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宇多丸 歴史修正主義を語る

宇多丸 歴史修正主義を語る アフター6ジャンクション
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宇多丸さんが2020年8月17日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で歴史修正主義についてトーク。ラジオドラマ『青空』、大林宣彦監督の『海辺の映画館―キネマの玉手箱』、NHKスペシャル『アウシュビッツ 死者たちの告白』などを見て感じたことを話していました。

(宇多丸)といったあたりですよ。で、今日はちょっとこんな益体もない話で7分間も潰すつもりはなくてですね(笑)。

(熊崎風斗)ごめんなさいね(笑)。僕の顔がたるんだとかっていう話をしちゃって。

(宇多丸)いやいや、それはそれで楽しい……こういう会話も幸せなんですよ。っていうのは、先週火曜日にちばてつやさん、インタビューしましたけども。「今、コロナ禍で大変だけど、大変だけど戦争よりは平和です」っていう。重たい言葉を仰ってましたね。やっぱり、そのちば先生は満州からのを引き上げ体験をお持ちで。本当に極限状態で……まだ幼かったんでね、その全てっていうのは理解していないまでも、極限状態というものを本当にご覧になってきた。体験されてきたという本当に重みがあるお言葉でしたけど。

先週土曜日が8月15日で、いわゆる終戦の日だったじゃないですか。それで翌日の16日。昨日ね、TBSラジオでさ、先週木曜日に堀井美香さんをお招きしてね、朗読をやりましたけど。それで我らが宇内梨沙さんが主演で『青空』というラジオドラマを放送したじゃないですか。

(熊崎風斗)聞きました。

(宇多丸)私も聞きました。ちなみに熊崎くん、いかがでしたか?

(熊崎風斗)やっぱり4人とも「ああ、こんな感じもあるんだ」っていう。キャラクターというか、スキルがあるんだっていうことに純粋に感動ましたし。ハセンのあの意地悪な憎たらしい感じっていうのは、何となく「上手いな!」って思ったんですけど。やっぱり普段にその片鱗というのはあるので。それがうまく出ていたなとか。

(宇多丸)ねえ。猫ちゃんのあれでね。なんだけど、後半にその彼が激する感じとか。

(熊崎風斗)そう。いい味を出していますよね。

(宇多丸)前半のあれがあるからこそ、その実際のハセンさんに近いチャラけた感じがあるからこそ、あれが生きたよね。

(熊崎風斗)あとは向井政生アナウンサーとかもすごくて。記事とかにもなっていましたけど、去年の11月にがんを患って。顎下腺がんという、あごのところのがんで。でも今、治療も終わって……っていうところなんですけども。それでご本人としてはまだまだパフォーマンスは全然出せていないという中、悩みながらやったって言っていて。僕らからすると今も昔も向井さんのナレーションとかって本当にすごいなって思っているんで。

(宇多丸)あれが全体を締めていて。引っ張っていたもんね。まあ、ちょっと宇内さんも本当に素晴らしかったんですが。そのあたりの話は木曜日にもしようとは思うんですが……要はね、その終戦の日の翌日の『青空』というラジオドラマ。戦争の時代の話じゃないですか。

で、堀井美香さんがさ、木曜のあれでスポンサーを見つけるにあたって、非常に大変だったと仰っていて。で、日能研さんが手を上げていただいたということで、我々の中でももう日能研の株がガン上がりよね。「ぜひ、大切な話だからやりましょう」っていう。で、しかも教育に携わっている企業というのがこういう意識を持っているというのは本当に素晴らしいことで。日能研、めちゃめちゃ僕らの中で株が上がりましたけど。一方ではやっぱり各企業が……気持ちはわからないわけじゃないけど。「戦争の話はちょっと……」なんていう風になってきていて。

そういう中でさ、それが「平和な世の中だから」ということで別にいいんだけど。ただね、やっぱりそのそういうところの風化というか……「風化」じゃなくて、今の問題なのはさ、たとえば非常に歴史修正主義的なものが台頭してるっていう、そこじゃないですか。戦争っていうのを、なんと言うか、恣意的な読み替えというかさ。実際に起こったこととかも含めてね。

で、そういう中で、まずはスポンサーの手が上らないっていうのも含めて、それが僕はいろんなことと繋げて考えちゃって。たとえば、安倍さんの終戦の日の談話でね、「歴史に向き合う」というこれまであった表現が今年から消えたとか。小池百合子さんがね、何年も連続してそうですけど。都知事に就任した最初の1年目以外は、間もなく迫ってますけども。関東大震災の時の朝鮮人の皆さんがデマによって虐殺された事件の追悼式に追悼文を今年も送らないとか。そういうような流れ。これ、すべて要するに歴史修正主義な流れの台頭で。

台頭する歴史修正主義

(宇多丸)そういうのが、やっぱり僕も今、こうやってしゃべっていて、声が小さくなってしまっているのは、やっぱりその「めんどくさいな、怖いな」っていう気持ちがちょっと共有されちゃってるっていう。これが非常に良くない、危ない、よろしくないっていう風に自分でもすごく思って。だから世の中の空気が本当よくない。で、今週ちょうど大林宣彦監督の『海辺の映画館―キネマの玉手箱』を私、ムービーウォッチメンで映画評しますから。

で、特にその戦争を直接体験している世代がどんどんどんどん減っていく中で、そういう世代が本当に皆さん、お亡くなりになる時代になったりしたらこれ、どうなっちゃうのかしら?っていう。だからそこに接してる時代の責任もあるじゃないっていう。その戦争を経験してる時代の人たちを知っている世代の責任もあるじゃないかっていう感じ。僕の両親なんかも完全にごりごりに戦前・戦中を経験してますから。

なので、よろしくないなと。で、たとえばその歴史修正主義というか、歴史をちゃんと直視しないという……僕は実際にそうだろうと思うのは、歴史を振り返って、たとえばその日本の負の歴史。様々な戦争でね、各地でいろいろとやらかしてきたわけですよね。というか、ありとあらゆる意味で失敗してるわけじゃない? もう戦争としても失敗してるし、いわゆる植民地政策としても失敗していて。何もかもが失敗してるわけで。

そういうところに向き合わないで「未来志向だ」なんて言ったってね、俺はそれは逆に……過去から目を背けるものは逆に過去から足を引っ張られ続けるだけだと思うのね。という風に思うんです。現実にそうじゃん?っていう。だから戦後処理みたいな、要するにあんまり処理をしきってないから。ちゃんとできていないからこういうことになってるじゃないかと思うんですよ。

で、またそれを強く思うきっかけというのがですね、これは昨日です。NHK。この間、熊崎くんと「今、NHK BSのスペシャル番組がすげえ!」なんて話をしていたじゃない? で、ちょっと他の国の話になっちゃうけども。要はいわゆるホロコーストですね。アウシュビッツの話で。昨日、NHKでやっていて。NHKスペシャル『アウシュビッツ 死者たちの告白』っていうのをやっていて。

これ、どういう話かっていうと、僕がムービーウォッチメンであれは2016年ぐらいかな? 映画評をした『サウルの息子』という映画があって。そこで描かれていた「ゾンダーコマンド」っていう……この言葉、ちょっと耳慣れないと思いますけど。

アウシュビッツ……ユダヤ人の人たちが集められて、ガス室とかに入れられて大量に殺されましたよね? それを直接……たとえばガス室に入れたりとか、その死体を片付けたりっていうのを、それ自体もナチスはユダヤ人の人たちにやらせていたのね。で、そういったことをやらせる係というのがゾンダーコマンドなんですよ。仕事でやらされていて。要するに、同胞たちを死地に送り込み、なおかつその死体を処理し。しかもその死体を物のように……死体から金歯を抜いたりとか、物を剥ぎ取ったりとか。そういうことまで全部やらされていて。

当然、その同胞たちからは裏切者って言われることもあるし。本人たちも本当に生き残るためとはいえ……っていう感じで。「もう何度も死のうと思った」みたいなことが証言で出てくる。で、なんでこれ、証言があるかというと、『サウルの息子』という作品の中で僕も初めて知って本を読んだりして。あまりのことにもうちょっと具合が悪くなっちゃうぐらいだったんだけども。そのゾンダーランドをやっていた人たちによるメモが……中ではそういったものが残せないじゃない? メモとか、あとは決死の思いで撮った写真とか、そういうものが戦後、発見されたという。

で、しかもその人たちは……僕、全然知らなかった事実がその昨日のNHKスペシャルで明らかになっていて。たとえば、その中で思考力がなくなってきてしまう。ご飯もないし。また、ナチもよく考えたものだと言うべきか、「ユダヤ人」と一口で言うものの、ユダヤ人の人って各地にいるじゃない? だから違う国とか違う言語を使うユダヤ人とかを組ませることで、お互いを何て言うか、仲間にさせないというか。お互いを敵対視させたりとか、そういうような意図もあったりする。

で、そんな中でも団結して反乱を起こそうという動きがあったりもしたんですよね。でもそれがやっぱり潰されちゃって……とか。あとはアウシュビッツってポーランドにありますから。ポーランドの諜報員、スパイたちを使って、外に「今、アウシュビッツでこんなことが行われています」っていう。要するに、証拠隠滅が半端ないわけですよ。骨ひとつ残らないように川とかに流して。要はナチスも「悪いことをしている」ということはわかっているわけね。

で、証拠隠滅のシステムもあるんだけど、それも全部ゾンダーコマンドにやらせているんだけども。その情報を外に伝えれば、世界がこれを知れば、何か動いてくれるだろうっていうことで、それをポーランドの諜報員に伝えるんだけど……それを、連合軍側は情報を掴んでいながら。これもびっくりした。要するに、握りつぶすんですよね。それでなぜか?っていうと、当時ナチス政権から逃れて各地にユダヤ人の亡命者とかが増えていったわけです。

そうしたら、その各国の人たちが……まあ今の難民問題、移民問題でもあることと同じですね。「ユダヤ人が入ってきたから俺らの仕事が奪われた!」って国内の不満が高まっているという状況があって。そのナチスの所業を止めたりしたら、ナチスはユダヤ人を国外に追い出す方向に転換するだろう。そしたら自分たちの国とか、いろんな国に押し寄せてきて。その国の内政が非常に具合が悪くなるので。だから、「この情報はなかったことにしましょう」みたいな。そういうのも文書で分かっちゃっていたりして。

(熊崎風斗)うわあ……。

(宇多丸)それで結局、その生き残りの方とかもいらっしゃるんだけど。たとえばその反乱の失敗とかでみんな結局は殺されたりしているわけですね。で、その手記を埋めていて。でもその手記に書かれていたことがすごくて。要は「後世の人がとにかくこれを読んでくれることだけが希望だ。それで知ってもらうことだけが希望だ」って書いてあって。それで公開されるまでに75年、かかっちゃいましたけど。それで「まだまだ、これ以外にもメモはあるはずだから、ちゃんと調べてくれ」って書いてあるわけですよ。

ゾンダーコマンドが残した手記

でね、だからこの言葉を前にね、いわゆる歴史修正主義……だからアウシュビッツで言えば「アウシュビッツはなかった説」とか。もうとにかく絶対に許されないってことだと思うんですよ。その歴史のねじ曲げ、見なかったことにするって。彼らにどう……だから、これは日本における過去の戦争時にやらかしたこと。あるいは関東大震災の時に……そういう時にさ、「我々は未来永劫、謝らなきゃいけないのか?」って言う人もいるけども。いや、そうだよ。未来永劫、謝らなきゃいけないのかもしれないよ。でも、その形でしか未来というところには進めないっていうかさ。

そうしないと、過ちが正せないし、より良き国にできないでしょう?っていうことを本当に……いろんな要素がありますけどね。その『青空』というラジオドラマを聞いて、『海辺の映画館』を見て。一方では現実の日本の政治家がこういうことを言っていて。それで、そのアウシュビッツのドキュメンタリーを見たりしてっていうことで。いろいろね、思うところがあって。こういうところで言える……もちろん僕もね、これは人の作ったテレビ番組を見て。お茶の間でさ、ぬくぬくとクーラーをかけながら見たわけですけど。

でもその、「こういう番組があったよ」と伝えるというのはわずかなことだけどね。で、ちなみにこれは8月19日(水)の夜中にまた再放送するみたいです。で、ぜひこれ、興味持ったら順番はどっちが先でもいいけど、『サウルの息子』という素晴らしい映画もありますので。これとかもぜひご覧いただければ。それで私の映画評なんかもありますのでね。非常に手法的にも、映画的にも考え抜かれたよくできた作品でもありますので。というようなことを考えちゃいましたね。

町山智浩 ホロコースト体験映画『サウルの息子』を絶賛する
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、アウシュビッツ収容所でユダヤ人虐殺を行ったゾンダーコマンドたちを描いたハンガリー映画『サウルの息子』を紹介。絶賛していました。 (町山智浩)今日はですね、本年度。2016年の僕が...

まあ、このぐらいの時期だから、それぐらいは考えないとなっていうあたりですかね。まあサイダーを飲んだ話から……すいませんね。クーラーが効いた部屋でサイダー飲んでいてすみませんというね。

(熊崎風斗)いろんな感情が芽生えるようなオープニングでした。はい。

<書き起こしおわり>

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