サンキュータツオ『美味しんぼ』を語る

サンキュータツオ『美味しんぼ』を語る NHKすっぴん!

(鳩岡桃子)アニメだとやっぱり声優もかなり豪華で。山岡さんが井上和彦さんだったり。栗田さんは荘真由美さんだったり。あと、前に大塚明夫さんをこのコーナーで取り上げたと思うんですが。そのお父さんの大塚周夫さんが海原雄山役なんですよね。

(サンキュータツオ)「このあらいを作ったのは誰だ!?」って。もうあの足音。廊下の足音からすごい。「ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ……」みたいな。「なになに? なになに!?」みたいな。「このあらいを作ったのは誰だ!? お前か? お前に料理をする資格はない。出ていけ!」って。

(鳩岡桃子)あの器の持ち方、嫌じゃないですか? 「ドヤッ!」っていう感じで出してくるっていう。

「このあらいを作ったのは誰だ!?」

(サンキュータツオ)鬼なんですよ。鬼。雄山がまたツンデレすぎて。自分が手塩にかけて育てた料理人がなんか「ハンバーガーショップをやりたい」みたいに言って美食倶楽部を辞めるんですよ。で、それを食べに行くんだけども。「こんな舌の衰えたアメリカ人の食べ物なんか食べん!」みたいなことを言ってるんですけども。まあ、なんかいろいろ工夫して美味しくなったハンバーガーを食べたら「これはどうやって食べるんだ? 食べ方がわからん!」みたいな。

(鳩岡桃子)かわいい……(笑)。

姫・海原雄山

(サンキュータツオ)それで食べて「美味しい」って言わないんですよ。美味しいのに。「手が汚れてしまったではないか!」って(笑)。で、後日、そのお店にピクルスが届くっていう。「そのデレ方って何? もう雄山、かわいい!」みたいな感じで(笑)。海原雄山、かわいいんだよ。もう姫なんだよ。

(藤井彩子)フフフ(笑)。

(鳩岡桃子)原作は巻数が行くにつれてどんどんと姫化が進むじゃないですか。アニメが原作の27巻ぐらいまでしかやってなくて。「もうこれから先の雄山が素晴らしく姫化が進むのに……惜しい!」って思いながら。

(サンキュータツオ)雄山がね、山岡が行く先々にいるんですよ。だからちょっとしたストーカーなんですよ。

(藤井彩子)ちょっとダースベイダー感がありますよね?

(サンキュータツオ)そうそう! ダースベイダー感ある!

(藤井彩子)もう息子が好きでしょうがなくて来ちゃうみたいな。

(サンキュータツオ)で、いちゃもんのつけ方がいちいちよくないわけ。「こんなこともわからないやつが究極のメニューなど片腹痛いわ!」とかね。もう結局、究極のメニューをやりたいだけなんですよ。雄山も。

(藤井彩子)ああ、声をかけてもらえなかったみたいなことがちょっと悔しいんですね?

(サンキュータツオ)もう本当にね、妬み嫉みがすごいんです。雄山、姫だから。

(鳩岡桃子)人間らしいですよね(笑)。でもドラマばっかりですけど、料理ももちろんで美味しいんですよね。結構、この作品で教わった料理でツバメの巣のスープとか。

(サンキュータツオ)出た!

(藤井彩子)当時、知らなかったなー。

(鳩岡桃子)そう。知らない料理をこうやって教わるのがすごい醍醐味だなって。

(サンキュータツオ)あと、いまだに中華料理リスペクトがすごいのは『美味しんぼ』のおかげかもしれない。「このファッチューチョン(佛跳牆)ってどういう味なんだろう?」っていう。なんかお坊さんが垣根を飛び越えてでも飲みに行くぐらい美味しいスープみたいなのがあって。「これ、どんな味なんだろう?」って。いまだに脳の中に残っていますよね。そういう経験が……「中華料理、すごい」みたいな。

(鳩岡桃子)ありますね。あの周大人が……。

(サンキュータツオ)これね、また周大人の娘がいるんですよ。一人娘。それが使用人と駆け落ちして高架下で中華料理を作っているんですよ。で、赤ちゃんをおぶって接客していて。でも、その旦那の方が「使用人根性が抜けない」っていうことでチャーハンが上手く作れない。

周大人の娘エピソード

(藤井彩子)ああっ、炎の料理人だ!

(サンキュータツオ)そうなんですよ! 中華料理は結局炎を扱ってこそ一人前みたいな。「火を怖がっちゃいけない!」みたいな(笑)。

(鳩岡桃子)藤井さんがこんな食いついたの、初めてかもしれない。嬉しい!

(藤井彩子)フフフ(笑)。

(サンキュータツオ)本当だよ。藤井さんがこんなに食いつくなんて……『美味しんぼ』、さすがだなー。

(藤井彩子)鳩岡さんはどの回が印象に残ってます? 料理としては。

(サンキュータツオ)僕はやっぱりとんかつ大王ですかね!

(藤井彩子)聞いてない! 鳩岡さんに聞いてる!

(サンキュータツオ)あ、聞いてない?(笑)。

とんかつ大王

(鳩岡桃子)とんかつもいいですよね。とんかつも好き(笑)。

(サンキュータツオ)ちょっと皆さんもTwitterで思いでに残る『美味しんぼ』をツイートしてください(笑)。

(鳩岡桃子)私、2つあって。1個がずっとうどんが好きなんですけども。アニメで言うと第5話の「そばツユの深味」。あの中松警部っていう銀座署につとめる警部がいるんですけども。彼が初登場する回なんですよね。屋台で日本そばをやるっていう人がいて。

(サンキュータツオ)チャレンジャーがいるわけですよ。

(鳩岡桃子)ただまだ営業許可がおりる前からやっちゃっているという太え野郎だったんですけども(笑)。そしたら、その彼が結局そばの麺は美味いんだけども、そのそばツユがイマイチだっていうのでやっていくのを見たら、もういてもたってもいられなくなってそこからずっとそばを食べているっていう(笑)。

(サンキュータツオ)そうそう。頑固だからさ、そばツユの作り方とか、教わりに行けないの。プライドが高いから。で、ちょっと山岡が一計を案じて。「美味しいそばツユだから作り方を教えてくれ」って老舗のそば屋の人に言わせるんだよね。で、その御礼に……っていうことで、その老舗のそば屋のそばツユの作り方を……「見学でもしていきます?」みたいな感じで見学させて。「ああ、そばツユは3日もかけて置かなきゃいけないんだな」みたいなコツがわかるっていうね。

「そばツユの深味」

(鳩岡桃子)後から気がつくという。山岡は案外策士なんですよね。

(サンキュータツオ)策士なんですよ。

(鳩岡桃子)あとは私が好きなのは良三っていう岡星の弟。良三のエピソードが死ぬほど好きで。

(サンキュータツオ)岡星っていうお客さんが山岡しかいない料理屋さんがあるんですよ。いつ行っても山岡しかいないっていう。他の客が全くいない岡星っていう料理屋があって。まあ、これもホームレスの辰さんから教えてもらうんですけども。

(鳩岡桃子)そうそう。「銀座だったら最近は岡星だな」って。

(サンキュータツオ)だからその良三が「このあらいを作ったのは誰だ?」事件の真犯人なんですよ。

(藤井彩子)アハハハハハハハハッ!

(鳩岡桃子)そう。たいがい雄山を怒らせて。それでなんとか山岡が解決するという。

(サンキュータツオ)そう! 良三、たばこ吸っちゃうのね。緊張して。

(藤井彩子)あれな!

(鳩岡桃子)匂いがついちゃうから。

(藤井彩子)子供だってわかったよ。それ、ダメだって。

良三の同期・宮井

(サンキュータツオ)だから良三の同期みたいなやつで宮井っていうのがいるんですけども。宮井も昆布の在庫管理を誤って。「昆布に穴が空いている。ゴキブリが昆布をかじった」っていう風に報告をして、美食倶楽部をクビになるんです。でも、実はその穴はウニが昆布を食べた穴だったという……。

(藤井彩子)そうですよね(笑)。

(鳩岡桃子)「ゴキブリじゃありませんでした」っていう。その勘違いを海原雄山が引っ込められなくなっているっていうあの感じ(笑)。

(サンキュータツオ)それで利尻島まで、そのウニが食べた昆布を見つけに行くんだけども、なんと雄山が利尻島まで迎えに来てくれるっていう! そのデレ加減。「お前でなければワシのほうじ茶は誰が入れるんだ?」っていう。「なに、その告白……もう、雄山かわいい!」っていう。

(鳩岡桃子)もう雄山が大好きすぎるっていう話になっていますよね(笑)。

(サンキュータツオ)雄山、面白い(笑)。

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