけども。

(宇多丸)なるほど。これ、街ロケ物っていうのは……?

(吉田豪)いや、街ロケじゃないです。街ロケはオープニングムービーだけですね。基本的にはトークです。ゲストを招いて、昭和話をしていく感じで。

(宇多丸)まだ、でも始まったばっかりですよね?

(吉田豪)始まったばかりです。まだ横山剣さん回と第0回の僕と翔さんの回だけ流れた感じですね。

(宇多丸)どうですか、やってみて?

(吉田豪)ええと、だからこういう機会じゃないと聞けないことっていうのがいろいろあって。僕、実はだから横浜銀蝿伝説の検証みたいなものも僕のライフワークのひとつなんです。

(宇多丸)横浜銀蝿伝説?

(吉田豪)そうなんですよ。横浜銀蝿って僕の中では、何だろう? 本人たちにも言ったんですけど、日本のロック史では全く評価されてない人たちっていう。

(宇多丸)ちょっとコミック的なね、感じがしますね。

(吉田豪)そうですね。プラス、だから芸能史とか社会風俗みたいな。ノリで言うと要は『積み木くずし』とかなめ猫と同じジャンルっていうか。

(宇多丸)たしかに。そういう時代感の……。

(吉田豪)当時のツッパリ文化を作った人ではあるけれども、音楽的に語られない。

(宇多丸)ちょっとパロディみたいな感じの……。

(吉田豪)そうです。ただ、それもパンク的な視点で見たら、ものすごいなんかラモーンズ的というか。革ジャンを着て、スリーコードのシンプルなロックンロールしかやらないっていう。みたいな再評価を僕が勝手に20年ぐらい前から始めて。で、いろんな関係者の証言とか、いろんな本とかを読んでいくうちに、興味深いんですよ。やっぱり事務所からして不思議で。入ったところがゴリゴリの芸能事務所なんですよね。ユタカプロっていう、美川憲一さんをスカウトした人がジャニーズ事務所に憧れて作った事務所で。で、ベイ・シティ・ローラーズみたいなアイドルバンドの事務所だったんですよ。

(宇多丸)ああ、当時ね、ベイ・シティ・ローラーズっていう、ロックバンドなんだけど完全にアイドルとして……。

(吉田豪)完全にアイドルですね。それの日本版みたいなものを次々と作っていったところで。そこになぜか潜り込んで出来たのが横浜銀蝿だから。実は田代まさしさんとか、同世代の不良バンドは結構敵視をしていたっていうか。「あいつら、あのアイドルバンドのところだろう?」みたいな。「あいつら、大学行ってるんだろう?」みたいな感じで。

(宇多丸)なるほど。「作られたもんだ」っていう。

どこまでがギミックでどこまでがリアル?

(吉田豪)そう。ただ、どこまでがギミックで、どこまでがリアルかみたいなものの調査をずっと僕はしてるんです。それが面白くて。実はだから、この先のゲストで後のTM NETWORKTMの木根尚登さんが、初期銀蝿……全然ああいう風に、あそこまで固まる前の銀蝿に実はヤマハのコンテストで出会っていて、みたいな。

(宇多丸)初期銀蝿に木根さんが?

(吉田豪)ロングのチャイナ服で、ちょっとコミックバンド的な面白い歌を歌っていた時の思い出とかを実は木根尚登さんがこの番組に出て語ってくれたりとか。

(宇多丸)へー! 全くそんな時は知らないですね。

(吉田豪)そうなんですよ。『ぎんざNOW!』とかに出てた時代の、その初期銀蝿があるんですよね。

(宇多丸)『ぎんざNOW!』……じゃあやっぱりちょっとバラエティ的な感じなんですね。やっぱりね。

(吉田豪)プラス、やっぱトークもね、しゃべれる人っていうのも……不思議なんですよ。銀蝿ってやっぱり不良文化の象徴だったから、ライブに行くのも学校で禁止されたりとか。入り口でPTAが張っていて……みたいな、結構な状態になってたから。だからこれ、銀蝿のコンサートを正当化するためにでもあったと思うんですけど、集まった不良だらけの会場で途中から不良の人生相談に乗るっていうのが始まるんですよ。ライブの後で「対話集会」って言って、不良たちの悩みに兄貴的な態度で翔さんが話していくっていう。

(宇多丸)対話集会!?

(吉田豪)そう。それで翔さんの兄貴的な感じのトークスキルが磨かれていくんですよ。すごい特殊で。

(宇多丸)でもそうやって不良青年たちの道標にもちゃんとなっているよっていう。

(吉田豪)そうです。で、銀蝿一家って後にね、嶋大輔とか紅麗威甦(紅麗威甦)とか岩井小百合さんとか。そうそうたる人たちがいたんですけど。

(宇多丸)それこそジャニーズ的な、じゃないけど。たしかにね。

(吉田豪)そう。それなんですよ。これもジャニーさんと同じようなやり方でやってたっていう。しかもだから、最後の方とか小学生とか入れてますからね。小学生銀蝿とか。で、嶋大輔さんに僕、確認したんですよ。その後、翔さんの後に嶋さんをインタビューして。嶋大輔さんのスカウト伝説っていうのがあるんですよ。嶋さんが銀蝿のデビューコンサート……初期の銀蝿じゃなくて、ちゃんとした横浜銀蝿になって最初にちゃんとしたホールでコンサートする時に、嶋大輔がそこのトイレで隠れてタバコを吸ってたら、その銀蝿の事務所の社長に見つかって。「お前、事務所に来い」って言われて。何かと思ったら、カバン持ちとかをやらされて。そしてその後、売り出されていくみたいな伝説があったんですけど。これ、どこまで本当なのかな?って思って。

(宇多丸)たしかに。

(吉田豪)それで僕、資料を集めたら、いろんな資料でディテールが全部、違うんですよ。怪しいってなって本人に確認を取ったら、「こういうことがあったのは事実だけど、現実はもっとひどかったんです」って。

(宇多丸)ああ、タバコを吸ってたぐらいじゃなかった?

(吉田豪)たまり場になっていたゲームセンターがあって。そこの店員がもちろん不良で。チケットをなんか150枚、渡されて。「これ、さばけ」みたいな感じで。で、学校の悪い連中とかにそのチケットをさばいて。悪い連中でそのコンサートに行って。で、トイレに隠れることもなく、禁煙って書いてある会場、目の前で不良たちと一緒にタバコをプカプカ吸っていたら、それが問題になって通報されて、警察沙汰になって。で、なんか補導された時に身元引受人に来てくれたのがその事務所の社長で。で、「お前、見込みあるな。タッパもあるし、かわいいし……」っていう感じで。だから、本当はもっとひどい話を多少、アイドルっぽく……「隠れてた」とか。

(宇多丸)たしかに(笑)。そうか。これ、アイドルっぽい盛りだったんだ。なんだ、それ? そうなんだ。これ、ソフト化してたんだ(笑)。

(吉田豪)そう。意味がわかんないじゃないですか。

(宇多丸)でも、たしかに不良文化……パー券とかもそうだけど。そのチケットさばきヒエラルキーみたいのね、ありましたもんね。かつてね。

(吉田豪)僕とか宇多丸さんの時代は本当に恐ろしかった時代ですよ。

(宇多丸)まあ、僕はそこまで触れてないけど。でも、わかります。ディスコとかもそうでした。

(吉田豪)それこそ嶋さんとかはデビューしたら、全国各地の不良が嶋さんを襲いに来るらしいんですよ。

(宇多丸)えっ? だから、そんな『男の勲章』なんて言ってるやつだからって、頭を取りに来るわけだ?

(吉田豪)不良で名前を挙げた奴がいるから、「あいつを潰せば俺はもっと上に行ける」みたいなのが……。

(宇多丸)これは現在でも不良を売りにすると、そういうのがあるんだよ。

全国の不良から狙われた嶋大輔

(吉田豪)あるんですよ。で、そういうのが学校に次々と現れて。しかも電車移動だから。いつもは不良仲間と一緒に移動して守られていたけども、1人になった瞬間に襲われて……とか。

(宇多丸)タレント活動をした途端に1人になって……。

(吉田豪)大変だったらしいんですよ。ちなみにそんな嶋さん、これもまだ確認は取れてないんですけど。この伝説シリーズで言うと、紅麗威甦もそうなんですよね。紅麗威甦っていう、その弟分のバンドで、杉本哲太さんをボーカルとしていて。

(宇多丸)ああ、そうか。もう今や、そのルートがわからなくなっちゃっているけども。杉本哲太さん。

(吉田豪)杉本哲太さんもゴリゴリのワルだったわけで。で、そのスカウトっていうのが偶然、横浜の駅だったかな? 嵐さんが偶然横浜にいたら、杉本哲太さんが……当時は全然わかんないですけどね。1対5ぐらいいて、不良を次々とのしていくヤバいやつがいて。で、そこに警察かなんかが来たから「お前、こっちに逃げるんだ!」って連れ出したのが杉本哲太さんだったっていう……(笑)。

(宇多丸)マジか!(笑)。これ、ちょっと伝説感が強すぎだけども(笑)。

(吉田豪)だからどこまでがギミックなのか、リアルなのかがわかんないから。これ、本当にいつか杉本哲太さんに聞きに行きたいっていう。

(宇多丸)聞きに行かないと。嵐さん、お亡くなりになっちゃったから。

(吉田豪)翔さんに確認すると「そのへんは嵐さんしかわかんないな」っていう。

(宇多丸)へー! じゃあ、たしかめたかったっすね。これね。そうか。ちなみに嶋大介さんは誕生日、僕と同じ5月22日です!

(吉田豪)歳もかなり近い!

(宇多丸)いや、近くはないかな? もうちょっと上かな? へー、そんなのもあったりする。

(吉田豪)で、もっと言うと嶋さんとかから話を聞いてて、いろいろしているうちにある衝撃事実が1個、明らかになってきて。これも日本のロック史ではあまり語られてない話で。嶋さんが事務所を辞めるに至るゴタゴタみたいな話を聞いたりとかしてるうちに、ちょっと明らかになってきたことなんですけど。嶋さんのインタビューではだいぶソフトには書いてあるんですけども。要はずっと、銀蝿一家として活動してきて。稼いだお金で銀蝿ビルみたいな、自分たちの事務所のビルを渋谷に作っていて。

そこに荷物とかも置いていたのが、ある日、事務所に行ったら自分の荷物が全部表に出されてて。で、自分がなんかすごい雑に扱われた感じがして。で、そこに新しいバンドが入って、その人たちを大事にして、自分の荷物は放り出されていて。「もう、こんな会社辞めてやる!」みたいになって。それで嶋さんは俳優業にどんどん専念をしていくことになるっていう流れだったんですけども。ここで明らかになったのが、一時期チェッカーズが銀蝿の事務所にいたんですよ。

(宇多丸)ええーっ? やっぱり不良ロックンロールバンドとして?

一時期、チェッカーズが横浜銀蝿の事務所に所属

(吉田豪)そう。クールスの流れを汲む……そうなんです。チェッカーズも芸能のイメージが強いけど。元々は不良ロックンロールバンドなんですよ。で、それが……1回、売れた後。売れ出したぐらいの時にちょうど事務所と揉めたらしくて。次の事務所に移るまで間に1回、銀蝿の事務所がチェッカーズを預かっていて。という、ほぼ日本のロック史で語られない話が……(笑)。

(宇多丸)うん。聞いたことないし。聞いたことないけど、でも「ありそう!」みたいな。

(吉田豪)そう。納得するっていう。「ああ、はいはいはい!」っていう。たしかにね、だからベイ・シティ・ローラーズ的な事務所が好きなはずなんですよ。

(宇多丸)たしかに。完全にさっき言っていた、それですもんね。チェッカーズはね。

(吉田豪)タータンチェックで、かわいらしいビジュアルで、ベースは不良だけど……っていう。事務所の社長、気に入るはずなんですよ。

(宇多丸)っていうか、ある意味そのベイ・シティ・ローラーズ的なあれをそのジャニーズ的なシステムでやるっていうのが実現されてたわけですね。一時期までは完全に。

(吉田豪)あんまりそれも日本のロック史では語られてないんですけど。『ぎんざNOW!』とかに出るようなバンドをいくつも作ってやってたんですね。

(宇多丸)ですよね。で、そこからすごい人材も輩出してるわけじゃないか。杉本さんとか嶋さんとか。

(吉田豪)そうなんですよ。いろんな世界で。

(宇多丸)だからそれぐらいツッパリ文化……ヤンキーって言ってなかったのよ。ツッパリ。ツッパリ文化ってめちゃくちゃ、80年代の実は真ん中にドスンと来る文化だったというか。

(吉田豪)だってそれこそ山口百恵路線だったら三原じゅん子さんが途中でツッパリ路線になるわけじゃないですか。銀蝿の曲で。そのへんまで、人材を生んだっていう意味では、ねえ。与党の議員までいるわけですから。

(宇多丸)与党の議員(笑)。本当ですよね。不良がそういう与党的な方向に行くっていうのはもう昔から、伝統みたいのがありますけど。

(吉田豪)ちなみに横浜銀蝿は、それこそ首相と集まるイベント、あるじゃないですか。園遊会的なやつ。あれにシャコタンで乗りつけて、結構当時それで叩かれましたよね(笑)。「国家権力になびくとは!」みたいな感じで(笑)。

(宇多丸)でも、そういうところに誘われるぐらい、やっぱり……っていうことですもんね。当時はね。

(吉田豪)芸能ど真ん中だったっていう。

(宇多丸)あとやっぱりそのIKURAさんとかさ、横浜不良シーンっていうかさ。横浜不良面白い人シーンみたいなのも、脈々とあるもんな。それは。

(吉田豪)あります。それこそ横山剣さんもそうですけれど。

(宇多丸)剣さんも「イーネ!」って元はIKURAさん用語ですもんね。きっと、たしか。

(吉田豪)へー! まあ、あのへんの仲の良さも異常ですからね。本当に。

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(宇多丸)その系譜でたぶん伝説をたどっていっても、またすさまじいこと、あるでしょうしね。

(吉田豪)ちなみにこのチェッカーズ云々の話は初回、僕と翔さんの2人だけの放送の時にこの話のトスを上げて翔さんが話してくれたんですけど。翔さんが微妙にディテールを間違えてたっぽいんですよ。「あれはチェッカーズが売れる前だな」って言ってたせいか、カットになっていて。「もったいない!」っていう。

(宇多丸)残念。じゃあ今、ここでちょっと……チェッカーズがちょっと売れ出してからの話っていう。

(吉田豪)そうです。それが正解(笑)。

(宇多丸)っていうか、我々は知ってるチェッカーズの裏にはその時代があったってことですもんね? すげえな。どうですか? ナベシュンさん。次から次へと出てくる……。

(渡部峻)でもそのツッパリ文化が今、逆にちょっと流行ってますよね。また。って僕は思ったんです。日本テレビで『今日から俺は!!』っていうドラマがやっていたり。なんかその、巡っているっていうか。

(吉田豪)『男の勲章』とかね、使われていて。

(宇多丸)まあ、たしかに。『クローズ』とか、脈々とそういうものがあったりしますしね。

(吉田豪)氣志團的な流れとかね。

(渡部峻)カルチャーとしてあるなって。

(宇多丸)いや、日本で一番太いのはそっちの方なんです。どっちかっていうと。

(吉田豪)そうなんですよ。全国で一番売れるのは不良文化ですからね。

(宇多丸)そうなんですよ。「ヤンキーに売れないと、売上10万止まり」っていう。これ、昔の話で。今、10万売れたらすごいけども。昔、言われてました。「ヤンキーに売れないと、CDの売り上げは10万が上限」という風に言われてて。

(渡部峻)伝説みたいに。

(宇多丸)伝説というか、業界の常識として言われてたりしました。

ヤンキーに売れないと、本当に売れない

(吉田豪)ですよね。それはBOOWYだろうが、X JAPANだろうが、やっぱりちゃんとヤンキーに受け入れられたのが大きかったわけですよ。

(宇多丸)そうですね。ヒップホップ文化もちゃんとそこと融合してたところがやっぱり真のブレイクスルーになったわけで。

(吉田豪)そこはアイドルもそうですよね。アイドルも不良が特攻服に書くぐらいなのが……。

(宇多丸)親衛隊になってナンボですよね。車に似顔絵を書いてナンボですよ。

(吉田豪)そうそう。エアブラシでね。

(宇多丸)だから、=LOVE(イコールラブ)も次はそこに……(笑)。ということで、ありがとうございます。ちょっとまずはそのテレビ番組ね、見たいです。tvkで火曜日の……。

(吉田豪)公式でアーカイブが横浜銀蝿のYouTubeチャンネルに残っているので。リアルタイムでtvkを見れなくても、そっちで見れるのでぜひという感じです。

(宇多丸)なんか、油断ならないですね。ポロポロポロポロさ、そういう重大な話がいっぱい出てきそうじゃないですか(笑)。

(吉田豪)木根尚登さんと異常なスイングの仕方をしたんですよ。実は。

(宇多丸)そこも意外だね。

(吉田豪)木根尚登さん。僕、だから前に小室哲哉さんのインタビューをした時もスイングしたんですけど。小室さんが内田裕也ファミリーの使いっ走りみたいな位置だった時代の話を聞いたことがあって。

(宇多丸)ええっ? 知らねえ、そんなの……。

(吉田豪)白竜さんとかのキーボードをやった関係で、安岡力也さんとかにも使われて、みたいな。で、その時期の話のトスを上げたら、木根さんがだから裕也さんのニューイヤーロックフェスティバル。あれに小室哲哉さんが出る時に「1人だと怖いから」っていうことで、木根さんが付き合いで行って。つまりだから、ザ・スターリンとかアナーキーとかのライブに木根さんが来ているんですよ。あそこで。

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(宇多丸)混ざって。へー! 『人間コク宝』サイドから見たTKヒストリーもあったんだ。すごいな。

(吉田豪)そうです。めちゃくちゃ面白いです。

(宇多丸)ありがとうございます。

<書き起こしおわり>

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