プチ鹿島さんがYBSキックス!の中で水谷竹秀の著書『脱出老人:フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』を紹介していました。
(プチ鹿島)さあ、今日ご紹介するのはガラリと変わりまして1冊の本、こちらです。『脱出老人』。これは水谷竹秀さんという方の本です。この方はもともとフィリピンに拠点を構えて地元の新聞の記者としてずっと活動をしていた方なんです。この水谷さんという方は。で、日本にも活動拠点を持っているので、フィリピンもホームグラウンドなんですよね。で、僕は以前にこの方が書いたコールセンターの本……通販のコールセンターっていま、どこにつながっているかと思ったら、たとえば東京のテレビで見てそこに電話をかけて。
東京にコールセンターがあるのかと思ったら、全然九州とか東北とか、そういうところにコールセンターを置いて拠点にしているっていう場合があって。で、その延長線上で、なんだったらもっと物価も賃金も安いタイにコールセンターを置いたりして。それでタイに渡って働いているっていうような日本人の方のレポートを書いていて。日本ってほら、物価が高いじゃないですか。タイだったら物価も安いし、そこで働けばいいじゃないかっていう、ある意味タイに夢を抱いて働いている日本人。そういう人たちの本が面白くて。
(海野紀恵)ええ、ええ。
(プチ鹿島)それでご紹介をしたんですが、今回は『脱出老人』という本。この本が文庫化されたんです。どういうことか?っていうと、サブタイトルが『フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』。これ、すごいんですよ。なぜ「脱出」なのか?っていうと、プロローグを読んでみます。年金のことが書いてあるんですね。「年金に至っては少子高齢化に対応するために物価や賃金の伸びより抑えるマクロ経済スライドがはじめて実施された。年金目減り時代へと突入する中、私たちは今後幸せな老後を送ることができるのだろうかと考えると、うら寂しい気持ちがこみ上げてくる」という。で、実はいま日本である動きがあって。それがじゃあどうせもらえる年金の額が少ないのであれば、物価の安いタイとかフィリピンなど海外で老後を暮らそうっていう、そういうような高齢者たちもいるんですよ。
(海野紀恵)はー!
(プチ鹿島)で、当然水谷さん、フィリピンを拠点にしていますから。日本から年金暮らし、老後暮らしを……しかも、あったかいからね。セカンドライフをここでっていう人をすごく目にするようになって。「じゃあ、取材をしてみよう」っていうのがこの1冊の本。だからこれ、5月に文庫化されて。単行本はその前に出ているんですが、この5月に文庫化されて。それで老後に必要な資金が2000万円。はたして自助努力でどうやってくらしていく?っていう中で、「それならば物価の安いところへ、もう日本から脱出をしよう!」って考えているような人が数年前からいるっていうんですね。
(海野紀恵)うわーっ!
(プチ鹿島)もうこの時点で興味本位。野次馬としては「じゃあ、どうなった?」ってなる。それをいくつか書いているのがこの本なんです。
(海野紀恵)はー! もうまさにいま読むべき本ですね。
(プチ鹿島)まさにいま読むべき本なんですよ。で、実際にまず、東京ビックサイト。そこで年に何回か、ロングステイ財団っていうところ……高齢者向けに国内外でロングステイをサポートする業者のブースが並ぶという。フィリピン、タイ、マレーシアとかの国で「癒やしを求めて」とか「極上のセカンドライフを楽しむ」「ゆったりと海外生活」というようなそういう謳い文句とともに並んでいて、そういうパンフレットとか説明を見にくる年配の方がすごく多いんですって。
(海野紀恵)はー!
(プチ鹿島)その様子がもう1ページ目から始まる。で、じゃあ実際にフィリピンを拠点にしている著者が向こうで取材した人たちの老後生活はどうなっているのか?っていうことなんですよね。たとえば、日本人の男性とフィリピンの女性の年の差婚。日本の男性は物価の違いもあるから、比較的お金を持っている。で、フィリピンの女性もそういう日本人男性がたのもしいみたいな感じで。でも、それってただのエロオヤジ幻想なんじゃない?っていうのはずっと昔からありましたよね?
(海野紀恵)ええ。
(プチ鹿島)だけど、こうやって調べてくとたとえば老後を生きていくために必要な活力とはなんだろうか?っていうことで。お金の多い・少ないもそうだけど、生きがい。つまり、周りに誰かいるかどうかっていう時に新しい家族を求めて……中には奥様にもう先立たれて。このまま日本にいては寂しい。じゃあ、もう心機一転。奥様のことを思いながらも新しい明るい生活を……っていうことでフィリピンに旅立つ人もいる。で、それで成功をしている人もいる。
(海野紀恵)へー!
(プチ鹿島)で、もちろんうまくいかなくて途中で別れてしまうという、そういうケースも載っているし。じゃあ結局はお金が目当てなんでしょう? みたいに思う人もいるでしょうが、最初はそういうフィリピンパブでごきげんに出会ったんだけど、付き合っていくにつれてこの日本の男性、お父さんが好きなんだって。実際、そんなにお金がないけど、でも付き合って幸せに暮らしているというような例もあるし。まあ、とにかくいろんな例が載っているんですよね。
(海野紀恵)うんうん。
「老後資金2000万円」
(プチ鹿島)だからこれ、お金だけじゃなくてたとえば今回、「2000万円」っていう風にお金にスポットが当たっていますけども。「生きがい」とか……だって、孤独死なんていう問題もあるわけじゃないですか。それも含めて、なにか新しい環境ってなったら、フィリピンを選ぶ人もいる。中には、別の章だと「借金からの脱出」っていうので。これ、日本で多くの借金を作って、「じゃあフィリピンで……」っていうような。ここに載っている人は他の老後をフィリピンですごす人と違って、もうスラム街からやり直すっていう、そういうタフな例も載っているし。あとは「雪国からの脱出」っていうのもある。
(海野紀恵)ああ、やっぱり。
(プチ鹿島)ほら、お年を重ねると、東北とかだと朝起きたら1メートルとか2メートル、雪が積もっているわけですよ。それを1時間とか2時間とかかけて毎日除雪するって……これはもうキツいということで、南国に脱出したっていうような例もあるし。ところが、そうやって快適な暮らしをしているんですが、実際にフィリピンはフィリピンで台風だとか震災とか。この前、セブ島とかでもあったでしょう? それで全然違う風景になってしまったとか、そういうショックな様子とかも追跡していますし。
(海野紀恵)へー!
(プチ鹿島)で、もっと読んでいくと深刻な日本の介護疲れからの脱出。たとえば東京と山梨の間だったら、それだけ往復しなきゃいけない。それを、発想を変えてフィリピンにコンドミニアムを買って、介護施設も作ったところでお年を召したお母さんとかをそこに住まわせて、自分はそこに通うっていうようなパターン。でも、それって姥捨て山じゃないか? みたいな批判もあるけど、でも日本での介護料とかを考えるとフィリピンの方が格安なんだとか、その個人個人の事情とかがすごく取材をちゃんとされているんですよね。
(海野紀恵)はー!
(プチ鹿島)もちろん、それで成功をして幸せに暮らしている人もいるし、やっぱり途中で日本に帰ってくる人もいるし。いろんなパターンが載っているんです。たとえば、さっき孤独死の話をしましたけど、一人暮らししているお年寄りってだんだん自分の身の回りのことをするのが億劫になって。いつの間にかゴミを溜めてゴミ屋敷になっちゃって。何度も何度も掃除してもそれを溜めちゃうみたいな。
じゃあ、もうフィリピンに移住をして、そこで快適に暮らそうっていうような例もあったし。これ、だから「フィリピンに行こう」とか「海外脱出が正義」って言っているわけじゃないんですよ。高齢者の幸福論を考えることがこの取材のテーマだったというんですよ。その中で幸せになる人もいるし、そうでない人もいるだろうけど、そのひとつひとつのケースを追っていくと日本をもう諦めて脱出するという人のケースがこんなに多いのかっていう。
(海野紀恵)うんうん。
(プチ鹿島)じゃあ、翻って「脱出した人は幸せですね」じゃなくて、そもそも脱出できない、もしくは脱出しないで日本に留まって生活をしていこうっていう人がほぼ全てですね。じゃあ、そういう人たちの老後はどう考えればいいのか?っていう、そういうテーマに戻ってくるわけですよ。だって、都会から地方に移住をしようっていうのもいま、よく提唱されていますけども。それだって知らない土地だよね。
それが今度、言葉も文化も違うところに……それで介護という面ではフィリピンって家族とかを最後まで看取るっていうのが文化としてまだあるので、孤独死っていうのはなかなかないんですって。そういう意味で老人、お年を召した人がフィリピンで老後を……っていうのは結構合っているんですって。そういうお国事情とか個人個人、ケース・バイ・ケースだけども、ハマる・ハマらないっていうのは見えてくるわけですね。
(海野紀恵)はー!
(プチ鹿島)でも、一方でここまで脱出しなければ楽しい老後、おだやかな老後っていうのは手に入らないのか?って思うと……これ、それを突きつけてきた本でもあるんですよ。『脱出老人』。
(海野紀恵)いやー、いまお話を聞いていると、山梨なんて地方ですから。そこが東京から海外にっていう人がきっと多くて。地方にいらっしゃる方をじゃあ、どうやってとか。地方でずっと一生暮らす方はどうやってっていうことを考えないといけないなって思いますね。
(プチ鹿島)だからそういう、もしかしたらいま孤独死のことを話しましたけども、逆のパターン。しがらみが多い場合はもうそこから脱出するっていう風に考える人もいるだろうし。それでこれ、崔洋一監督が帯文を書いているんですけども。「それほどに日本は高齢者にとって不安な国なのか。僕は脱出老人を体感したくなった」ということで、実は崔洋一監督が密着してフジテレビ系の『ザ・ノンフィクション』っていうので5月に放送されているんですね。この中の1人のエピソードがね。
(海野紀恵)ええ。
ある意味で時事ネタの本
(プチ鹿島)だからそういう意味で、まさに時事ネタの本でもありますし。で、これは僕、いち早くTwitterで「これが面白かった」っていうのをつぶやいたら、この水谷さんからリプライをいただきまして。水谷さんにこんなことをおっしゃっていただきました。「年金2000万円問題が騒がれている中、海外での年金暮らしを考えるきっかけにしていただければと思います。拙著はフィリピンを中心に描きました。日本を脱出した海外移住組は悠々自適なセカンドライフを送れるのか? この問いに真正面から切り込みました」っていう。だからそこまで追い詰めるものはなんなのか?っていうことで。もしよろしければこれ、いろんな示唆に富んでヒントになると思います。『脱出老人』、文庫版でお求めやすくなっております。小学館から690円で5月末に出たばかりということで。
(海野紀恵)はい。
(プチ鹿島)これ、面白かったです。以上、プチ総論でした。
<書き起こしおわり>