古舘伊知郎 夫婦の距離感を語る

古舘伊知郎 夫婦の距離感を語る 安住紳一郎の日曜天国

古舘伊知郎さんがTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』に休暇中の安住紳一郎さんのピンチヒッターで登場。リスナーからの投稿を読みつつ、夫婦の距離感について話していました。

(古舘伊知郎)それでは、今日のメッセージ。「大人げない話」。

(中澤有美子)はい。いただいておりますのでご紹介します。鹿児島市の47歳女性の方。

(古舘伊知郎)今日は鹿児島の方、多いですね。

(中澤有美子)そうですね。先ほどもでしたね。ありがとうございます。「大人げない話ですが、結婚後銀婚式を過ぎたいま、最近夫と並んで歩く歩調をあえてお互いに合わせなくなってしまいました。なんとなくです。決して普段の仲が悪いわけではないです。街中を歩く時、階段かエスカレーターかでも分かれます。私は階段派。夫はエスカレーターを歩く派。20数年前ならお互いに合わせていたはずですが、最近はどちらも意固地になったのかな? 口に出さずともそうなりました。今後、さらに20数年後、もしも2人とも生きていたら、お互いに寄り添わないと歩けなくなって、意地も張れなくなるのでしょうか? 大人げないの意味がよくわからなくなってきました。カオスなフェイズに入ったと考えてよいのでしょうか? 古舘さんはいかがですか?」。

(古舘伊知郎)ああ、これは安住くんだったらどう答えるのか……なにも答えないで「さて、次のメッセージ……」って言うのか? それはないと思いますけども(笑)。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(古舘伊知郎)僕が思うのは、いま聞いていて素晴らしいことだと思いました。あの、結婚でも恋愛でもそうなのかもしれませんけども。若い時っていうのはひとつの洗面台で2人で歯を磨いているのが楽しいんですよ。ところがある年齢とかキャリアを積んできちゃうと、贅沢すぎるけども2つ洗面台があって、同時でも時間差でも自由に自分の洗面台をマイペースで使いたいなっていうワガママさが出てきたりする。で、それをどこまで許容して1.5台の洗面台を操っていくかが人生の勝負じゃないかと思うんですよ。だから心の中で……この方は期せずして並んで歩いている若い時代からだいぶ2人の関係性が熟してきて。わざとズレている感じがします。

(中澤有美子)うんうん。

(古舘伊知郎)中澤さん、どうですか? ズレるって悪いことじゃないと思うんですよ。僕が思うには一流の指圧師の先生に昔、聞いて忘れられないことがあるんですけども。「古舘さん、経絡(ツボ)ずらしっていうテクがあるんですよ」って。経絡(ツボ)、たとえば中澤さんのヒジのあたりのツボ、経絡を僕がグッと押しますよね。で、押して「ああ、気持ちいい。肩こりのツボだ」って気持ちよくなったとする。そうすると人間の心と身体って甘えて「またズバリ、ストライクのツボを押してね。そしたらまた楽になるから……」ってにじり寄ってくるんですよ。

(中澤有美子)はい。

一流の指圧師はツボをずらす

(古舘伊知郎)その時に、一流の指圧師はツボをずらすんですよ。わがままさを許さないで。鍼もそうですけども、ずらすんですよ。経絡のそのツボから1センチぐらいずらすんです。そうすると、身体と心がにじり寄ってにじり寄ってツボの方に自力で行こうとする。ここに免疫力のステージが上がってくるっていう。だって、それはずっといっつも誰かがちゃんとズバリでやってくれると思ったら、完全看護みたいになって自発力がなくなるでしょう? 

だからずらしてイラつかせて自らが自分で治すようにツボに近寄ってこさせるような自活力を持たせるっていうんですよ。だから僕は三木清っていうもう亡くなった哲学者が昔、言っていて大好きな言葉があって。「孤独は山になく、街にある」って言ったんですよ。ちょっとわからないでしょう? 山奥で一人ぼっちで暮らしている方が孤独がありそうでしょう? でも、森のポリフォニーがあります。小鳥のさえずりがあります。大自然の中のいろんな驟雨ともいうべき雨がトタン屋根に打ちつける音もあります。一人ぼっちは寂しいけども、孤独ではない。あらゆるものに囲まれている。

街のスクランブル交差点のところを1人ですれ違った時に人と人がいっぱいいる中に孤独が発生している。どんなに仲が良くても夫婦でも兄弟でも親子でも、人間が一個体一個体が違う限りは、人間と人間とが向き合った間に孤独が生じてくる。最後の最後まで合一できないわけでしょう。だからこう、ずれて歩くぐらいの孤独を感じながら歩いている方が2人の結びつきっていうのは絶対に離れない気がする。いい感じなんじゃないですか? 中澤さんのところはどうですか?

(中澤有美子)そうですね……。うち、そうですね。やっぱりずれまくりですね。

(古舘伊知郎)その方がいいんだと思う。妙に歩調を合わせると、お互いにストレスが溜まるじゃないですか。

(中澤有美子)それでよかったんですね。まあ、そうですね。その方が、「いま相手、これ怒っているのかな? 怒っているわけじゃないな?」とか考える余地ができるかもしれません。

(古舘伊知郎)もう僕なんかは長いですから。背中合わせで歩いてますからね。……そんなわけない(笑)。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(古舘伊知郎)歩けない、歩けない(笑)。それではここで1曲、お送りします。

<書き起こしおわり>

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