町山智浩・山里亮太・赤江珠緒『ブルース・ブラザーズ』を語る

町山智浩・山里亮太・赤江珠緒『ブルース・ブラザーズ』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で山里亮太さん、赤江珠緒さんと『ブルース・ブラザーズ』についてトーク。ロケ地のシカゴやジョン・ベルーシとダン・エイクロイドを輩出したコメディー学校セカンド・シティ取材などについても話していました。

(赤江珠緒)町山さん、先週お話をされていた『ブルース・ブラザーズ』を我々、見ました!

(山里亮太)ちゃんと我々、見てまいりました!

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(町山智浩)あらっ! ちょっとキツく言ったんで……「見ろ!」って(笑)。

(赤江珠緒)あのね、わかりました。町山さんが「人類が見るべき」って言っていたの、わかった。

(町山智浩)本当に? どのへんで?

(赤江珠緒)えっ、「人類が見るべき」っていう理由はわかったけど、ただただブルース・ブラザーズが違法行為していた(笑)。

(町山智浩)フフフ(笑)。

(山里亮太)あれ、エンドロールぐらいでびっくりするんですけど、ものすごいいろんな人が出ているんですね?

(町山智浩)あれ、パトカーが100台ぐらいぶっ壊れるでしょう?

(赤江珠緒)そう! すごい!

(山里亮太)だってあれ、普通にショッピングモールとかボッコボコになっていて(笑)。

(赤江珠緒)ねえ。本当に車を何台壊すんだ?っていう話ですけども。

(町山智浩)あそこ、ロケーション場所に全部行ってきたんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)あの、高架の下でパトカーが全部積み上がっていくところとか、最初に出てくる刑務所のところとか、レイ・チャールズっていうおじさんが質屋で演奏するところとか。

(赤江珠緒)うんうん!

(町山智浩)あと、最後にバーッと市庁舎のビルの前にパトカーがブワーッと突っ込んでくるじゃないですか。ヘリコプターも出てきて。そこの行ってきました。

(赤江珠緒)ああ、そうですか! へー! あの跳ね橋みたいなの、いまもあるんですか?

(町山智浩)跳ね橋もあります。もうみんな、ファンにとっては聖地なんで。全部、あの格好で回ってきました。

ブルース・ブラザーズの格好で聖地巡礼

(赤江珠緒)アハハハハハハッ!

(山里亮太)黒いスーツにサングラスで(笑)。でも、そうなると結構そういう人に同じシチュエーションの時に会うんじゃないですか?

(町山智浩)僕は会わなかったんですけど。いまね、あの撮影した場所って非常に危険なシカゴのサウスサイドっていう全米でも殺人事件が非常に多いところなんですよね。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)で、そこにあの格好で行くと、「夜は来るなよ。殺されるから」とかいろいろと言われたんですけども。ただ、「ブルース・ブラザーズでしょう!」みたいな感じでみんな喜んでくれて。それはちょっと嬉しかったですよ。

(赤江珠緒)へー! そうなのかー!

(町山智浩)すいません。でも40年も前の映画をね、無理やりおすすめしまして。

(赤江珠緒)やっぱり「人類が見るべき」っていう映画はぜひ、町山さん。言ってください。「これは人類が見るべき」って。

(山里亮太)我々、1個1個吸収していかないとね。

(町山智浩)じゃあ『アンタッチャブル』も見てくださいね。

(赤江珠緒)『アンタッチャブル』もね。はい。わかりました。

(町山智浩)すごいいい映画ですから。『アンタッチャブル』。

(山里亮太)でも町山さん、僕たちの『ブルースブラザーズ』の会話が「違法行為する2人が暴れる映画」っていう紹介で……(笑)。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。

『ベイビー・ドライバー』でのオマージュ

(町山智浩)いや、いいんですよ。最後に刑務所にちゃんと行きますから。でね、『ベイビー・ドライバー』っていうカーアクションの映画がありましたけども。あれで主人公がさんざんカーチェイスした後にちゃんと刑務所に行くじゃないですか。あれは、『ブルース・ブラザーズ』をやりたかったんですよ。

町山智浩 映画『ベイビー・ドライバー』を語る
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(赤江珠緒)ああ、なるほど!

(山里亮太)ああ、いろんなのがやっぱりモチーフにしているんですね!

(町山智浩)そうなんです。最後に彼女が迎えにくるところは『ブルース・ブラザーズ』の冒頭シーンと全く同じ撮り方をしているんですよ。だから『ブルース・ブラザーズ』からいろんな映画が生まれているんで。あと、出てくるミュージシャンたちもみんな亡くなっちゃっているんですよ。

(赤江珠緒)偉人たちの世界でしたよ。いま見たら。

(町山智浩)そうなんですよ。アレサ・フランクリンとかレイ・チャールズとか。だから人類の貴重な記録なんでね。『ブルース・ブラザーズ』はぜひ見ていただきたいんですが。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)が……あの、主人公を演じたジョン・ベルーシ。デブちんでバク転とかしている人ですけども。

(赤江珠緒)お兄ちゃん。

(町山智浩)そう。あと、ほとんど無口のダン・エイクロイド。あの2人はひとつのコメディー塾から出てきた人なんですよ。そこにも行ってきました。

(赤江珠緒)おおーっ!

(山里亮太)シカゴにあるんですね。

コメディー養成学校・セカンド・シティ

(町山智浩)あのね、セカンド・シティというコメディー養成学校なんですけども。山里さん、ご存知じゃないですか?

(山里亮太)えっ、僕が?

(町山智浩)吉本と提携しているんですよ。

(山里亮太)えっ、そうなんですか? ええっ!

(町山智浩)そこは要するにジョン・ベルーシとかビル・マーレイとか、アメリカのコメディアンの優秀なところ……たとえばマイク・マイヤーズとか。そういった人たちを育ててきたアメリカで最大で最も歴史のあるコメディー養成学校なんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、吉本といろいろと提携をしているんですよ。

(山里亮太)そうなんですか。吉本はなにを学んでいるんだ?

(赤江珠緒)フフフ(笑)。

(町山智浩)なにを学んでいるのかっていうと、そのセカンド・シティはひとつのメソッドを持っているんですよ。それは即興。だから、アドリブ。インプロビゼーションの技術を育てるメソッド(方式)を持っているんですよ。教育法を。

(山里亮太)ああ、なんかやっているな。そのアドリブ、即興の舞台をいま、やっていますね。

(町山智浩)やっているでしょう? あれ、セカンド・シティが提携をしてやり方とかを教えたりしていて。逆に吉本の学生たちをシカゴに呼んだりとか、ずっとやっているんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)そこで先生にインタビューして、授業の風景も見てきました。で、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが2人で掛け合いみたいなのをやるじゃないですか。その根底で彼らが学んでいたのは、その相手が何かを振ってきたら、それを否定しないで、それを受けて。さらに面白いことをかぶせていくということで、どんどんどんどんと面白く、上に上がっていくというやり方を勉強しているんですよ。で、それを舞台の上でいきなりやって。お客さんとかからネタを振られて、その場で打ち合わせもなしでやるっていう技術をずっとやっているんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(山里亮太)すごいことですよ。本当に。めちゃくちゃレベルが高い。

(町山智浩)そう。ただ、「それをやっているのは、たとえば漫才やコントを書いてきて台本通りにそれをやっても、絶対にスターにはなれないからだ」って先生は言っているんですよ。そうしないと、フリートークの力が全然育たないから。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、フリートークに必要なのは普段、いろんな人間を観察しておくこと。いろんなパターンを持っておくこと。あとニュースとかをいっぱい見て、世の中を知ること。いろんな人たちの職業を全部観察して、その人たちの職業の言葉とか身振りとかを全部勉強していないと即興はできないんですよ。だから、こういうことをやられるんですね。「はい、いまレストラン。始め!」ってなるんですよ。

(赤江珠緒)無茶ぶり……。

(町山智浩)その時に、そこに6人ぐらいいるんですけども。そこで誰がお客さんで誰がシェフで誰がウェイトレスで……っていうのは打ち合わせ無しで一発でやるんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)「はい、ここレストランです」って言ったら誰かが口火を切って話すんですよ。「あの、すいませーん! ウェイトレスさん?」とか言うんですよ。それは自分の方を見られた人が「あ、はい。いらっしゃいませ」みたいな感じでその場でウェイトレスを始めるんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)それを打ち合わせ無しでやるんですね。しかもそれを、ギャグをどんどん入れていかなきゃいけない。で、「あ、すいません。こぼしちゃったんですけど……」みたいなことをやった時、そこにギャグをかぶせて。で、それに対してさらにギャグをかぶせていって、どんどんどんどん上にあがっていくっていうことをやるんですよ。

(赤江珠緒)難しい……。

(山里亮太)相手の技を受けるという。

(町山智浩)そう! 「相手の技を受ける」んです! 相手の技を受けるっていうのは、本来はなんでしょう?

(山里亮太)これはもう、プロレスですよ!

(町山智浩)プロレスなんです!

(赤江珠緒)つながった(笑)。

(山里亮太)いやー、本当にプロレスを見ていて思うもん。「勉強になるわー!」って。

相手の技を受ける

(町山智浩)プロレスなんですよ。で、タイミングとかもはかって。一瞬でも考えたりしたらその場で舞台は壊れてしまうんですよね。だから考えないで返すためには、たとえば本当に普段からいろんな技を身につけていないとできないわけです。だっていきなり僕みたいな55歳のクラスっていうのもあったんですけども。「ここは高校です。はい、どうぞ!」ってやっていましたよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)で、いきなりその場でスポーツマンであるとか、モテモテの子であるとか、クラスでの外れ者とかを全員がパパパパパッ!って引き受けるんですよ。

(赤江珠緒)うん!

(町山智浩)で、面白い話を展開していくんですよ。これ、すごいなって思います。

(山里亮太)すごいですね。めちゃくちゃ難しい。

(町山智浩)だから「ああ、いまはこれはあいつのギャグを受けている時間なんだな」っていうところではそれを受けておいて。「さあ、ここで返すぞ!」って返したりとか。相手を輝かせることで自分も輝くっていうことをやるんですよね。で、これはもう本当にお笑いの中では基本で。それができないと、全然……「『君たち、コントが面白かったね』って、それだけになっちゃって。テレビとか映画とかで他の役者たちとのインタラクティブな相互関係の芝居はできないよ。台本通りじゃダメなんだよ」っていうのをセカンド・シティでやっていたんですよ。で、そこからブルース・ブラザーズは出てきて。なんでか?っていうと、「ブルース」っていう音楽もそうやって作るんですよ。

(山里亮太)ああ、そうか!

(町山智浩)そう。コード進行だけが決まっていて。だからそれぞれのソロのパートを自由に弾くんですよ。「今度はピアノ、今度はベース……」っていう感じで受けていくんですよ。ボーカルとハーモニカで。ジャズもそうですけど、セッションをしていくんですね。みんな、同じなんですよ。プロレスも。技を出して、受けて返して。それを即興で……という話で、今日はフロレスの話です。

(赤江珠緒)はい!

<書き起こしおわり>

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