高橋芳朗 Eテレ『みいつけた!』楽曲ベスト5を語る

高橋芳朗 Eテレ『みいつけた!』楽曲ベスト5を語る TBSラジオ

高橋芳朗さんが2022年2月11日放送のTBSラジオ『金曜ボイスログ』の中でEテレで放送中の『みいつけた!』楽曲の中からおすすめ曲を5曲、選曲して紹介していました。

(高橋芳朗)10時台からEテレの曲を何曲か紹介してきましたけども。ここでは私の独断と偏見で選ぶ『みいつけた!』名曲ベスト5を紹介したいと思います。『みいつけた!』は2009年からスタートした幼児向け教育エンターテイメント番組なんですけども。この番組のオリジナル楽曲がもう名曲揃いなんですよ。もう血を吐きながら5曲、選びました。

(臼井ミトン)「5曲に絞れないよ!」っていうことですね。

(高橋芳朗)はい。じゃあ、さっそく紹介していきたいと思います。第5位は番組のメインキャラ、スイちゃんが歌う『ドンじゅらりん』です。スイちゃんって今、4代目までいるんですけどもね。これ、作詞・作曲はくるりの岸田繁さんが手掛けているんですけども。恐竜を題材にした曲ですね。「じゅら」は「ジュラ紀」なんですね。で、楽曲的にはちょっとディキシーランド・ジャズ風なんですね。では、聞いてください。第5位はスイちゃんで『ドンじゅらりん』です。

スイちゃん『ドンじゅらりん』

(臼井ミトン)お送りしたのは高橋芳朗さんが選ぶ『みいつけた!』名曲ベスト5の第5位ということで、スイちゃん『ドンじゅらりん』。本当にディキシーランドっぽい。スーザフォンのベースラインが入っていて、クラリネットなんかも入っていて。

(高橋芳朗)これね、岸田繁さんのセルフカバーもありますんで。それも素晴らしいです。

(臼井ミトン)そっちも聞いてみよう。

(臼井ミトン)「ジュラ紀の卵で親子丼」っていう超パンチラインが出てきましたね!

(高橋芳朗)アハハハハハハハハッ! そうなんですよ。歌詞も面白いんですよね。

(臼井ミトン)歌詞も面白い!

(高橋芳朗)曲調も楽しいです。

(臼井ミトン)これ、覚えちゃうよね。恐竜の名前とか。さあ、第4位は?

(高橋芳朗)第4位はサニーデイ・サービスの曽我部恵一さんによる『みいつけた!』の日曜日バージョン、『みいつけた!さん』のテーマソング、『みいつけた!さん』。これ、作曲が番組の多くの楽曲を手掛けている片岡知子さん。作詞がさっきかけた『さばくにおいでよ』も手掛けていたふじきみつ彦さん。で、今は統合されているんですけども、日曜日版の『みいつけた!』は2021年3月まで『みいつけた!さん』として放送されていたんですね。

(臼井ミトン)へー。サンデーの『さん』だ。

(高橋芳朗)それのテーマ曲だったんですけども。これがジプシー・スウィング調でめちゃくちゃおしゃれです。じゃあ、聞いてください。第4位ですね。曽我部恵一さんで『みいつけた!さん』。

曽我部恵一『みいつけた!さん』

(臼井ミトン)高橋芳朗さんが選ぶ『みいつけた!』名曲ベスト5、第4位は曽我部恵一さんの『みいつけた!さん』ということで。なんか本当にマカフェリギターにフィドルが入ってジプシースウィングでしたね。アンニュイなボーカルも。すごい!

(高橋芳朗)これはやっぱりでも、曲調と歌詞のギャップが素晴らしかったですね。

(臼井ミトン)シュールでいいですね。すごい耳に残る。

(高橋芳朗)じゃあ、続いて行きましょうか。第3位はこれ、『みいつけた!』さんの主要キャラクターが揃い踏みなんですけども。スイちゃん、コッシー&サボさんで『ひみつのヒミコちゃん』です。これ、作詞作曲がレキシの池田貴史さん。

(臼井ミトン)ああ、ということはヒミコちゃんはあの卑弥呼?

(高橋芳朗)邪馬台国を題材にした歌なんですけども。これがめちゃくちゃいい曲です。ちょっと泣ける感じです。じゃあ、聞いてください。スイちゃん・コッシー&サボさんで『ひみつのヒミコちゃん』です。

スイちゃん・コッシー&サボさん『ひみつのヒミコちゃん』

(臼井ミトン)お送りしたのは高橋芳朗さんが選ぶ『みいつけた!』名曲ベスト5、第3位です。スイちゃん・コッシー&サボさん『ひみつのヒミコちゃん』。これって要は邪馬台国がどこにあるかっていう説がいろいろあるから、「どこにいるんだろう、ヒミコちゃん?」っていうことなのかな?

(高橋芳朗)そういうことです。でも邪馬台国を題材にした歌でサビの歌詞が「会いたいと思う気持ちがあればきっと見つけられるはず」って最高じゃないですか?(笑)。

(臼井ミトン)最高ですね(笑)。すごい切ない気持ちになりますね。

(高橋芳朗)だからなんかね、ちょっと笑っちゃうんだけど、ずっと聞いているとなんか切ない気持ちになるんですね。

(臼井ミトン)あとベースラインが超かっこよかった。誰が弾いているんだろう?

(高橋芳朗)そうなんですよね(笑)。

(臼井ミトン)すごい気になっちゃったな。いやいや、さすがだな。

(高橋芳朗)そうなんですよ。じゃあ、続いて行ってみましょうか。第2位はカピイの『みずうみのディスコ』。カピイはメインキャラのコッシーが暮らすイスの街の住民で、カッパをモチーフにしたイスなんですけども。声は俳優の三宅弘城さんが務めています。で、この曲の作詞は番組の脚本を担当している津田真一さんで、作曲は第4位に選んだ『みいつけた!さん』も手掛けていた片岡知子さんですね。で、片岡知子さんは『みいつけた!』のお仕事で日本賞っていうんですかね。教育コンテンツ国際コンクール幼児向け最優秀賞を受賞している方なんですけども、2020年に51歳の若さで亡くなられてしまったんですよね。だから片岡さんの追悼の意味も込めて選曲いたしました。第2位はカピイで『みずうみのディスコ』です。

カピイ『みずうみのディスコ』

(臼井ミトン)お送りしているのは高橋芳朗さんが選ぶ『みいつけた!』名曲ベスト5の第2位にランクイン。カピイで『みずうみのディスコ』。これもいい曲ですね。

(高橋芳朗)ちょっとフィッシュマンズっぽい感じもあって。

(臼井ミトン)渋谷系っぽいおしゃれな感じもありますしね。なんかこういうのを自然に知らず知らずのうちに聞いて育っているって、最高。

(高橋芳朗)いや、これはテレビを二度見しましたね。「なに? このかっこいい曲!?」って(笑)。

(臼井ミトン)かっこいいですよね。おしゃれだし。うんうん。

(高橋芳朗)じゃあ、1位に行っちゃいましょうか。第1位はこちらです。今の『みずうみのディスコ』も歌っていた三宅弘城さんと同じく俳優の内田慈さんが歌う『グローイングアップップ』。

(臼井ミトン)『グローイングアップップ』?

(高橋芳朗)これ、作曲が星野源さん。作詞が宮藤官九郎さん。

(臼井ミトン)すごいタッグを組んじゃってるね(笑)。

(高橋芳朗)『みいつけた!』は星野さんと宮藤さんのコンビによる提供曲が計4曲あるんですけども。これが特に人気が高いんですよ。この曲って季節ものなんですね。毎年卒園シーズン。春が近づいてくると流れ始める曲で。そのたびにお父さんお母さんの涙を朝早くから搾り取っていくという。今年もそろそろ流れ始めると思うんですけども。どんな曲かというと、成長と別れの曲なんですよ。歌詞はお姉ちゃんのおさがりでもらったご飯の時に座るイスが小さくなったから従兄弟のまあくんに譲るっていう内容なんですけども。

(臼井ミトン)うわあ、『トイ・ストーリー3』的な……。

(高橋芳朗)そう。で、歌詞にこんな一節があります。「イスがちいさくなったのか キミがおおきくなったのか ボクはちいさくなれない イスはおおきくなれないよ さよなら ごはんのイス せいちょうするってこういうこと?」っていう。だから成長の喜びと寂しさのこの微妙な感情を歌っているんですけども。で、サビが「グローイングアップ アップップ ないたらまけだよ グローイングアップ アップップ わらったらかちだよ アップップ」っていう。もうこれ、子供に向けられた歌詞というよりは親に向いているところがあると思うんですね。やっぱりEテレの幼児向け番組って子供のために作られているところもあると思うんですけども……厳密には子供と親のコミュニケーションのために作られているんだなっていうことがこの曲からよくわかるんじゃないかなって。 

(臼井ミトン)本当ですね。親の涙腺の蛇口、栓を全力で緩めにかかってますね。ヤバい。

(高橋芳朗)じゃあ、聞いてください。三宅弘城さんと内田慈さんで『グローイングアップップ』です。

三宅弘城・内田慈『グローイングアップップ』

(臼井ミトン)高橋芳朗さんが選ぶ『みいつけた!』名曲ベスト5の第1位に輝きました三宅弘城&内田慈『グローイングアップップ』。いい曲ですね。

(高橋芳朗)宮藤官九郎さんの歌詞のよさももちろんなんですけども、そこに寄り添う星野さんの曲もね。普段の星野さん名義の曲とはまた違った魅力があるかなと思います。

(臼井ミトン)ねえ。でもシンセベースとアコギの組み合わせとか結構アレンジ上、攻めている感じはあったり。メロディーのそこかしこに星野源節みたいなのがちょっと感じられる……。

(高橋芳朗)そう。応援団の曲(『おっす!イスのおうえんだん』)とかも最高なんでね。ぜひ皆さん、聞いてもらいたいですね。

(臼井ミトン)これは泣けるわ。まあ保育園・幼稚園の卒園式で泣いているのは子供たちじゃなくて親の方ですからね。本人たちは割とあっけらかんとしているっていうことですよね。

(高橋芳朗)Eテレ、音楽が充実している番組だと『シャキーン!』とかもありますよね。『シャキーン!』とかの曲も紹介したいですね。

(臼井ミトン)でも僕、アメリカの『みいつけた!』的な『セサミ・ストリート』っていう超ご長寿の昔からある番組があるじゃないですか。あれで70年代とか80年代のロックスターたちが……今でもそうですけども。みんな出るわけですよ。それこそ僕の好きなジェームス・テイラーとかドゥービー・ブラザーズとか。今の時代だとたとえばノラ・ジョーンズが一番売れた時にポンと出ていって。自分の一番ヒットしてる歌の子供向けの替え歌とかを生演奏でパペットたちに歌ったりするっていう、その音楽文化に僕はすごく憧れていて。「こういうの、いいな」って思っていたんですけども。負けていない。同じことをやっている!

(高橋芳朗)自分もだからちっちゃい頃って、Eテレではないですけども。『ポンキッキ』とかを通じていろんな洋楽の曲とかを吸収したところがあるから。子供の頃からこういう音楽を体感できるのはすごいいいことですよね。

(臼井ミトン)今、挙げてもらった5曲の中でもたとえばスーザフォンとかが入っているディキシーランド・ジャズ風もあれば、ジプシースウィング風もあれば、ディスコもあるし、渋谷系っぽいのもある。やっぱりみんな、僕らが子供の頃には全然気づかなかったけど、こうやって大人になって聞くと本当に大人たちが真剣に作っている良質なものっていうのをちゃんと聞かせてもらっていたんだなって。

(高橋芳朗)『いないいないばあっ!』とか『おかあさんといっしょ』もそうですけども。そのへんを聞いていると、結構音楽のベーシックなところが学べちゃったりするんですよね。

(臼井ミトン)そうですよね。もちろん、そんなことはなにも知らずに聞いているわけなんだけども。

(高橋芳朗)でもね、後々意味を持ってくると思いますよ。

(臼井ミトン)本当ですね。知らぬ間に英才教育を施されているっていうことですよね。これ、たぶん音楽評論家の高橋芳朗とミュージシャンの臼井ミトンが話すとこの音楽の部分に対してそういう風に思いますけども。おそらくこれは演出上のことであったり、それこそパペットの人形とか、いろんなことがすごく一流のものをちゃんと、お金と時間をかけてしっかり作っているんだろうなって。それは音楽以外の面でもきっとそうなんでしょうね。すごく、大人になってわかるありがたみみたいな部分で高橋芳朗さんには音楽をキーワードに選んでいただきました。

<書き起こしおわり>

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