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山下達郎と松尾潔 90年代R&Bを語る

山下達郎と松尾潔 90年代R&Bを語る 松尾潔のメロウな夜
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(松尾潔)さて、時代は94年から96年。

(山下達郎)一応、時系列ですね。

(松尾潔)96年の作品として達郎さんがトニ・トニ・トニの『Thinking Of You』とブラックストリートの『No Diggity』を選んで下さったんですが。

(山下達郎)名曲ですよね、これね(笑)。

(松尾潔)どちらもグループで。

(山下達郎)トニ・トニ・トニのこの曲は本当になんかアメリカでは酷評された記憶がある。この時代に。

(松尾潔)このアルバム『House of Music』っていう、これをもって結局はバラバラになってしまったんですもんね。1曲目にアル・グリーンかよ! みたいな。

(山下達郎)で、松尾くんみたいに英語が別に堪能なわけでもないし、そうやってなんでも全部あれするわけじゃないから。とにかくラジオが主体なので。そういう聞き方をすると、この今日のやつはもう本当にベタなやつばっかりなんですね。自分に言わせるとね。その時のヒット曲っていうか。

(松尾潔)それゆえに興味深い。

(山下達郎)要するに、ラジオでよくかかったやつをピックアップして聞いているから。

(松尾潔)達郎さんがおっしゃる「ラジオ」っていうのは主にFENですか?

(山下達郎)FENですね。

(松尾潔)AFNとかですよね。このトニ・トニ・トニの『Thinking Of You』は『House of Music』っていうアルバムに入っているんですが、その前作の『Sons of Soul』をフェイバリットに挙げるソウルファンって多いんですけど。いや、実はこの『メロウな夜』に先月、平井堅さんが遊びに来てくれたんですけど。その時に彼も「トニ・トニ・トニのこのアルバムが好きだ」って言っていて。曲は別の曲だったんですけど。まあ、彼の場合はいわゆるソウルミュージックファンとは違うから。「へー。ひらたく聞いたらこれがいいんだな」っていう風に妙な納得もしてたんですけど。達郎さん、まあそこらのソウル好きっていうような人たちが裸足で逃げ出すようなマニアの達郎さんが、この『House of Music』の『Thinking Of You』を……。

(山下達郎)だからだんだんだんだん、いわゆるヒップホップカルチャーというものについていけなくなってくるというか。そういう年齢的なところもあるんですけども。ちょうど43、4でしょう。40代の中頃で。自分の経験則っていうか、60年代、70年代……基本的に自分の専門は6、7、8の中間ぐらいまでなんですよね。そこの25年間ぐらいのあれがいちばん自分の中で聞いた量も多いし、質的なものあれだし。それから調べた資料もあれなので。やっぱり80年の後半から90年代に入ってくると、やっぱり自分の全く窺い知れぬ世界っていうかね(笑)。だから『Rapper’s Delight』とは違うラップミュージックっていうか、そういうものが出てきて。

(松尾潔)うんうん。

(山下達郎)昔はだからパッと聞いて構造が理解できた時代なんで、たくさん聞いて。それこそ、六本木のレコード屋で30枚ぐらいまとめて買ってきて。とにかくどんどんどんどん聞いていって。いいやつを全部カセットに入れていって、それをツアーの時に聞くっていうそういう繰り返しでね。それでLAとかニューヨークに行った時にはもう何十本ってカセットを作って。その中で調べて。まあ、それは高校生の時にそうやってFENを聞いていたのと同じやり方でやっていたんだけど。だんだんだんだん、それだと何がいいのかがわからないっていうのが増えてきて。だけど、はじめはよくわかんないんだけど聞いていくうちにだんだん構造がわかってくるっていうね。だから、回数を聞かないとわからないっていうの?

回数を聞かないとわからない

(松尾潔)その聞く回数っていうのが、やっぱり達郎さんはクリエイターでらっしゃる……もちろんまりあさんをはじめとしていろんな方に曲提供もされる。プロデュースもされるとなると、やっぱりをひたすら聞くっていう時間の確保もどんどん難しくなってきますよね?

(山下達郎)難しいですよね。だからまあ、だいたい寝る時ですよね。

(松尾潔)寝る時はけどほら、落語を聞かなきゃいけないから……我々は(笑)。

(山下達郎)フフフ、いや、全部落語を聞いているわけじゃない(笑)。ツアーの時は落語を聞いてるんですけどね。

(松尾潔)ああ、そうですか? それは思うところがあって?

(山下達郎)ツアーの時は自分の声の反復なので。やっぱり前日やったものを反復してどうするか?っていうあれなので。それこそ新譜とかそういうものよりも、睡眠の時には志ん生の声で癒されるっていう、そういう……。

(松尾潔)フフフ、大人の子守唄ですね(笑)。

(山下達郎)すいませんね(笑)。だから家で聞く時ね。僕はね、だいたい広く浅くじゃないんですよ。昔から。1枚のアルバムを100回ぐらい聞いて。それで……だから高校生の時とかってお金がないじゃないですか。だからそれこそね、ラジオ以外で自分のアルバムを1枚買ったら、それを大事に聞き通すっていうね。

(松尾潔)僕もそうでしたよ。

(山下達郎)でしょう? で、不正解かなと思っても、無理やり好きになろうと思って聞いているとだんだんだんだん違うファクターが出てきて。なるほど!って。そうやってたとえば南部のアトランタとかメンフィスの音楽っていうのの共通項っていうか。それはたくさん聞かないと。たとえばギタリストが同じ響きをしているとか。たとえばドラムが同じやつじゃないかとか、そういうことに行き着くまではたくさん聞かないとわからないんですよ。

(松尾潔)これはけど、100人恋人とデートを繰り返すよりも、1人の恋人と長く付き合った方が人間がわかるということにつながるのかな?

(山下達郎)フフフ、それ、いいたとえだな(笑)。でも、千人斬りを千人斬りのその……ああいうね、カサノバとかそういう……(笑)。

(松尾潔)フフフ、数をもって見えることもあるのかもしれませんけどね。

(山下達郎)どっちかでしょうね。

(松尾潔)量が質を決定するのか、どうなんでしょうか。

(山下達郎)本当にだから新しいものをどんどんどんどんと追いかけていく人、いるじゃないですか。「これからはこれだ! これからはこれだ!」って。もう人よりも1分、1秒早く聞くこと。そういう人もいますし、もう絶対にスタイルを変えないっていう人もいるし。どっちかですよね。

(松尾潔)そうですね。結局人それぞれって話になっちゃうんだけどもね。

(山下達郎)だから入り口は100も200もありますけど、出口はひとつしかないんだよ。

(松尾潔)ああ、名言をいただきましたね。

(山下達郎)フフフ、だから次に聞いてもらう、持ってきたこれはテディ・ライリーっていう人がそれまでに作ってきたやつっていうのはいまいちピンと来なかったんですけど。これ、たまたま聞いてね、これもラジオでかかりまくってたんだけど。たまたまこれ、毎晩聞いていたんですよ。で、だんだんだんだんと「これ、ひょっとしたらものすごいことをやっているんじゃないか?」って思って。で、途中でビートルズのカバーでね、『Can’t Buy Me Love』が出てくるんだよね。「これ、何だ!?」って。

(松尾潔)アルバムの中でありますよね。

(山下達郎)それがよくできているんですよ。だからこの頃からこういうものが「なるほどな」って。要するに、自分がわからなかったことがちょっと見えてきてね。

(松尾潔)反復をすることで。

(山下達郎)だからこの間のドクター・ドレーの……。

(松尾潔)『ストレイト・アウタ・コンプトン』。

(山下達郎)そうそう。あの物の作り方っていうか。ああいうのがだんだんわかってくるっていうか。それはこの時代、これのおかげでこういうのをちゃんと聞けるようになったっていうかね。

(松尾潔)テディ・ライリー自身がね、ニュージャックスウィングっていうのの残り香を振り切って、これでネクストレベルに行きましたよね。

(山下達郎)これ、彼にとっても転換点になるんでしょう。

(松尾潔)まあアルバムタイトルで『Another Level』って自分もつけていたぐらいなんで、そういう思いも強かったんでしょうが。じゃあ、それを聞いてみましょう。1996年のアルバム『Another Level』からブラックストリートで『No Diggity』。

Blackstreet – No Diggity ft. Dr. Dre, Queen Pen

(松尾潔)ブラックストリートで『No Diggity』をお聞きいただきました。これはまさにドクター・ドレーを招き入れて、彼にラップさせた曲ですけども。まあ、もっと言うと元ネタにビル・ウィザースですね。『Grandma’s Hands』が使われていて。もうかなり元の曲をチョップして使っているんで、言われてみて気づくみたいな類の、いわゆる大ネタまるまる使いではなくて。

(山下達郎)そうね。ちょっとひねった。だからこれをパクりと見るか、いろんなそういう論争があったじゃないですか。サンプリングが始まった時にね。だから僕なんかもそういうところでかなり抵抗があったけど。やっぱりまさにポストモダンっていうか。

(松尾潔)達郎さんはもうね、もはやいま日本人アーティストで最も海外のアーティストにサンプリングされてるお一人で……。

(山下達郎)知らないよ(笑)。

(松尾潔)最近もタイラー・ザ・クリエイターが……。

(山下達郎)びっくりしましたけどね。

(松尾潔)ねえ! 『GONE, GONE / THANK YOU』っていう曲で。でも結構、「これは達郎さんの節回しをまんま使われているなって……もちろん音色は若干変えていましたけどね。

(山下達郎)あれは健全な使い方でしたけどね。この間のタイラー・ザ・クリエイターはね。

(松尾潔)『Fragile』を。

タイラー・ザ・クリエイターがサンプリング


(山下達郎)でも、いい加減なのありますよ。『GO AHEAD!』の1曲目に『Overture』っていうコーラスがあるんですけど、それをそのまま使ってずーっとやっているやつがいて。それを12インチ屋で見ると「素晴らしい!」とかって……(笑)。

(松尾潔)書いてありますよね(笑)。

(山下達郎)元ネタわかんないから(笑)。

(松尾潔)あれはなんか、罪悪感とかもないだろうし。

(山下達郎)まあ、悪い言い方をするとヨーロッパとか欧米の人がアジアの音楽をちょっとピックアップして「誰も知らないだろう」と。それで、クレジットはないんですよね。さっきの、だから僕のアカペラを使ったやつも本人の作詞・作曲になっているんです。

(松尾潔)フフフ、怖いですよ。この後、なにが起こるかはわかりませんよ、タイラーさん(笑)。これ、聞いていたら連絡ください(笑)。

(山下達郎)でも、ちゃんと作家のクレジットが書いてありましたから大丈夫ですよ(笑)。ちゃんとありました。びっくりしましたけどね(笑)。

(松尾潔)さて、時代は90年代後半に入ってまいりますね。ブラックストリート『No Diggity』に続いて90年代も後半に……。

(山下達郎)結局でもね、曲なんですよね。曲とメロディーなんですよ。あと、歌。

(松尾潔)達郎さんのセレクションを拝見していますと、それを痛感しますね。やっぱり、まあ今更って言われそうですけど、「山下達郎っていう人は歌が好きだな!」っていうね。

(山下達郎)フフフ、ボーカルオリエンテッドですから(笑)。

(松尾潔)いや、本当にね、日本の中でも歌の発声とはなにか?っていうことを思わされますよ。

(山下達郎)でもやっぱり長唄・常磐津よりは浄瑠璃の方が好きだとか。義太夫の方が好きだとか。そういうのはありますよね。そういうものですよね。

(松尾潔)それを追いかけて大阪に行かれたりするんですもんね。

(山下達郎)そうなんです(笑)。

(松尾潔)さあ、ブラックストリートの『No Diggity』から時はほぼ一緒と言ってもいいんですけど。ブライアン・マックナイトとかジョーとか、いわゆる音楽評論家が言うところのルーサー、フレディ以降の……。

(山下達郎)ああ、そういう言い方をするんだ。なるほど。

(松尾潔)はい。ルーサー・ヴァンドロスとフレディ・ジャクソンっていうのは破格の成功でしたし。あとはスタイルを規定したっていうところはあるんでしょう。

(山下達郎)時代がね、やっぱりルーサー・ヴァンドロスとかフレディ・ジャクソンの時代はまだそれほど、たとえばいまで言うところのボイストレーニングとか、そういうのがそれほど徹底されてないっていうか。だけどこの時代になって、ブライアン・マックナイトとかジョーとかそういう時代になると、そういうビジネスとしての声帯の保持っていうかね、そういうのがものすごく感じますよね。

(松尾潔)たしかにブライアン・マックナイトなんか特にね、テイク6のファミリーっていうところで出てきたっていうのもありますけど。デビューの時点からある程度もう長寿化を見越して。

(山下達郎)そういう戦略ですよね。

(松尾潔)20代でデビューしてもこの50代、60代になっても歌えるような世界を最初から歌っているような……。

(山下達郎)傾向はありますね。

(松尾潔)ありますね。だって、ずっとタキシード着て写ってる写真だけ見てると、どの時代の写真かわかんないぐらいですもんね。

(山下達郎)でも、いわゆるボーカルグループっていうのがだんだん衰退していく反面、たとえばこの時代のたとえばエリック・ベネイとかね、ブライアン・マックナイトもそうだけど。ソロでキチッと歌うスタンスの人っていうのは逆に増えてきてるっていうか。

(松尾潔)あとはレコーディング技術の発達によって、サウンドだけで言うと聴感上、グループ物かソロの作品なのかわからないっていうのは……。

(山下達郎)一人多重、増えますからね。

(松尾潔)そうですね。録音作品に関して言うと。で、そうなってくると運営側としてはグループよりソロの方がまだマネージしやすいっていうのはあるでしょうね。

(山下達郎)グループはかならず揉め始めて(笑)。そうね。やっぱりだんだんだんだんと確実なビジネスにね。

(松尾潔)そうですね。それはスキャンダルが起こる確率が減るわけですよ。さあ、そんな中で90年代、先ほどご紹介したR.ケリーと並んで最も大きな成功を収めた男性ソロアーティストいえばキース・スウェットということになるでしょう。

(山下達郎)そうなんだ。最も大きな成功なんだ。

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