能町みね子さんがTBSラジオ『サンキュータツオのまるっと日本語評議会2017』に出演。2017年の新語・流行語大賞についてあれこれと話していました。
(田中ひとみ)後半は能町さんが現在、週刊文春で連載されているコラム『言葉尻とらえ隊』から今年1年を振り返っていきます。
(サンキュータツオ)能町さん、これはどんなコラムなんでしょうか?
(能町みね子)これはですね、最初は最近流行っているような言葉を分析して、その言葉尻に対してネチネチネチネチ考えていくっていうイメージだったんですけど……まあ、週刊文春に連載しているっていうこともあって、だんだん時事ネタに寄ってきて。で、「最近話題の人のこの発言は実はこうなんじゃないか?」とか、すごく有名になった発言よりもちょっと脇に逸れた発言を取り出して、そっちをネチネチ分析したりとか。そういうコラムですね。
(サンキュータツオ)これが面白いんですよね。
(田中ひとみ)面白いんですよね。今年の流行語大賞についてもお書きになっていましたが。
(能町みね子)そうなんですよ。流行語大賞はもう毎年、取り上げるんですけど。(収録をしている)いまのところは30語、候補だけ上がっている状態ですけども。流行語大賞ってこれ、サンキュータツオとも(東京ポッド許可局で)組まれているプチ鹿島さんもたしかおっしゃっていたと思うんですけど。もう、真っ当に楽しむものというよりは、どちらかと言うと、「これを選んだ人は、何を考えてこれを選んだのかな?」っていう、そっちの楽しみ方の方がもう面白くなっちゃっていて。
(サンキュータツオ)そうですね(笑)。完全にオヤジ発信オヤジ受信のオヤジジャーナルなんですよね。
(能町みね子)そうなんですよね。で、もう去年、一昨年なんか特にひどくて。「トリプルスリー」と「神ってる」かな? 一昨年が「トリプルスリー」で去年が「神ってる」。どっちも野球なんですよ。で、世間的に別にそこまで野球がいままでよりもすごかったっていうわけでもなくて。
(田中ひとみ)たしかに!
(能町みね子)で、最近は私、これを選んでいる……たぶん何人かで審議して選んでいるんでしょうけども。もう1人の人格だと思うようにしていて。「野球好きの50ぐらいのおじさん」っていう、そういうイメージなんですよ。
新語・流行語大賞の人格「野球好きの50ぐらいのおじさん」
(サンキュータツオ)アハハハハッ! そうですよね。で、なんか子供や娘がお笑いの真似をしたら、「ああ、これがいま流行っているんだ」って決めつけちゃう感じ。
(能町みね子)そうなんですよ(笑)。
(田中ひとみ)ああ、わかりやすい。人格を立てると。
(能町みね子)今年はまたそれがよく現れていて。30語選んだ中で、全体の総評として「言葉そのものに勢いがなく低調な年」っていうコメントが有ったんですよ。それを本人が言っているんですけども。で、選んだのを見てみると……野球の用語が1個もないんですよ。
新語・流行語大賞 第34回 2017年 ノミネート語https://t.co/phRvuSucxq pic.twitter.com/n5ETP7IGbY
— みやーんZZ (@miyearnzz) 2017年12月4日
(サンキュータツオ)アハハハハッ!
(能町みね子)それはそうだなと思って。
(サンキュータツオ)野球がバズッてないっていう(笑)。
(田中ひとみ)野球好きのおじさんでしたもんね。
(能町みね子)おじさんにとっては、今年は野球でピンと来る言葉がなかったから、低調だったんですよね。スポーツですら、ほとんどないんですよ。
(サンキュータツオ)将棋がなんか、入っていましたよね?
(能町みね子)将棋はあるんですけど、まあおじさんがよくやるパターンが、藤井四段。たしかに流行っていましたけど……これといって藤井四段がなにか名言を発したとかではないじゃないですか。そういう時、おじさんは困ってしまうので、「藤井フィーバー」みたいな、微妙なところでお茶を濁すんですよ(笑)。
(サンキュータツオ)出た! 「フィーバー」っていう言葉で(笑)。
(能町みね子)「藤井フィーバー」って用語じゃないから。藤井さんは流行ったけど、「藤井フィーバー」が流行語っていうわけじゃないので。なんかおじさん、そこにどうしても寄せたくて、そういうのを持ってきちゃうっていう癖があるんですよね。あと、まあ若者に媚びたいっていう気持ちがあるので、「ユーチューバー」っていうのを出してきたんですけど。まあ、世間的にもっとネットを知っている人の感覚だと2、3年前なんですよね。「ユーチューバー」の流行って。
(サンキュータツオ)「いまかよ!?」っていうやつですよね。
(能町みね子)そう。いまさら?っていう。おじさんにやっと届いたのか!って。3年ぐらいたっていますから。あと、「刀剣乱舞」って入れてきたんですけど。
(サンキュータツオ)いま?
(能町みね子)いまなんですよ。あれもゲームとアニメとあるものですけど……調べると2年前に「刀剣女子」は入っているんですよ。既に。
(サンキュータツオ)アハハハハッ! 本末転倒だよ(笑)。
(能町みね子)そう。本末転倒なんですよ。
(田中ひとみ)えっ? 同じアニメからっていうことですか?
(サンキュータツオ)『刀剣乱舞』が好きな女の子が実際に刀剣美術館とかに行くっていうので、まあ歴女みたいな流れで刀剣女子っていうのを入れたんですよね。たぶん。
(能町みね子)そうなんですよね。だからおじさんはたぶん、『刀剣乱舞』抜きで、「ああ、なんか刀剣が女の子に流行っているんだ」っていうところだけつかまえてしまって、2年も前にそれを入れたのに……元ネタを2年後に知ったんですよね。
(サンキュータツオ)そうですよね(笑)。
(田中ひとみ)遅い!
(能町みね子)遅いんですよ。いろいろと間違っているんですよね。だからそのへんのおじさんの微笑ましいエピソードとして見るのが楽しいかなと思っています。
(サンキュータツオ)だから新語・流行語大賞の統一人格としてね、ちょっともうゆるキャラみたいな感じでね。
(能町みね子)ゆるキャラを私、作って。昔、赤瀬川原平さんが新明解国語辞典のことを人格にして「新解さん」って呼んでちょっと流行ったりしたんですけども。
(サンキュータツオ)そうですね。
(能町みね子)私は新語・流行語大賞の人を「新流さん」って呼んで。おじさんだということで。
(サンキュータツオ)いやー、これ大発見ですよ。本当に新流さんですよ。
(田中ひとみ)新解さん。ちなみに放送日が12月3日でして。12月1日に新語・流行語大賞が発表されるんですよね。大賞が。
(能町みね子)放送時にはトップテンとか決まっているわけですよね。どうなるかな? 野球がないからな。
(サンキュータツオ)野球がなかったですね。
(能町みね子)ないですからね(笑)。
(中略)
(田中ひとみ)週刊文春『言葉尻とらえ隊』では4月6日号でこんな風に取り上げられている言葉があります。タイトルは「ユーチューバーってなんなのさ?」。
「ユーチューバーってなんなのさ?」
(能町みね子)はい。これは、ユーチューバーといえば、いちばん有名なのはヒカキンさんですよね。ヒカキンさんが言った言葉というか、上げた動画のタイトルだったりするんですけども。この頃、同じくユーチューバーで有名な人で、はじめしゃちょーさんっていう人がいますけども。この方が二股していたとか浮気をしていたとかで、謝罪動画を自分で上げたりしていたんですよ。ユーチューバーとして。結構真面目に、スーツを着てやっているんですけど。
(田中ひとみ)あら。
(能町みね子)そんな騒ぎの時に……まあ、騒ぎっていっても、世間的には「別にどうでもいいじゃん」っていうのが正直なところなんですけど。で、ヒカキンさんもはじめしゃちょーさんも、ユーチューバーにそんな興味がない人からすると、別にあんまり興味もないし、YouTubeの動画自体もちょっと子供だましというか。小学生、中学生には流行るかもしれないけど、大人から見ると「ちょっと、こんなの」って思うような動画なので。なんとなく、平たく全員同じような感じの人として見ていたんですけど。
(サンキュータツオ)はい。
(能町みね子)でも、なんといってもヒカキンさんって第一人者なので。ここではじめて、ユーチューバーというものについてのあり方みたいな、真面目な動画を上げたんですよ。で、それがすごく良くて。その後も、なにかで取り上げられたのかな? ヒカキンさんの1日みたいなのが特集されたことがあって。それを見たら、あまりのストイックさに結構みんな、「ヒカキンはやっぱりすごい」みたいな感じになっていって。
(田中ひとみ)へー!
(能町みね子)そうなんですよね。大人から見ると、「ユーチューバーなんて子供だましだよ。あんなの別に面白くない。商品を紹介したり、ゲームを紹介したり、そんなのかよ」って思っていたんですけど、そんな業界の中でもやっぱり第一人者ってなんとなくしっかりしていくものなんだなっていうのを改めて知ったのがちょっと発見だったんですよ。
(サンキュータツオ)なるほど。
(能町みね子)やっぱりいまの10代、20代からすると、本当に憧れみたいなんですよね。
(サンキュータツオ)いや、すごいですよ。なんか、僕も知り合いのユーチューバーがお祭りに行ったら、すごい囲まれちゃって。だから一昔前のスターみたいな感じなんですよ。いま、タレントがそのへんを歩いていても、そんなことないじゃないですか。でも、ユーチューバーがお祭りに行ったら人だかりができすぎちゃって。「全然遊べないからすぐに帰った」って言っていました。
(能町みね子)へー!
(田中ひとみ)それは10代とか、若い子たちに囲まれる?
(サンキュータツオ)そうです。だから、クラスの人気者のその「クラス」が何百万人いるクラスの人気者だから。他のタレントとかとはまた違うんですよ。
<書き起こしおわり>