サンキュータツオ『美味しんぼ』を語る

サンキュータツオ『美味しんぼ』を語る NHKすっぴん!

(藤井彩子)好きなキャラクターはやっぱり雄山なんですか?

(サンキュータツオ)やっぱり雄山が尖っていたうちは『美味しんぼ』、めちゃくちゃ面白かったんで。山岡と栗田が最終的に結婚するんですけど。そのあたりから極端になんかお爺ちゃん感が増してきちゃって、柔らかくなるんですよ。

(藤井彩子)面白くないよね。

(サンキュータツオ)そう。「俺が好きな尖った雄山、どこに行った?」みたいな感じでね。僕は雄山に説教してやろうと思っていますけどね(笑)。

(藤井彩子)それは孫にデレデレしているっていうことですか?

(サンキュータツオ)そう。孫が生まれるんですけどね。孫に抱きつかれる雄山ってもう本当に見てられないっていう。

孫に抱きつかれる雄山

(鳩岡桃子)最初は「むっ」って言っていただけなんですけどね。

(サンキュータツオ)そう。あのあらいの時の尖っていた雄山、どこに行った?っていう。天ぷらの揚げ方ひとつで……天ぷらを揚げる音を聞くだけで上手い天ぷら職人を見分けていた雄山、どこに行ったんだ?っていう。

(鳩岡桃子)まあ、アニメだと実はこれ、シンエイ動画さんっていう老舗のスタジオが作ってるんですけれども。実はですね、今でも活躍されている方ももちろん『美味しんぼ』でスタッフで関わってたりとかしていて。今週末公開になる『SHIROBAKO』っていうこの前も紹介した作品の監督である水島努さんも実は携わっているっていう。

(サンキュータツオ)俺もだから毎回エンドロールを見て「ああ、あの人も!」みたいな感じで。京都アニメーションとかも頑張ってますしね。すごいですよ。

(藤井彩子)「印象に残った回を上げろ」とタツオさんがおっしゃったのでいろんな方がつぶやいてます。一部、紹介しますね。「箸の使い方に文句をつける海原さんが印象に残っています」。

(サンキュータツオ)出ました! 箸使いの名人は先端の1センチしか濡れていないっていうやつですね。

(鳩岡桃子)あれ、やろうとしても難しいんですよね!

(藤井彩子)覚えている。そうですね!

(サンキュータツオ)フランス帰りの娘さんがナイフとフォークしか使わないというのが問題だっていうことで。箸の使い方を教えてやるって言っていたら「お前に箸の使い方がわかるというのか?」みたいな感じで雄山にいちゃもんをつけられる回です。

(藤井彩子)それで結構箸が濡れちゃっているっていうことですよね。

(サンキュータツオ)で、箸説教ですよね。

海原雄山・箸説教

(藤井彩子)続いて。「ゴツい男たちが打ったうどんはゾウのお尻の回」。

(サンキュータツオ)「うどんの腰」ね。

(鳩岡桃子)最高ですね!

(サンキュータツオ)もともとヤクザがたむろしていたうどん屋さんのボディガードとして雇われた元プロレスラーと力士と柔道の選手がいるんですけども。その人たちが弟子入りして3人でうどん職人になるんですが、卒業試験としてうどん打ち名人のおばちゃんに挑むっていうのがあるんですけども。実は力が強すぎることがうどんのコシに直結するわけじゃないよっていうのが分かる回ですね。

(藤井彩子)もうちょっと紹介します。「捕鯨の回もクソ熱かった」。

(サンキュータツオ)捕鯨はね、結構超大作なんですよ。これはもう社会派ですよね。『美味しんぼ』、社会派漫画ですからね。

(鳩岡桃子)案外社会派は多いですよね。

(サンキュータツオ)そうなんです。まあ基本、説教です。

(藤井彩子)「焼き芋の話。地方から出てきた青年が頑張る話」。

(サンキュータツオ)あれはいい話! それでこれ、東北じゃないですか、もう! 鳩岡さんも東北の方なんで。

(鳩岡桃子)あれ、すごい身につまされましたよ(笑)。

(サンキュータツオ)東西新聞でアルバイトしてる男の子が方言をバカにされるっていうんで、ちょっと居場所がなくなってしまう。それで山岡が一計を案じて焼き芋屋さんを紹介してくれる。歌がめちゃくちゃうまいんですよ。民謡がうまくてね。

(鳩岡桃子)そうそう。

「ふるさとの唄」

(藤井彩子)すごいね、タツオさん。何を言っても答えられるんですね!

(サンキュータツオ)なんでも来てください。

(藤井彩子)素晴らしい。まだまだお話は尽きないのですが、そろそろまとめに行きたいなと思っております。サブカル用語の基礎知識のコーナーでは話の中に出てきたキーワードからリスナーのあなたに覚えてほしい言葉を選びます。鳩岡さん、今日の言葉なんでしょうか?

(鳩岡桃子)いや、言葉を選ぶよりもずっとタツオさんの話を聞いてたいくらいなんですけどね(笑)。まあ今回は「SE」を入れさせていただければと。音響効果と言われるサウンドエフェクト。それを略して「SE」。漫画を読んでいても全然補完してると思うんですけれども、実際あのアニメにした時に音によってその『美味しんぼ』の世界が深まるっていうところもあると思うんですよね。それで結構びっくりした時の「ギャギャン!」という音とか、結構コミカルなって「コロコロコロコロ……」っていう音とか、案外『美味しんぼ』って面白い効果音が多くて。

(サンキュータツオ)そう。雄山の出囃子がすごいですから(笑)。「デーデーンッ! ファ~~♪」みたいな。もう超怖い音楽がかかるんですよ。

(藤井彩子)だからその、たかが料理みたいなことに本当に真剣な大人の勝負の世界なんだっていうことを持ち込む上で、SEはすごく重要だったっていうことですかね。

(鳩岡桃子)第二話で先ほど出ましたけど天ぷらの音を聞き分ける時の音ってどういう感じなんだろう?っていうのは漫画を読んでいてもわかんなかったところが、あの「カラカラカラカラ……カラカラカラカラッ」っていう、その音が変わるのをちゃんとSEで。

(藤井彩子)あれは制作された方、大変だったでしょうね。

(鳩岡桃子)いや、本当にご苦労がしのばれて。

(サンキュータツオ)あれは実際に録ったんでしょうね。録音の方がね。

(鳩岡桃子)やっぱり料理っていうね、実際あるものをどうやってアニメにするか?っていうところが分かる、いいところかなっていう。

(サンキュータツオ)そうか。SE。サウンドエフェクト。ありがとうございます。

(藤井彩子)ありがとうございます。

(サンキュータツオ)もう本当、以上ですか。鳩岡さん。寂しいですね。

(鳩岡桃子)もう終わりなんですね。1年間、本当にいろいろありがとうございました。

(サンキュータツオ)ありがとうございます。

(藤井彩子)ご担当になっていかがだったでしょうか?

(鳩岡桃子)実際こうやってあの人前で話す……人前って2人しかいませんけども(笑)。

(藤井彩子)いやいや、何十万人も聞いてますよ?

(鳩岡桃子)はい。聞いてくださっているところでお話しするってのはなかなかない経験だったので。すごい貴重な経験させていただきました。ありがとうございました。

(藤井彩子)ありがとうございました。サブカル用語の基礎知識、この時間はおいしいアニメについてアニメ誌編集部員の鳩岡桃子さんにお話を伺いました。ありがとうございました。

(鳩岡桃子)ありがとうございました。

(藤井彩子)では、音楽です。

(サンキュータツオ)中村由真さんで『Dang Dang 気になる』。

中村由真『Dang Dang 気になる』

<書き起こしおわり>

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